この学校には フォックスさん というおまじないがある
用意するのは紙と5円硬貨、それとティーテーブルに誰も座ってない椅子、紅茶を一杯
紙には上部中央にロールケーキの絵を、その左右にはいといいえを、そしてそれらの下に『あ』~『ん』までの文字を五十音順に書き込む
参加する人数は何人でもいいが必ず硬貨に指を乗せないといけないので多くの人数は無理だろう
指を置いたら皆でこういうのだ
『フォックスさんフォックスさん、ティーパーティーの時間です、席についてください』
そういって、硬貨が動けばフォックスさんが席についたということだ
フォックスさんは物知りで様々なことを教えてくれる
隣のクラスのとあるグループがテストのでてくる場所を教えてもらい全員で満点を取ったという話もある
これだけ聞けば便利なおまじないだが、注意事項がある
1つ.おまじないはしっかり終わらせないといけない
紅茶を飲み干し『ティーパーティーは終わました』と言わないといけない、硬貨がロールケーキの絵までいき、ロールケーキの絵が消えたら帰ったという証拠だ
2つ.フォックス様を怒らせてはいけない
失礼な質問をし、怒らせると呪われてしまうらしい
その呪いを受けると、死んでしまうとか
さて、なぜ私がそんなことを説明しているかというと
「セイア様、ナギサ様、ミカ様、ティーパーティーのお時間です、席についてください」
下江さんがフォックス様っぽいことをやっているからである
セイアって誰!?ナギサ様って誰!?ミカ様って誰!?
フォックス様じゃないの!?
あと空いた席が3つティーカップが3つ、それにロールケーキが3つおかれてる
下江さんはなにを呼ぼうとしてるの!?
困惑しながらそれを見ていると強風が吹く
思わず目をつぶり、もう一度下江さんを見る
…あれ?
誰もいなかったはずの席、今もいないはずの席
しかし気が付けば誰かが座っていた
正面に小柄な女性、下江さんの左右にピンク髪の女性とブロンド髪の女性
「こんにちは、セイア様、ナギサ様、ミカ様」
【やっほ、コハルちゃん、お茶会にお招きいただきありがとう☆】
【ミカさん、コハルさんに呼ばれてうれしいのはわかりますが落ち着いてください】
【まったく、ずっと変わらずせわしないなキミは】
下江さんの言葉、次々に返事をする三人
どうやら下江さんはフォックス様ではなくあの三人を呼んだようだ
【コハルさん、元気でしたか?学業に不便はありませんか?】
「はい、この前のテストで満点じゃないですけどいい点数取れたんです!」
【流石コハルちゃんじゃんね♪】
「まぁ…ハナコが教えてくれたところがたまたまでただけなんですが」
【それをしっかりと覚えてテストに活かせたのは君の実力だよ、コハル】
【あーあ、私もコハルちゃんと青春おくりたいなー】
【無茶言わないでくださいミカさん】
【そうだぞミカ、定期的にコハルがこうやってティーパーティーを開いてくれているんだ、それで満足しないと】
【わかってるけどさぁ】
「えっと…」
【あぁ、ごめん、コハルちゃんを困らせるつもりはないんだよ】
【ただの愚痴です、お気になさらないでください】
【そうだね、いつもの愚痴だ、それよりもお茶会を始めよう】
「わ、わかりました」
小柄な女性の言葉とともに、お茶会が始まる
4人は最近のアクセサリーはどうだー、だの、こんな生徒をみかけたーだの、そんなたわいもない会話を始める
ありふれたごく普通のお茶会だ
…ロールケーキをみてたらお腹がすいてきた、帰りに食べよう
そんなことを思っていると、小柄な女性がカップをおいて下江さんを見つめる
【さて、コハル、最近困ったことはないかな?】
「困ったことですか?」
【あぁ、何でも聞いてくれ…常識の範囲内だが】
【はぁい、じゃあコハルちゃんの同級生になる方法】
【諦めてくれ】
【なんでもじゃないじゃーん】
「えっと、それじゃあ、アズサと最近会えないんです…どうすれば会えますか?」
【アズサか…それじゃあ会えるようにこちらで手配しよう】
「本当ですか!?」
【それぐらいならお任せください】
【ちょうど話をきいてくれそうな子もいるしね☆】
あれ、寒気が…
【それじゃあ、お茶もケーキもなくなるしそろそろお開きだね】
【コハルさん、無理のないタイミングでまたよんでください】
【私たちはいつでも君を待っているよ】
そういって三人は紅茶を飲み干す
「セイア様、ナギサ様、ミカ様、ティーパーティーは終わました」
下江さんがそう宣言すると再び強風を吹く
強風が止むと、席には下江さんしかおらず、ロールケーキも紅茶もなくなっていた
下江さんがお茶を片付けているのを横で見ながら去っていく
あの三人はいったい、何だったんだろうか
そして私は数日後、『シラスアズサ』の話を聞くこととなる