イヌバラの思い出   作:ローズヒップティー

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/Touko's Profiling and Counseling for E Arthur


二十一話 吸血鬼の涙

 

 

 

「……ふ、ふふ」

 

 

 つい吹き出してしまった。

 

 そんな、小さな小さな吐息。

 

 たじろぐ俺を見て笑っている。そのように思えて、いくらかの呪詛のこもった目線をやる。

 

 目が合えば風邪くらいは引くが、先ほどまで食い入るように俺の眼を見つめていたくせに、今はもう全体を捉えるような広い視野へと戻ってしまっていた。

 

 始覘/熾天の魔眼も、薔薇の魔眼も、もはや開眼していないのだから、彼女の興味が薄れるのも無理ないが。

 

 

「いや、悪い悪い。お前を笑ったわけじゃないよ。愛、だなんて真面目に口にした自分が、ちょっと小っ恥ずかしくなっただけだ」

 

 

 間接的ではあるものの、やっぱり俺に関することで笑っているじゃないか。

 

 

「真面目に口にするのがおかしい言葉、ということですか」

 

「あー、そう取るか、うぅん。少しめんどくさいところがあるな。……が、それも可愛さの内か。

 いやさ事情はわかってるつもりだよ。愛というものはプラスの感情にもマイナスの感情にも揺れる、面白い『衝動』だ。愛憎なんて言葉があるがね。ありゃ蛇足だよ。愛の一文字で事足りる。

 ま、そういう意味でも、お前という怪物が愛に惹かれるのは理解できる。情事だのは、人間らしい感情が見れる典型だからな」

 

「まるでひとを夢魔みたいに……」

 

「夢魔と変わらんだろう。人間性を理解するために非人間的なことに手を染める。自身のエゴの為に他者の感情を食い物にする。……どっちの方がタチが悪いかはさて置いて、な」

 

「……」

 

 

 つい、黙り込んでしまった。

 

 そうしてから、蒼崎に言われたことを思い出す。"痛いトコ突かれると黙る"だったか。

 

 ……確かに、俺の行動はカリーナのためではなく、俺自身のためのものだ。そういう意味で、蒼崎の言葉は的を射ている。

 

 カリーナのマイオを想う気持ちがあまりにも綺麗だったから、その続きが視たいと思っただけ。彼女の願いを叶えたいとか、マイオを助けたいだとか、そういった気持ちは……ないとは言わないが、ごく少量だ。

 

 ただ、この『愛』を嘘にしたくなくて、動いただけ。

 

 そういう意味では、蒼崎の言うとおり、俺は俺が大事だと思うもののためだけに、エゴで人を殺せるのだ。

 

 己が欲望のために、他者を踏み躙れるのだ。

 

 無論、それが悪いとは思わない。誰しも譲れないものの一つや二つあるものだ。十人十色という言葉もある。各々それぞれの考え方がある。

 

 それが俺にとって、精神の煌めきを視ることであっただけのこと。

 

 しかし──、だ。

 

 百歩譲って、物事に優先中をつけ、結果として殺害という方法を許容するのはいい。

 

 だが、今回のことは優先順位を付けることすらしていない。すべての格付けは無意識に行われていた。蒼崎に指摘されて、ようやく気づいたほどに。

 

 そういったことがサッパリ頭から抜け落ちていた。歩くときに足下の虫へ意識を割かないように、俺の行動で失われる命に対して、意識がまるで向いていなかった。

 

 蒼崎の手前、表には出さないが正直愕然としている。

 

 ショック。

 

 いや違うか。虚しい、だ。

 

 虚無。

 

 空っぽなんだ。

 

 あれからもう何年も経ったのに、まだ(から)だったんだ、俺って奴は。

 

 ふと──、あの日視た女の姿が脳裏によぎる。

 

 父を想い、姉妹を想い、芸術を──人の営みを愛した、あまりにも美しく可憐な純白の乙女の姿を。

 

 そして、それが朱く穢れてしまった末路を。

 

 憧れたのは、目を焼かれたのは、恋焦がれたのは、手に入れたいと強く願ったのは……、どちらだったか。

 

 あの無垢な薔薇姫であった筈だ。

 

 

「ある種の反転衝動。大我と小我の反転(いれかわり)。死徒と人間との反復横跳びが原因で、自意識の微妙な変化に気づかなかったんだな。まあ、無理もないが。

 いわゆる混血の連中みたいになってるんだ、お前は。もっとも、奴らよりよほど歪だがね」

 

「……」

 

「お前の脳が絞り出す大我──社会的な思考とでも言おうか。それは単一のものだが、対してお前の小我があまりにも多く、またそれぞれが独立している。自覚くらいはあるだろ?

 肉体──死徒としての自分。

 精神──星の端末としての自分。

 魂───ヒトとしての自分。

 三つの小我──今は魂も死徒だから二つか──が短く断続的に、かつ不定期に浮遊と飛行を繰り返しているんだ。更にそれぞれが反転(いれかわ)る。よく正気のフリができるもんだと感心するよ」

 

「…………」

 

「あいや、フリじゃないか。正気だなんだというのはそれこそ世間が言うことだ。そうだな、訂正しよう。

 人間らしくあろうとしている、かな。

 とはいえ、元が(から)の人形だからなのか。どうも上手く真似れていない。随分な眼を持ってるクセに観察眼というものが足りていないな、まったく」

 

 

 蒼崎は、講義をする先生のように指を一本ピンと立て、ツラツラと語り出す。

 

 

「──ルール、いや法則か。そいつを決めろ。

 とある大学教授の話があるんだが、彼は病気で幻覚をよく見ていてな。現実と妄想の狭間で苦しんでいた。そこで彼は、それらを区別するためにひとつの法則を自身に定めたんだ。

 例えば、講義中に幼い女の子が突然話しかけてくることはない。だからそんなことがあったなら『これは幻覚だ』として無視する、といった具合にな。

 もちろん全てに対応できるわけじゃない。時には軋轢もあったろう。だが、ひとつひとつ法則に当てはめて、現実と妄想を別けることで彼の生活は劇的に改善していった。

 お前もそうしろ。

 人間とはなにか。死徒とはなにか。それぞれの法則を導き出して、人間の法則を選べ。こういう時にどうするのか、どういった行動が正しいとされるのか。難しいだろうがよく考えて動くんだ。

 周りを注意深く観察してエミュレートしろ。

 お前さ、結構な眼を持ってるんだろ。折角なら有効的に使おうじゃないか」

 

 

 淡々と言葉を紡ぐ蒼崎。

 

 突き放すようにも思える言葉の数々だが、それは子供に言い聞かせるような喋り方にも思えた。ぶっきらぼうだが、どことなく優しさが滲み出ているような……。そんなかんじ。

 

 意外と、面倒見がいいのかも……というのは、買い被りすぎか。

 

 再びゴロゴロと雷鳴がくぐもった黒雲の方へ蒼崎は一度視線を向け、すぐに視線と戻す。彼女はもうガラクタになってしまった使い魔たちの残骸を鞄に詰めていく。

 

 戦闘はもう終わったとばかりに後片付けを行い、これで用は済んだと緋色の背中が立ち去っていく。

 

 

「俺を、ロボや黒犬を、止めるために来たんじゃなかったんスか?」

 

 

 正直、蒼崎が探偵ごっこを始めた時、身も心も殺されるのではないかと想像した。匣の魔物など命の危険はあったが、それでも蒼崎橙子ならばもう眼の使えない俺を仕留めることくらいは出来そうなものだ。

 

 だというのに、彼女がおこなったのは遠回りに遠回りを重ねたカウンセリングのようなもの。

 

 俺はまだ動けるし、考えがマルっと変わったかというとそんなこともない。

 

 イゼルマの脅威は去っていない。

 

 まだ止まらない。

 

 止まらない。

 

 止まらない。

 

 蒼崎は一瞬立ち止まり、

 

 

「もう止まっただろ」

 

 

 とだけ言った。

 

 振り返ることもせず、鮮やかな赤色の女は月の塔へと去っていった。

 

 ポツリと雨が頬にあたる。

 

 小雨と呼ぶには荒々しい、大雨と呼ぶには大人しい、ただ冷たい雨が降る。

 

 けれど、さっきまで背筋を伝っていた汗よりは、温かく思えた。

 

 眼を閉じる。目蓋に遮られて赤も青もなくなる。自分の心臓の音と呼吸、それと雨音だけが去来する。

 

 

「……観測終了(over and out)

 

 

 流れるように口から漏れ出たのは、おしまいの言葉だった。

 

 至るところへ散逸した黒犬たちが灰と散る。クロイカゲは拠り所を失い、絶叫しながら消えていく。まるで一夜の夢であったかのように、残るものは何も無い。

 

 ふう、とため息が溢れそうになって、

 

 ──その時、ギャン、と一際大きな雷鳴が轟いた。

 

 襲撃者たちを黒犬が呑み込んでから鳴りを潜めていた雷だが、どうやらさきほどから勢いを取り戻している。

 

 方向は……。

 

 ああ、そうだ。まだロボが居たか。

 

 最後に視てからまだ5分と経っていないが、向こうはどうなったのだろうと思案する。

 

 と、すぐさまその考えを放棄する。見ないことには分からないことを考えてもしょうがない。とはいえ残念ながら仔細のほどはわからない。左目に匣の魔物を閉じ込めたままで、上手く俯瞰できないからだ。

 

 だが状況はある程度掴めた。どうやらフラット・エスカルドスがうまくやったらしい。

 

 たった今、ロボへの魔力提供がストップした。というより、魔力経路パスが途切れたと言った方が正しいか。

 

 そう簡単に断ち切れるようなものでは無いはずだが……、やはり令呪を再現できなかったのが響いたか。あそこまで強固な呪いなら解かれることもなかっただろうに。

 

 あと数分ほどでロボも灰と消える。

 

 さて、どうしようか。

 

 今更どうしようもないことではあるが、どうにか穏便にマイオを、ひいてはイゼルマを助けることはできないものか。

 

 ホラーサスペンスは終わってしまった。騒動の中で、黒犬にロード・エルメロイⅡ世が喰われてなければ、既定路線を辿ってイゼルマの謎は暴かれる。

 

 

「本人に、こう……頼む、とか」

 

 

 と、口には出してみるものの、即座に"ない"と判断し切り捨てる。

 

 やはり次善策しかないか。

 

 つまり、今までは身も心も助けるつもりでいたが、身体だけを助けることにするわけだ。

 

 イゼルマの研究。彼自身の美への執着。『黄金姫』という存在に対する愛。それらを彼から奪う代わりに、身の安全を保障する。

 

 ブリシサンの名も、クライネルスの名も捨てることにはなるし、おそらく()()からしばらく出ることも叶わないだろうが、ここで果てるよりはマシ……か?

 

 ──それは、カリーナの願いに沿うものなのか。

 

 脳裏によぎる俺にとっては当然の疑問。

 

 ──"人の法則を選べ"

 

 蒼崎の言葉が再生される。鼓膜の奥で反響する。

 

 俺にとっては次善だが、ヒトにとってはこれが最善なのかもしれない。

 

 少なくとも人死には出ないし、長期的に且つ楽観的に見れば誰もが助かる公算だ。しかし上手くいく保証はない。

 

 ない、が──そもそも俺の策は失敗している。上手くいくかいかないかはこの際論点ではない。()()()()()()正しいか正しくないか、だ。

 

 疑問を(ほど)くのはきっと正しい。

 

 欺瞞を暴くのはきっと正しい。

 

 殺人を裁くのはきっと正しい。

 

 人として、そしてもちろん魔術師としても。過去の歴史を鑑みても、これらの行いはきっと正しい。

 

 だから、大事なのはその後なんだ。

 

 カリーナの望みを叶えるために必要なのは『今』じゃなかったんだ。

 

 解き明かされた後で、どうするか。

 

 そう。言うなればケアの話。更生──というのは少し違うが、立ち直らせるようなこと。

 

 あそこまで『美』に囚われた男に、果たして引き返す道などあるのか。それは分からない。……分からないが、"人間"なら、そうする、のかな。

 

 

「……おかしな話だ。俺の信条に従ってやったことなのに、その信条が瓦解している」

 

 

 蒼崎橙子は破壊者だ。

 

 そして、随分な批評家だ。

 

 小さな傷を見つけ出しては(あげつら)い、大きく広げて誰にでも見えるようにして、用が済んだらポイだ。

 

 

「嫌なヤツだよ……ホントに」

 

 

 思ってもいない悪態をつく。癇癪を起こす幼児のように、自分のことを棚に上げて罵言を吐き出す。

 

 恥辱。

 虚無。

 悲哀。

 友愛。

 憤慨。

 感謝。

 憧憬。

 嫉妬。

 侮蔑。

 ……あとは、なんだろうか。

 

 ともかく、色々な感情がごちゃ混ぜになっている感覚だ。この心を、どうか雨が洗い流してくれないものか。

 

 そう、祈りともつかぬ心境にあった折のことであった。

 

 ────バシャリ

 

 と、誰かが不意にタタラを踏んだような音がした。

 

 魂から『人のラベル』が剥がれ落ち、正真正銘の死徒となった自分の聴覚は、数十メートル先の音を容易く拾い上げた。

 

 

「────あ」

 

 

 こちらが気付いたことに気付いたのだろう。大きな鎌を構えながら、警戒した様子でこちらを見ていた少女が声を上げる。

 

 どこから見ていたのか。どこまで見ていたのか。

 

 こんな近い距離、狭い範囲の情報を見落としていたとは、確かに随分な眼の割に節穴だ。これは蒼崎に色々言われても仕方ないな。

 

 

「──グレイ。エスカルドスとグラシュエートなら向こうだぜ。それとも、俺と()る理由でもあるのかい?」

 

 

 彼の王の貌を持つ少女へと語りかける。

 

 

「いや、無い。少なくとも我々にあなたと戦う理由はない」

 

 

 返ってきたのは男の低い声だった。

 

 木の陰から姿を現したのは長身の男だった。長くツヤのある黒髪、濡れた黒のスーツは泥で汚れていた。

 

 ロード・エルメロイⅡ世、その人である。

 

 よく考えれば当然のこと。この惨事で彼が護衛もなしに動くはずもない。となれば、ライネスも何処かにいるか。

 

 グレイを伴って、Ⅱ世はこちらへと歩を進める。

 

 

「──しかしだ。少しばかりご説明をいただきたい。よろしいかな、レディ」

 

「……ああ、構わないさ」

 

 

 魔術を齧ってないヤツでも気付くような、血臭と瘴気に包まれた薔薇の庭。そしてその中に佇む怪物の容れ物と一人の吸血鬼。

 

 怪しまない方がどうかしている。

 

 にしても、レディ……ね。いや、それはいいか。

 

 

「ではまず、この薔薇の花は一体?」

 

 

 瘴気──即ち星を侵す毒──に触れないギリギリのところで歩みを止め、彼はそう尋ねてきた。

 

 

「ソコで立ち止まったのなら、分かっているも同然ではないですか?」

 

「過程を問うているのだよ。分かっていて言っているのかね」

 

「は。ジョークだよ。軽く流せよな」

 

 

 小さくこぼす。それは雨音に掻き消されて届いてはいない。

 

 いや、彼とて一応は魔術師だ。聴覚の強化くらいは流石にできるか。それに、悪態をつくほど嫌いな相手というわけでもない。今回においては、俺にとっては都合の悪い相手だったというだけのこと。

 

 問いをはぐらかすこともない。

 

 

「……もはや隠せるものでもないですが──ええ、はい、吸血種でして。"力ある死徒はただそこに()()だけで周囲を侵す毒となる"」

 

 

 いや、それは()()()の話だったかな? これは原理写本を開いた結果。()()()はそこまで酷くないか。

 

 

「……まさかとは思っていたが、アナタは──」

 

「──"ロズィーアンの死徒"などと言ってくれるなよ」

 

 

 蒼崎にも言われたことだったが、それは薔薇の翁への不敬だ。朱い月の誘いに乗った大馬鹿者の名ではあるが、あれも突き詰めれば『愛』ゆえのおこない。

 

 俺の"親"だけならいくら侮辱しようが構わないが、ロズィーアン卿を巻き込むとなると話は変わる。

 

 

「……成程、承知した。では、アナタはただの死徒である、と。しかしコレは──異常だ。()()()()であると言われた方がまだ納得できる」

 

「上級死徒──ああ、Ⅶ階梯ですか。……どうなんでしょう。十年にも満たない新参者がそう名乗っていいものか。そこら辺はお好きなように考えていただいて結構です」

 

「承知した。それでは好きに考えさせてもらうとしよう。

 ──二つ目だが、そちらの異形。死んでいるようにも見えるが、それは一体なんなのだね?」

 

 

 指をさす。

 

 そのさされた指に挟まれた葉巻が、幽霊のような白い影を(くゆ)らせる。

 

 指の向かう先に視線が走り、煙が昇るように視線も登っていく。暗い庭中に在る怪物の全容を、その輪郭を改めてなぞる。

 

 

「死んではいませんよ。──生きてもいませんが」

 

 

 茨のような触手。無数の感覚器官。胴にあたる部分はなく、絡まった毛糸のように複雑怪奇に入り組んで塊となっている。

 

 そんな塊の中心に、巨大な目がギョロリと二つ。

 

 ()()と目を合わせれば、常人ならそれだけで震え上がってしまうだろう。だが、今やその目に光はない。魂がない。心がない。

 

 からっぽ。

 

 死んでないだけの容れ物だ。

 

 俺と────、

 

 

「こいつがなんなのかは、俺にもよく分かりません。どんな間違いがあれば、こんなのが生まれるんだか」

 

 

 ……俺と、同じだ。

 

 と──、センチメンタルになるのはやめだ。それはさっきやった。クヨクヨするのはもう終わり。

 

 カット。切り替えよう。

 

 

「──まあ、すごーく簡単に言いますとね。

 襲われたから倒した。それだけのことです」

 

 

 蒼崎云々の話はややこしくなるだけだから、無理に言う必要もない。そもそも、その情報は彼らとて欲していない。

 

 重要なのは、何が起きたか、だ。無理矢理当てはめるとするならば、──What done it(ワットダニット)? だろうか。

 

 怪物に襲われ、その対処のために力を振るった。

 

 答えはただそれだけ。

 

 

「……確かに、我々も先ほどまでブラックドッグに酷似した生物──あれを生物と呼称できるかは定かでないが──に襲われていた。それにこの雷雲と、私の生徒たちが向かった先にあった巨大な魔力反応……。なにやら尋常ならざることが起きているのは間違いない」

 

「……殺人事件、とか言ってる場合じゃないですよ。まずは逃げることが先決です。協会に持ち帰り、然るべき調査を行うべきだと、時計塔の君主(ロード)たる貴方に進言いたしますが……?」

 

 

 さて、これで"そうだね"、と頷いてくれれば『俺にとっての最善』だが────

 

 

「いや、このイゼルマの事件は私が預かった。それを途中で投げ出すことはできない。例え人喰いの化け物が現れたのだとしても、殺人事件は解明する。

 ──ロード・エルメロイⅡ世の名にかけて」

 

 

 随分と、『人間らしい』君主(ロード)もいたものだ。

 

 

 

 

 

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