ワートリ本編のキャラとブルアカのクロスオーバーが全然ないので自足自給がてら投稿してみます。
現時点での原作知識は
ブルアカ:最終章3章途中
ワートリ:最新巻まで(うろ覚え)
です。
拙稿ではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
異世界からの来訪者
「なにもやることがなくなったなー…」
城壁の上で少年が胡坐をかきながら、夕日で赤く染まる荒野を眺めている。下からはたくさんの歓喜の声が響いているのに対し、少年は淡々と抑揚のない声で独り言をつぶやいていた。
『ユーマ──』
ふと、少年の隣に黒い塊が現れた。炊飯器のような見た目をしたドローン型のロボットは、少年に対して優しく語り掛ける。
『──有吾の故郷に行ってみないか?有吾の話では、ボーダーという組織は各地の近界民と交流しているそうだ。』
「親父の故郷…そういえば、親父は自分が死んだら日本に行けってよく言ってたな。」
『そこに行けば、ユーマも元の体に戻れるかもしれない。有吾の友人もいるはずだ。』
「ふむ…そうだな…」
少年─遊真(ユーマ)は暫く考え、そして立ち上がった。
「じゃあ、早速その日本とやらに行ってみるか。ライモンドさんたちにお別れを言ってくるから、レプリカは門(ゲート)の用意を頼む。」
『承知した。』
こうして、遊真の旅は始まった。レプリカの目的とは違う、たった一つの目的の手がかりを得るために──
~~~~~~~~~~
──そのはずだった。
「オラオラオラァ!!さっさと観念して出てこいや!!」
ダダダダダダッ!!
「どうしてこうなってしまったのか」と、瓦礫に身を隠した少年が首をかしげている。自分はいくつかの国を経由して日本まで行く予定だった。レプリカに記録されている惑星国家の軌道配置図から、確かなルートを辿っていたはずだった。
「なぁ、よくよく考えたらあのガキヘイローなかったよな…?万が一弾が当たったら死んじゃうんじゃ…。」
「し、知らねえよそんなの!それに見ただろ?変な穴から出てきたり、バリアで銃弾を防いだり、どう考えても普通の人間じゃねえって!」
遊真が門を通り抜けた時、眼前に広がっていたのは巨大な高層建築物が並ぶ街並みに、日本語や矢印、様々な色の線が書かれている黒い地面。そして、重火器で武装し目を丸くしてこちらを見ている頭に輪っかを付けた不良の少女たち。
互いに困惑で硬直している中、先に不良の一人が発砲した。SMGから放たれた銃弾に対し、遊真は咄嗟に手を構える。「盾」という文字が入ったバリアが展開されると、彼女の放った銃弾は遊真の前で完全に止められてしまった。…そし完全に敵と判断した不良たちは遊真に銃をぶっ放しまくり──現在に至る。
「さて、どうするか…。」
遮蔽物から少しだけ顔を出して敵の様子を観察する。
(全員武装は銃火器。連射のきくマシンガンタイプが二種類に散弾タイプが一種類。敵の練度は…あまり高くないな。)
『ユーマ、敵の数と配置を確認した。すぐ前方に10人、そのはるか後方に9人と武装車両が1台。指揮官と思しき人物は後方にいる。狐の仮面を被り、銃剣を付けたライフルを所持している。こいつだけは恐らく強敵だ、気をつけろ。』
「オーケー。行くぞレプリカ。」
『心得た。』
レプリカが粒子状に分解され、遊真の体に纏わりつく。所々に赤のラインが入った黒いコンバットスーツのような姿に変身した。
「『強』印・二重」
地面を思いきり踏み抜く。アスファルトの地面が砕け散り、衝撃で空中に舞い上がった。
「な、なにが起き──」
ドゴッ!!
突如発生した地面の揺れによろめいていると、前方から凄まじいスピードで黒い影が突っ込んできた。反応する間もなく顔面に跳び蹴りを食らい、不良の一人が後方に大きく吹っ飛んだ。
(あ、これは。)
ここで遊真はあることに気づく。無防備な相手に『強』印で攻撃したのだ。トリオン体であれば一撃で爆散するはずだ。だが相手は人としての形を保ったまま吹っ飛んでいる。つまり相手は自分と同じトリガー使いではなく、生身の人間だったのだ。
「『鎖』印」
とはいえ足を止めるわけにはいかない。突然の出来事に呆然としている不良たちに印を付ける。途中で反撃されたため5人程度しか付けられなかったが、それでも十分だった。
「おわあっ!?」
「なにこれえ!?」
不良たちの体に「鎖」と書かれた印が浮かぶと、印を付けられた内の一人に全員が引き寄せられ、くっついてしまった。バランスを崩して倒れたところをレプリカが地面に『鎖』印を付けてぐるぐる巻きに拘束する。
ドッ
「う゛っ」
ズドンッ
「うぎゃっ!?このっ」
ダダダダッ!
そのまま印を使ずに殴りかかるもいまいち手応えがなく反撃される。トリオン体の膂力で鳩尾や喉元など、人体の急所を殴っているのだ。一発で失神してもいいはずなのに彼女たちはピンピンしている。
「いってぇ…よくもやりやがったなこのクソガキ!!」
すると、先ほど『強』印で蹴りを食らわせた不良が立ち上がった。良くて重傷、悪ければ死んでいると思われたその子は痛そうに額を抑えているもののそこまでのケガはないようだ。
「なるほど。どういう訳か分らないけど、あんたら生身が相当頑丈なんだな。」
「はっ!今更後悔しても遅い!あたしらにケンカ売ったこと、一生後悔させてやる!」
持っているガトリングを遊真に向けて乱射する。しかし武器が重いため、素早く左右に跳ねて避ける遊真に弾丸が当たらない。
「『強』印・五重」
「せーーのっ!!」
ドッガァァン!!!
さっきの蹴りの、何倍もの威力があるパンチで不良を殴り飛ばす。弾丸のように飛んで行って建物に激突すると、流石に相当なダメージが入ったのかヘイローが消えて気絶してしまった。
「な、なんだよこいつ…。」
「ヘイローもないのに…化け物だ…!」
あまりの恐怖に動ける不良たちの腰が抜けた。このキヴォトスに生きる人間にとって、ヘイローの有無は絶対的な戦闘能力の差を表す。ヘイローのない人間がヘイローを持つ人間に正面から戦って勝つなど、万に一つもあるはずがないことだったのだ。
「…さて。」
ガタガタと震える不良に遊真がゆっくり近づく。
「降参してくれるなら、もうこれ以上なにもしないけど。」
「は、はいっ!!降参します!!もう何もしません!!」
不良たちは武器を投げ捨てて土下座した。今すぐにでも逃げ出したいところだが、足に力が入らないため立ち上がることもままならない。鎖でぐるぐる巻きにされている人たちも、仲間が降参したのを見て観念したのかもがくのをやめた。
「ふむ…。」
不良たちを吟味するように一人一人見て、降参したことを確認すると印を解除して拘束を解いた。見逃してくれると確信した不良たちは、気絶している仲間を抱えて蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ去っていった。
まだ後方に敵が残っているものの、遊真は自警団でも警察でもない。この戦闘はあくまで向こうから手を出してきたから反撃しただけで、これ以上戦う理由などどこにもない。ここからはこの国の治安組織の仕事だと判断した遊真は換装を解いてとことこと歩き出した。
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その様子を物陰から除く4人の少女と1人の大人がいた。皆揃ってたった今起きた出来事に驚愕している。ヘイローのない、小学生くらいの小さな少年が不良たちを蹂躙していたのだ。
「あの子…何者なの?武器を使わずに、丸腰で一掃するなんて…。」
青いツーサイドアップの少女─ユウカはそう口から漏れる。
「…謎の魔法陣のようなものを展開しているように見えました。それから鎖のようなものが出たり、力が急に強くなったことを考えると…恐らく、何らかの装置のようなものを隠し持っている可能性があります。」
白髪にグレーの制服を纏った少女─スズミはそう分析する。
「早瀬さんとスズミさんはついて来てください。チナツさんはここで先生の護衛をお願いします。」
「了解しました、ハスミさん。」
黒髪ロングに巨大な羽を背中に携えている少女─ハスミは持っているスナイパーライフルを少年に向けて歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って!」
この中で唯一の男性であり、大人である人物─先生が歩き出すハスミを慌てて呼び留めた。
「よほど抵抗しない限り、撃つつもりはありません。私はただ、彼が敵であるか否かを判断したいだけです。」
「…それなら、私に任せてくれないかな?」
「…正気ですか?あなたは私たちとは違って頑丈ではないんですよ?」
「大丈夫、たぶんあの子は攻撃してこない。ただ巻き込まれただけだと思う。だからここは、私に預からせてくれ。」
ハスミは尚も反対しようとするも、先生の意思は変わらない。このままでは少年を見失ってしまうと観念して大きくため息をつき、先生に任せることにした。
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結論だけ言うと、先生の思っていた通り、少年は一切攻撃をせずに先生の話に応じた。彼曰く、「その辺をうろついてたら偶然鉢合わせて攻撃された。」とのことだ。先生以外の全員は未だに少年に対する警戒心が残っているものの、先生に促されて自己紹介を済ませた。
「なるほど、空閑遊真君ね。小学生かな…?保護者とかはいないの?」
「いないよ。あと背は低いけどおれは14歳だよ。」
「じゅ、14歳…!?」
どう見ても小学生にしか見えない遊真の年齢に、先生は声を上げる。
「…先生。男性は女性に比べて成長が遅いそうですから、不思議なことではありませんよ。」
「そ、そうだったね。ごめんね遊真君。」
「いえいえ、お気になさらず。」
「ありがとう…!それじゃあ、遊真君を安全なところまで連れて行って──」
バンッ!!
──本来の目的、シャーレの奪還に戻ろう。そう続けようとした先生に遠くから一発の銃声が響く。「しまった」という表情で銃声の聞こえてきた方向を見る先生たち。しかし、そこには「盾」と文字の入ったバリアが張られていた。
「こ、これは──」
先生の目の前で、弾丸がバリアに突き刺さっている。それに触れようとする先生の腕を遊真が引っ張って遮蔽物の影に押し込んだ。
「ちょっと話過ぎたな、敵が戦線を上げてきたか。おれが対処するから先生はここで隠れといて。」
バリアを解除して銃弾が飛んできた方向を凝視する。そこには狐の面に和服を着た人が堂々と佇んでいた。
「あれは…七囚人のワカモ!?」
「あいつが敵の指揮官か。」
前に出て戦闘体に換装しようとした遊真だったが、今度は先生によって腕を引っ張られて物陰に押し込まれてしまった。
「君も危ないからここにいてね。あとは私たちに任せて。」
そう言うと先生はユウカ達に指示を出した。ワカモの指揮能力はかなり高く、本来烏合の衆であるはずの不良たちは一糸乱れぬ動きを見せている。しかし──
「ユウカは前線の瓦礫に隠れつつ、弾倉敵の注目を集めて。」
「了解!」
「ハスミ、ユウカに注目している敵に狙撃を。」
「了解。」
「スズミは前線に出てきた敵にスタングレネードを投擲して足止めして。チナツはその援護を。」
「了解です。」
「了解しました。」
先生の指揮能力が、ワカモよりも遥かに上回っていた。単体の強さは先生の方に分があるとはいえ、数の差をものともせず次々と敵の数を減らしていく。一方ワカモは劣勢になったとみるや否や、後方に撤退していった。
「よし、このままシャーレのビルまで行くよ!」
ゴゴゴゴゴゴ──
「あ、あれは…!」
「クルセイダー1型…!私の学園の制式戦車と同じ型です。」
「ブラックマーケットの不法品に違いないわ!PMCに流れたのを不良たちが買い入れたのかも!」
ドンッ!!
戦車の砲撃によって、ユウカが隠れていた遮蔽物が吹っ飛んだ。先生の指示で退避していたユウカは、近くの瓦礫にすぐさま隠れる。
バンッ!!
カンッ!
「徹甲弾を弾いた…!?あの戦車、違法な改造を受けています!」
「せ、先生。どうしますか?」
「ユウカとスズミは左右に散開、戦車の側面から回り込むように指定のポイントについて。ハスミは狙撃の準備を、私の合図で戦車の周りに転がっているドラム缶を撃ち抜くんだ。恐らく爆発が起きるから、二人はいつでも隠れられるようにね。」
先生の指示で二人は一斉に左右へと走り出す。戦車は突然のことに一瞬反応が遅れるものの、すぐに砲塔をユウカの方へと向ける。
「スズミ!戦車にグレネードを!」
戦車の目の前で閃光弾が炸裂する。相手は人ではなく戦車のため効果は薄いものの、一瞬の隙を生み出した。
「今だ、ハスミ!」
ハスミの放った弾丸が戦車のそばに転がっているドラム缶を貫く。そのドラム缶からは炎が上がっていた。おそらく、可燃性の液体が入っていたのだろう。そうなれば当然
ドガアァァァァン!!!
凄まじい爆風が辺りの瓦礫を吹き飛ばす。戦車の周りには他にもいくつかのドラム缶が転がっており、それらすべてに誘爆した。
「クソッ!!」
戦車の中で操縦している不良たちは怒りのあまり壁を殴った。戦車自体は破壊されなかったものの、衝撃で射撃管制装置が完全にお釈迦になっている。また、爆発で発生した黒煙が戦車を包み込んで視界を塞いでしまい何も見ることができない。
「どこだあ!!セコイことしやがって、覚悟しろ!!」
この戦車は使い物にならないと判断した一人が戦車のハッチから顔を出す。マシンガンを構えて周囲を見渡そうとするも、頭部に硬く冷たい感触が二つ押し付けられる。
「覚悟するのは、あなた達の方よ。」
「残存兵力の制圧を開始します。」
青ざめる不良の頭に二回発砲音が鳴り響く。ゼロ距離で頭部に銃撃を食らった不良はヘイローが消えてぐったりと倒れた。その後はスズミが戦車の中に閃光弾を投げ込み、不良たちの鎮圧が完了した。
「「シャーレ」部室の奪還完了。私ももうすぐ到着しますので、先生は先に地下室に向かってください。」
ホログラム通信で会話をしているメガネをかけた長耳の少女─リンの指示で先生はシャーレ内部の建物に入っていった。ユウカ達はその場に残って負傷者の治療やヴァルキューレへの引き渡し等の事後処理に当たっている。
「空閑遊真さん、少しお話が。」
「ふむ、おれに何か用?」
ハスミは車の上に腰掛けて暇そうに足をぷらぷらさせている遊真に声を掛けた。謎が多い故に未だ遊真に対して若干の警戒心を持つ彼女に対し、遊真もそれを悟ったのか少し低い声で返した。
「色々聞きたいことがあるのですが…まず、あなたはこの世界の外から来た人ですよね?」
「そうだけど、なんでそう思ったの?」
「この世界において、あなたのような人間の男性は全くと言っていいほどいないからです。」
「なんと…。」
「いつ、どうやってこのキヴォトスに来たのか。分かる範囲でいいので教えていただけますか?」
「…おれがこの世界に来たのはついさっき。門を通って日本に行くつもりが、何故かここに着いた。」
「門」 聞きなれない単語にハスミは首をかしげる。すると、遊真が手を前にかざした。そこから何もないはずの空中に黒い穴が開いた。
「こ、これは…!?」
「これが門。これを使っておれは色々な国を旅していたんだ。」
ハスミは目を丸くして黒い穴を見つめる。その穴はバチバチと弾けるような音を出している。中を覗いても、あまりにも暗すぎて中に何があるかが分からない。
「どう?おれがただ巻き込まれただけって分かってくれた?」
「え、ええ。すみません。…ところで、先ほどの発言から考えるに、あなたは意図せずこの世界にたどり着いたように見受けられるのですが…。帰る算段はありますか?」
「たぶん大丈夫、レプリカ。」
レプリカが指輪から飛び出してきた。再びハスミは驚いて一歩引いてしまう。
『初めましてハスミ。私の名はレプリカ、ユーマのお目付け役だ。』
「は、初めまして…?」
「大丈夫だって、噛みつきやしないよ。それよりレプリカ、元の世界に帰れるか?」
『そのことだが…少し問題が発生している。』
深刻そうな声で話すレプリカに、遊真はきょとんとした顔をしている。
『この世界にも近界の存在があることは間違いないが…このキヴォトスから外の状況を確認することができない。原因は分からないが…外部への一切の干渉が不可能になっている。』
「…つまり?」
『門を使っても座標の指定ができない以上、元の世界に戻ることはできない。我々はこの世界に閉じ込められてしまったようだ。』
「………。」
「あ、あの…?」
硬直して微塵も動かない遊真にハスミが心配の声を掛ける。遊真たちは何やらとんでもない状況に置かれていることは、側で聞いていたハスミも理解していた。
「な………!」
遊真がショックで崩れ落ちた。ハスミが慌てて励ます言葉を考えようとするも、何と言ってフォローしたらいいのか言葉が思いつかない。こういう時、後輩であればいい言葉が思いついたのだろうかと嘆いていると、シャーレのビルから先生が戻ってきた。
「おーい、みんなお待たせ…って、どうしたの!?」
先生が戻ってきたことでユウカ、スズミ、チナツたちも集まってきた。助かった、と心の中で安堵したハスミは、遊真が現在置かれている状況をそのまま皆に説明した。
「そ、それは…。」
「なんといいますか…。」
「かける言葉が…。」
三人もハスミと同様に、遊真に対する言葉を失っている。すると、先生は俯いている遊真の肩に手を置いた。遊真が顔を上げると、先生が優しく微笑んでこう言った。
「遊真君、もしよかったらシャーレに入らない?」
「シャーレ?」
「今は行方不明の連邦生徒会長って人が立ち上げた部活だよ。この学園都市で発生している、いろんな問題を解決するために作られたんだ。」
「なるほど、便利屋みたいなものか。」
「便利屋」という単語にチナツが顔をしかめてメガネを上げる。
「身分がないとこの世界ではいろいろ大変みたいだし…仕事も無理強いはしないよ。やりたいことがあったら、シャーレなら行動を縛られず自由に動ける。もしよかったら、どうかな?」
先生の言う通り、このキヴォトスにおいて身分は非常に大事なものだ。学園に所属していない生徒は口座を作ることができず、ろくな仕事にもありつけない。その場にいた誰もが先生の提案を受け入れると確信していた。しかし──
「悪いけど、その提案は断るよ。」
『……ええっ!?』
先生も含め全員が驚いた。先生の提案は、だれから見ても破格すぎる待遇だった。先生に一切の見返りもなく身分を用意してもらうばかりか、縛りもない中自由に暮らしてもいいというものだ。これを蹴るというのはよっぽどの馬鹿か、破滅主義者くらいだ。
「ちょ、ちょっと!?先生の話聞いてたわよね!?こんないい待遇他じゃ絶対ないわよ!?」
「ユウカさんの言う通りです。それにこの世界で身分がなければ、まともに生活することは出来ませんよ?」
「いまからでも遅くありません…!考え直してみてはいかがですか?」
「いえ、一度決めたことですので。それじゃ、自分はこれにて失礼します。」
『待て、ユーマ。』
何処かへ歩き出そうとした遊真をレプリカが止めた。
『先生、シャーレで我々を雇ってくれないか?我々は前の世界で傭兵として活動していた。荒事の対応には自信がある。』
「い、いやいやいやいや!ダメだよ!?確かにさっき戦ってたのは見たけど、ここじゃこういうのが日常茶飯事なんだよ!?いつか取り返しのつかないことになっちゃうって!」
『問題ない。さっきユーマが黒い服を着ているのは見ただろう。あれは戦闘用のトリオン体と言って、特殊な方法で攻撃しない限りは傷つくことがない。』
レプリカはそのままトリガーとトリオンについて、詳しく説明を行った。ざっくりまとめると
「遊真の持っている指輪は「トリガー」と呼ばれる武器」
「トリガーは「トリオン」という生命エネルギーを消費することで起動し、トリオン体に変身することができる」
「トリオン体はトリオンによる攻撃以外で傷つくことはほぼない」
「トリオン体が傷ついたり破壊されたりしても生身に影響はなく、時間経過とともに修復される」
ということだ。
「そんな魔法みたいな技術…。エンジニア部が聞いたらこぞって飛びついてきそうね…。」
獲物を見つけた肉食動物のように、目を光らせて飛びついてくるエンジニア部の部員をユウカは想像した。
『皆の様子を見るに、この世界ではトリガー技術はないと見受けられる。それなら、この世界で戦っても危険はない。これでどうだろうか。』
「…うん。確かに、それなら大丈夫だね!。」
『ユーマも、それでいいか?』
「…珍しいな、どういう風の吹き回しだ?」
『……。』
「ま、いいか。じゃあ先生、一回断った身で申し訳ないんだけど、よろしくお願いします。」
遊真が先生に手を差し出し、その手を先生が握り返した。
「こちらこそよろしく、遊真!」
満面の笑顔を浮かべる先生。一方の遊真も僅かに緩んでいた。
下書きをワードでやってたから文字サイズの変更しなおすのめっちゃ大変でした
正直ちょっと心が折れかけましたが頑張っていきます
誤字脱字等があれば指摘していただけると嬉しいです