はぐれ近界民の青春記録   作:Gペペロンチーノ

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明かされる真実

ヒフミも含め、全員はブラックマーケットから脱出した後、無事にアビドスへと戻ってきた。

 

ようやくカイザーローンがアビドスの返済金をどう使っているのかを知れると思っていた彼女たちだったが、書類を見る彼女たちの表情は険しい。

 

「な、何よこれ!?一体どういうことなの!?」

 

セリカは身体を小刻みに震わせながら、書類を机に叩きつけた。

 

その書類には、アビドスが毎月支払っているおよそ788万円のうち、集金された直後に500万円が「任務補助金」としてヘルメット団に流れていたことが記載されていたのだ。

 

「これってつまり…。」

 

「今までアビドスを襲ってきたヘルメット団や、便利屋68の背後にいたのはカイザーローンだった…ということだね。」

 

「ど、どういうことでしょう!?理解できません!学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに…どうしてそのようなことを…?」

 

ノノミやアヤネはカイザーローンの意図に困惑しているのも無理はない。現在、アビドスの借金は九億円を超えており、もし学校が潰れれば、カイザーローンも莫大な損失を被るはず。そもそもアビドスは利息を毎月きちんと支払っており、今後も返済し続ける意志と能力がある。金融会社の立場からすれば、アビドスを潰す理由などないはずだ。

 

「…この件、カイザーローン単独の仕業とは考えられない。恐らく、他の会社やカイザーの本社そのものが関わっている可能性がある。」

 

「…はい。そう見るのが妥当ですね。」

 

先生の意見にヒフミが同意した。ふと、遊真が何かを思い出したかのように口を開く。

 

「なるほど、だからヘルメット団の連中は、背後にいる連中のことを話せなかったのか。」

 

顎に手を当てて「ふむふむ」と頷く遊真に対し、セリカは目を見開いて迫り、胸倉を掴んだ。

 

「どういうこと!?あんたヘルメット団と接触してたの!?」

 

「ああ。この学校に来て初めての日の夜に、あいつらに絡まれたんだ。返り討ちにしたついでに背後にいるやつのことを聞こうとしたんだけど、怯えるばかりで何も言わなくて。」

 

「そんなの無理やり聞き出せばいいじゃない!!なんであんな奴らに情なんてかけてるのよ!?」

 

「強引に聞き出したところで、相手は助かりたい一心でデタラメを言う可能性がある。それに拷問とかそう言うの、あまりやりたくないからな。」

 

「遊真君の言う通りだよ。カイザーが裏にいる以上、ヘルメット団は絶対に口を割らなかったと思う。」

 

ホシノがそう言って遊真からセリカを引き離し、二人の間に入った。

 

「遊真君が尋問してる時、私もちょうどその場にいてねー。おじさんでもちょっと不憫に思っちゃったくらいには、あいつらの怯え方、尋常じゃなかったよ。」

 

「そ、そうだったんだ…。…ごめん、乱暴しちゃって…。」

 

「大丈夫、気にしてないから。」

 

カイザーに関する情報をまとめ終わる頃には、すでに日が傾き始めていた。門限があるため、ヒフミはトリニティに帰らなければならず、一行は校門前で彼女を見送っていた。

 

「みなさん、今日はありがとうございました。」

 

「こちらこそ、色々とお世話になりました、ヒフミさん。」

 

「変なことに巻き込んでしまってすまんね。」

 

「あ、あはは…。」

 

ヒフミは少し苦笑いを浮かべた後、真剣な表情に変わり話し始める。

 

「今回の件、ティーパーティーに報告します。そうすれば、カイザーコーポレーションの犯罪やアビドスの現状に対して、私たちも何かできるかもしれません。」

 

「…まー、ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー。」

 

「は、はいっ!?」

 

「あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それぐらいはとっくに把握してると思うんだよー。みんな、遊んでばかりじゃないだろうしさ。」

 

「そ、そんな…知っているのに、皆さんのことを…。」

 

信じられないといった表情のヒフミ。ホシノが続けようとしたところ、遊真が横から口を挟んだ。

 

「万が一トリニティがアビドスに介入したところで、アビドスは政治の道具に体よく利用されるだけだろうね。」

 

「そ、そうですか…?」

 

「アビドスには、他の学園に対抗できるほどの力がない。サポートする名目で悪さをされたら、相手のいい様に使われるだけだ。」

 

「そ、そうですね…。その可能性もなくはありません。あうう…政治って難しいです。」

 

「でも…遊真君、それは悲観的過ぎではないでしょうか?本当に助けてくれるかもしれませんし…。」

 

今まで静かに聞いていたノノミが思わず口を開く。遊真は少し険しい表情で応じた。

 

「政治が絡むと、人は何処までも他人を利用しようとするんだよ、ノノミ先輩。ウソをついたり、力を見せつけたり…自分の立場や居場所を守るためなら、どんな汚いことだって厭わないのが政治家のやり方だ。」

 

その言葉に、ノノミは何も返せなくなる。ヒフミや他のアビドス生徒、先生も遊真の言葉には黙り込んでしまった。それほど、遊真の言葉には不思議な説得力があった。

 

「ま、それが間違いってわけじゃないよ。上に立つ人間にはそれだけ責任があるんだから。きれいなことも、汚いこともやるのが当然ってものさ。」

 

「…そうだね。そんな当たり前のことを考えてこなかったから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー。」

 

そう言ってホシノは笑ったが、その笑顔はどこか無理をしているようにも見えた。遊真もまた、いつもの飄々とした雰囲気は消えている。

 

重苦しい空気が漂い、その場にいた誰もが口を開けず、ただ風に舞う砂の音だけが響いていた。

 

「え、えっと…本当に、今日はいろんな出来事がありましたね。」

 

静寂を破ったのはヒフミだった。シロコも今日の出来事を思い出し、うんうんと頷く。

 

「そうだね、すごく楽しかった。」

 

「…楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」

 

「あ、あははは…私も楽しかったです。」

 

「いやぁー、ファウストちゃん、お世話になったね。」

 

「そ、その呼び方はやめてくださいっ!」

 

「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」

 

「次もよろしく頼むよ、ファウストさん。」

 

「皆さん…ヒフミさんが困ってるじゃないですか。」

 

ヒフミの言葉をきっかけに、いつの間にか場の空気は元の明るさを取り戻していた。ホシノも、真顔だった遊真も、今ではヒフミをからかって笑っている。子供が子供らしく笑い合い、仲間と楽しく過ごせる、そのひとときに先生も安心して一行を見守っていた。

 

「と、とにかく…これからも大変だとは思いますが、頑張ってくださいね。応援してます。」

 

「ヒフミ、今日はありがとうね。もし何かあったらいつでもシャーレを呼んでね。今日のお礼もまだだし、代わりと言っては何だけどすぐに駆け付けるよ。」

 

「ありがとうございます、先生。それでは…みなさん、またお会いしましょう。」

 

そう言って、ヒフミはトリニティへと帰っていった。一行はヒフミの背中が見えなくなるまで見送り、その後は解散とした。

 

~~~~~~~~~~

 

その日の夜、遊真はいつものようにアビドスを一人歩いていた。アビドスは人口が少ないため、不良が集まりやすく、D.U.地区以上に治安が悪い。特に夜になると活動できる人が限られるため、夜間パトロールは重要だ。

 

とはいえ、遊真自身はそこまでパトロールをやっているつもりはない。とある事情によって夜間に時間を持て余しているために、こうして街を練り歩いているだけだ。

 

お腹がすいてコンビニで夜食を買い、近くのベンチに腰を下ろしていたところ、目の前に立つ人物が二人。ホシノと先生が遊真を見つけ、話しかけてきた。

 

「うへ、ようやく見つけたよー。」

 

「こんばんは、遊真。」

 

「どうしたんだ?こんな時間に二人で、もしかしてデートか?」

 

遊真の言葉に、二人は一瞬理解できずに口をぽかんと開けたまま固まっていたが、じわじわと意味を理解したのか、顔を真っ赤にしていった。

 

「いやいやいやいや!でっデートとか、そんなんじゃないからね!?」

 

ホシノが首を全力で横に振って否定する。

 

「またまた、そんなに照れなくったっても。」

 

「だいたい、ホシノは生徒で未成年だよ!?そんなことしたら、私が犯罪者になるからね!?」

 

先生もなぜか必死に手を動かして否定している。

 

「おれのいた世界じゃホシノ先輩の歳は大人だから、特に問題ないな。」

 

『問題あるって!!!』

 

その後、二人は必死で誤解を解き、ようやく「コホン」と咳払いして話し始めた。

 

「ホシノから聞いたよ。遊真、ここに来てから毎晩ずっとパトロールしてるんだって?」

 

「別にそんなつもりはないよ。眠れないからヒマつぶしに歩いてるだけ。」

 

遊真がそう言うと、ホシノと先生は真剣な表情に変わり、彼を見つめた。

 

「遊真君、不眠症なの?」

 

「もしかして、キヴォトスに来てからずっと?明日病院にでも…。」

 

「いや?おれは普段からトリオン体だから、眠る必要がないんだ。」

 

遊真の言葉に二人は目をぱちくりとする。遊真が普段からトリオン体であったこと、そして、眠れないこと。今の遊真にとっては当たり前のことでも、何も知らなかった二人にとっては天地がひっくり返るほど衝撃的な情報だった。

 

「ね、眠れないって…眠る必要がないから眠れないってこと?」

 

「そういうこと。」

 

「し、失礼を承知で聞くけど、遊真は人間なんだよね?」

 

「もちろん。この体になったのは三年前で、それより前は生身の人間だったし、ちゃんと眠れてたよ。」

 

三年前、つまり遊真が十一歳の時。それは、彼の父親が死亡した時期と同じだった。

 

「…遊真、もし君が良かったらなんだけど…君がこの世界に来るまでのお話、聞かせてくれないかな。」

 

先生がふと問いかけた。大人びている遊真の生い立ちは以前から気になっていたが、その大人びた様子はどこか諦めたような雰囲気があり、放っておけないものを感じていた。

遊真は少し考えた後、静かに自分の過去を話し始めた。

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

遊真の過去は、想像を絶するほど壮絶なものだった。驚愕のあまり二人は一言も発することなく、黙って遊真の話を聞くことしかできなかった。

 

遊真が育った近界は、絶えず戦争に明け暮れる世界だった。わずか十一歳にして戦場に立った遊真もまた、戦争の渦中に身を置いていた。ある時、自らの驕りで父の忠告を無視して戦場に挑んだ結果、敵のトリガー使いに敗れ、致命的な重傷を負ってしまった。命の灯が消えかけ、戦場でただ死を待つばかりだった遊真を、父が助けに来た。父は自らの命と引き換えに「黒トリガー」を生み出し、遊真に新たな肉体と力を与え、塵となって命を落とした。

 

その後は黒トリガーの力を使い、講和によって戦争が終結するまで前線で戦い続けた。その後はレプリカの助言で日本へ行くことを決め、その途中でこの世界に迷い込んでしまった。

 

さらに、遊真の身体には独特の事情があった。眠れないのも、年齢の割に小柄なのも、すべてがトリオン体であるためだった。彼の肉体は十一歳の時からほとんど変化しておらず、トリオン体としての今の身体も少しずつ死に向かっている。そして、指輪に封印された本来の肉体が完全に生命を失ったとき、このトリオン体も消滅してしまうのだ。

 

遊真の過去と運命の重さを知り、ホシノと先生は深い衝撃と哀愁に包まれたまま、何も言葉を返せなかった。それでも、遊真の淡々とした語り口が、彼の過酷な生き様をより際立たせていた。

 

 

~~~~~~~~~~

 

ホテルに戻った先生は、シャワーを浴びながら遊真との会話を思い返していた。

 

『政治が絡むと、人は何処までも他人を利用しようとするんだよ、ノノミ先輩。ウソをついたり、力を見せつけたり…自分の立場や居場所を守るためなら、どんな汚いことだって厭わないのが政治の本質だ。』

 

遊真のその言葉には、ただの子供のものとは思えない妙な説得力があった。まるで、そうした汚れた世界を、身をもって経験してきた者の言葉のように響いたのだ。彼の過去を知った今では、先生の胸には確信がある。遊真はその力を大人たちに利用され、戦い続けてきた。父を亡くし、本来ならば戦う必要のない状況になっても、遊真は戦いの道を歩み続けたのだ。

 

先生が理由を尋ねたとき、遊真はただ静かに答えた。

 

『これは、おれと親父が始めたことだから。』

 

その言葉に込められた、彼の芯の強さと揺るがぬ覚悟。遊真の根底には、父からの教えと、どこまでも自己責任を貫こうとする意志があるのだろう。年齢にそぐわないほど成熟したその強さは、幼くして容赦のない世界で生きてきたこと、そして「責任」を背負ってきたからこそ培われたのかもしれない。いずれにしても、あまりにも過酷な運命だ。

 

まずは明日、遊真に休暇を与えよう。彼の肉体は疲労を感じないとはいえ、精神には休息が必要なはずだ。アビドスの問題に目処がついたら、今度は彼自身の未来に目を向け、彼が少しでも穏やかに生きられるよう支えよう。そう心に決めた先生は、思いを巡らせながら、シャワーを終えて寝床へと向かった。

 

~~~~~~~~~~

 

翌日、ホシノは険しい表情でアビドス高校を後にし、まっすぐととある場所へ向かっていた。足取りは速く、迷いも寄り道もなかった。

 

ホシノには、昨日聞いた遊真の話がずっと頭の中に残っている。彼がキヴォトスに来る前にいた国での出来事、大切な父を失いながらもその責任を果たすために戦い続けた少年の過去。遊真が抱える諦観じみた達観と、それでも歩みを止めない姿が、彼女の心を締めつけていた。

 

遊真と初めて出会った時、ホシノが彼に対して抱いた妙な恐怖心や違和感。その正体は、彼が自分と違って過酷な状況下でも責任を果たし抜いたという事実だった。遊真は父の意志を背負い、戦争を終わらせることができた。対して、ホシノはアビドスの問題をいまだ解決できずにいる。彼の強さと覚悟を思うと、自分の無力っぷりに吐き気がする。

 

そのようなことを感じ取っていたために、彼に対して過剰ともいえる疑念や敵対心を持ってしまっていたのだろうか。

 

「強いなぁ…。」

 

そう呟くと、気づけば目的地にたどり着いていた。キヴォトス某所にある高層ビル。人の気配はないが、内部は整然としており、設備も全て稼働している。ホシノはエレベーターで上階へと上がり、目的の階に到着すると、無機質な通路を進み、とある部屋の扉を開けた。

 

「おや、これはこれは。」

 

薄暗い部屋の奥で、異形の人物が佇んでいた。黒のスーツに包まれた全身黒の機械的な体。その顔にはひびが入り、そこから青白い光と黒い靄が漏れ出している。生物ともロボットともつかない、不気味な姿だった。

 

「お待ちしておりましたよ、暁のホル…いえ、ホシノさんでしたね。これは失礼。」

 

「…今度は何の用だ、黒服。」

 

ホシノは警戒心を隠さず、低い声で問いかけた。

 

「…ふふ、状況が変わりましてね。アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんに、あるご提案をしようと思いまして。」

 

「提案?ふざけるな!!それはもう…!!」

 

「まあまあ、落ち着いて聞いてください。」

 

黒服はホシノを静かに諫め、続ける。

 

「今回は、以前までの提案とは異なるもの。あなたにとっても、あなたの大切なアビドスにとっても、とても魅力的な提案ですよ。」

 

「……!?」

 

「お気に入りの映画のセリフを引用させてもらいましょう。」

 

デスクの引き出しから書類を取り出し、ホシノの前に差し出した。

 

「あなたに、決して拒めないであろう提案を一つ。」

 

低く、嘲笑混じりの笑い声が静寂な部屋に響き渡った。

 

~~~~~~~~~~

 

「……ヒマだな。」

 

先生から一日の休暇をもらった遊真だったが、何をして過ごすか思いつかず、暇を持て余していた。シロコはトレーニングで不在なため、ひとまず一人で自転車の練習をしていたが、数時間も続ければさすがに飽きてくる。さらに、今日はパトロールも禁止されており、本当にやることがなくなってしまった。

 

『遊真。これからは余った時間で勉強をしてみないか?』

 

突然、レプリカが提案してきた。

 

「勉強?戦術でも学ぶのか?」

 

『戦術ではない、一般教養だ。』

 

「イッパンキョウヨウ?」

 

『人が社会に出る上で最低限身に着けるべき知識のことだ。文字の読み書きや計算などを身に着けられれば、どこに行っても役に立つ。』

 

「ふむふむ。」

 

遊真は今まで学校に通ったことがなく、きちんと勉強をしたことがない。父親やレプリカが多少の読み書きを教えることはあったものの、現在の学習レベルは幼稚園生とどっこいどっこいである。

 

『日本もこの世界と同じくたくさんの学校があるらしい。もし元の世界に戻ることが出来たなら、日本の学校に通ってみるのもいいだろう。そのための予習を、ここにいる間に済ませておこうという話だ。』

 

「なるほど…確かに、それはアリだな。」

 

遊真はさっそくホテルへ戻って勉強に取り組もうとしたが、その時、腹の虫が鳴った。時間を気にしていなかったが、もう昼時のようだ。そこで、昼食をとるために、遊真は柴関ラーメンへ向かった。

 

~~~~~~~~~~

 

店に入ると、便利屋の四人と鉢合わせ、あわや戦闘に突入しかけた。以前アビドス高校が襲撃された際、遊真がアルを容赦なく叩きのめしたこともあり、ハルカが暴走しかけたのだ。アルとカヨコが必死に止め、店長が「ラーメンをサービスする」と提案してくれたおかげで、何とか場は収まった。

 

「はい、お待ち!ラーメン大盛り!」

 

ドンッ!!

 

「おお…!」

 

「お嬢ちゃんたちも、たくさん食べな!」

 

ドドドドン!!

 

「来た来たぁ!」

 

「ひ、一人につき一杯なんて…こんなにいいんですか?」

 

「これで仲直りしてくれるなら安いもんさ。替え玉が欲しけりゃ言いな。」

 

「ありがとうございます、大将。」

 

「それじゃあみんな、大将のご厚意に感謝して…」

 

『いただきまーす!!』

 

遊真と便利屋は一斉に手を合わせ、ラーメンを食べ始めた。アビドスに来てからわずか五日間で、すでに三度目のラーメンだが、柴関のラーメンはその美味しさで遊真を飽きさせることがなかった。

 

「うーん、やっぱりここのラーメンは最高ね!」

 

「でも、こんなに美味しいのにお客さんがいないなんて…少しもったいないね。」

 

「場所が悪いよ、この辺本当に人いないし。」

 

「まあ、美味しいからいいけど…。」

 

そんなふうに会話を交わしながら食事を終え、会計を済ませた一行が店を出たとき、遊真が口を開いた。

 

「そういえば、少し頼みたいことがあるんだ。」

 

「あら、仕事の依頼なら大歓迎よ?」

 

「あんたらとカイ──ドンッ

 

しかし、遊真が話を続けている途中、遠くから低く唸る音が風に乗って聞こえ始めた。その音は徐々に大きくなり、異様な風切り音とともに近づいてくる。

 

「伏せろ!!!」

 

遊真の叫びと同時に、四人は反射的に地面に伏せた。遊真は戦闘体に換装し、音の方向に手をかざす。

 

「『強』印プラス『盾』印七重!!」

 

ドゴゴゴゴゴゴーーーーン!!!!!

 

シールドに向かって無数の迫撃砲が直撃し、爆発音と閃光が周囲を包んだ。耳を突き刺すような爆発音と共に、強烈な爆風と衝撃波が周囲に伝播する。その衝撃は、便利屋が仕掛けていたC4爆弾にも引火し──

 

ズガガガガガガーーーーン!!!!!

 

周囲の建物が木っ端微塵に吹き飛ぶほどの巨大な爆発が発生し、遊真たちを巻き込んだ。柴関ラーメンの建物は遊真のシールドに守られ無事だったが、周囲の建物はほぼ全てが吹き飛び、黒焦げになった地面と瓦礫だけが残されていた。

 




ホシノと遊真は似た部分は一応ありますが、別にどっちがすごいとかは一切比べるつもりはありません。ただ、本作品のホシノは自己肯定感が地の底に落ちているので勝手にそう思っているだけです。

遊真に必要とされていたのは「力だけ」で、それに応えられるだけの力が遊真にはありました。そのため、遊真は責任を果たせたのだと思っています。

それに対し、アビドスの問題は力だけでは解決できません。砂嵐を筆頭に、一人が背負うには無理難題な問題が沢山あります。

最初はこんなところで遊真の過去バレをやるつもりはなかったのですが、いつも夜中にパトロールしているホシノが、遊真が四六時中活動していることに気づかないはずがないなーと思ったので、急遽ねじ込みました。

そのため、導入が結構無理やりになってしまいました。ごめんちょ
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