はぐれ近界民の青春記録   作:Gペペロンチーノ

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激闘!黒トリガーVS風紀委員長

 

ドドドドドドドッ!!!!

 

遊真は鎖を使ってその場から離脱した。それまでの消耗もあり、シールドは容易く破られてしまった。あのままシールド内に留まっていれば、間違いなく蜂の巣になっていただろう。

 

「逃げることは出来ない。」

 

遊真のワイヤー機動にヒナの射撃が追いすがる。高速機動は捉えきれないが、遊真が移動するたびに、鎖や壁が次々と破壊されていく。

 

~~~~~~~~~~

 

「レプリカ!遊真は大丈夫なのかい!?」

 

『問題ない。遊真の心配をするより、先生は今すぐに避難した方がいい。』

 

「そ、そうだけど…。」

 

二人の戦いはまさに荒れ狂う暴風雨の如し。先生たちは流れ弾や瓦礫に巻き込まれないように、ただただ地面に伏せることしかできなかった。

 

「私たちも加勢しよう。セリカとアルは狙撃で相手の隙を作って。」

 

「は、はあ!?あんなの絶対私たちが相手にしちゃいけないやつでしょ!!」

 

「そうですよ!!ゲヘナの風紀委員長と言ったら、キヴォトスでも匹敵する人物を見つけるのが難しいほどの、強者中の強者です!!」

 

「割って入ったら、速攻でお陀仏ですね☆」

 

「はは…。…そういえば、便利屋68の皆は?」

 

先生が周りを見渡すも、便利屋68のメンバーは誰一人としていない。遊真の奇襲と同時に、彼女たちは速攻で逃げ出していたのだ。

 

「い、いつの間に…?」

 

「ん、全然気づかなかった。」

 

「私たちも早く避難しましょう!これ以上ここにいると、先生に流れ弾が当たります!」

 

「さあ先生、こちらですよ~。」

 

ノノミに手を引かれ、先生は路地から退避した。

 

~~~~~~~~~~

 

「『弾』印」

 

遊真は先ほどとは比較にならない速さに加速する。ワイヤー機動の変則性に『弾』印の超加速が加わることで、黒い閃光が幾何学模様を描きながらヒナに迫る。

 

「(速い、動きが見えない。けど…)」

 

ヒナは動きを目で追えないものの、狭い場所での戦闘により勘である程度の狙いをつけられる。

 

ボッ

 

ヒナの弾丸が遊真の足を貫いた。穴からはトリオンが黒い煙となって漏れ出しているが、遊真はお構いなしに突っ込んでくる。

 

ヒナもまた、自身の弾丸が当たったと感じたが、遊真が止まらないために射撃を続けた。

 

ガチャッ

 

「『鎖』印」

 

ヒナがリロードすると同時に、遊真の手から放たれた鎖が、ヒナの銃から現れた鎖と繋がった。

 

「『強』印・二重」

 

遊真がヒナを引き寄せる。

 

「悪いけど──」

 

ヒナは引っ張られる勢いを利用して大きく跳び上がった。

 

「──“それ”はもう知ってる。」

 

ゴッ!!

 

ヒナの渾身の蹴りが遊真を吹き飛ばす。壁に激突した遊真に銃口を向けるも、たった今蹴り飛ばしたはずの遊真が眼前に迫っていた。

 

「(この一瞬で体勢を…!)」

 

遊真がヒナの銃を蹴り飛ばした。銃を落とされたヒナは遊真の足を掴み、落下と同時に地面に叩きつける。

 

そのままヌンチャクのように振り回そうとした時、遊真が『弾』印をヒナに使い、ヒナの身体を後方に吹き飛ばした。

 

ドゴッ!!

 

壁に激突したヒナは遊真を掴む手が緩んだ。遊真は拘束から脱出して後方へと飛び退き、二人の距離が離れる。

 

ダンッ

 

ヒナは地面に転がっている愛銃の元へ全力で駆け出し、遊真もそれを追いかけた。

 

ガッ/「『弾』印・六重」

 

ヒナが銃を掴むと同時に、遊真が瞬時に距離を詰めた。

 

「フッ!!」

 

ヒナは振り向きざまに回し蹴りを放った。音を置き去りにするほどの速度で突っ込んできた遊真は、そのスピードを逆に利用されて大きく吹き飛んでいく。

 

ヒナはこれまでのやり取りから遊真の戦い方を学習した。遊真はこちらの隙や油断を徹底的に狙ってくる。素早い動きで相手を攪乱させ、少しでも隙を見せた瞬間に大きな一撃を叩きこんでくる。素早さと精密さを武器に、一瞬で勝負を決められる戦法だ。

 

故にヒナはわざと銃を拾う仕草を見せ、自分から隙を作りに行った。当然、遊真はその隙を見逃さずに拾った瞬間を狙ってきた。ヒナはカウンターを決めて、そのまま遊真に追撃を行う──はずだった。

 

「くっ!?」

 

遊真は、ヒナが認識することが出来ないほどの速度で攻撃してきたのだ。さすがのヒナといえど、その衝撃に耐えきれずに大きく弾き飛ばされた。

 

ドガガガガガガ!!!!

 

建物の壁を幾つか貫通してようやく止まったヒナは、よろめきながら立ち上がる。

 

「はぁ…めんどくさい。」

 

ヒナはため息を吐きながら服の埃を払い、覚束ない足取りで戦場へと戻っていく。ここまでぶち抜いて来た建物を進み、外に出ようとした時、ヒナは足が止まった。

 

「……え。」

 

そこには、右腕がちぎれ黒い煙を上げる遊真が待ち構えていた。ヒナは思わず声が漏れ、困惑と動揺のあまりぱちぱちと何度も瞬きをする。

 

ヒナそれでも必死に思考を張り巡らせた。そして、以前チナツが作成したシャーレに関する報告書の、空閑遊真に関する情報に辿り着く。

 

「なるほど、それがトリオン体というものなのね。」

 

ヒナは鉄仮面のような無表情を保ちながらも、内心の動揺を抑えていた。報告書の情報が正しいのであれば、遊真はまだ戦える状態にある。

 

「おれはまだやれるけど、続けるか?」

 

遊真の問いにヒナは目を見開いた。そして、銃を下ろして返答した。

 

「いいえ、もうやめましょう。そっちだって、これ以上続ける気はあまりないでしょう?」

 

そう返したのは、ヒナ自身が戦いを望んでいないのもあるが、遊真も同じく続ける気がないことを感じ取ったからでもある。

 

もし遊真が最初から続ける気であれば、わざわざヒナを待つようなことはしなかっただろう。ヒナが戦場に戻るまでのどこかで不意打ちを仕掛けてきたはずだ。

 

「それじゃあ、話し合いをしようか。」

 

「ええ、そうしましょう。」

 

遊真も換装を解き、互いに歩み寄る。轟音に支配され、数々の破壊を伴ったこの戦いは、驚くほど静かに終わりを告げた。

 

~~~~~~~~~~

 

「とりあえず、今の状況についてはどれくらい把握してる?」

 

「事前通達なしでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒達との衝突。あなた達から見れば、こんなところかしらね。」

 

ヒナは淡々と事実を並べ立てる。確かに、アビドス側から見ればその通りなのだろう。だが、彼女は「けれど」と付け加えた。

 

「そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。その結果、こちらは甚大な被害を受けた。違う?」

 

今回の戦闘で、風紀委員会は大半のメンバーが負傷し、肉体的にも精神的にも復帰には時間を要する見込みだ。そのため、風紀委員会の活動はしばらく大きく制約されるだろう。防衛のためとはいえ、やりすぎたのではないか――ヒナの言葉には、そんな意図が滲んでいた。

 

「まあ、そっちからしたらそうなるな。」

 

まるで風紀委員会を擁護するかのような遊真の発言に、ヒナは驚きの目を向けた。

 

「でも、戦闘が始まったのはおれが便利屋の引き渡しを断ったから。アビドスや先生は、ただ戦いを止めるために参戦しただけだ。

 

だだし…元はと言えば、そっちが民間人のいる建物へ攻撃を仕掛けたのが悪い。運よく怪我人は出なかったけど、もしおれがあの場にいなかったら、大将は大怪我を追っていたぞ。」

 

ヒナは、その建物が現場に向かう途中で見た光景を思い返す。一帯が瓦礫の山と化す中、ただ一つだけ無傷で残された建物──不自然極まりない光景だった。

 

「そう…あの建物はあなたが…。」

 

「それに今回の作戦を指揮していた…たしか、アコさんだったか。そいつは、便利屋を口実におれたちを捕まえるつもりだったらしいぞ?」

 

ヒナもその事実は承知していた。一連の騒動の発端は風紀委員会にある。そして、遊真が言うように戦闘が始まった原因は彼自身の判断にあると認めている。

 

「つまり、あなたはアビドスにはこの戦いの責任はないと、そう言いたいの?」

 

「そうだ。」

 

「……わからない。あなたがそこまでしてアビドスを庇うのはなぜ?」

 

ヒナは呟くように問いかけた。シャーレについては詳しく知らないものの、遊真がアビドスに来てから日が浅いはずだ。なのに、彼がここまで尽力する理由が思い浮かばない。

 

「そうだな…アビドスがどういう状況にあるかは知っているか?」

 

「大雑把には。砂嵐で苦しむ中、悪徳企業に付け込まれて財政難が続いている、って話ね。」

 

遊真は静かに頷く。アビドスの現状はヒナの言った通りだ。

 

「あいつら、学校を立て直そうと無茶をするところがあってな。このままだと、いつか取り返しのつかないことになりそうで、放っておけないんだ。」

 

「……あなた、本当に十四歳?」

 

「これでも人生経験は豊富なので。」フンス

 

遊真は目をきらりと光らせ、胸を張って言った。その仕草があまりにあどけなく、ヒナは思わずクスリと笑ってしまった。

 

ヒナは思う。空閑遊真は間違いなく信用していい人間だ。戦闘力の高さもさることながら、年に見合わない成熟した価値観を持っている。そんなことを考えていると、遊真が外の方に振り返った。

 

「さ、そろそろ先生たちのところへ戻るか。皆心配してるだろうからな。」

 

「待って、一つだけ聞きたいことがある。」

 

外へ歩き始めた遊真を、ヒナは呼び止めた。

 

「過去…二年前にアビドスで起きた事件は知っているかしら。」

 

「?いや、全然。」

 

「…あなたには、教えておいた方がいいかもしれない。」

 

そう呟くと、先ほどまで柔らかだったヒナの表情がまるで霧が晴れるように消えていった。その変化で、彼女がこれから語る内容が決して軽いものではないことを遊真は察した。

 

「今から二年前、アビドスの生徒会には二人のメンバーがいた。当時三年生だった生徒会長と、一年生の生徒副会長。性格こそ正反対だったけど、二人の関係は良好だったらしいわ。

 

……だけど、生徒会長はある日突然失踪した。公的には、そう処理されたの。」

 

「公的には?」

 

「ええ、実際には違う。」

 

ヒナは一度息を吐き、言葉を慎重に選びながら続けた。

 

「その生徒会長は…亡くなったの。」

 

「……。」

 

「その生徒会長は、砂漠で衰弱死していた。そこに至るまでの詳しい経緯は分からないけど…きっと、砂嵐に巻き込まれて遭難したんだと思う。

 

遺体を発見したのは生徒副会長。生徒会長が失踪してから、およそ一ヶ月が経ってからだった。それ以来、アビドスの活動報告は途絶えた。今でも学校が残っていることが少し意外なくらいよ。」

 

「生徒副会長は今何を?」

 

「分からない。途中で情報部の調査も打ち切られたから。でも、その人のことは鮮明に覚えているわ。」

 

「そうか。どんな人なんだ?」

 

「「天才」と呼ばれた、本物のエリートよ。攻撃的な戦術を得意とした、かなり好戦的な性格で…二年前の情報部ではゲヘナにとっての潜在的脅威としてリストアップされていた。」

 

「ふむ、要するにかなり危険な人だったんだな。」

 

「ええ。そして、その生徒の名前は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

その後、二人は先生達と合流した。ヒナは他学園の自治区において無断で兵力を使用したことを謝罪し、風紀委員会を纏めて帰還していった。

 

ヒナが深々と頭を下げたことにアビドス生徒達は面を食らったものの、遊真が一連の事情を話したこともあってすんなりと受け入れた。一方で、ヒナが去る直前に伝えた情報は彼女たちに大きな引っ掛かりを残した。

 

『アビドス砂漠で、カイザーコーポレーションが何かを企んでいる。』

 

後に、この情報によってアビドスの運命が大きく動くことになるのだが…そのことを知る者は、まだ誰もいない。

 




Q.毎度毎度、戦闘短くない?
A.ゆるして

これを書いている途中で対策委員会編の三章をちょっとだけ見ました。ユメとホシノの関係、それぞれの思い、亡くなるまでの経緯、亡くなった後。キャラ付けや今後の展開を考える上で色々と参考になりました。

ヒナがアビドスの事件を話したのは、会話を通じてヒナが空閑を信頼したから。というのもありますが、まさか例の人がアビドスに残っているとは思わなかったからです。ヒナはうっかりさんですね。

・トリオン体がどういうものか知っている
先生、チナツ、ハスミ、ユウカ、スズミ
→一話でレプリカの説明を聞いた

アコ、ヒナ
→チナツの報告書から。

ホシノ
→空閑の過去を聞いた時一緒に聞いた

・トリオン体を知らない
ホシノ以外のアビドス勢
→トリガーやトリオンのことは聞いていたが、トリオン体のことまでは聞いていなかった

イオリ
→報告書をちゃんと読んでいなかった

便利屋、ヒフミ
→なんも聞いてない

こういう設定は一応別のところに書きまとめてはいるのですが、普通に頭から抜けます。
 
頭からっぽ人間が書いてるのでそこは許してちょ

最近イニシャルDにハマったので投稿遅れるかも。ユーロビートは最高
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