また、前話における一部の表現や会話を変えました。
風紀委員会との戦闘、その翌日、便利屋68の事務所にて。
「はあ…。」
「アルちゃ~ん、さっきからため息ばかりだよ?」
「はああ……。」
積み重ねられた段ボールを見て、アルは何度もため息をついている。
「え、えっと、これは何処に運べばいいでしょうか?」
「ん?これ…ああ、アルちゃんが天賦の才を発揮した書道の残骸じゃん。あっちの燃えるゴミでいいよ。」
「捨てないでよ!持っていくに決まってるじゃない!」
便利屋68は、現在引っ越しの準備を進めていた。風紀委員会に居場所がバレたうえ、任務に失敗してクライアントから追われる可能性がある。名残惜しくはあるものの、他に選択肢はなかった。
コンコン
「ひぃ!!」
そんな時、事務所の扉が叩かれる。普段であれば「仕事の依頼ね!」と、アルが飛び跳ねるものの、今の状況ではそうもいかない。
ムツキ、カヨコ、ハルカの三人は無言で銃を準備する。事務所の扉がゆっくりと開かれ、中に入ってきたのは──
「やあ、お疲れ様。」
「おじゃまいたします。」
「あ、先生と遊真!来てくれたんだね!」
二人の顔を見た途端、ムツキはぱっと明るい笑顔で迎え入れた。一方、他の三人は風紀委員会やカイザーの手先ではないことに安堵し、同時に息をついた。
「どうして来たの?アビドスのことを手伝っているんでしょう?」
「君たちのことが心配になってね。それに私はシャーレの先生だから、君たちの味方でもあるよ。」
先生はそう言って、机の上にビニール袋を置く。四人が袋を覗き込むと、中には大量のお菓子や食料が入っていた。
「こ、これは!?」
「わ、これ全部もらっていいの?」
「うん、皆で仲良く分けてね。」
「あ、ありがとうございます!」
「正直助かるんだけど…本当にいいの?」
「人の親切心は受け取っておくべきだぞ、カヨコせんぱい。」
「…そうだったね。ありがとう、二人とも。」
遊真に諫められ、カヨコも素直に礼を言ったところで、先生が話を切り出した。
「少し話がしたいんだけど、ちょっと時間を貰ってもいいかな?」
「話?」
「うん、遊真がみんなに頼みたいことがあるんだって。」
「そう。柴関ラーメンにいた時に依頼したかったんだけど、風紀委員会のじゃまが入ったからな。」
そういえば、そんな会話があったような気もする。アルはそう思い、少しの間悩んだ。
今の便利屋68は引っ越しの準備で依頼どころではない。しかし、二人には風紀委員会から守ってもらったという大きな恩義がある。受けるべきか断るべきか、アルは頭を悩ませていた。
「とりあえず、内容だけでも聞いていい?」
「もちろん。」
アルが頭を抱えていると、カヨコが口を開いた。カヨコもまた、二人には大きな借りがあることは分かっていた。
「あんたらが知っているカイザーの情報、それを全部教えて欲しい。」
やっぱりバレていた。そう思い、カヨコの目が鋭く細くなる。ちらっとアルの方を見ると、彼女は気まずそうに顔を伏せていた。カヨコが代わりに答えようとしたが、それより先にアルが口を開いた。
「ごめんなさい、その依頼は受けられないわ。」
「そうか、分かった。」
遊真は短くそう答えると、先生に「じゃあ帰るか」と促しながら、あっさりと出入り口の扉へ向かった。その素早い行動に、便利屋の四人は思わず面食らう。
「ま、待って!!」
遊真が扉に手をかけた瞬間、アルが声を張り上げた。
「あいつらについては、全く情報を持ってないの。本当に何も知らないのよ!あいつらは…ええと…。」
「私たちは、あくまで便利屋。依頼主のことを深く詮索することはポリシーとしてやらないの。」
「『お金さえもらえればなんでもやります』ってのがうちのモットーだからねー。」
「そ、そういうこと!だから…代わりにこういうのはどうかしら!」
アルは名刺を取り出し、二人に差し出した。
「もし何か困ったことがあったらいつでも連絡して?今はちょっと忙しいから難しいけど…必ずあなた達の力になるわ!」
あまりにも真っ直ぐな目でアルは言い放った。先ほども言ったが、彼女は二人に大きな恩がある。これを返すのはアウトロー以前に、人としてやらなければならないことだと彼女は強く思っていた。
「うん、その時はよろしくね。」
「頼りにしているぞ。」
「…!ええ、ええ!任せて頂戴!!」
「やった!アルちゃんナイス~!」
「わ、私も、精一杯頑張ります!」
「まあ…敵対しないなら、こっちとしても助かる。」
こうして便利屋68と二人は、協力関係を築くことに成功した。その後、二人はその足で柴大将の店へと向かった。
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「あ、先生!遊真!」
「二人とも、おはようございます。」
店の前でセリカとアヤネに出会った。
「セリカ、アヤネ、おはよう。」
「朝早くからごくろうさん。」
彼女たちも柴大将の店が気になり、訪れたのだという。一緒に店内に入ると、暗い店内で大将が黙々と床を掃いていた。
「こんにちは、大将。」
「大将、大丈夫?」
「ああ、セリカちゃんにアヤネちゃん。」
「怪我などはありませんか?」
「店、昨日に比べてだいぶきれいになったな。」
「ああ、先生にボウズまで。おかげさまで傷一つないよ。店はまあ…掃除は一通り終わったところだ。」
昨日の騒ぎで店の中はめちゃくちゃになっていたが、今では綺麗に片付けられている。しかし、爆発の影響で電気や水道、ガスなどが止まっており、営業は再開できる状況ではなかった。
「お店…再開するのはいつくらいになりそう?」
ふとセリカが心配そうに尋ねる。
「ああ、バイトできなくなっちゃってごめんな、セリカちゃん。」
「そういうことじゃないわよ…。私は大将の店が…。」
セリカは暗い店内を見回し、そのまま俯いてしまう。アビドスで数少ない活気ある店が静寂に包まれるのは、彼女にとって辛い光景だった。
「…店の再開は、無理だ。実は、この店はもうすぐ畳むつもりだったんだ。」
青天の霹靂。一同は驚きのあまり、言葉を失った。アビドスに人が少ないとはいえ、柴関ラーメンが潰れるほど経営が悪化しているとは聞いたことがない。
「え?」
「お店を…?」
「なんと…。」
「う、噓!?いったいどうして!?」
「実は、ちょっと前から退去通知を受け取っていてね。」
「た、退去通知って、なんの話ですか?アビドス自治区の建物の所有者は、アビドス高校で…。」
『いや、違う。』
アヤネが困惑しているところに、突然レプリカが割り込んだ。予期せぬ登場に大将はぎょっとする。
「うおっ!?あ、あんたはたしかボウズの…?」
『柴大将にはまだ挨拶をしていなかった。初めまして、私の名はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。』
「お、おう、初めまして。」
軽く挨拶を済ませると、レプリカが核心に触れる質問を投げかけた。
『柴大将、退去通知を出したのはカイザーコーポレーションか?』
『!?』
「うーん…そんな名前だったような気もするが…悪いな、はっきり覚えてねえや。」
セリカとアヤネは驚きを隠せない。キヴォトスは学園都市だ。土地の所有や管理は基本的に学園や連邦生徒会が行っており、ブラックマーケットなどの例外を除いて、企業が学園の自治区に介入することなどあり得ない話だった。
「……。」
「そんな…でも、そういうことなら…。」
「どういうこと!?なんでカイザーがアビドスの自治区に手を出せるの!?」
『それは後で説明しよう。私はユーマと確認したいことがある。皆は先に学校へ戻っていてくれ。』
「分かった。その間、私も少し調べ事をしているよ。」
レプリカと先生は顔を合わせて頷くと、大将に軽く会釈をして店を出ようとする。
「待ってください!私も行きます!」
「わ、私も!」
アヤネとセリカが慌てて二人を追う。店から出る直前、セリカは立ち止まって大将の方を振り返った。
「大将、まだ引退とか考えないでよ!わかった!?」
「お、おお……。」
大将が気圧されながら頷くのを確認すると、セリカも店を後にした。賑やかだった店は、一転して静寂に包まれる。
「じゃあ私も…」
「ああ、先生はちょっと待ってくれ。」
先生が立ち上がって店を出ようとしたとき、大将が呼び止めた。
「先生、このカバンについてなんだけど…。」
「それは…。」
「今朝お店の前に置かれてたんだ。何か知ってるかい?」
大将は紺色のスクールバッグを机の上に置いた。その中には、ぎっしりと札束が詰まっている。バッグを見るなり、先生は心当たりがある様子で微笑んだ。
「きっと、誰かが大将に助けられた借りを返したかったんでしょう。そのお金は、どうかお店の再建に使ってください。」
「お、おお?」
「それでは、また。大将のラーメンを食べられる日を楽しみにしています。」
そう言い残し、先生も店を後にしたアビドス高校に向かう途中、先生は歩きながらシッテムの端末を取り出し、電源を入れた。
「アロナ。カイザーがアビドス砂漠で何をしているのか、調べてもらえるかい?」
『はい!お任せください!』
端末の中から元気な返事が返ってきた。先生はそのまま歩きながら、アロナの報告を待つ。
数分後、アロナの声が弾んだ。
『先生、アビドス砂漠にレーダー反応を確認しました!規模からしてかなり巨大な建造物だと思います!』
「管理している組織はわかるかな?」
『うーん、今のところ詳細は不明です。施設がローカルで独自に管理されている可能性もありますが…。』
「それなら座標の記録をしておいてくれるかい?」
『了解です!データは保存しました!』
「ありがとうアロナ。助かるよ。」
『いえいえ、これくらいお茶の子さいさいです!』
シッテムのスクリーンに映るアロナが、得意げに胸を張る姿に、先生は思わず微笑む。そして端末の電源を切った。
~~~~~~~~~~
気づけば、先生はアビドス高校に到着していた。校庭ではノノミが溜まった砂を一生懸命掃除している。先生の姿を見つけると、彼女は明るい笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。
「先生、思ったより早かったですね☆おはようございます!」
「おはよう。ノノミの方こそ、こんな早くにどうしたの?」
「掃除をしようかと思いまして。昨日のこともあって、なんだかじっとしていられないんです。」
「そう、ノノミは本当にしっかり者だね。」
「…い、いえ!このくらい当然のことです!」
突然褒められて、ノノミの顔が少し赤く染まる。普段はおっとりした彼女だが、今はどこか慌てた様子だ。その仕草がどこか愛らしく、先生の口元には自然と微笑みが浮かんだ。
「せ、先生~?なんで笑ってるんですか~?」
「いや、ノノミは可愛いなって思って。」
不意に漏れたその一言に、ノノミは目をぱちぱちさせたあと、見る見るうちに顔が真っ赤に染まっていった。
「(あ、今のってセクハラだったかな。)」
先生が内心で冷や汗をかいていると、後方から自転車の音が近づいてきた。
「ノノミ、先生、おは……どうしたの?」
シロコが不思議そうに二人を見つめる。どこか疑わしげな視線を向けられ、ノノミは慌てて首を横にぶんぶん振った。
「な、なんでもないです!それより、シロコちゃんも早かったですね?」
「うん。…ホシノ先輩は?」
「ホシノ先輩ですか?それなら、また学校のどこかでお昼寝の最中かと…。」
「そっか。じゃあ、先に入ってるね。」
シロコは短く答えると、そのまま早足で校舎へと入っていった。その後ろ姿を見ながら、ノノミが小声で呟く。
「…気のせいですかね?シロコちゃん、何かに焦ってるような、不安そうな…。」
「何かあったのかな…。とにかく、私たちも中に入ろう。」
「はい!」
シロコの後を追うように、先生とノノミも校舎へと足を踏み入れた。
~~~~~~~~~~
二人が対策委員会の教室に向かっている途中、別の教室から大きな物音が聞こえてきた。
ガタン、ドンッと机や椅子が激しく動く音が響き、続いて、壁に何かがぶつかる鈍い音がした。
「いたた…痛いじゃ~ん、どしたのシロコちゃん。」
「…いつまでしらを切るつもり?」
教室の中では、シロコの鋭い声が怒りを抑えきれずに響いている。一方でホシノは、その怒りをさらりと躱そうとしているのか、どこか軽い調子で応じていた。怒声と飄々とした返答が交互に飛び交い、教室全体に緊張感が漂っている。
「ホシノ先輩!シロコちゃん!?どうしたんですか!?」
「二人とも何があったの?」
「ん、その…。」
先生とノノミが慌てて教室に入ると、シロコは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに視線をそらした。沈黙が流れる中、ノノミの無言の圧力に耐えかねたのか、ホシノがゆるい調子で口を開いた。
「いやぁ~それが、おじさんがお昼寝してるのがバレちゃったんだよね~。まあ、私の怠け癖なんて今に始まったことじゃないけど、最近はちょ~っと寝すぎちゃってね。それでシロコちゃんが怒っちゃってるってわけ。」
「あ、う、うん…。」
ホシノはいつも通りの調子だが、その言葉が嘘だということは明らかだった。声の裏に隠れた焦りを先生もノノミも感じ取っていた。
「ま、そんなことはいいとして…。そろそろ集まる時間だから、行こっかー。」
ホシノはあえて話題を打ち切るようにそう言うと、先に教室から出て行った。シロコも一瞬言いたげな表情を浮かべたが、結局何も言わず、その後を追う。
「……。」
「ノノミ、大丈夫?」
「はい、私は大丈夫です。…でも、二人とも、何か言いたくないことがあるみたいですね。」
ノノミは小さくため息をついた。
アビドスの全校生徒は少人数だが、その分絆はどの学園にも負けない強さを誇っている。その固い絆がこれまで多くの困難を乗り越える支えになってきた。だが今、ほんの小さな亀裂がその絆に入り込むのを見たようで、ノノミの心には重くのしかかった。
「仕方ありませんよね。誰しも言いたくない秘密の一つや二つくらい、持っている者でしょうし…。」
ノノミは無理に笑顔を作ろうとしたが、その目には不安が浮かんでいる。唇の端を引き上げる仕草がどこかぎこちなく、心の奥底を隠しきれない様子だった。
「…私たちも行こうか。そろそろみんな帰って来るかもしれない。」
「…はい、そうしましょう。」
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用事が済んだ遊真、セリカ、アヤネは慌ただしい様子で対策委員会の教室に駆け込んできた。
「みなさん、おまちどうさま。」
「先輩たち、大変!!これ見て!」
「アビドス自治区の関係書類を持ってきました!これを…」
教室に入った三人は、すぐに異様な雰囲気を感じ取った。教室内は静寂に包まれ、見えない重石が全体を押しつぶしているかのような重苦しさが漂っている。その空気にセリカとアヤネは思わず息を呑んだが、遊真は一切気にしない様子で話を始めた。
「みんなに報告がある。アヤネせんぱいは資料を、レプリカは説明をよろしく。」
『心得た。』
「は、はい!」
遊真に背中を押され、アヤネが机の上に書類を広げた。それは地籍図で、土地の所有状況や利用状況が詳細に記載されているものだった。
『結論から述べる。現在、アビドス高校はアビドス自治区の大半の土地を失っている。』
『!!??』
『砂漠に飲み込まれた旧アビドス高校本館とその周辺の土地、さらに市内の主要な建物や地域に至るまで、そのほとんどがカイザーコンストラクションの所有物になっている。』
「カイザーコンストラクション…カイザーの系列ですか…!?」
『その通り。そしてアビドス高校に残された土地は、この校舎と周辺のほんの一部だけだ。』
「柴関ラーメンもカイザーの土地になっていて、大将はお店を閉めるよう言われたらしいぞ。」
衝撃的な事実が次々と明かされる中、ホシノ、ノノミ、シロコの三人は驚愕のあまり言葉を失った。
『取引を行っていたのは旧アビドス生徒会だ。二年前に活動が停止するまで、生徒会は取引を続けていた。』
「二年前…。」
ホシノは何か思うところがあるのか、俯いて呟く。一方、セリカは怒りに震え声を荒げた。
「何をやってんのよ、その生徒会のやつらは!学校の土地を売る?それもカイザーコーポレーションなんかに!?」
『無理もない。おそらく、すべてはカイザーの罠だったのだろう。』
「え?」
「あ~…なるほど、そっか。」
「そうか、アビドスにお金を貸したのもカイザーコーポレーション…。」
『カイザーが学校に莫大な借金を負わせ、返済のために土地を手放さざるを得ない状況を作ったと見るべきだ。』
「きっと最初は、いらない砂漠や荒廃した土地でも売ったらと甘言を弄したのでしょう。どうせ砂漠と化した使い道のない土地、その提案を断る積極的な理由もなく…。」
「だけど、二束三文で売ったところで借金は減らずに、土地だけが取られる一方で…。」
「はい…そしてアビドス自治区そのものが、ゆっくりとカイザーコーポレーションのものになる。」
計画的で壮大な罠。カイザーコーポレーションの策略により、アビドスは徐々に追い詰められていた。
「たぶん、アビドスにお金を貸した時点で、こうなるように計画していた罠だったのかもね…。」
「なにそれ!?ただただカイザーコーポレーションのやつらに弄ばれてるだけじゃん!」
セリカが机を叩いて怒りを爆発させる。
「生徒会のやつ、どんだけ無能なわけ!?こんな詐欺みたいなやり方に騙されていなければ…!!」
「セリカせんぱい、そこまでだ。」
遊真が静かにセリカを制した。その視線には圧があり、セリカは渋々口を閉じる。
「結果的にわなにかけられたとはいえ、生徒会はこの学校を守るために苦しいせんたくをしたんだ。その時にできるせいいっぱいのことを、アビドスの未来のためにやったんだよ。」
遊真はホシノの方を見て続けた。
「だから、むしろかんしゃしてもいいと思う。今もアビドスが残っているのは、生徒会のおかげだ。」
突然視線を向けられたことに、ホシノは目をぱちくりさせた。
「な、なにを言ってるのかな?たしかにおじさんは昔生徒会にいたけど……。」
ホシノはどこか懐かしそうに話し始めた。
「あの時の生徒会なんて、おバカさん二人が集まっただけ。無鉄砲で、学校一の馬鹿な会長に…嫌な性格をした新入生の副会長…。あの時は、何もかもが滅茶苦茶だったよ。何の間違いだか、生徒会なんかに入っちゃって…いや~あの時はあちこちに行ったり来たりだったねぇ。」
その声には懐かしさだけでなく、後悔と哀しみも滲んでいるようにも聞こえた。
「ほんっとバカみたいに、なんにも知らないままさ…。」
俯きながら零れたその声は、かすかに震えていて、張り詰めた感情が滲み出ていた。
「ホシノ先輩…。」
セリカは自分の言葉がホシノを傷つけたことに気づき、後悔の表情を浮かべる。
「…ホシノ先輩が責任を感じることじゃない。昔の事情は知らないけど、アビドスに対策委員会が出来たのは、間違いなくホシノ先輩のおかげ。」
「う、うん…?」
「…ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる。」
「そうです。セリカちゃんが行方不明になった時、真っ先に先生に助けを求めたのもホシノ先輩でしたし…。」
「そうだったね、いつも絶対に先陣を切る。」
「私、それ初耳なんだけど!?なんで教えてくれなかったの!?」
「ホシノ先輩は色々ダメなところもあるけど、尊敬はしてる。」
「それって褒め言葉なの?悪口なの…?」
「ま、待ってシロコちゃん!おじさんこういう雰囲気はちょっと苦手なんだけど!?」
ホシノは称賛し続けるシロコを止めようとするも、その勢いは止まらない。
「だって遊真の言う通り、今のアビドスや私たちがあるのはホシノ先輩のおかげだから。」
「そうですよ!ホシノ先輩はもっと自分を認めてあげてください!」
「うんうん、偉いぞホシノ。」
皆がホシノを褒め称え、彼女の頭を撫で始めた。
「やーーめーーてーー!!」
揉みくちゃにされ、真っ赤な顔で叫ぶホシノの姿は、どこか嬉しそうだった。
~~~~~~~~~~
「学校の借金、このアビドスが陥ってる状況、そして私たちが先生と一緒に見つけ出してきた幾つかの糸口。全てが少しずつ、繋がり始めている気がします。」
「カイザーコーポレーションは生徒会がなくなってから土地を買う方法がなくなって…。」
「『最後の土地』であるこの学校を奪うために、ヘルメット団を雇っていた。」
「つまり、カイザーの狙いはお金じゃなくて土地だった、ってことだね~。」
「土地を狙う目的は分かりませんが…風紀委員長さんが言っていたことと関係があるかもしれません!」
皆の脳裏に、昨日ヒナが放った言葉がよみがえる。
『アビドス砂漠で、カイザーコーポレーションが何かを企んでいる。』
「そのことで少し話がある。」
先生はそう言って立ち上がると、シッテムの箱を取り出して画面を操作し始めた。
「ヒナの言葉が気になって、個人的に調べてみたんだけど…アビドス砂漠で妙な反応を見つけた。」
「妙な反応…。壊れたドローンや警備ロボット、オートマタの類ですか?」
アヤネの言葉に先生は首を横に振った。
「詳細は分からない。ただ、規模や反応からして、多分工場か基地みたいな施設だと思う。巨大なレーダー反応が観測されたんだ。その場所は──ここだ。」
先生が地図の一か所を指さす。その地点を見た瞬間、ホシノは目を大きく見開いた。
「ここは…!」
「知っているんですか?」
アヤネの問いに、ホシノはゆっくりと頷いた。
「ここは…本来のアビドス高校の本館。砂に埋もれて、今は廃墟になっているはずの場所だよ。」
教室内に重い沈黙が広がる。
廃墟と化した本館にカイザーコーポレーションが何をしているのか。そして、それがアビドスの運命にどう関わってくるのか。誰もがその答えを探ろうとしているように、じっと地図の一点を見つめていた
アロナがようやく喋りましたね。十何話もほったらかしにされてかわいそうですね。とはいえレプリカと役割が被るので、今後も出番はあまりないと思います。一応裏方では活躍しているはずです。
レプリカが土地のことに気づいたのは風紀委員会との戦闘後です。アコのとある発言が気になって調べていました。連邦生徒会のデータベースに侵入して、アビドスとカイザーの取引に気が付きました。
本作のレプリカ先生は先生の仕事を手伝っている都合上、原作以上に機械に強くなっています。まだヴェリタスほどのハッキング能力はありませんが、連邦生徒会にアクセスする程度ならお茶の子さいさいです。……連邦生徒会のセキュリティってそんなガバガバでいいんだっけ?
今更ですが、空閑の行動原理がだいぶアビドス寄りになってしまってますね。空閑の本来の役割は先生の護衛だと思うのですが…どうしようかな。まだ先生の危なっかしさを知らないからってことにしておきますか。
あと空閑を気遣いの鬼にしすぎたせいで先生の立場が…頑張れ先生、負けるな先生、伊達に長生きしていないってところを見せてやるんだ。ちなみに建物を探知させたのは先生の活躍を無理やり作るためです。後先は考えてません。賽をぶん投げました
ちなみに空閑のホシノに向けた言葉ですが、本人は割と複雑な気持ちで受け止めてると思います。
校庭での先生とノノミのやり取りが筆者のラブコメの限界です。これ以上はいくら頭をひねっても出てこないです。こんなんラブコメじゃねえーーーーって意見は聞きません。うわーん