はぐれ近界民の青春記録   作:Gペペロンチーノ

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誤字報告ありがとうございます。

そして、そろそろ対策委員会編も終わりが見えてきましたね。

パヴァーヌの前に幾つか幕間を挟みたいのですが、「これやってほしい!」というのがあればコメントにお願いします。新キャラとの絡みもある程度ならOKです。とりあえずエンジニア部との絡みは書く予定です。

もし意見がなければ、対策委員会との絡みを書こうと思います。



手をすり抜けたもの

記憶の中に深く刻まれている、あの時の思い出。一つ一つが、私にとって大切な宝物であり──そして、消えない罪でもある。

 

『じゃーん!ホシノちゃん見て見て―!アビドス砂祭りの昔のポスター!やっと手に入れたよー!この時はまだ、オアシスが湖みたいに広がっていたんだよねー。あ、このポスターは記念にあげる!』

 

先輩はそう言うと、少し強引にポスターを私の手に押し付けてきた。

 

『えへへ、すっごく素敵でしょー?もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって──』

 

先輩はいつも太陽のような笑顔で、夢を語っていた。

 

『奇跡なんて起きっこないですよ、先輩。そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!』

 

あの頃の私は、いつも怒っていた。自分と、自分を取り巻く環境──その全てに。

 

『は、はう…』

 

『こんな砂漠のド真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう!?夢物語もいい加減にしてください!』

 

思い出すたびに胸が締め付けられる。あの時の私は、理想だけは一丁前で、何も解決できない無力な人間だった。

 

『うえぇ、だってホシノちゃーん…ご、ごめんね?』

 

『…ッ。そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだのなんだの…。もっとしっかりしてください!あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!?もう少し、その肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!』

 

怒りに任せて、ポスターを引き裂いた。何度も、何度も、何度も、何度も──

 

そうやって怒りに任せておけば、全ての問題が解決できると信じていた。

 

~~~~~~~~~~

 

最近、とんでもない子に出会った。その子は私よりも、セリカちゃんやアヤネちゃんよりも年下で、私よりも身体が小さい男の子。

 

その子は、父親を目の前で失った。それも戦争で──十一歳という年齢で。本人曰く、父親はずっと一緒に生きてきて、自分に生きる術を教えてくれた人だったらしい。

 

十一歳なんて、まだ小学生の年齢だ。キヴォトスでは飛び級で高校に進学する子たちもいるとは聞くけれど、そういう子たちは大抵、誰かの庇護下に置かれていると思う。

 

でも、その子は違った。彼は強かった。自身も、いつ訪れるかわからない死の影を背負いながら、それでも自分と父親の責任を果たすために戦い続けた。

 

そして、やり遂げた。三年という長い時を戦い抜き、ついには勝利に導いた。

 

『今もアビドスが残っているのは、生徒会のおかげだ。』

 

『だからもう一度言う。さっきの発言は撤回しろ。それができないなら、あんたの言う『力』で、おれを黙らせてみろ』

 

『…ホシノせんぱいは、立派なリーダーだよ』

 

少し、嬉しかった。誰からも褒められなかったあの人を、あの子は褒めてくれた気がした。怒ることができない私の代わりに、怒ってくれた。無力感で潰されそうになっている私を引き上げてくれるような、そんな言葉をくれた。

 

~~~~~~~~~~

 

生まれて初めて、信頼できる大人にも出会えた。その人はちょっと情けないところがあって、力も私たちよりずっと弱いけれど、単純な力ではない強さを持っていた。

 

戦いになれば、的確な指揮で私たちを勝利に導いてくれた。セリカちゃんが誘拐された時も、シャーレの権限を使ってすぐに場所を見つけ出してくれた。…あの後、結局バレなかったのかな。

 

アビドスの問題を聞いて、『一緒に頑張る』と言ってくれた。『見捨てることなんてできない』と言ってくれた。『君たちの選択に対して責任を取る』とも言ってくれた。。

 

『ホシノ!!』

 

退部・退会届のことがバレて、私がカイザーPMCに所属する契約のことを打ち明けた時も──

 

『私が大人として、どうにかする!だから…』

 

──大人として、最後まで責任を取ろうとしてくれた。

 

でも、ごめん。これは、アビドス最後の生徒会である私の責任。あの子がそうしてきたように、私がやらなくちゃいけないことだから。

 

すぐに全部を解決することは出来ないけれど、少なくとも、この絶望的な状況を解決する手段を、私は持っている。

 

みんな怒るかもしれない。それでも、みんなにはこれ以上負担をかけたくない。勝手だけど、アビドスのことは頼んだよ。

 

先生、遊真。どうか、みんなのことをよろしくね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね、私は隠し事をしてばっかりだ。

 

実は、私に持ち掛けられた契約は、もう一つあったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

アビドスの市街地にあるホテルの一室。遊真はベッドに寝そべり、スマホをいじっていた。部屋の隅の机には学習ドリルが無造作に置かれており、途中まで解いた形跡がそのまま残っている。

 

「レプリカ」

 

遊真はスマホを操作する指を止め、ふと声を上げた。

 

「会社が丸ごとなくなったら、借金って消えるのかな?」

 

身体をひねり、腹ばいになる。スマホの画面には借金に関する検索履歴が残っていた。

 

『少し借りるぞ』

 

レプリカが口からワイヤーのようなものを伸ばし、遊真のスマホに接続した。少し経って、検索を終えたレプリカが説明を始める。

 

『どうやら、そう単純にはいかないようだ』

 

借金は法律に基づき、貸し手と借り手の間で結ばれる契約だ。仮にカイザーを潰したとしても、債権は他の会社に譲渡されるだけで、アビドスの返済義務が消えるわけではない。

 

『それに、もし実力行使に出た場合、それこそアビドス高校の信用が失われる』

 

「む……確かに」

 

『この件は先生に任せるべきだ。これまでの状況を連邦生徒会に直接訴えれば、解決の糸口が見えるかもしれない』

 

「まあ、それはそうなんだけど……」

 

遊真の頭に、基地から校舎に戻った後の光景が浮かぶ。借金をめぐる会議は混乱を極め、どんな手段を使ってでも返済しようとするシロコとセリカ、それを止めようとするノノミとアヤネの意見が激しくぶつかり合っていた。結局、結論は出せず、議論は先送りになった。

 

最終的には先生とホシノが場を収め、翌日に持ち越すことで場は収束したが──

 

『うへ~。そういうことで、解散解散~。一回頭を冷やして、また明日集まることにしようよ。これは委員長命令ってことで』

 

──場を締めくくったホシノの言葉には、僅かながらウソがあった。

 

『ユーマ』

 

ふいに、レプリカが尋ねる。

 

『ここでの生活は楽しいか?』

 

「そうだな。戦争してるわけじゃないし、強い人たちがたくさんいるのもいい」

 

対策委員会や便利屋、風紀委員会──キヴォトスには相当な実力を持った人々が多く存在している。他の地域にも、まだ見ぬ強者たちがたくさんいるのだろう。

 

「だけど、いつまでもここにいる気はないよ」

 

元々の遊真の目的は、父の故郷へ行くこと。どれだけここでの生活が楽しくても、その意思が揺らぐことはない。

 

「それとも、ここにいた方がいいと思うか?」

 

遊真は、レプリカがどう答えるかを承知の上で問いかける。

 

『……いや、それを決めるのは私ではない。ユーマ自身だ』

 

その後、遊真は机に向かい、夜が明けるまで勉強を続けた。

 

~~~~~~~~~~

 

アビドス対策委員会のみんなへ

 

まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をすることになったこと、許してほしい。おじさんにはこういう、古いやり方が性に合っててさ。

 

みんなには、ずっと話してなかったことがあって。実は私、ずっと昔からスカウトを受けていたんだ。カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする……そういう話でね。

 

……うへ、中々良い条件だと思わない?おじさんこう見えて、実は結構能力を買われててさ~。

 

借金のことは、私がどうにかする。すぐに全部を解決はできないけど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う。

 

ブラックマーケットでは急に生意気なことを言っちゃったけど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。

 

これで対策委員会も、少しは楽になるはず。アビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになったけど、私のことは気にしないで。

 

勝手なことをしてごめんね。でもこれは全部、私が責任を取るべきこと。

私は、アビドス最後の生徒会長だから。

 

だから、ここでお別れ。じゃあね。

 

~~~~~~~~~~

 

先生へ

 

実は私、大人が嫌いだった。あんまり信じてなかった。

 

遊真君が先生を担いできたあの時だって、「なんかダメな大人が来たな」って思ったくらいだし?

 

でも、先生みたいな大人と最後に出会えて、私は…いや、照れ臭い言葉はもういいよね。

 

我がままを言って悪いんだけど、お願い。シロコちゃんは良い子だけど、横で誰かが支えていないと、どうなっちゃうか分からない子で。

 

悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげてほしい。

先生なら、きっと大丈夫だと思うから。

 

遊真君へ

 

ごめんね。遊真君のことも、最初はすごい警戒してた。

 

私よりも小さいのに、底のしれない強さを持っていて。セリカちゃんやアヤネちゃんよりも年下で、ちゃんと子供っぽいところもあるのに、どこか私たちよりずっと先を見ているようで。

 

正直、最初は怖かったんだ。君がどこまでできるのか、その力がどこに向くのかが、全然想像できなくて。

 

でも、君は本当に優しい人だった。どこまで知ってるのかは分からないけど、私たちのことを認めてくれて、ちょっと嬉しかったよ。

 

それから、私の代わりにあの理事に怒ってくれてありがとう。遊真君が怒ってくれなかったら、私はどうなってたか分からなかった。本当に感謝してる。

 

最後に、黒服ってやつが君のことを狙ってるみたい。遊真君なら大丈夫だと思うけど……どうか気を付けてね。

 

シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん。

お願い、私たちの学校を守ってほしい。

 

砂だらけのこんな場所だけど……私に残された、唯一意味のある場所だから。

 

それから、もしこの先どこかで万が一、敵として相対することになったら……

 

その時は、私のヘイローを「壊して」。

 

よろしくね。

 

~~~~~~~~~~

 

「ホシノ先輩っっっ!!!!」

 

教室にセリカの叫び声が大きく響いた。

 

「何なの!?あれだけ偉そうに話しておいて!!こんなの、受け入れられるわけないじゃない!!」

 

「……助けないと。私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で……」

 

「いったん落ち着け、シロコせんぱい」

 

銃とバッグを手に飛び出そうとするシロコを、遊真が冷静に宥めた。

 

『ユーマの言う通りだ。まずは状況を整理しよう。ホシノの言う契約には、どうしても腑に落ちない点がある』

 

「腑に落ちない?それってどういうこと?」

 

『ホシノは、自分の身をカイザーに預けることで、借金の大半を帳消しにする契約を交わした』

 

対策委員会と先生は深刻な顔をして頷く。

 

『だが、そもそもその契約自体が妙だ。借金の大半を帳消しにしてまで、ホシノの身柄を要求する理由が分からない。』

 

レプリカはそのまま続ける。

 

『カイザーの真の狙いは、学校に残された最後の土地だ。それなら、借金を減らすことで目的から遠ざかるはずだが…』

 

「た、確かに。その通りですね…」

 

『つまり、この契約には別の意図が隠されている可能性が高い。カイザーは何か他の目的を持っているのではないだろうか』

 

「『他の目的』……?」

 

先生が呟いた、その瞬間だった。

 

ドカアァァァァン!!!

 

轟音と共に地響きで教室が大きく揺れる。

 

「うわあっ!?」

 

「爆発音……!?」

 

「近いな。アヤネせんぱい、場所は?」

 

「い、今確認します!」

 

アヤネは慌ててタブレットを操作し、映像を確認する。

 

「こちらに向かって、数百近いPMCの兵力が進行中!同時に、市街地に無差別攻撃をしかけています!」

 

「カイザーPMC!?なんでこのタイミングで…!?」

 

「お、応戦しないとです!!何はともあれ、アビドスが攻撃されているのを見過ごすわけには…!」

 

「考えてる時間が惜しい、すぐに行こう!」

 

ガシャーーン!!

 

皆が銃を用意している間に、破壊音が響いた。音の方向から、校舎の入り口が破壊されたことが分かる。

 

「アビドス高校周辺に、カイザーPMCの兵を多数確認!校舎内にもどんどん侵入されています!!」

 

アヤネが叫ぶと、廊下から大量の足音が迫ってくる。

 

「みんな!!まずは学校を守ることを優先させるよ!!」

 

先生が力強く指示を出すと、真っ先に遊真に目を向けた。

 

「遊真は正門に行ってくれ!!敵の侵入を防ぐんだ!!」

 

「了解」

 

遊真は短く答えると、窓を開けて飛び出していった。

 

「皆は学校に侵入した敵の排除を!!時間がないから急いで行くよ!!」

 

『了解!!!』

 

PMC兵を迎え撃つため、全員が校舎内を駆け出していく。その中で、アヤネの思考は止まらなかった。

 

「(契約…カイザー…土地…)」

 

レプリカの言葉が、アヤネの頭の中でこだまする。

 

『この契約には別の意図が隠されている可能性が高い。カイザーは何か他の目的を持っているのではないだろうか』

 

「(ホシノ先輩はアビドス最後の生徒会…そして、対策委員会は──)」

 

アヤネは走りながら思考を巡らせ、やがてひとつの結論に至った。

 

「(カイザーが攻撃してきたのは……今のアビドス高等学校が──!!)」

 

~~~~~~~~~~

 

ダダダダダダッ!!

 

校庭ではカイザーPMCと遊真の激しい戦闘が繰り広げられていた。PMC兵たちは絶え間ない一斉射撃を浴びせ続けるが、遊真は左右に素早く動きながら弾丸を避け、少しずつ距離を詰めていく。

 

「クソッ!!!ちょこまかとっ!!」

 

痺れを切らしたオートマタ兵士がロケットランチャーを構え、発射した。

 

「『盾』印」

 

弾頭が遊真の展開したバリアに直撃し、爆発が発生する。黒煙と砂煙が周囲を包み込み、遊真の姿が見えなくなる。

 

「しまっ…」

 

「構うな!!弾を集中させろ!!」

 

煙幕の中に向けて、PMC兵たちは一斉に弾丸を撃ち込む。しかし──

 

「『強』印──」

 

その声が聞こえた次の瞬間、遊真は既にPMC兵たちの背後に回り込んでいた。

 

「──三重」

 

~~~~~~~~~~

 

カイザーPMCの兵士たちは、武器や人数こそそれなりだが、一人一人の練度は低い。

遊真の素早い動きに全く対応できず、連携も乱れていた。

 

オートマタ兵士の残骸や、雇われた兵士たちが次々と地面に沈んでいく。倒れた兵士の山が校庭にできるほどだ。

 

「おい!!アレを投入しろ!!」

 

ドドドドドドド──

 

地響きのような音と共に、正門から巨大な戦車が侵入してきた。その威圧感に、PMC兵たちの士気が一瞬上がる。

 

ドンッ!!!

 

戦車の砲塔が遊真に向けられ、砲撃が放たれる。

 

「『弾』印」

 

遊真は砲弾の動きを見極めると、その場で跳び上がり、身をひねって弾道を避ける。そして空中で姿勢を整えると、戦車の砲塔に着地した。

 

そのま砲身を掴み、へし折った。次にハッチを力任せにこじ開け、内部へと侵入した。

 

ガッシャーーーーン!!!

 

戦車の中から激しい破壊音が響き渡る。数秒後、中から遊真が悠然と姿を現した。

 

「『強』印・五重」

 

戦車の砲塔から軽々と飛び降りると、体重を乗せたキックを炸裂させた。

その一撃で、戦車はPMC兵たちをボウリングのピンのようになぎ倒し、転がりながら正門を塞ぐ形で止まった。

 




ホシノの独白を入れたせいで長くなっちゃったZE☆ぶっちゃけ手紙だけで良かった。内容ほぼ同じだし

物語を進めるために空閑やレプリカには退学届の件を一切関わらせませんでした。自分はアホなので、それ以外でなんかいい感じの展開を思いつけませんでした。

いやー小説を書くのも投稿するのも初めてなのですが、本当に難しいんですね。キャラクターは自分自身ではないので、自己投影をさせないようにそのキャラクターを動かすのがどぎついです。その辺先生は割と適当に動かしてるので少し楽ですが。

今でも良いとは言えませんが、その辺の勝手がわからなかった初期とかとても見れたモノじゃないですからね。特に最初の五話くらいまでは丸々書き直したいです。

といっても、一から全部書き直すことは絶対にしない(つもり)です。めんどくさいですし、そんなことしてたら展開に納得がいかなくなるたびに書き換えるのかぁー?ってなりますし。

まあ、そういったことでご意見などがあればどんどん言ってください。全部の意見に応えることは出来ませんが、自分のできる限りで改善しようと思います。

久しぶりに戦闘ができてよかったです。
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