はぐれ近界民の青春記録   作:Gペペロンチーノ

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ただ一つの場所

校舎内に侵入したPMC兵士たちをすべて排除した一行は、市街地を目指して急いでいた。

 

「アロナ、お願いをしてもいいかな?」

 

『はい!なんでもお任せください!』

 

移動の途中、先生はシステムの箱に宿るOS──アロナに語りかけた。

 

「今から、ある人たちに連絡をかけてほしいんだ」

 

~~~~~~~~~~

 

「ひ、ひどい…」

 

セリカが思わず声を漏らす。その惨状に言葉を失うのも無理はなかった。街は至るところで破壊され、逃げ遅れた市民があちこちに倒れている。アヤネと先生は負傷した市民を一人ひとり救助して回り、それ以外のメンバーはPMC兵士たちとの戦闘に忙殺されていた。

 

『数の差が大きすぎる。街を破壊している連中は無視して、こちらに攻撃を仕掛けてくる敵兵のみを叩け』

 

「でも、それだと街が…!」

 

「おれたちが倒れたら、どのみちアビドスは終わる。敵がまだ油断している今の内に、確実に敵戦力を削ったほうがいい」

 

二人の言葉に、シロコが苦虫を嚙み潰したような顔で頷いた。

 

~~~~~~~~~~

 

部隊の仲間を失い、一人になったオートマタ兵士が遊真に向けて銃を乱射する。

 

ダダダダッ!!

 

しかし、半ば混乱した思考回路では、遊真を捉えきれるはずもない。

 

「速──」

 

遊真は軽々と飛び上がり、シールドを構えるオートマタ兵士の首筋に両手を絡める。そのままオートマタ兵士の首を中心に二回転した。二回転である。

 

「アバーッ!?」

 

鈍い金属音と共に、制御不能に陥った巨体が崩れ落ち、薬莢の転がる冷たい地面に力なく倒れた。遊真は振り返ることなく次の敵に向かって駆け出していく。

 

「うわあ…」

 

「ん、まるでニンジャ」

 

「さっきから、どうして遊真君は能力を使わないんですか?」

 

PMC兵士を片付けながら、ノノミが小さなレプリカに尋ねる。

 

『印──特に、『強』印を使えば、戦闘がどうしても派手になる。敵がこちらを警戒するのが早まるからだ』

 

「なるほど、できるだけ敵を油断させ続けるために、あえて静かに戦っているんだね」

 

『その通りだ。それと、住民の避難がそろそろ完了する。敵もこちらの動きに気づく頃だ。これからは一層気を引き締めろ』

 

『了解!』

 

~~~~~~~~~~

 

一行は着実に敵の数を減らしている。しかし、数百を超える軍勢に加え、戦車やヘリまで投入しているカイザーPMCは、絶え間なく増援を送り込んでくる。

 

『増援、多数確認!!』

 

アヤネの報告と同時に、遠方からPMC兵士の大軍が姿を現す。堂々と進軍するオートマタ達の装備や武器は、これまでの敵とは一線を画していた。その様子から、PMC内でも屈指の精鋭部隊であることが一目でわかる。

 

『敵増援の中に、カイザー理事の反応を確認しました!!』

 

『!!』

 

「ふむ。学校まで出向こうと思ったのだが、お出迎えとは感心だ」

 

低く響く声と共に、大量の私兵を従えたカイザーPMCの理事が現れた。周囲には倒れたPMC兵士が散乱しているが、理事はそれらをまるで意に介さず、遊真たち対策委員会のメンバーを見据える。

 

「これは何の真似ですか?企業が街を攻撃するなんて……いくらあなた達が土地の所有者だとしても、そんな権利はないはずです!」

 

「スカウトなんて、最初からウソだったってこと?……いや、それよりもホシノ先輩はどこ?」

 

「この悪党め……ホシノ先輩を返して!」

 

「……くくくっ、何を言ってるのやら。」

 

三人の剣幕にも関わらず、理事は嘲笑で応じた。

 

「連邦生徒会に通報だと?面白いことを言うじゃないか、今すぐにでもやってみたらどうだ?君たちはこの状況について、今まで何度も連邦生徒会に嘆願してきたのだろう?それで、一度でも動いてくれたことがあったか?」

 

一瞬の静寂。誰も答えられない。

 

「無かったはずだ。なんせ連邦生徒会は今、動けないからな。連邦生徒会でなくても良い。今までどこかほかの学園が、君たちのことを助けてくれたことはあったか?……そろそろ分かっただろう?誰一人、君たちに手差し伸べる者はいない」

 

理事の言葉は冷酷だったが、事実だった。アビドスには、これまで誰も手を差し伸べなかった。シャーレが支援要請を受理するまで、誰にも頼ることができなかったのだ。

 

『……これまで、全部計画通りだったということですか?』

 

アヤネが静かに問う。ホログラムの彼女に視線が集まる中、アヤネは続けた。

 

『対策委員会は正式な認可を受けていない非公式の部活。ホシノ先輩がいなくなったら、アビドス高等学校には正式な認可を持った部活がなくなる……』

 

他のアビドス生徒たちは驚愕のあまり、言葉を失っていた。

 

「そうだ、所詮は非公認の委員会。アビドス高等学校の存在を示すものは何もない。公的な部活も、委員会も、生徒会も、自治区すらも持たないアビドスは、学園都市の学校として自立・存続が不可能だと判断した」

 

一方で理事は、笑いを抑えるように肩を震わせながら続ける。

 

「ならば仕方ないな、この自治区の主人である我がカイザーコーポレーションが、あの学校を引き受けるとしよう。そうだな、新しい学校の名前は「カイザー職業訓練学校」にでもしようか」

 

~~~~~~~~~~

 

「な、何で……何をしてる!?」

 

とある施設の中、モニターの映像を見てホシノは黒服に詰め寄る。

 

「どうして、どうしてアビドスを、街を攻撃するんだ!!」

 

モニターには、建物が破壊され、あちこちで黒煙が立ち昇るアビドスの街の惨状が映し出されている。

 

「どうしてと言われましても……これはあなたが引き起こしたことですよ?ホシノさん」

 

「なっ、何を──」

 

「契約通り、借金の大半はきちんと返済させていただきます。しかし、あなたが退学したことで、アビドス高等学校には公的な部活が存在しなくなってしまいました」

 

ホシノの目が大きく見開かれる。

 

「そもそも、私はカイザーの所属ではありません。あんなくだらない企業の計画など、私にとっては単なる余興にすぎません」

 

「ッ!?」

 

「私の目的は最初からあなたでした。あなたに契約書へサインしてもらい、あなたに関するすべての権利をいただくこと。その目的のために利害関係が一致したので、カイザーコーポレーションに協力していただけです」

 

黒服の言葉に、ホシノは一歩、また一歩と後退する。しかし、男はその間合いを詰め、ついにホシノの目の前で立ち止まる。

 

「勿論、カイザーの傭兵になどさせません。せっかくキヴォトス最高の神秘を手に入れたというのに、そのような形で消耗させることなど勿体ない。あなたを実験体として研究し、分析し、理解する。この興味深い実験こそが、私たちが観測を渇望していたもの」

 

ホシノの顔から血の気が引き、絶望に染まっていく。PMC職員に腕を拘束され、引きずられるようにして連れていかれる直前、黒服は静かに続けた。

 

「あなたに残されていた道は二つ。自分の身を私たちに捧げるか、あの少年を差し出すか。後者を選んでいれば、少なくともこのような結末にはならなかったでしょう」

 

~~~~~~~~~~

 

ここは実験室だろうか。薄暗い部屋の中、視界に映るものはどれも無機質で冷たい。壁も床も器具も、まるで監獄のようだ。拘束されている感覚はないが、手は後ろに回ったまま動かない。

 

「………そっか、私は……。……また、大人に騙されたんだ」

 

静寂が支配する部屋の中、ホシノはぽつりと呟いた。その声は、ただ虚空に溶けるだけ。

 

「……ごめん、みんな。私のせいで、全部……」

 

振り返ることも、償うこともできない。後悔の念は胸の中を埋め尽くしていくが、彼女の言葉を聞く者は誰もいない。

 

「シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん……」

 

震える声で名前を一つ一つ口にする。彼女の中に浮かぶのは、これまで共に過ごしてきた仲間たちの顔。

 

「……ユメ先輩……」

 

その名前を呼ぶとき、声がほんの少し詰まった。

 

「……ごめん……私は……」

 

彼女の目から涙が一筋流れる。

 

「……遊真君……先生……」

 

~~~~~~~~~~

 

絶望に打ちひしがれるアビドス生徒たちをよそに、理事は語り始めた。

 

「……確か、君たちは私たちがアビドス砂漠で何をしていたのかを知りたがっていたな?」

 

彼はわざとゆっくりとした口調で話を続ける。

 

「この際だ、教えてやろう。私たちはアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探しているのだ」

 

『……!!』

 

「君たち程度、力を使わずとも制圧できる。あれほどの兵力を用意したのは、宝探しを妨害された時のためのものだ。だが──」

 

理事がゆっくりと右手を上げ、親指と中指を合わせて鳴らす。

 

カチンッ

 

空気を切り裂くような鋭い音が響いた。次の瞬間、上空から巨大な金属の塊が降り注ぐ。。

 

ドオオォォォン!!!

 

激しい衝撃が土煙を巻き上げる。やがて煙が晴れると、そこには二機の巨大なゴリアテが立ちはだかっていた。

 

「貴様には、さんざん生意気な口を叩かれたからな」

 

理事は冷たく遊真を一瞥し、憎しみを込めた声で続ける。。

 

「数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち、数百トンもの火薬に弾薬……それら全てを、貴様らにぶつけてやろう」

 

ゴリアテがキャノン砲を発射すると同時に、PMC兵士たちが一斉に射撃を開始する。

 

「『弾』印」

 

遊真が跳び上がり、弾幕をかいくぐる。しかし、オートマタたちの射撃精度は異常に高かった。目にも止まらぬ速さで三次元的に移動を続ける遊真の軌道を、まるで予測しているかのように弾丸が追いすがる。

 

「ハッハッハッハ!!どうした、その程度か!?」

 

「ちっ……」

 

理事の高笑いが響く中、遊真は『盾』印を展開し、なんとか物陰に退避する。しかし、その間にシロコが援護しようと顔を覗かせた瞬間──

 

バチッ!!

 

「ッ!!」

 

銃撃が彼女を直撃した。幸い大きなダメージはなかったが、衝撃で地面に崩れ落ちる。

 

「シロコちゃん!!」

 

「大丈夫。それより、どうにかしないと……」

 

一方、先生は指示を出そうにも出せなかった。ただ戦況を見つめるだけ。状況はまさに将棋やチェスで言う「詰み」。反撃どころか、逃走すらままならない。

 

だが、その目は決して諦めていない。その手は常に胸ポケットの中に潜む何かをしっかりと掴んでいた。

 

『……これ以上戦って、何かが変わるんでしょうか……』

 

不意に、アヤネが呟く。その声はかすれ、諦めがにじみ出ていた。

 

『今も、すごい数の兵力がこちらに向かって来ています……。たとえ、戦って勝てたとしても……その後はどうすれば……』

 

彼女の言葉に、仲間たちの士気がみるみる低下していく

 

『学校がなくなったら、もう戦う意味がありません。学校をどうにか取り戻せたとしても、私たちにはまだ、大きな借金が残ったまま……』

 

「アヤネちゃん……」

 

「アヤネ……」

 

ノノミはガトリングを構える手を止めてしまった。

 

『取引された土地だって戻ってきません。何より、ホシノ先輩もいない、生徒会もない、こんな状態で……私たちみたいな非公認の委員会なんかに、これ以上、一体何が……』

 

アヤネの目には涙が浮かび、震える声が続く。

 

『どうして、どうして私たちだけ、こんな……ホシノ先輩……私たち、どうすれば……』

 

セリカも銃を構えたまま俯いてしまい、何も言葉を発せない。シロコもまた、状況を打開する策が思い浮かばず、口を閉ざしたままだった。

 

その時である。

 

ドカアァァァァン!!

 

遠くから爆発音が轟く。耳をつんざくような音に、アビドスの生徒たちは驚きとともに顔を上げた。

 

「き、北の方で大きな爆発を確認!」

 

「何!?」

 

「合流予定のブラボー小隊が巻き込まれて──!!」

 

ドカアァァァァン!!

 

再び響く爆発音。地面が激しく揺れ、その威力の大きさが伝わってくる。

 

「東の方でも確認!合流予定だったマイク小隊も、大量のC4の爆発で……!」

 

「何が起きている!?アビドスの連中は、ここにいるので全員のはず……!!」

 

次々と飛び込む通信に、理事やPMC兵士たちは動揺を隠せない。その時、不意に響く足音。

 

コツン、コツン

 

規則的な靴音が近づいてくる

 

「全く……大人しく聞いていれば、何を泣き言ばかり言ってるのかしら……。」

 

冷ややかな声が響き、一人の女性が姿を現した。その背後から、さらに三人の影が続く

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く……」

 

その人物──アルが厳しい眼差しを向け、鋭く口を開いた。

 

「それが、あなた達覆面水着団のモットーじゃなかったの?」

 

『あ、あなたは……!?』

 

『アル!!』

 

「先生、待たせたわね」

 

便利屋68──アルたちが現れた。アルはホログラムの先生に微笑みかけると、振り返ってアビドス生徒たちに鋭い視線を向ける。

 

「何をすればいいのか分からない、どうすればいいのかも分からない。やる事なす事、全部失敗に終わる……。ここを潜り抜けたところで、この先にも逆境と苦難しかない……」

 

アルは深く息を吸い込み、叫ぶ。

 

「だから何なのよっっっ!!!」

 

『え、えっ……?』

 

「仲間が危機に瀕しているんでしょう!?それなのに、くだらないことばっかり考えて、このまま全部奪われて、それで納得できるわけ!?あなた達は、そんな情けない集団だったの!?」

 

アルの剣幕に、生徒たちは思わず息を呑む。

 

「いやいや、アルちゃんその辺で勘弁してあげなよ。メガネっ子ちゃんは繊細なんだから、こういう時もあるって」

 

突如割り込むムツキが、笑顔を浮かべながら続けた。

 

「あはっ。それにしても、私の可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かした罪は重いよ?だからもうこれは……」

 

「ぶっ殺すしかないよねっ!!!」

 

くわっと目を開き、ムツキが叫ぶ。

 

「ふふっ、ふふふふふ……準備はできています、アル様。仕込んだ爆弾もまだまだたくさんありますので……」

 

「埋めておいた爆弾で、敵の増援を遮断。その間に敵の指揮官を無力化させて、指揮体系を崩壊させる。これで相手集団を一気に瓦解させる……本来なら、風紀委員会相手に使うはずの戦術だったけど。ま、予行演習ってことにしておこうか」

 

アルが振り返り、冷静に言い放つ。

 

「目を開けなさい。腑抜けた状態のあなた達に今から、真のアウトローの戦い方を見せてあげるわ……ハルカ?」

 

「はいっ!」ポチ

 

ドカアァァァァン!!

 

ドドドドドドドドォォン!!

 

ドカアアアァァァァァァァァン!!

 

仕掛けられていたC4爆弾が一斉に起動。巨大な連鎖爆発がPMC兵士たちを次々に巻き込む。

 

『うわぁっ!?』

 

『ちょ、ちょっとやりすぎじゃ……?』

 

「細かいことは気にしないの!今こそ協業の時よ!合わせられるわよね!先生、遊真!!」

 

「オーケー、いつでも行ける」

 

「そこの腰抜けたちに、今こそ真のハードボイルドの力を見せつけてやるわ!」

 

『……よし、やろう!』

 

先生の言葉が響き渡ると、対策委員会のメンバーたちの士気がみるみる高まる。失われかけていた闘志が蘇り、全員が戦闘態勢に入った。

 

アビドスを──ただ一つの、みんなの場所を守るために。

 





カイザーは空気を読んで大人しくしてくれました。優しいね

ホシノが拘束されてるときの描写はほとんどAI君が考えたものです。筆者はそこまで深く掘り下げたナレーションを書かなかったのですが、なんかAI君にすごい修正されました。鬼畜かな?私はAIの修正を丸々適応させることはあまりしないのですが、今回はAI君の熱量に押されて全部その通りにしました。

ほんとはアビドスの攻防戦は一話程度で終わるかなーと思っていますた。気づけば長くなっちゃった。次回はたぶんすぐ終わります

首を捩じ切られた哀れなオートマタ兵士くんですが、多分生きてると思います。ほら、ロボットって首だけになっても生きてること多いですし、無問題です、いいね?

オートマタ兵士のなんかすごいロックオン機能ですが、当然カイザーの技術ではありません。黒服からもらったやつだと思います。通称「未来ミエール」。通常の三倍の性能を持っててバリバリ捕捉します。

こんなものを出した理由は便利屋を登場させる意味を持たせるためです。どっかのだれかが風紀委員会を正面から叩き潰したせいで、原作通りの戦力だとなんか普通に返り討ちにできそうじゃね?と思ったからです。この脚本を書いたのは誰だあっ!!
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