それがちょうど今回のお話です。早いところ対策委員会編に入りたかったのですが、構想を練っているうちにどんどんズレてしまいました。
割とキャラ崩壊が激しいので、見る際は注意してください。
遊真がキヴォトスに迷い込んでから、およそ一週間が経過した。幸い(?)な事に、銃撃戦や強盗など、暴力沙汰が無い日などない。と言っていいほど治安の悪いキヴォトスにおいて、彼が仕事に困ることはない。
「ご協力、ありがとうございました!」
「よし、任務完了だな。」
今日も今日とていつも通りに暴徒を制圧してはヴァルキューレに引き渡す。
「(この世界に来てからは自由な時間よりも戦っている時間の方が多いな。)」
手錠に繋がれて連行される不良をぼんやりと見ながら遊真は思った。そこへ「コツ、コツ」と小気味良い音を立てて近づく者が一人。
「本日もお疲れ様です、空閑遊真殿。」
「おお、お疲れ様です、尾刃カンナ殿。」
ピシッと姿勢よく敬礼するカンナに対し、遊真は若干おちゃらけた様子の敬礼を返した。
「そんなかしこまらなくても、カンナ先輩の方が年上なんだし。」
「ですが…。…はい、わかりました。」
遊真に促され、カンナはピンと張っていた背筋を少し緩め、楽な姿勢を取った。遊真はそれを見て腕を組みながらうんうんと頷いている。
「…それにしても、休憩はちゃんと取られていますか?ここ2~3日は特に、四六時中あなたのお世話になっている気がするのですが。」
遊真は食事以外の時間を殆どパトロールに費やしている。…正確には暇だから散歩しているだけなのだが、外を歩いているだけで勝手に事件に巻き込まれるのだ。
こうなってしまったのは連邦生徒会長の失踪が原因だ。彼女の失踪によってキヴォトス中の犯罪件数が増えているのだが、特に連邦生徒会長の影響を強く受けていたこの地域──D.U.地区は、他の地域と比べても犯罪件数の増加率が異常に高くなっている。
「大丈夫だよ、ちゃんと休んでるから。それに休めてないのはカンナ先輩の方じゃないか?」
遊真はそう言って目の下の隈を見る。一方カンナは、遊真の赤い瞳がじっと自分の目を見ているように見えてしまい、思わず顔を背けた。
「わ、私は──」
ヴーーッ ヴーーッ
突如、遊真のポケットからスマホの着信音が響いた。おもむろにスマホを取り出し画面を見た後、顔を上げてカンナに視線を戻した。
「悪いなカンナ先輩。先生からの帰還命令だ。」
「…お気になさらず。私もそろそろ業務に戻らなければならないので。」
「ああ、じゃあまた今度な。」
遊真が手を振って建物の外に出て行った。遊真がいなくなったのを確認したカンナはパタパタと熱くなった顔を手で扇ぐ。
「(あの子は…本当に何者なのだろうか…。)」
はじめて遊真と出会った時のことを思い出す。
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ガシャーン!!!
派手な衝撃音が人通りの多いビル街で鳴り響いた。トラックに跳ね飛ばされた子どもが宙に投げ出され、コンクリートの地面を勢いよく転がっていく。最初は轢かれた子を心配そうに通行人が声を掛けていたが、その子が生徒ではないただの人間であることに気づき、その騒ぎがみるみるうちに大きくなっていった。
「ヴァルキューレだ!いったい何があった!?」
そこへ駆けつけたのがカンナだった。偶然近くを通りかかった際、道路の一か所で何かを囲うように多くの人が集まっていて、物々しい雰囲気だったのだ。事情を聞こうとするも、カンナの威圧感に圧倒されて誰も口を開かない。埒が明かないと判断して群衆を押しのけると、そこには一人の子供がうつぶせで倒れていた。
「おい、しっかりしろ!大丈夫か!」
「ハイ、だいじょうぶです。」
むくりと子供が起き上がった。「大丈夫ですよ」と言わんばかりに手を振っているこの子はヘイローがない上に男の子だった。状況からして恐らくトラックにひかれたにもかかわらず一切負傷をしていないことにカンナは驚くも、少年を見てある情報を思い出す。最近キヴォトスの外から男性の大人と子供がやってきて「シャーレ」という部活で活動している、という情報だ。
「…お前が空閑遊真だな。とりあえず、書類を作るからいくつか質問に答えてもらうぞ。」
名前や住所、所属している機関、当時の状況など簡単な質問をいくつか行った。
「おい…あの警官、子供に対してなんて態度だよ…。」
「あんな小さい子になんであんな威圧的なの…?」
群衆の声がカンナの耳に入って来る。そこでようやく自分の行いに気が付いた。相手はただ「シャーレの部員」というだけで、運よく負傷せずに済んだだけのただの子供だ。にもかかわらず、いつもの「公安局」としての態度を取ってしまった。昔からの悪い癖で、これが原因で夢を諦めることになったというのに。カンナの眉間にシワが寄り、ペンを握る力が強くなった。カンナの表情がさらに険しくなったことで、群衆は恐れのあまりカンナから離れていく。
「──以上です。外傷はないようですが、この後すぐに病院に行くことをお勧めします。それでは、失礼しました。」
「おう、ありがとうな。警察のお姉さん。」
しかし周りの様子とは裏腹に、遊真はカンナに笑顔でお礼を言った。
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思えば、その時から遊真はカンナに対して物怖じするような態度を見せたことがない。その後も何度か会話をすることがあったが、ストレスと不眠のあまりいつも以上に皆から時恐れられていた時も、いつもの飄々とした余裕のある様子を崩さないばかりか、自身の体調をそれとなく気遣うようなことを言ってくれた。
マグカップに入ったコーヒーを口に含む。ふとコーヒーに目をやると、口角が僅かに上がっている自分の姿が映っていた。
「──ッ!!」
残ったコーヒーを全て一気飲みして、マグカップを机に強く置いた。周りの部下たちは驚いてビクッと反応するものの、カンナの様子が少しおかしいことに気づくと心配そうにちらちらと視線を向けた。
「(…全く。「狂犬」ともあろう者が、なんてザマだ。)」
心の中でそう吐き捨てるも、気分は悪くない。少し胸が軽くなったカンナはいつも以上のスピードで書類仕事に取り掛かった。
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「ただいま。」
「おっかえりー!!!」
遊真が帰って来るなり、先生が超ハイテンションで出迎えてきた。遊真の髪を両手でわしゃわしゃと撫で(かき乱し)たかと思えば、ぴょんぴょんとスキップをしながらデスクの周りをぐるぐると回りだした。
「レプリカ、先生は変なものでも食べたのか?」
『いや、特に毒のようなものは食べていないはずだ。』
さすがの遊真もこの挙動には引きつつ、先生を無理やり椅子に座らせて頭に一発チョップを叩き落とした。
「ハッ!私は今まで何を…!?」
「おおよかった。このまま戻らなかったらどうしようかと思ってたぞ。」
「あ、ありがとう。まるで悪い夢でもみていたようだ…。」
ここまで先生が壊れてしまったのには理由がある。デスクの上に山のように積まれた書類たちだ。遊真の身長よりも高く積み上げられた書類が何個も机の上に置かれている。先生はこの一週間、ほぼすべての時間をデスクワークに費やしていたのだ。無論一人でこなしていたわけではなく、大半はレプリカが手伝ってくれている。また、シャーレの当番としてユウカも手伝いに来てくれたことがあった。それでもなおこの量なのだから恐ろしい。
ちなみに、この書類はほとんどが連邦生徒会から横流しされてきたものである。連邦生徒会の首席行政官であり、連邦生徒会長代行でもある七神リン曰く
『先生には荒事をほぼ一人で担当してくれる遊真さんと、ハイスペックで賢いレプリカ先生がついているではありませんか。』
とのことで、死んだ魚のような目をしてやつれた彼女から大量の書類を押し付けられてしまった。…後にリンから直接電話が入って何度も謝罪され、送られて来る書類の量がかなり減ったのだが──それはまた別の話。
遊真は「こほん」と咳払いして早速話を切り出した。
「帰還命令のことだけど、何があったんだ?」
「……そうそう!実は──」
先生の話によると、「アビドス高等学校」という学校からの支援要請が入ったそうだ。その高校は地域のならず者たちに何度も攻撃を受けていて、物資が尽きる寸前らしい。このままでは学校が占拠されてしまうとのことで、シャーレに要請を出した、とのことだ。
「なるほど、確かにこれはシャーレの出番だな。」
「そう!学校を救うついでにこの書類地獄から抜け出そうっていう、まさに一石二鳥だね!」
そう言うと、先生が荷物をまとめ始めた。カバンにタブレットや書類、水筒や軽食をいれると、同じく水や食料の入ったリュックを遊真に渡して、シャーレオフィスの扉を勢いよく開けた。
「シャーレ創部から初めての大仕事だ!いざ、アビドスへ!!」
「えいえいおー。」
そう意気込んだはいいものの──
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「先生、さっきもこの道通らなかったか?」
「……うん、どうやら私たち、遭難しちゃったみたい。」
学校が見つからず数日迷い続け、街のど真ん中で遭難してしまった。
本当はシャーレの日常をもっと書こうと思ったのですが、何故かほとんどカンナ視点のお話になってしまいました。どうしてこうなった。
こんなこと書いておいてなんですが、恋愛描写をする気はないです。少なくとも、空閑を中心に展開することは絶対にないです。ややこしくなるので。
でもいくら見た目が小学生でも、気遣い上手で精神年齢高いイケショタがキヴォトスにいたらドギマギする人も出てきちゃうんですかね。
ちなみに、空閑が普段来ている服は連邦生徒会の服装です。
黒のインナーに白いスーツパンツ、白のロングジャケットを羽織っています。
便利屋先生と似た感じの服装ですね。
トラックに跳ねられたときに服がボロボロになってしまったので、先生が要請して支給されました。
本人は「ちょっと動きづらいな」と内心思ってそうです。
先生の見た目はアニメ先生みたいな感じを自分は想像しています。でも特に決めていないので、皆さんの好きな見た目で想像してください。ただし性別は男です。