はぐれ近界民の青春記録   作:Gペペロンチーノ

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詰め込みすぎてタイトル思いつきませんでした。

また、赤評価をいただいてとても嬉しいです。

評価してくださった皆様、ありがとうございました。


セリカの平凡な一日

「はあぁぁぁぁ……。」

 

大きなため息をついて机に突っ伏す成人男性が一人。

 

「先生、元気出してください☆」

 

「先生の気持ちもわかるけど、やり方がちょーっと悪かったねー。」

 

ノノミは完全に気を落としている先生の肩を優しく叩いて励ましている。ホシノも苦笑いを浮かべながらも、一応フォローはしている。

 

「皆さん、どうされたんですか?」

 

教室の扉が開いてアヤネが入って来る。昨日の頼もしい姿とは打って変わって情けない姿をさらしている先生に、アヤネが心配そうに聞いた。

 

「先生、昨日のことでセリカちゃんと話がしたかったみたいなんですけど…。」

 

「無視されて、それでも話しかけ続けてたらストーカー呼ばわりされちゃったんだって。」

 

「あはは…それはセリカちゃんじゃなくても怒られそうですね…。」

 

「うっ。」

 

机から離れたかと思えば、今度は教室の隅で小さく縮こまってしまった。何やらぶつぶつと蚊の鳴くような声で呟いている。

 

「私は生徒にストーカー行為を働いてしまう最低なダメ先生です…。こんな先生でごめんね…。」

 

『(大人の姿か?これが…。)』

 

「…そ、そう言えばセリカちゃん──はバイトでしたね。シロコ先輩と遊真君は何処にいるんですか?」

 

「あー、あの二人なら──。」

 

ガシャーン!

~~~~~~~~~~

 

「うーむ…手ごわい。」

 

「でも10メートルは進めるようになった。いい調子。」

 

遊真は昨日シロコが乗っていた自転車に興味を持ち、ネット通販でママチャリを注文していた。現在は校庭で乗る練習をしており、シロコはその手伝いをしている。しかし、なかなか苦戦しているようで、純白の連邦生徒会の制服ズボンが砂まみれになってしまっている。

 

「何かしかけがあるのかと思ったら、本当にただ車輪が前後についているだけとは…!この世界の人たちは特別に訓練されているのか?」

 

「練習すれば遊真も乗れるようになるよ。私が押してあげるから、ペダルをこいでスピードを出してみて。進む力でバランスを取るの。」

 

「なるほど、よろしくお願いします。」

 

シロコが後ろの荷台を掴んでそのまま押していく。最初こそふらふらと進んでいたものの、スピードが乗るにつれてまっすぐ走り始めた。

 

「おおっ!?すごい、ちゃんと走ってる!!」

 

「そのままペダルをこいで。スピードを落としちゃダメ!」

 

シロコに言われるがまま、シャカシャカとペダルをこぎ続ける。やがてバランスがとれるようになり、シロコが手を離しても自力で進めるようになった。

 

「すごいっ!すごいぞ!だんだんコツつかんできた!!」

 

「ッ!遊真!止まって!!」

 

「つかん──」

 

スピードに乗ったはいいものの、止まる方法が分からなかった遊真はそのまま校門の壁に突っ込んでいく。

 

ガッシャーン!!

 

自転車から投げ飛ばされ顔面から思いきり壁に突っ込んだ。

 

「大丈夫!?」

 

「ハイ、ぜんぜんだいじょうぶです。」

 

かなりのスピードで硬いレンガの壁に顔面から激突したにもかかわらずピンピンしている。シロコは眼球を開いたり前髪をかきあげてケガがないかを確認したが、傷一つすら見られなかった。

 

「ごめん…。最初に止まる方法を教えなかった私が悪かった。」

 

「いや、勉強不足だったおれのせいだ。それに、シロコ先輩のおかげで乗るコツはつかんだ。」

 

遊真は倒れた自転車を起き上がらせると、壊れた部分がないかの確認を行う。

 

「うむ、たぶん壊れてない。また今度練習につきあってくれ。」

 

「…うん!遊真がよければいつでも呼んで。」

 

その後心配した先生たちも駆けつけてきた。再びけががないかを入念にチェックされたものの、一切の負傷がないことに安堵し、ホッと息を吐いた。

 

ぐううううう

 

突如鳴り響いた低く長い音。皆が音の出所を見ると、遊真がお腹を押さえていた。「ふふっ」と思わず口から笑みがこぼれる。

 

「着替えてから、お昼にしようか。」

 

~~~~~~~~~~

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです!」

 

店内に響く溌溂としたセリカの声。ここはアビドス内にある数少ない飲食店「ラーメン柴関」。その人気アビドス内にとどまらず、わざわざ遠くの地方から訪れる客もいるほどだ。おかげで、閑散とした街並みのアビドスにおいて、唯一といっていいほど活気でにぎわう場所でもある。

 

「何名様ですか?空いてるお席にご案内足しますね!」

 

「少々お待ちください!3番テーブル、替え玉追加です!」

 

ガララッ

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…。」

 

店の引き戸が開く音に、セリカは反射的に振り向いた。満面の笑顔で対応するとそこにいたのは

 

「あのー☆6人なんですけど~!」

 

「…わわっ!?」

 

よく知る対策委員会の面々だった。動揺するセリカにノノミが満面の笑みを返すと、ぞろぞろとそろって入店してきた。後ろには先生や遊真までいる。

 

「や、やあ。さっきぶりだね、セリカ。」

 

「お疲れ、アヤネ先輩」

 

「ゆ、遊真っ…先生まで…やっぱストーカー!?」

 

「うへ、先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの。」

 

「ホシノ先輩かっ…ううっ…!!」

 

「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれくらいにして注文受けてくれな。」

 

悔しそうに先生を睨みつけるセリカだったが、店の奥から柴犬の姿をした大将から催促が入った。この店の大将「柴大将」は見た目こそ威圧感があるものの、人情味あふれる人柄でみんなから慕われている。セリカはしぶしぶ頷くと、席に案内した。

 

「こちらのお席でいかがでしょうか…。」

 

案内された席にアビドス生徒たちが座る。ノノミとシロコの隣にそれぞれ一人ずつ座れるスペースがあるのだが

 

「はい、二人ともお好きな方へどうぞ!」

 

「…ん、私の隣も空いてる。」

 

二人にとって究極の選択を突き付けられた。先生は頭を抱えてどちらに座るか悩んでいると、遊真は特に迷う様子を見せずにノノミの隣に座った。

 

「あらあら~♡」

 

「ん……。」

 

嬉しさのあまり恍惚の笑みを見せるノノミ。一方シロコはノータイムで遊真がノノミを選んだことに不満そうな様子だった。

 

「じゃあシロコ、隣失礼するね。」

 

「ん……!」

 

しかし、先生が隣に座ったことで先ほどまでの不服そうな顔が嘘のように目を輝かせ、先生にべったりと張り付いた。

 

「ちょっとシロコ先輩!そんなにくっついてたら先生が窮屈でしょ!?」

 

「いや、私は平気。ね、先生?」

 

「うん、シロコがいいなら私は全然かまわないよ?」

 

そう言うと、シロコが先生の腕に組みついた。顔を真っ赤にしたセリカが「ご注文は!!」と伝票を取り出すと、アビドス生徒は次々と注文を入れる。

 

「私はチャーシュー麺をお願いします!」

 

「私は塩。」

 

「えっと…私は味噌で…。」

 

「私はねー、特性味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」

 

「じゃあ、私は塩ラーメンにしようかな。」

 

「ふむ、どれにするべきか…。」

 

ラーメンを知らない遊真はメニュー表とにらめっこをしていたものの、みんなにお勧めされて柴関ラーメンの大盛りを注文した。

 

「おお…これが「らーめん」か…!」

 

器から立ち上る蒸気を前にして、目を輝かせながら顔を近づけた。今まで嗅いだことのない旨味のある香りが空腹を刺激する。周りに合わせて箸を手に取ると、ぎこちない動きではあるものの、麺を掴み口に運んだ。

 

「う、うまい…!」

 

麺の柔らかさ、スープの濃厚な旨味、それら全てが絶妙なバランスで口の中一杯に広がる。今まで体験したことのない感覚に心を奪われ、我を忘れて食べ進めていると、あっという間に器の麺を食べつくしてしまった。

 

「ははっ、ちっこいのにいい食べっぷりじゃないか。そんなに旨かったか?」

 

あまりのいい食べっぷりに気をよくした大将が遊真に近づいてきた。

 

「ああ、こんなに美味しいもの生まれて初めて食べた。あと、おれは小さいけどもう14歳だよ。」

 

「じゅ、14歳!?」

 

「てっきり小学生くらいかと…。」

 

「意外だよねー。私も初めて聞いたときはびっくりしたよ。」

 

「いろいろと事情がありまして。」

 

「そうか、悪かったな。お詫びをしたいからちょっと待っててくれ。」

 

大将が遊真の器を調理場に持っていく。すぐに戻ってきたかと思えば、器は再び麺で満たされていた。

 

「これはサービスだ。育ち盛りなら、たくさん食べて大きくなれよ!」

 

「なんと、ありがとうございます。」

 

再びラーメンにがっつく遊真。ふと、食べ終わったシロコが口を開いて遊真に尋ねた。

 

「そういえば、そろそろ遊真が前いた世界のこと教えて欲しい。」

 

「いいよ、レプリカ。」

 

『心得た。』

 

にゅっと、お椀を抑える遊真の左手からレプリカが飛び出してきた。慣れている先生は特に何も驚かないものの、初めてレプリカを見る対策委員会の皆は唐突すぎる登場に思わずぎょっとした。

 

『初めまして、私の名はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。』

 

「あ…!は、はじめまして、レプリカさん。」

 

「君が、昨日遊真が言ってた「レプリカ」だったんだね。初めましてー。」

 

「初めまして!丸くて兎みたいで…とっても可愛いですね☆」

 

「初めまして。じゃあ、早速だけどお願い。」

 

もぐもぐとラーメンを咀嚼する遊真の横で、レプリカが話し始めた。

 

『では、まず我々の世界──近界(ネイバーフッド)を説明するにあたって大前提となる「トリガー」と「トリオン」についてから話そう。

 

先生には以前説明したが、トリガーとはトリオンと呼ばれる生体エネルギーを消費することで使用できる技術だ。遊真が持っている指輪が、その一つの例だ。

 

だが近界では武器や兵器以外にも、様々な用途でトリガーが使われている。大地や太陽、天候、資源…こちらの世界では自然界に元から存在するもの全てを、近界ではトリガーによって生み出している。

 

故に、科学技術や工業技術によって発展してきたこちらの世界とは異なり、近界はトリガー技術によって、独自の文明や文化を築き上げて来た。』

 

「ちょ、ちょっと待ってくれないか?」

 

あまりにも世界観が違いすぎることに混乱した先生は、眉間を抑えながら待ったをかけてレプリカの話を遮った。対策委員会の皆も話の内容についていけずに口をぽかんと開けている。

 

「トリガーで大地や太陽を作るって…近界は一体どんな世界なんだい!?」

 

『近界は、こちらの世界とは別の次元に存在する世界だ。果てしない暗黒空間が広がっている世界で、こちらの世界でいうところの宇宙とは異なり、星や太陽などは自然に存在しない。

 

故に、近界ではトリガーを使って人が住むための星を創造している。母トリガーと呼ばれる巨大なトリガーを使用することで、無数の惑星国家が生み出されてきたのだ。』

 

「すごい…まるでSFの世界みたいなところなんですね…。」

 

「トリガー一つで全部作れるなんて…ということは、それがあればアビドスの復興にも使える?」

 

『母トリガーがあれば不可能ではない。しかし、この世界には母トリガーの存在が確認できないため、皆の期待していることは出来ないだろう。』

 

「…まあ、流石にそう都合よくはいかないよねー。」

 

「ごちそうさまでした。」

 

ここで、追加の替え玉を全部食べて汁まで飲み干した遊真が手を合わせた。その様子を見てふと先生があることに気づく。遊真の所作には日本的な要素が所々に感じられるのだ。

 

「そういえば、遊真は日本を目指していたんだよね。故郷は日本にあるの?」

 

「いや、おれは生まれてからずっと近界にいた。」

 

「じゃあ、どうして日本へ?」

 

「親父が死んだから。」

 

「えっ」

 

おしぼりで口を拭きながら、さらっと言い放った言葉にその場の空気が凍り付く。遊真は腕を組み、懐かしむように窓の外に映る空を見上げた。

 

「ちっちゃいころから親父と二人でいろんな国を旅していて、確かおれが11の時に親父が死んだ。

 

「もしオレが死んだら日本に行け。知り合いがボーダーっていう組織にいるはずだ。」

 

親父がよくそう言ってたから日本を目指してた。まあ、色々あって出発するまでに三年も経っちゃったけど。それに、ようやく出発できたと思ったらこの世界に来て、どうやらこの世界から出られなくなっちゃってるみたいで。」

 

「…遊真のお父さんって、どんな人だったの?」

 

「変な人だったよ。例えば、おれが六歳の時に聞かされた親父の「三つの教え」ってのがあるんだけど…。

 

その1、自分のことは自分で守れ。親はいつでもお前を守れるわけじゃない。自分を鍛えるなり、頭をひねるなり、自分でどうにかしろ。自分でどうにかできないものには近づくな。想像力を働かせて危険を避けろ。

 

その2、正解はひとつじゃない。物事にはいろんな解決法がある。逆に解決法がない時もある。一つのやり方に捉われるな。

 

そしてその3…」

 

うんうんと皆が頷く。先ほどまでの凍り付いた空気はいつの間にか溶け、場の雰囲気は徐々に和らいでいた。

 

「親の言うことが正しいと思うな。」

 

『????』

 

「そうか…いいお父さんだったんだね。」

 

『いや、どういうこと(ですか)?』

 

天を仰いで涙を流す先生に、対策委員会の皆は訳が分からず一斉に声を上げる。先生はハンカチで涙を拭くと、皆に説明を始めた。

 

「これはあくまでも私の見解だけど…。お父さんはきっと、遊真に考える力をつけてほしかったんだと思う。いずれ人は、親の元を離れて自立することになる。そうなった時、自分のことは自分で選択できるような人に育ってほしかったんじゃないかな?」

 

「…確かに、親父もレプリカもおれが選択をするとき、自分で決めろって言ってたな。」

 

「遊真が、14歳とは思えないほど大人っぽい理由がなんとなくわかったよ。でも、本当に困っているときは、いつでも私を頼ってね。」

 

先生は優しい声で遊真に語り掛ける。遊真が顔を上げると、先生はまるですべてを包み込む聖母のような、穏やかな微笑みを浮かべていた。

 

「…先生は、なんでそこまで人を助けようとするんだ?困ってる人は見過ごせないタチなのか?」

 

「それもそうなんだけど…。何より私は大人であり、先生だから。子供が選んだ道の責任を負うのが大人としての役目だ。たとえその選択が失敗に終わっても、取り返しのつかない事態に至らないよう支え続ける。失敗を恐れず挑戦し続けられるように、子供が成長できるように道を作り続けるのが、先生としての私の責任だと思っているからだ。」

 

『………。』

 

気づけば、活気で賑わっていたはずの店内が静寂に包まれていた。遊真や対策委員会の皆だけでなく、大将や周りの客まで先生を凝視していた。先生はそのことに気づくと、みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていく。

 

「も、もももしかして私、今とんでもなく恥ずかしいことを言ってしまったのでは…。」

 

「そ、そんなことはないですよ!」

 

「…まあ、でも確かにクサいことは言ってたかなー。」

 

「でも、ちょっと感動した。」

 

「かっこ良かったですよ♪」

 

恥ずかしさのあまり机に突っ伏す先生。そんな先生の肩や背中、頭をポンポンと叩いて励ます、セリカ以外のアビドス生徒たち。そんな中、遊真がおもむろに口を開き、静かに話し始めた。

 

「…先生が面倒見の鬼だってことは分かった。けど、何でもかんでも背負っていると、いつか先生が死ぬぞ。」

 

「そ、それは…。」

 

「まあ、そうならないためにおれが雇われてる訳だから、先生は自分のやりたいようにやればいい。決めるのは先生自身だ。」

 

「…わかった!遊真、これからもよろしくね!」

 

拍手と歓声が店内で響き渡る。先生は耳を赤くして照れ臭そうに頬をかくと、会計のために席を立った。

 

「………。」

 

接客をしつつも一連の会話に聞き耳を立てていたセリカは、複雑な胸中で先生をちらりと横目で見た。

 

~~~~~~~~~~

 

『ご馳走様でしたー!!』

 

会計を済ませた一同は店を出た。見送るセリカに手を振って店から離れていく。

 

「それにしても先生、またユウカ先輩に怒られそうだな。」

 

「うっ」

 

遊真が言っているのはアビドスに来る前日のこと。先生がストレスの発散で10万円もする限定フィギュアを買ったことを、当番に来ていたユウカにバレてしまったのだ。その時さんざん「消費は計画的に!」と念押しされたにもかかわらず、このランチで相当な出費をしてしまった。家計簿を片手に鬼の形相で仁王立ちするユウカを想像して、先生は戦々恐々としていた。

 

「せ、先生…?やっぱり私が…。」

 

そう言って財布を取り出そうとするノノミの手を先生が止めた。ノノミは先生が全額奢る際に唯一自分が払うと申し出ていた。申し訳なさそうな表情をするノノミに対し、先生はニコッと笑って彼女の頭を撫でる。

 

「私はみんなと楽しく食事ができて、それだけで十分だよ。それに、生徒の前でくらいカッコつけてないとね。」

 

「うへ、大人としてのプライドってやつ?先生もかっこいいとこあるじゃーん。」

 

「うむ、見直したぞ先生。」

 

とは言ったものの先生はユウカに対する言い訳を考えつつ、校舎へと帰っていった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

「お疲れ様でしたー!」

 

大将に挨拶をして店を出る。外は既に日が落ちて暗くなっていた。今日一日の疲れがここで来たのか身体が鉛のように重い。バイトを始めてから今日にいたるまで、ここまで疲れることはなかった。

 

「はあ…やっと終わった。目まぐるしい一日だったわ…。」

 

ため息をつきながら今日の出来事を思い出す。自分の制服姿をからかう先輩たち。完全に「異世界人」だった遊真の出自。そして、本当に頼れる大人かもしれない、先生の存在。

 

「なによ、みんなして先生先生って…。」

 

セリカは首を横にぶんぶんと振って吐き捨てる。確かに先生を頼るのが、アビドスにとって最も良い選択肢かもしれない。しかし、今ここで先生やシャーレを認めて、それであっさりと解決しようものなら、今までの自分たちの苦労は一体何だったのか分からなくなってしまう。両手で頬を叩き、歩く速度を速めた。

 

「そう簡単に…認めないんだから…。」

 

「アビドス高校一年、黒見セリカだな。」

 

不意に自分の名を呼ばれ体が硬直する。慌てて後ろを振り向くと、セーラー服を着て、特徴的なマークを付けたヘルメットを被った集団がそこにいた。

 

「な、何よ、あんたたち──」

 

ドドドドドーーーン!!!

 

突如大量の砲撃が足元で炸裂する。爆風で体が吹き飛び、コンクリートの地面に強く頭を打ち付けた。

 

「(やばい…みんな…)」

 

身体が言うことを聞かない。指一本たりとも動かすことができない。意識を失う直前に頭に浮かんだのは、対策委員会の皆と、遊真と──

 

「(せん、せい…た…す…)」

 

力なく地面に倒れ伏し、沈黙したセリカをほくそえみながら見下ろすカタカタヘルメット団。

 

「よし、この程度でいいだろう。車に乗せてランデブーポイントへ向かう。分かってると思うが、まだ殺すなよ。」

 

手足を乱暴に縛って拘束する。セリカを乗せたトラックが夜の闇に溶け込んでいった。

 




トリガーや近界の説明はもっと早い段階でやっておいた方がよかったかなーとちょっと思ってます。

さっさと先に進めたいがためにストーリーを優先した弊害で、今回色々詰め込む結果になりました。

本作品の先生はある程度三雲修をイメージしてはいますが、修そのものにするつもりはないです。それやってもパチモンペンチになるのが目に見えていますので。

最近BBFを読み直して、「ちょっと自分の設定間違ってね?」と絶望していますが、二次創作なので見なかったことにします。

近界について書いているとき、よくよく考えなくてもこの世界結構世紀末だなって思いました。

トリガーなしでは生きていけなくて、限られた資源(人間=トリオン)をめぐってどこもかしこも戦争三昧。

母トリガーの説明的に少なくとも数百年の歴史がある近界ですが、その成り立ちや今まで滅びなかった経緯などが気になりますね。
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