はぐれ近界民の青春記録   作:Gペペロンチーノ

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手掛かりを追って、闇市へ

「あ、先生。おはようございます。」

 

「おはよう、アヤネ。」

 

便利屋68と戦った翌日、先生は早朝からアビドス高校へ向かっていた。その途中、アビドスの住宅街でアヤネに出会った。

 

「こんな朝早くからどうしたんだい?」

 

「えっと、今日は利息の返済日なんです。その準備や返済計画の見直しなど、やることが沢山ありますので…。」

 

「そうか、それじゃあ私も手伝うよ。」

 

「ありがとうございます。先生がいてくれると、とても心強いです。そういえば、遊真君は一緒では──」

 

「あっ、先生じゃん!おっはよー!」

 

住宅街を進むと、十字路でムツキと鉢合わせた。ムツキは先生を見るなり、にっこり笑顔で先生の腕に抱きついてきた。突然のことにアヤネは顔を真っ赤にしてあわあわと困惑している

 

「お、おはようムツキ。」

 

「どもどもー!こんなところで会うなんて、偶然だね!」

 

ムツキが先生の腕に頬をすりよせる。先生は離れようとするが、ムツキの力に勝つことが出来ず、スキンシップに逆らえない。

 

「せ、先生から離れてください!」

 

アヤネがムツキを引っ張ると、ムツキは「あーん」と名残惜しそうにしながらも先生から引き剥がされた。

 

「誰かと思えば、アビドスのメガネっ娘じゃーん?おっはよー、昨日ラーメン屋で会ったよね?」

 

「私はメガネっ娘じゃなくてアヤネです!それにその後の学校の襲撃でもお会いしましたよね?どうしてそんなに馴れ馴れしいんですか!?」

 

「ん?だって私たち、別にメガネっ娘ちゃんたちのことが嫌いなわけじゃないし。それに、昨日の襲撃はお互い様じゃない?そっちだっていきなり不意打ちしてきたしさー。」

 

アビドス側に落ち度はないのだが、ムツキのわざとらしく悲しそうな表情に、アヤネは思わず言葉に詰まってしまう。

 

「あの用意周到ぶり、絶対前から気づいてたでしょ。ちょっと大人げないとおもわなーい?」

 

「えっと…ヘルメット団のアジトが壊滅しているのを遊真が発見してね。その犯人はアビドスにもきっと来るって思っていたんだ。それで、ラーメン屋での会話で、君たちがその犯人だって気づいたらしいよ。」

 

「へぇ、あんなかわいい顔して結構腹黒いんだねー。そういえば、あの子もシャーレなんでしょ?今日は一緒にいないの?」

 

「ああ、今は学校で自転車に乗る練習をしてるらしいよ。たぶんシロコと一緒にいるんじゃないかな?」

 

「ふーん。ま、そんなことは置いといて、先生もいつかうちの便利屋に遊びにおいでよ。先生が来たらみんなきっと喜ぶからさ。」

 

「そうだね、今度おじゃまするよ。」

 

「せ、先生!?」

 

「くふふっ、じゃあ楽しみに待ってるね!そんじゃ、バイバ~イ!アヤネちゃんもまた今度ね。」

 

そう言うと、ムツキはあっという間に姿を消した。アビドスにはいないタイプの活発なスキンシップに、早朝にもかかわらず先生は少し疲れた様子を見せた。

 

~~~~~~~~~~

 

アビドス高校の校門前に、一台の現金輸送車が停車していた。その前で、紺のスーツを着たロボットの銀行員が現金の確認をしている。

 

「…お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですね。すべて現金でお支払いいただきました、以上となります。カイザーローンとお取引いただき、毎度ありがとうございます。来月もよろしくお願いいたします。」

 

ロボットは顔のモニターに貼り付けたような笑顔を映し、淡々と話し終えると、そのまま車に乗り込み去っていった。まだ朝だというのに、アビドス生徒たちは疲れたように一斉に息を吐く。一方遊真は、銀行員が返済額の確認をしている間ずっと首をかしげていた。そして、銀行員が去るのを見届けてから口を開いた。

 

「キヴォトスは不思議だな。ただの紙にあんな価値があるのか。」

 

「ただの紙じゃないよ。あれは「紙幣」といって、こっちの世界でのお金の一つだ。遊真が普段使ってるカードと同じで、物やサービスを買うときに使えるんだよ。」

 

「ふむ、ならなんで鉄より紙のほうが価値があるんだ?」

 

「持ち運びしやすいからだよ。高額な取引にはたくさんのお金が必要で、硬貨のように金属のお金を大量に持ち歩くと重くて大変でしょ?だから、軽くて持ち運びしやすい紙のお金が使われるようになったんだ。」

 

「なるほど…。ん?でも、ここでは「電子決済」で簡単に払えるだろ?なんでわざわざそれを使わないんだ?」

 

「それは…なんでだろうね?」

 

遊真と先生が一緒に首を傾ける。そこに、ノノミが口を開いて答えた。

 

「向こうが現金以外受け付けてくれないんです。ですが、言われてみればどうしてなんでしょう…?」

 

「…。」

 

シロコが輸送車の去った方向をじっと見つめている。無表情だが、何か悪巧みを考えているのがセリカには見て取れた。

 

「シロコ先輩、あの車は襲っちゃダメだよ。」

 

「うん、分かってる。」

 

「計画もしちゃダメ!」

 

「うん…。」

 

ちょっぴり残念そうにシロコが俯く。

 

「ま、取り合えず先に解決するべきは、目の前の問題の方でしょ。とにかく教室に戻ろうー。」

 

~~~~~~~~~~

 

「それでは、セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕について、調査の結果を報告します。先日手に入れた破片を分析した結果ですが、現在では取引されていない型番だということが判明しました。」

 

「もう生産してないってこと?」

 

「それをどうやって手に入れたのかしら。」

 

「生産が中止された型番を手に入れる方法は…キヴォトスでは「ブラックマーケット」しかありません。」

 

「ほう、ブラックマーケットか。」

 

アヤネの言葉に遊真が反応した。

 

「行ったことがあるんですか?」

 

「いや、そこだけは連邦生徒会から近づかないよう言われててね。でも、前からちょっと気になってたんだ。もしかしたら、便利屋もそこにいるんじゃないかって。」

 

「はい。便利屋68も、ブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしていると聞きました。」

 

「では、そこが重要ポイントですね!」

 

「はい、ふたつの出来事の関連性を探すのも、ひとつの方法かもしれません」

 

「よし、じゃあ決まりだねー。ブラックマーケットを調べてみようかー。」

 

~~~~~~~~~~

 

「ブラックマーケット」

 

そこは法の規制を受けず、連邦生徒会の手が及ばない場所で、違法な取引が行われる市場。はぐれ者が流れ着き、様々な犯罪が横行する危険な場所だ。シャーレも連邦生徒会から接触を禁じられているが、その一方で異文化や独自の商品が集まり、賑わいを見せている。闇市ながら、独自の治安維持隊も存在するため、住人たちは独特の生活を営んでいる。

 

「すみません、この「ベビーカステラ」ってのを一つ。」

 

「はいよ、アツアツだから気を付けな!」

 

遊真は紙袋いっぱいに入ったカステラを受け取り、皆の元に戻った。袋を開けて匂いを堪能した後、一つずつ美味しそうに頬張り始めた。

 

「ちょっと、遠足に来たわけじゃないんだけど?」

 

「まあまあ、そういわずに。よかったらみんなもどうぞ。」

 

そう言って紙袋を皆に差し出した。アビドス生徒達と先生はお礼を言いながらカステラを一つずつ摘まんでいった。その時である。

 

タタタタタタ!

 

突如近くで銃声が響き、少しして奥から三人の不良に追われながら必死に逃げてくる生徒が見えた。

 

「わわわっ、どいてくださーい!!」

 

「おっと。」

 

ドンッ!!

 

リュックサックを背負った少女が遊真の目の前に突っ込んできた。ぶつかりそうになり遊真が横に避けると、少女も同じ方向に避けてしまい、激突してしまう。

 

「あ。」

 

「いたた…わわっ!?ご、ごめんなさい!」

 

衝撃で紙袋が手元から落ち、カステラが地面に散乱する。少女が慌てて謝っていると、不良たちが追いついてきた。

 

「よーし、よく止めてくれた!そこのトリニティ、大人しく捕まるんだな!」

 

「なるほどー。拉致して身代金をいただこうってことなんだね。」

 

「そう!協力してくれたし、お前たちもこの計画に乗りたいんだろ?だったら分け前は──。」

 

ダダダダダダッ!!

 

シロコ、ノノミ、セリカの三人が同時に銃を構え、一斉に撃ち放つ。不良たちは至近距離で銃弾を浴びて、次々と倒れていった。

 

「お金には興味があるけど。」

 

「その計画には乗らないわ!」

 

「悪人は成敗です☆」

 

~~~~~~~~~~

 

「ありがとうございました。私、阿慈谷ヒフミって言います。皆さんがいなかったら、今ごろどうなっていたか…」

 

涙目でお礼を言うヒフミに、先生が優しく微笑んで声をかける。

 

「気にしないで。大事にならなくてよかったよ。」

 

そこに路地裏から遊真が現れた。

 

「ここからすぐに移動した方がいい。さっきの連中は路地裏に縛り付けてきたけど、たぶんすぐに仲間がやってくるよ。」

 

「そ、そうですね!このままだと、ここを管理している治安機関に見つかってしまうかも…!」

 

「ふむ…ヒフミちゃんはここのことに詳しいんだね。トリニティのお嬢様なのに。」

 

「あはは…。とにかく、まずは逃げましょう!」

 

ヒフミが「こっちです!」と先導して走り出す。皆も彼女の案内に従い、その場を急いで離れていった。

 

~~~~~~~~~~

 

「…ここまで来れば大丈夫でしょう。」

 

「し…死ぬ……。」

 

十数分走り続け、ようやくヒフミが足を止めた。先生は膝に手をつき、吐き気をこらえながら必死に酸素を吸っている。ノノミが心配そうに飲み物を片手に先生の背中をさすり、その様子にホシノやセリカ、ヒフミも思わず苦笑を浮かべた。

 

「ヒフミ、ここが危険な場所だってよく知ってるんだね。」

 

「えっ?と、当然です。ここは連邦生徒会の手が及ばない場所の一つですから。企業による違法な事業の利権争い、違法な治安組織や金融機関…それらが全部、ここに集まっているんです。」

 

「スケールが桁違いですね…。」

 

「中でも治安機関は特に厄介です。騒ぎを起こしたら、まずは身を潜めるのが一番です…。」

 

「ふーん、ヒフミちゃん、そんなに危険と知っていてなんでここに来たの?」

 

「えーっと、ちょっと探し物がありまして…。」

 

ヒフミはそう言うとスマホを取り出し、画面をみんなに見せた。そこにはぬいぐるみの写真が映っている。ペンギンのような丸いフォルムの白い鳥が、口にアイスを突っ込まれて白目を剥きかけているという少し不気味なデザインだ。

 

「これです!百体しか作られていない限定グッズ、ペロロ様とアイス屋さんがコラボしたぬいぐるみ!どうです、可愛いでしょう?」

 

「わあ☆モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん、可愛いですよね!私はミスター・ニコライ推しです!」

 

「ニコライさんですか!彼の哲学的なところ、カッコいいですよね!実は私、最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』の初版を手に入れたんですよ!」

 

そこからはヒフミとノノミのモモフレンズトークが始まった。他の人たちは全くついていけずに微妙な顔で見つめるばかり。

 

「…いやぁー何の話だか、おじさんにはさっぱりだなー。」

 

「ホシノ先輩はこういうファンシー系には興味ないでしょ。」

 

「ふむ、最近の若いやつにはついていけん。あー、でもレプリカがぬいぐるみになったらちょっとわかるかも?」

 

「それはまあ…確かに。」

 

『悪いが、私としては遠慮させていただこう。』

 

「レプリカはおもちゃじゃないぞ。」

 

ホシノは少し残念そうに笑う。ノノミとのモモフレンズトークを一通り終えたヒフミは、改まった様子でアビドスの生徒たちに向き直る。

 

「さっきは本当にありがとうございました。このお礼はいつか必ずします。私はこれからペロロ様を探しますので、ここで失礼しますね。」

 

ヒフミがお辞儀をすると、ホシノと遊真がニコニコと笑いながら彼女の前に立ちふさがった。

 

「いやー、そんなにお礼をしたいって言ってくれるなら…」

 

「今ここでしてもらおうかね、ヒフミ先輩。」

 

二人の妙な威圧感にヒフミは思わずたじろいでしまう。じりじりと後ろに下がるヒフミに対し、二人はがっちりと肩を掴んで逃がさなかった。

 

『じゃあ、案内よろしく、ヒフミちゃん/せんぱい。』

 

「え?ええっ?」

 

「わあ☆いいアイデアですね!」

 

「ヒフミには、遊真のカステラの件もある。」

 

「あ、あうう…。本当にごめんなさい…。」

 

ヒフミは先ほどのドタバタでベビーカステラをぶちまけてしまったことを思い出し、申し訳なさで視線を落とす。

 

「み、みんな、あんまりヒフミをいじめないであげて…。」

 

「あの状況じゃ仕方ないでしょ?ヒフミさん、うちの先輩たちがごめんね。」

 

「い、いえ、私が悪かったんですし…皆さんのためにできることがあるなら喜んでお手伝いします!」

 

「うむ、素晴らしい意気込み。」

 

「じゃあ、ちょーっとだけ同行頼むねー。」

 

~~~~~~~~~~

 

ヒフミの案内でブラックマーケットを歩き回るものの、ヘルメット団が使っていた戦車に関する手掛かりは見つからず、気づけば数時間が経過していた。

 

「はあ…しんど…。」

 

「もう数時間は歩きましたね…。」

 

「これはさすがに、おじさんも参ったなー。腰も膝も悲鳴を上げてるよー。」

 

「えっ…ホシノさんはおいくつなのですか…?」

 

「ほぼ同年代っ!」

 

朝から活動を続けていたこともあり、一行の表情には疲労の色が濃く見える。そんな中、先生がどこか休憩できる場所を探していると、ふと甘く香ばしい匂いが漂ってきた。視線を巡らせると、少し先にたい焼き屋の暖簾が揺れているのが目に入る。

 

「みんな。ここまでだいぶ歩いたし、一度休憩にしようか。」

 

「さんせーい、おじさんもうへとへとだよー。」

 

「あそこにたい焼き屋さんがある。私がご馳走するから、ここで少し待っていて。」

 

そう言って先生が歩き出すと、ノノミが先生の腕を掴んで引き留めた。

 

「先生、ここは私に払わせてくれませんか?最近ずっと、先生には奢ってもらってばかりでしたので…。」

 

「気にしないで、全部私が望んでやったことだから。」

 

「…それなら尚更、ここは私にお任せください!」

 

「ちょ、さ、流石に悪いよ!?」

 

ノノミが先生を無理やり引き戻した。巨大なミニガンを軽々と取り扱う彼女は、アビドスの中でもトップクラスの筋力を持っている。先生は一切の抵抗を許されず、軽々と引き戻された。

 

「私が食べたいからいいんですよ☆」

 

そう言い残して、ノノミはたい焼き屋に一人で向かった。彼女が屋台の店主と取引をしているのを見て、これ以上引き下がるのも彼女に失礼だと思った先生は、ノノミの厚意に甘えることにした。

 

~~~~~~~~~~

 

しばらくして、こぼれそうなほどたい焼きが詰まった紙袋を抱えて、ノノミが戻ってきた。

 

「お待たせしました!さあ、皆さんどうぞ☆」

 

一行はノノミにお礼を言い、たい焼きを一つずつ取り出した。疲労と空腹も相まって、アツアツのたい焼きにかぶりつく。

 

「おいしい!」

 

「いやぁ、疲れた体には甘いものが効くね~。」

 

「あはは…ノノミさん、ありがとうございます。」

 

「……(もぐもぐ)」

 

「うまうま」

 

「ありがとうね、ノノミ。すごい美味しいよ。」

 

「どういたしまして~☆…アヤネちゃんにも、今度何かご馳走しますね。」

 

「あはは…私もいまお菓子を食べてますし、大丈夫ですよ。」

 

一行はたい焼きを食べながら軽く雑談し、疲れを癒していると、たい焼きを食べ終えたヒフミがふと真剣な表情で話し始めた。

 

「それにしても妙ですね…ここまで一切情報が見つからないなんて。」

 

「そんなに異常な事なの?」

 

「異常というよりかは…普通ここまでやりますか?という感じですね…。どんな企業でもここで完璧な情報統制をするのは不可能ですし、そもそも隠れて悪さをすること自体しないんです。」

 

そう言って、ヒフミは向かいの黒いビルを指差す。

 

「あれはブラックマーケットで有名な闇銀行です。キヴォトスで行われる犯罪の約15%の盗品があそこを経由して、違法な武器や兵器に生まれ変わり、また新たな犯罪に利用されるんです。」

 

「…そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか。」

 

「連邦生徒会はどうしてあんなのを野放しにしてるの!?」

 

「様々な企業や組織が、この銀行と深い関係を持っているんだろうね。情報を隠したり、支援したり…。連邦生徒会も万能じゃないから、迂闊に手を出せないのかも。」

 

「現実は、思った以上に汚れているんだね…。」

 

先生の言葉にシロコが苦々しい表情を浮かべた。その時──

 

『皆さん隠れてください!そちらに武装した集団が接近しています!』

 

突如、緊迫した声でアヤネから通信が入る。全員が急いで立ち上がり、近くの路地に飛び込んだ。しばらくすると、現金輸送車とそれを護衛する武装集団が通りを走り抜けていった。

 

「あれは…マーケットガードですね。ここの治安組織でも最上位の組織です。目を付けられると大変なことになるので、隠れておいて正解でした…。」

 

現金輸送車は闇銀行の前で停車した。一同が固唾を呑んで見ていると、車の中から見覚えのある人物が出てきた。

 

「あれっていつも集金に来ている…。」

 

「カイザーローンがどうしてこんなところに…?」

 

降りてきたカイザーローンの職員は、銀行の入り口で待機していた銀行員と軽く会話を交わすと、行員が差し出した書類にサインをした。その確認を終えた銀行員の指示で、輸送車は銀行の中へと進んでいく。

 

「闇銀行とカイザーローン、どうやら繋がっているみたいだな。」

 

「カイザーローンはトリニティの「ティーパーティー」も警戒している企業です。…ブラックマーケットと結びついていても、なんら不思議ではありません。」

 

「そういえば、返済っていつも現金でしたよね…。」

 

「それは、足がつかないようにするため…?」

 

「そ、そんな…!じゃあ私たちは、ブラックマーケットに犯罪資金を提供していたってこと!?」

 

「まだ断定はできないよ。アヤネちゃん、さっきの現金輸送車のルートを追えない?」

 

「少々お待ちください。」

 

数分後、アヤネから通信が入る。

 

「…ダメですね。データはすべてオフラインで管理されているみたいで、全然情報が取れません。」

 

闇銀行はブラックマーケットでも最高レベルのセキュリティを誇る。生徒たちが他の方法を考えていると、先生がふと思いついたように口を開いた。

 

「さっきの集金確認の書類…あれが証拠にならないかな?」

 

「なるほど、さすが先生。」

 

「…ですが、もう書類は銀行の中です。銀行はマーケットガードに守られていますし…一体どうすれば…。」

 

「うーん…」と唸りながらヒフミと先生が頭を悩ませていると、シロコが二人の肩に手を置いて言った。

 

「もう、方法は一つしかないよ。」

 

「えっ?」

 

「うん?」

 

素っ頓狂な声を出すヒフミと先生。シロコはカバンから青い覆面を取り出し、頭に被った。

 

「銀行を襲う。」

 

「はいっ!?」

 

「シ、シロコ!?」

 

「なるほど、その手があったか。」

 

「ま、当然そうなるよねー。」

 

「わあ☆そしたら悪い銀行をやっつけましょう!」

 

「…仕方ない。それなら…!とことんやるしかないか!!」

 

シロコに続き、アビドスの生徒たちと遊真も次々に覆面をかぶっていく。残されたヒフミと先生は、完全に置いてけぼりだ。

 

「あ、うあ…?あわわ…?」

 

ヒフミは状況を飲み込めず混乱していた。口を開いて何かを言おうとするが、言葉にならない音ばかりが漏れている。

 

「み、みんな…本当にやるのかい…?」

 

先生は状況を理解しているが、やめさせるべきか悩んでいる。「無謀な行動を止めるべき」という大人としての立場と、「生徒の抱える問題を解決するべき」というシャーレの先生としての立場で板挟みになっているのだ。

 

「…先生、こうなったみんなは止められません…。」

 

アヤネは完全に諦めて、みんなと同じく頭に覆面を被った。

 

「ヒフミちゃんには、これを差し上げます☆」

 

ノノミがそう言うと、ヒフミの頭に紙袋をかぶせた。先ほど購入したたい焼きの袋だ。目の部分に穴が開けられていて、額の部分には「6」と大きく書かれている。

 

「あ、あうう…。」

 

「ん、完璧。」

 

「まるで悪の親玉みたいじゃない?めっちゃ似合ってるよー。」

 

「わ、私もご一緒しなければいけないんですか…?」

 

今すぐにでも逃げ出したいヒフミ。しかし、その思いはホシノの言葉によって断ち切られる。

 

「今日一緒に行動するって約束したよね?それに、計画を知った以上、もう逃げられないよー?」

 

「う、うああ…私、もう生徒会の人たちに合わせる顔がありません…。」

 

「問題ないよ!悪いのは私らじゃなくてあっちなんだから!」

 

「それじゃあ先生。例のセリフを。」

 

先生はもう止められないと観念したのか、一度「コホン」と咳ばらいをしてから続けた。

 

「みんな…銀行を襲うよ!」

 

『おー!!』

 

一行は掛け声を上げ、闇銀行へと突き進んでいった。

 




空閑は戦闘体に換装した後に覆面を被ったので、ちゃんと顔は隠せています。

空閑には覆面を作らせたのに、なんで先生には作らせなかったのかと過去の自分を恨んでいます。その場のノリで書いたせいです。

空閑の分はギリ作れて、先生の分は間に合わなかったってことにしてください。シロコに悪気はありません。作者が悪いんです。

それと後半空閑が空気になってしまいましたね。

頑張ってセリフをねじ込んではいたのですが、難しいっす。
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