闇銀行──それを一言で表すならば悪の巣窟である。キヴォトスにおける数々の犯罪の温床といっても差し支えない極悪非道の組織であり、多くの組織や人がこの闇銀行によって奈落へと引きずり込まれた。
連邦生徒会が手を出せないほどの金と権力を持つのがブラックマーケットの闇銀行だ。しかし、数時間後にはとある集団によってこの場所も含めた付近一帯が戦場と化す。
「ねえ、本当にここで融資を受けるの?」
「ブラックマーケットの闇銀行…きっと利息がすごいんでしょうね…。」
「まあ、そもそもアルちゃんが審査通るのかなって話だけどね。」
「と、通るに決まってるわ!とにかく行くわよ!」
そんなことも露知らず、便利屋の一行は銀行に訪れていた。目的はアビドス襲撃のための融資を受けることである。
そんなことも露知らず、便利屋の一行は銀行を訪れていた。目的はアビドス襲撃のための融資を受けること。先日の襲撃の失敗をクライアントに報告した結果、いろいろとあって一週間以内に再びアビドスを攻撃することになってしまったのだ。ただでさえ強いアビドスに、今はシャーレが味方している。中途半端な戦力ではまたしても返り討ちにあうだけだ。前回の襲撃で活動資金が底を尽きたアルは、苦肉の策としてこの場所に訪れたのだった。
便利屋が銀行に入って約六時間以上が経過した。
「お待たせいたしました、お客様。」
「なにが「お待たせいたしました」よ!本当に待ったわよ!六時間も!ここで!融資の審査になんで半日もかかるの!?別にうちより先に人もいなさそうだったのに!」
アルは険しい顔で銀行員を糾弾する。尚、他の便利屋のメンバーは待ちくたびれてソファで眠ってしまっている。
「私どもの内々の事情でして、ご了承ください。…ところでアル様、あなたはそのような態度を取れる状況ではないと思うのですが?」
「あ、うう…。」
冷静に流されるどころか、痛烈なカウンターを受けて言葉が詰まるアル。
「助けを必要とするならば、時には辛抱強く待つことも大事かと。…それと、それにふさわしい態度も。」
銀行員がパチンと指を鳴らすと、ガードとして雇われているヘルメット団が眠っている便利屋を強く揺すった。
「ほら、起きた起きた!」
「うはっ!?なになに!?」
「……ッ!!」
「ああっ…す、すみませんっ、居眠りしてすみません!!」
「よろしい。では一緒にご確認を…。」
便利屋の面々が全員起き、姿勢を正して畏まったところで、銀行員が続ける。
「お名前は陸八魔アル様、ゲヘナ学園の二年生、現在は便利屋68の社長…ですか。失礼ながら、この便利屋はペーパーカンパニーでは?財政が破綻しているように見えますが。」
「ちゃ、ちゃんと稼いでいるわよ!まだ依頼料を回収できていないだけで…。」
「それと、従業員は社長、室長、課長、そして平社員と。無駄に肩書を増やして、小学生のごっこ遊びでもしているのですか?」
「そ、それは…肩書があったほうが仕事の依頼を…。」
「事務所の賃貸料もそうです。あなた達の財政状況に対して明らかに高額すぎます。最近の支出に関しても──」
次々と突き刺さる銀行員の言葉。銀行員が言っていること自体は正論ではあるものの、その言動や態度の一つ一つがアルの神経を逆撫でしていく。
何も言い返せないアルは全身を小刻みに震わせ、拳を強く握りしめることしかできなかった。
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一方その頃、銀行の外では──
「こちら空閑、指定ポイントにてマーケットガードを確認。」
『分かった。こっちはいつでも突入できるから、攻撃のタイミングはそちらに任せるよ。』
「了解。それじゃ、攻撃を開始する。」
遊真は戦闘体に換装し、覆面を被ったままビルの上から敵の数と配置をもう一度確認する。作戦の内容は、まず遊真が騒ぎを起こしてマーケットガードを集め、その間に時間を稼ぐ。遊真が敵を引きつけ、銀行の警備が手薄になっている隙を突いて、アビドスの生徒達とヒフミが銀行を急襲し、速やかにブラックマーケットから脱出するというものだ。脱出ルートは先生とアヤネが状況に応じた複数のパターンを用意している。
「さあ、いっちょやるか。」
遊真は一歩前に踏み出し、ビルから飛び降りる。数秒後、激しい破砕音と共にマーケットガードの小隊が派手に吹き飛ばされていった。
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「──ですので、申し訳ないのですが、当行での融資は困難と判断しました。資金が欲しいのでしたら、まずはより堅実な職に就いてみてはいかがでしょうか。日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもありますよ。」
「(なんなのよこいつ、ムカつくわね!もういっそのこと、ここで大暴れしてお金を持ち出しちゃおうかしら?)」
顔のモニターに笑顔を映した銀行員を前に、アルの中には黒い思考が渦巻いていた。
「(でも、それで万が一みんなが危険な目にあったら…。)」
便利屋の仲間たちは皆、アルのことを心から信頼してくれている。そして、アルもまた皆のことを大切に思っている。仲間を危険にさらしてまでブラックマーケットを敵に回せるほどの勇気は、今の彼女にはなかった。
「(何事にも恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー…。そんな人になることを目指してたのに…。今の私は、いったい何をしているの…?)」
闇銀行に縋りつこうとしている今の自分は、果たして彼女が望んでいた姿なのか。必死に手を伸ばしても、理想はどこまでも遠い。目の前の現実に押しつぶされそうになる。
その時だった。
バンッ
突如、建物内の電気が一斉に消えた。突然の暗闇に職員たちは狼狽し、ざわめきが広がる。そして、静まり返ったロビーに鋭い銃声が響き渡った。
ダダダダダダダッ!
「ぐわっ!」
「うわああっ!」
突然の銃撃音と悲鳴が入り混じり、ロビーは一気に混乱の渦に包まれた。
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『向こうも作戦を開始した。』
「銀行の方に行かないように注意を引けばいいんだったな?」
『ああ、だが先生も銀行の警備システムを破壊して、外部との通信を遮断したようだ。もう時間稼ぎは十分だろう。』
「じゃあ、切り上げて先生と合流するか。」
遊真は、倒したマーケットガードの山を背景に、両手を軽く打ち合わせてほこりを払い、合流地点に向かおうとした。しかしその瞬間、銃声が響き、地面に火花が散った。
「見つけたぞ!!なめた真似しやがって!!」
待ち構えていたのは、ひときわ巨大なパワーローダーだった。両腕に装備されたガトリングが回転し、遊真に向かって激しい弾幕を放つ。遊真はすぐさま建物の影に身を隠し、レプリカに問いかけた。
「レプリカ、あいつは?」
『ゴリアテだ。パワーローダーを遥かに上回る装甲に、両腕の機関銃、頭部にはキャノン砲が装備されており、火力も極めて高い。無闇に距離を取ると、蜂の巣にされるぞ。』
「なるほど。のんびりしている時間もないし、手早く終わらせるか。」
ゴリアテは確かに強力な兵器だ。対戦車兵器でもなければそう簡単に崩せない堅牢な装甲。過剰ともいえるほど火力に特化した武装。生身の人間が立ち向かうには手強い相手だ。
「『弾』印・二重」
しかし、弱点も存在する。真上にいる相手に対してはガトリングもキャノン砲も攻撃が届かない。遊真は一気に跳躍し、ゴリアテの真上に舞い上がった。
「『強』印・五重」
ドッガァァァァン!!
踵落としをゴリアテのキャノン砲に叩き込み、砲身を破壊した。内部のエネルギータンクが爆発し、本体の装甲にも損傷が広がり、足の駆動系が壊れたのかゴリアテは膝をついた。それでもゴリアテはまだ完全には停止していない。
「まだ動けるのか、かってーな。」
再びガトリングの銃身が高速で回転を始め、銃口からの弾幕が遊真を目掛けて襲いかかる。しかし、遊真は『弾』印による回避や『盾』印による防御を使わず、巧みに走ることで弾幕をかわしていく。
「クソッ!ちょこまかと!」
ゴリアテのもう一つの弱点。それは機動力の低さ。圧倒的な重量と装甲のため、小回りが利かない。馬力が高いため決して木偶の棒というわけではないのだが、ただでさえ足を潰された今のゴリアテに、遊真を捕らえることは出来なかった。
『解析が完了した。敵の弱点は正面中央、ひときわ分厚い装甲の内部だ。そこを破壊すれば機能を失うだろう。』
「サンキュー。」
遊真はシールドを展開し、正面からゴリアテに突っ込んでいく。弾幕がシールドを削り取るも、シールドが割れた瞬間にはすでに遊真はゴリアテの真下に潜り込んでいた。
「『強』印・七重!」
ドガシャァァァン!!!!
遊真の全力の拳がゴリアテの最も分厚い装甲を突き破り、制御ユニットを破壊。ガトリングの砲身が空回りして金属がこすれる音を残し、ゴリアテは完全に停止した。
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銀行にて──
「銃声!?」
便利屋は身を低くしてソファに隠れた。やがて建物内の電気が復旧すると、覆面を被った五人の集団が銃を構えて立っていた。
「全員その場に伏せなさい!持っている武器は捨てて!」
「言うこと聞かないと、痛い目にあいますよ☆」
「あ、あはは…みなさんどうか、じっとしていてくださいね…。」
「あ、警備システムは壊しちゃったから、通報なんてできないからねー?」
「ほらそこ!早く伏せないとあの世行きだよ!?」
素早く警備員を制圧した彼女たちは、強盗に入って数分足らずで建物内を無力化した。
「建物の制圧は完了したよ。先生、次の指示を。」
『そしたら、書類を回収して脱出して。出来るだけ穏便かつ速やかにね!』
「了解。」
シロコは頷き、カウンターで伏せている銀行員の頭に銃を突きつけた。
「ここの構造は全部把握している。無駄な抵抗はしないこと。分かったらこのバッグに──」
「わっわかりました!何でも差し上げます!現金でも、債券でも、金塊でも、いくらでも持ってっていいので、どうか命だけは!!」
「そ、そうじゃなくて、集金記録を…。」
パニックに陥った銀行員は、シロコの指示が耳に入らず、助かりたい一心で現金輸送車から回収した金品をバッグに詰め込んでいる。
「う、うーん……。」
少し予定が狂ったものの、目的の書類を回収することには成功した。
「シロ…い、いや、ブルー先輩!ブツは手に入った?」
「あ、う、うん。確保した。」
「それじゃあ、全員撤収!」
「アディオ~ス☆」
「本当にすみませんでしたっ!さよならっ!」
目的を達成した彼女たちは風のように銀行を去っていく。その背中を見送るアルは、目を輝かせて興奮を抑えられなかった。
「(や、ヤバーい!ブラックマーケットの銀行を襲うなんて、いったい何者なの!?大胆な計画に、強盗に入ってから金品の回収までの手際の良さ…これぞ真のアウトローだわ!)」
興奮に目を輝かせるアルに対し、他の便利屋はこの状況に戸惑いを隠せない。
「…ねえ、あいつらってアビドスの子たちじゃない?違う子もいるけど。」
「強盗なのは百歩譲って分かるとして、なんでここで…?」
「わ、私たちはどうしますか?」
「どっちにも味方する理由はないし、とりあえず大人しくしていよう。」
強盗たちが立ち去ったのを確認した銀行員は、通信端末を取り出し、周囲のガードに向けて叫んだ。
「奴らを捕らえろ!道路を封鎖し、マーケットガードに通報だ!」
しかし、通信からの返答を聞くと銀行員は驚愕の表情になった。
「な、なに!?付近一帯のマーケットガードはすでに全滅!?馬鹿な!ゴリアテは…スクラップになっているだと!?」
次々と伝えられる情報に、アルの興奮は最高潮に達していた。
「みんな、行くわよ!」
『へ?』
混乱に乗じて銀行から走り出すアル。ムツキとカヨコは一瞬戸惑ったが、ノータイムで追いかけたハルカに触発されて、すぐにアルの後を追った。
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合流地点にて集まった一行は、事前に考えたルートと、マーケットガードがかなり削られていたおかげで、封鎖をいとも簡単に突破してブラックマーケットから脱出した。
「封鎖地点を突破しました。この先は安全です。」
「やった!大成功!」
「シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」
「う、うん。それはちゃんとあるんだけど…。」
そう言ってシロコはばつが悪そうにカバンを開ける。一行が覗くと、書類のほかに大量の札束が入っていた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「おお、すごい。お金の束がいっぱい入ってる。」
「うええええっ!?シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」
「ち、違う…このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで…」
「どれどれ…うへ、軽く一億はあるね。」
「やったあ!!これで借金が沢山返せるわ!」
セリカは目もくらむような大金に目を輝かせていたが、これを良しとしない者がいた。
『ま、待って!そんなことをしたら、本当に犯罪だよ!!』
「は、犯罪だから何!?これはもともと私たちが必死で稼いだお金で、ほっといたら犯罪に使われちゃうんだよ!」
「私はセリカちゃんの意見に賛成です。悪いことに使われるくらいなら、私たちで正しく使った方がいいと思います。」
「ね!シロコ先輩もそう思うでしょ!?」
普段の言動からして、自分の意見に賛成してくれると確信していたセリカだったが、シロコの返答は逆だった。
「ごめんセリカ、私は賛成できない。ホシノ先輩が反対するだろうから。」
「へ!?」
「セリカちゃん、今回の目的はカイザーローンが横領している証拠を手に入れるため。お金を奪うためじゃない。」
ホシノはいつもの眠たげな表情ながらも、言葉には真剣な響きがあった。
「確かに、これはほっといたら犯罪に使われるだけ。私たちが正しく使ってもいいかもしれない。でも、その次はどうするの?お金に困ったら、また銀行を襲うの?」
「そ、それは…。」
「セリカ、アビドスの借金自体は正式な手順を踏んでできたものだ。だったら、正しいやり方で返済をするべきだよ。」
「そう、先生の言う通り。こんな方法で返すなら、最初からノノミちゃんが持っているゴールドカードに頼っていたはず。」
「私もそう提案しましたが、ホシノ先輩が反対されて…。でも、今は分かります。いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスじゃなくなってしまう…。」
「うへ、そういうこと。だからこのバッグは置いていくよ。頂くのは必要な書類だけね。これは委員長としての命令だよー。」
「うん、委員長の命令なら。」
「このバッグは、私が適当に処分します。」
「うわあああ!わかったわよ!捨てればいいんでしょ!?」
セリカは少々不満げな様子だったが、周囲がホシノの言葉に賛同しているのを見て、しぶしぶ了承した。その時、アヤネから緊急通信が入った。
「…!!待ってください!何者かがそちらに接近しています!」
「…!!追っ手のマーケットガード!?」
「いや、あれだけやったなら暫くは動けないはず。敵の詳細は?」
「今調べています…あれは…べ、便利屋のアルさん!?」
その知らせに驚いた一行は急いで覆面を被った。遊真は先生を抱きかかえると、その場を急ぎ立ち去った。
二人が去った直後、息を切らしてアルが駆け込んできた。シロコは即座に銃を構える。
「ま、まって…私は敵じゃないから…。」
「なら、何の用?」
「銀行での襲撃、見せてもらったわ…。ブラックマーケットの銀行をものの五分で攻略して見事に撤収…あなた達、まれにみるアウトローっぷりだったわ!」
アルはシロコたちの正体に気づいていないようで、興奮気味に思いをぶつけ続ける。
「あんな大胆なことが出来るなんて、衝撃的というか、感動的というか…。と、とにかく!私はあなた達の姿に憧れたの!!だからお願い!あなた達の名前を教えて!」
「な、名前…?」
「そう!あなた達の雄姿を心に刻んでおきたいの!私もあなた達のような、立派なアウトローになりたいから!」
「…はいっ!おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」
ノノミは大金の入ったバッグを置き、決めポーズをした。
「私たちは、人呼んで…覆面水着団!ちなみに私はクリスティーナだお♧」
「ふ、覆面水着団!?ヤバい…!超クール!カッコ良すぎるわ!!」
「うへ~本来スクール水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー。」
「普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!」
「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!!」
「す、すごい、最高よ!!」
アルは目を輝かせて彼女たちを見つめるが、何かに気づいたように表情が変わった。
「あら、あなたたち…。」
『(ギクッ)』
正体がばれたかと焦る一行だったが、アルの口から出たのは予想外の言葉だった。
「番号が1・2・3・4・6…『5番』がいないのはどうしてなの?」
ポカンと口を開く覆面水着団。ふと、もう一人のメンバーの存在を思い出す。
「ふっふっふーばれてしまっては仕方ない…。いでよ、幻のナンバー5!コードネーム『ホワイトラビット』!!」
ホシノが高らかに叫ぶ。すると、覆面水着団の前に何者かが空から落下してきた。
ドォォォォォン!!!
着地の衝撃で地面が激しく揺れ、アスファルトが粉砕されて粉塵が舞い上がる。
「な、なんなのー!?」
白目を剥いて絶叫するアル。粉塵が晴れると、煙幕の中から白い覆面を被った人物が現れた。
「こ、この人が『ホワイトラビット』!?なんだかタダ者じゃなさそうね…!」
「そそ、この子はちょー危険だよー?私たちが銀行を襲ってる間、マーケットガードをたった一人で相手取ってたんだからねー。」
「な、なんですってー!!」
そんな様子を、遠巻きに見ている便利屋の他メンバーたち。
「…何してるの、あの子たち…。」
「うわー、アルちゃんドはまりしちゃってるじゃん。特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」
一方、セリカは今にもこの場から逃げ出したい気持ちから、そわそわしながら皆に耳打ちした。
「ね、ねえ…もういいでしょ…!?そろそろ逃げようよ…!」
「そうですねぇ。それじゃあこの辺で、アディオス~☆」
「行こう!夕日に向かって!」
「夕日、まだですけど…。」
ササーッっと覆面水着団は撤収していった。その背中を見て、アルはとある決意をする。
「…よし!我が道の如く魔境を…その言葉、魂に刻むわ!私も頑張る!」
「…言うべきだよね?」
「面白いからしばらく放置で♪」
ちなみに、一億円の入ったバッグはその場に置いて行ってしまったため、そのまま便利屋に拾われた。
そして──
「なあああああああにいいいいいいいーーっ!!??覆面水着団がアビドスだったですってええ!!??」
事務所に戻ってから覆面水着団の正体を知らされたアルは、驚愕の叫び声を上げ、オフィス内にその声が響き渡る。
「あはははー、アルちゃんショック受けてるー!超ウケる!」
「はあ…。」
腹を抱えて爆笑するムツキに、呆れてため息をつくカヨコ。
「こ、これでもう、食事を抜かなくていいんですね…!」
アルの驚きに気を取られつつも、ハルカは大金を前にして満面の笑みを浮かべ、早くも未来の豪華な食生活に思いを馳せていた。
この筆者いっつも高いところから落としてんな。
どうしても空閑が空気になってしまうため無理やり活躍させました。そんでもって長くなりそうだったのでゴリアテ以外はダイジェストにしました。
一応、空閑一人でどうやってマーケットガードと戦ったか補足します。最初は闇討ちでいくつか部隊を全滅させて、自分の存在がバレ始めたら、あとは逃げながら各個撃破、という感じです。幕末オープンゲットですね。
お金の処遇に関して空閑が何を言うのかと考えたのですが、「そもそも他人の問題に口出さないんじゃね?」という結論に至り、ずっと喋らせていませんでした。
どうするか聞かれたとしても、「これはアビドスの問題だから決めるのはおれじゃない、あんたら自身だ。」と突っぱねそうなので、ほったらかしにさせてました。