Kaikaeshi and Automata   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

琴葉、光一郎、ユズは信宏とマルサンカクーズの丸井と三角が八尺様を探しているのを見つける。
彼らは八尺様を刺激する事を止めるように頼むが、目立つために無視される。
信宏が廃工場を隠れ場所として提案し、彼らはそこへ向かう。
八尺様が実は子供であり、母親の八尺様が彼女を探していた。
母親の八尺様は怒り、マルサンカクーズを追いかける。
琴葉、光一郎、ユズは、彼らを止めるために追いかけるのだった。


第15話 母の思い

ポオオオオオ!!

 工場の敷地内。

 巨大な八尺様が、逃げる丸井達を追う。

ひい! ひいい!!

 丸井達は必死に逃げるが、徐々に八尺様が迫って来る。

「マル、お前のせいだからなっ!」

「何でだよっ! スミ、お前が八尺様の動画撮ろうって言ったんだろ」

「ちょっと、ケンカはやめてっす!」

「「うるせえ!」」

 丸井と三角は信宏に同時に怒鳴った。

―ドンッ!

 その時、三人の目の前に大きなコンクリートの塊が飛んできた。

 母親の八尺様が、敷地に放置されていた大きなコンクリートブロックを投げたのだ。

「ひいいいい!」

 幸い、当たらなかったが、直撃したら怪我だけでは済まない。

 丸井達三人は恐怖で動けなくなり、抱き合って悲鳴を上げた。

 

「八尺様、もうやめるんだ!」

「……わたしが止める! 邪魔はさせない!」

 そこへ、光一郎とユズが駆け込んできた。

「ユズちゃん、光一郎君!」

 琴葉も横に立ち、母親の八尺様を見上げる。

 八尺様は、怒りの形相で三人を見た。

「……あなたの怒りは止める。それが、わたしの役目だから」

「僕は怪帰師だ。君達を元の世界に帰すのが仕事なんだ」

 光一郎とユズは、興奮する母親の八尺様にゆっくりと近づいた。

「これ以上、彼らを襲わないでくれ。

 帰ることに納得できる『願い』や『条件』を僕達が叶えるから」

 琴葉も母親の八尺様にゆっくりと近づきながら、頷く。

「ポオオ?」

 『条件?』と、母親の八尺様は言った。

「ああ、条件だ。さあ、教えて」

 光一郎は安心させようと、優しい笑みを見せた。

ポオオオ! ポポポポポ!!

 八尺様が大きな声を上げる。

「そんな!」

 その言葉に琴葉は焦る。

「彼女は何て??」

「『条件は、目の前の三人を襲う事』!」

 八尺様は丸井達に襲いかかろうとした。

「……させない、わたしがあなたを止める!」

 ユズは光を纏い、母親の八尺様にパンチを食らわせた。

「ポオオオオオ!」

 光を浴びた母親の八尺様が目を晦まし、暴れながらユズを掴もうとする。

 ユズはギリギリで攻撃をかわし、光を纏った蹴りを入れた。

 さらに両手で気を作り、母親の八尺様を攻撃する。

 その瞬間、誰かが走って来た。

 

「何やってるのよ!!」

 琴葉の母親だ。

「お母さん!」

「工場に行くって言ったから心配で見に来たのよ!」

 母親は、ユズと戦っている八尺様を睨んだ。

「あ、あなた何者なの!?」

「お母さん、危ないから離れて!」

「離れるわけないでしょ!」

 母親は八尺様の腕を掴む。

 その隙に、ユズは素早くパンチを繰り出した。

「ポオオオオ! ポオオ! ポオオ!」

「……逃がしませんよ」

 八尺様が目を大きく見開くと、無数のレーザーが八尺様を貫いた。

 その隙に母親は琴葉を引き寄せると、強く抱きしめた。

「お、お母さん」

「怪我はない? もう大丈夫よ! 琴葉!!!」

 母親は抱きしめながら、何度も何度も琴葉の名前を呼んだ。

 

「……ユズ、強いんだね」

「……誰かが傷つきそうなら、他の誰かを傷つけてでも守る」

 

 そこに、娘の八尺様がやって来た。

「ポポポポポ……」

『お母さん、ごめんなさい』

 娘の八尺様は、勝手に人間の世界に行ったことを謝った。

 そのまま、母親の八尺様に抱きつく。

「ポ、ポポ……」

 母親の八尺様から怒りが消え、優しい表情になる。

 その姿を見て、ユズはほっとするのだった。

 

 しばらくして。

 琴葉達は、信宏達や母親を工場から出て行かせ、

 人気のない敷地の一角で二人の八尺様の前に立っていた。

「ポオ、ポポポオオ」

 娘の八尺様が琴葉達に言葉をかける。

「『私のせいで、みんなに迷惑をかけてごめんなさい』だって」

 母親の八尺様も、頭を下げて謝った。

「いや、君達は悪くない」

 光一郎は、二人の八尺様に逆に頭を下げた。

「今回は怖がらせてごめんなさい。だけど、人間は悪い人ばかりじゃないから」

 それを聞き、娘の八尺様は笑顔で頷いた。

「それじゃあ、そろそろ始めよう」

 光一郎はそう言うと、右手を強く握り締めた。

「鑰!」

 次の瞬間、光一郎の右手の甲が光り輝く。

 そして、鍵のような紋章が現れた。

 光一郎は、そのまま開けた空間を見つめ、右手を突き出した。

「人は人の世に。怪は怪の世に。安住の地へ、今帰らん!」

―ゴオオオオ……

 瞬間、大きな音が響き、地面から光の扉が現れた。

 光一郎は光の扉に近づくと、鍵の紋章が浮かび上がった右手で光の扉のノブを掴んだ。

「開!」

 ドアがゆっくりと開く。

 その向こうに眩い光が広がった。

「さあ、自分の世界に帰るんだ」

 光一郎は二人の八尺様にそう言う。

 二人は、しっかりと手を繋ぎ、扉へと向かった。

 二人の八尺様はドアをくぐる。

 光がその全身を包み込む。

 二人は、光の中に消えて行った。

 やがて、ドアがゆっくりと閉まる。

 光の扉はまるで線香花火のように四方に光を散らすと、そのまま消滅した。

 

「今回もまた、琴葉ちゃんとユズに助けられたよ」

 帰り道。

 光一郎は微笑みながら、琴葉とユズに言った。

「君達が仲間でよかった」

「「えっ」」

 琴葉とユズの顔に思わず笑みが浮かぶ。

「私……」

 相変わらず、最上瑚江の事は気になる。

 だが、光一郎に褒められ、素直に嬉しくなった。

 その時、前方から声がした。

「マルサンカクーズのお二人っすよね!」

 見ると、信宏がマルサンカクーズの二人に話しかけていた。

「俺、お二人の大ファンっす!」

 信宏は二人と握手をしている。

 怪が元の世界に帰った事で、彼らの記憶からその怪も、怪が起こした騒動も全て消えた。

 信宏は初めて二人に会った事になる。

「だけど、この町にどうしているんすか?」

 信宏が尋ねると、丸井と三角はニッコリと笑った。

「この町の美味しいお店紹介動画を撮ろうと思ったんだZE」

「オイラ達、最近人気がなくなってきたけど、

 美味しいお店紹介で人気者に返り咲こうと思ってるんだYO」

 二人は、美味しいお店を紹介する楽しさを信宏に話した。

「やっぱり、楽しみながら作れる動画が一番いいZE」

「うんうん、見てる人達を笑顔にできる動画を作りたいYO」

 怪の記憶はないが、彼らの中で何かが変わったのかもしれない。

 誰かが嫌がる動画はもう撮る事はないだろう。

「お二人とも最高っす! 弟子にしてください! 俺もそんな動画撮りたいっす!」

 信宏は丸井達に自分を必死に売り込む。

 丸井達はそんな信宏にドン引きしていたという。

 

「信宏さんも、もう相手が嫌がる動画は撮らないみたいだね」

「……良くなった、気がする」

「うん、そうみたいだね」

 光一郎、琴葉、ユズは、その光景を見て微笑んだ。

「あら、琴葉」

 ふいに声がした。

 見ると仕事帰りの琴葉の母親が後ろに立っていた。

「まぁ、光一郎君も一緒なのね。まさかデート!?」

「ええ、また~??」

 前回と同じ言葉に、琴葉は呆れる。

 母親はニコニコしながら、「あ、そうだ」と明るい声を上げた。

「琴葉から聞いたんだけど、光一郎君は親御さんのお仕事の関係で、

 ユズちゃんと二人で暮らしているのよね? だったら、今、夜食を一緒に食べましょうよ。

 今からスーパーに行くところだったの。おばさん、お料理上手よ」

「ちょっと、お母さん!」

 琴葉は母親の提案を恥ずかしく思いながらも、何故か嬉しくなった。

「お母さん、ありがとう……」

 母親は、いつも琴葉の事を大切に思ってくれている。

 八尺様から必死に助けようとしている姿を見て、琴葉はその事に気づいたのだ。

「お母さん、大好きだよ!」

「え、ええ??」

 好きと言われ、母親は驚く。

 そんな母親を見て、琴葉は笑顔になった。

 光一郎もそんな琴葉達を見て微笑む。

「じゃあ、ハンバーグが食べたいかも」

「……わたしは、シャケがいい」

「それじゃあ、今から買いに行きましょう!」

「はい!」

「うん、行こう、お母さん!」

 琴葉達は、母親と共に楽しそうに歩き出した。

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