Kaikaeshi and Automata 作:アヤ・ノア
琴葉、光一郎、ユズは信宏とマルサンカクーズの丸井と三角が八尺様を探しているのを見つける。
彼らは八尺様を刺激する事を止めるように頼むが、目立つために無視される。
信宏が廃工場を隠れ場所として提案し、彼らはそこへ向かう。
八尺様が実は子供であり、母親の八尺様が彼女を探していた。
母親の八尺様は怒り、マルサンカクーズを追いかける。
琴葉、光一郎、ユズは、彼らを止めるために追いかけるのだった。
「ポオオオオオ!!」
工場の敷地内。
巨大な八尺様が、逃げる丸井達を追う。
「ひい! ひいい!!」
丸井達は必死に逃げるが、徐々に八尺様が迫って来る。
「マル、お前のせいだからなっ!」
「何でだよっ! スミ、お前が八尺様の動画撮ろうって言ったんだろ」
「ちょっと、ケンカはやめてっす!」
「「うるせえ!」」
丸井と三角は信宏に同時に怒鳴った。
―ドンッ!
その時、三人の目の前に大きなコンクリートの塊が飛んできた。
母親の八尺様が、敷地に放置されていた大きなコンクリートブロックを投げたのだ。
「ひいいいい!」
幸い、当たらなかったが、直撃したら怪我だけでは済まない。
丸井達三人は恐怖で動けなくなり、抱き合って悲鳴を上げた。
「八尺様、もうやめるんだ!」
「……わたしが止める! 邪魔はさせない!」
そこへ、光一郎とユズが駆け込んできた。
「ユズちゃん、光一郎君!」
琴葉も横に立ち、母親の八尺様を見上げる。
八尺様は、怒りの形相で三人を見た。
「……あなたの怒りは止める。それが、わたしの役目だから」
「僕は怪帰師だ。君達を元の世界に帰すのが仕事なんだ」
光一郎とユズは、興奮する母親の八尺様にゆっくりと近づいた。
「これ以上、彼らを襲わないでくれ。
帰ることに納得できる『願い』や『条件』を僕達が叶えるから」
琴葉も母親の八尺様にゆっくりと近づきながら、頷く。
「ポオオ?」
『条件?』と、母親の八尺様は言った。
「ああ、条件だ。さあ、教えて」
光一郎は安心させようと、優しい笑みを見せた。
「ポオオオ! ポポポポポ!!」
八尺様が大きな声を上げる。
「そんな!」
その言葉に琴葉は焦る。
「彼女は何て??」
「『条件は、目の前の三人を襲う事』!」
八尺様は丸井達に襲いかかろうとした。
「……させない、わたしがあなたを止める!」
ユズは光を纏い、母親の八尺様にパンチを食らわせた。
「ポオオオオオ!」
光を浴びた母親の八尺様が目を晦まし、暴れながらユズを掴もうとする。
ユズはギリギリで攻撃をかわし、光を纏った蹴りを入れた。
さらに両手で気を作り、母親の八尺様を攻撃する。
その瞬間、誰かが走って来た。
「何やってるのよ!!」
琴葉の母親だ。
「お母さん!」
「工場に行くって言ったから心配で見に来たのよ!」
母親は、ユズと戦っている八尺様を睨んだ。
「あ、あなた何者なの!?」
「お母さん、危ないから離れて!」
「離れるわけないでしょ!」
母親は八尺様の腕を掴む。
その隙に、ユズは素早くパンチを繰り出した。
「ポオオオオ! ポオオ! ポオオ!」
「……逃がしませんよ」
八尺様が目を大きく見開くと、無数のレーザーが八尺様を貫いた。
その隙に母親は琴葉を引き寄せると、強く抱きしめた。
「お、お母さん」
「怪我はない? もう大丈夫よ! 琴葉!!!」
母親は抱きしめながら、何度も何度も琴葉の名前を呼んだ。
「……ユズ、強いんだね」
「……誰かが傷つきそうなら、他の誰かを傷つけてでも守る」
そこに、娘の八尺様がやって来た。
「ポポポポポ……」
『お母さん、ごめんなさい』
娘の八尺様は、勝手に人間の世界に行ったことを謝った。
そのまま、母親の八尺様に抱きつく。
「ポ、ポポ……」
母親の八尺様から怒りが消え、優しい表情になる。
その姿を見て、ユズはほっとするのだった。
しばらくして。
琴葉達は、信宏達や母親を工場から出て行かせ、
人気のない敷地の一角で二人の八尺様の前に立っていた。
「ポオ、ポポポオオ」
娘の八尺様が琴葉達に言葉をかける。
「『私のせいで、みんなに迷惑をかけてごめんなさい』だって」
母親の八尺様も、頭を下げて謝った。
「いや、君達は悪くない」
光一郎は、二人の八尺様に逆に頭を下げた。
「今回は怖がらせてごめんなさい。だけど、人間は悪い人ばかりじゃないから」
それを聞き、娘の八尺様は笑顔で頷いた。
「それじゃあ、そろそろ始めよう」
光一郎はそう言うと、右手を強く握り締めた。
「鑰!」
次の瞬間、光一郎の右手の甲が光り輝く。
そして、鍵のような紋章が現れた。
光一郎は、そのまま開けた空間を見つめ、右手を突き出した。
「人は人の世に。怪は怪の世に。安住の地へ、今帰らん!」
―ゴオオオオ……
瞬間、大きな音が響き、地面から光の扉が現れた。
光一郎は光の扉に近づくと、鍵の紋章が浮かび上がった右手で光の扉のノブを掴んだ。
「開!」
ドアがゆっくりと開く。
その向こうに眩い光が広がった。
「さあ、自分の世界に帰るんだ」
光一郎は二人の八尺様にそう言う。
二人は、しっかりと手を繋ぎ、扉へと向かった。
二人の八尺様はドアをくぐる。
光がその全身を包み込む。
二人は、光の中に消えて行った。
やがて、ドアがゆっくりと閉まる。
光の扉はまるで線香花火のように四方に光を散らすと、そのまま消滅した。
「今回もまた、琴葉ちゃんとユズに助けられたよ」
帰り道。
光一郎は微笑みながら、琴葉とユズに言った。
「君達が仲間でよかった」
「「えっ」」
琴葉とユズの顔に思わず笑みが浮かぶ。
「私……」
相変わらず、最上瑚江の事は気になる。
だが、光一郎に褒められ、素直に嬉しくなった。
その時、前方から声がした。
「マルサンカクーズのお二人っすよね!」
見ると、信宏がマルサンカクーズの二人に話しかけていた。
「俺、お二人の大ファンっす!」
信宏は二人と握手をしている。
怪が元の世界に帰った事で、彼らの記憶からその怪も、怪が起こした騒動も全て消えた。
信宏は初めて二人に会った事になる。
「だけど、この町にどうしているんすか?」
信宏が尋ねると、丸井と三角はニッコリと笑った。
「この町の美味しいお店紹介動画を撮ろうと思ったんだZE」
「オイラ達、最近人気がなくなってきたけど、
美味しいお店紹介で人気者に返り咲こうと思ってるんだYO」
二人は、美味しいお店を紹介する楽しさを信宏に話した。
「やっぱり、楽しみながら作れる動画が一番いいZE」
「うんうん、見てる人達を笑顔にできる動画を作りたいYO」
怪の記憶はないが、彼らの中で何かが変わったのかもしれない。
誰かが嫌がる動画はもう撮る事はないだろう。
「お二人とも最高っす! 弟子にしてください! 俺もそんな動画撮りたいっす!」
信宏は丸井達に自分を必死に売り込む。
丸井達はそんな信宏にドン引きしていたという。
「信宏さんも、もう相手が嫌がる動画は撮らないみたいだね」
「……良くなった、気がする」
「うん、そうみたいだね」
光一郎、琴葉、ユズは、その光景を見て微笑んだ。
「あら、琴葉」
ふいに声がした。
見ると仕事帰りの琴葉の母親が後ろに立っていた。
「まぁ、光一郎君も一緒なのね。まさかデート!?」
「ええ、また~??」
前回と同じ言葉に、琴葉は呆れる。
母親はニコニコしながら、「あ、そうだ」と明るい声を上げた。
「琴葉から聞いたんだけど、光一郎君は親御さんのお仕事の関係で、
ユズちゃんと二人で暮らしているのよね? だったら、今、夜食を一緒に食べましょうよ。
今からスーパーに行くところだったの。おばさん、お料理上手よ」
「ちょっと、お母さん!」
琴葉は母親の提案を恥ずかしく思いながらも、何故か嬉しくなった。
「お母さん、ありがとう……」
母親は、いつも琴葉の事を大切に思ってくれている。
八尺様から必死に助けようとしている姿を見て、琴葉はその事に気づいたのだ。
「お母さん、大好きだよ!」
「え、ええ??」
好きと言われ、母親は驚く。
そんな母親を見て、琴葉は笑顔になった。
光一郎もそんな琴葉達を見て微笑む。
「じゃあ、ハンバーグが食べたいかも」
「……わたしは、シャケがいい」
「それじゃあ、今から買いに行きましょう!」
「はい!」
「うん、行こう、お母さん!」
琴葉達は、母親と共に楽しそうに歩き出した。