Kaikaeshi and Automata   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

琴葉達は予言をする怪・くだんと共に不幸を回避するために奮闘する。
ことごとく的中する予言だったが、今度こそ止めるべく、
友人の夏純が乗った車が事故に遭うという予言を聞き、タクシーで追いかける。
だが工事の渋滞に巻き込まれ、琴葉達は近道を走って交差点に着く。
その時、ユズがトラックの横転を防ぐために段ボールを取り除いた。
こうしてくだんは、初めて予言を回避する事ができたが……。


第18話 暴走するくだん

「一体何を考えてるんだ!」

 ユズに中年の男性が怒鳴った。

 トラックを運転していたドライバーだ。

「あの、これは、ええっと」

「私達、不幸の予言を回避しようとしてたんです!」

「おかげで、怪我はしませんでしたよ!?」

 琴葉と光一郎が動揺するユズをフォローした。

「不幸の予言?」

「何なのそれ?」

 周りの人達は首を傾げる。

「琴葉、このままじゃ分かってくれないみたい」

「そうね。ちゃんと言った方がいいかも」

 琴葉達は、くだんの事や彼の予言の事を皆に話した。

 

「くだんの予言??」

 皆は、くだんの方を見る。

「ねえ、この男の人が、予言をしたって事なの?」

 夏純の母親が琴葉に尋ねた。

「そうなの! それでちゃんと不幸を回避できたの!」

 琴葉は皆にそう言う。

「全部、くだんさんのおかげなんだよ!」

「クウウウ」

 くだんは、皆に見られ、照れながらも嬉しそうに微笑んだ。

「何が予言だ!」

 トラックのドライバーが、くだんの前に立った。

「お前がこの子達に嘘をついて、段ボールを投げ入れたんだな?」

 ドライバーは、全てくだんが仕組んだイタズラだと思っていた。

「確かにそうだわ。きっと、この子達に予言が当たるって思わせようとしたのよ!」

「そのために段ボールを投げ入れたって事か?」

「何考えてるの! もうちょっとで本当に大事故になるところだったのよ!」

「琴葉」

 集まっていた人達がくだんに詰め寄る。

「そうじゃなくて!」

「くだんさんは悪くないんです!」

 琴葉と光一郎は必死に説明しようとするが、誰も聞いてくれない。

 ユズは、困惑して頭を抱えている。

「なんて悪い奴なんだ!」

「クゥウウ」

「だいたい、予言なんてあるわけない!」

「ク、クウウウウ」

「おい、こいつを警察に突き出すぞ!」

 皆は、くだんを捕まえようとした。

 

クゥゥアアアアア!

 突然、くだんが大きな声を上げた。

 くだんの身体がどす黒く輝き、真っ黒なオーラを纏う。

「くだん??」

クアアァァ! クアアアアア!

 くだんの目がどす黒く染まる。

「大変だ」

「くだんさん、どうしたの??」

「落ち着くんだ!」

「クアアアア!!」

 どす黒いオーラがさらに大きくなる。

「な、何なの?」

「分からないけど、これは!」

 光一郎が焦ると、たぬ吉が叫んだ。

「あかん! くだんはんが暴走してもうた!」

「どういう事??」

「くだんはんは普段は大人しいけど、ショックな事があって暴走すると、

 周りに不幸を撒き散らしてまうんや!」

クアアアアア!!

 瞬間、どす黒いオーラが一気に周りに広がった。

―ドオォン! ドオォン!

 止まっていた車のエンジンルームが、次々と爆発し、煙が上がる。

―ゴゴゴゴッ、ドオオオン!

 道路に立っていた木が何本も倒れる。

「どうして??」

「不幸な事が起きてるんだ!!」

 琴葉と光一郎は顔を見合わせ、ユズは歯を食いしばる。

「うわあああ!」

「助けて!!!」

 人々が慌てて逃げ出す。

―ドオオン! ゴオオオオ!

 町のあちこちから爆発音が響き、物が倒れる。

「みんな!」

 このままでは怪我だけでは済まない。

 琴葉達はくだんを見た。

「くだんさん、やめて!」

「落ち着くんだ!」

「クアアアアアア!!!」

 しかし、くだんはどす黒いオーラを放ち続けた。

「我を失っているみたい……」

「そんな!」

「くだんさん! やめるんだ!!!」

「待って、光一郎!」

 光一郎はくだんを強く抱きしめた。

クアアアア!!!

 どす黒いオーラが、光一郎を包み込む。

 光一郎の全身に激痛が走る。

「あぁああああ!」

「「光一郎(君)!!」」

 琴葉とユズは助けようと駆け寄ろうとしたが、光一郎は手を挙げ、それを拒んだ。

「き、来ちゃ、だめだ」

 光一郎は苦しみながらも、くだんを見る。

「く、くだんさん、お、落ち着いて」

クアアアア!!

「うああああぁぁ!」

 だが、くだんは元に戻らない。

「あかん! このままやと光一郎はんが!」

「光一郎君!!」

 その時……。

 

「も、もう、やめて……」

 声がした。

 声は震えていたが、しっかりとした強い意思を持っていた。

「ねえ、くだんさん……」

 一人の女の子が、くだんの前に立った。

 それは、夏純だ。

 夏純は逃げずに残っていたのだ。

「夏純ちゃん、逃げて!」

「巻き込まれるから、わたしが……」

 琴葉とユズは声を上げるが、夏純はさらに一歩、くだんに近づいた。

「私、信じるよ……。くだんさんが本物の怪だって」

 夏純はおびえながらも、くだんを見る。

「予言も、本当の事だよね? 私達を守ろうとしてね……?」

 夏純の身体を黒いオーラが包み込む。

「も、森永さん」

 光一郎は夏純を助けようとするが、身体が思うように動かない。

 そんな光一郎をよそに、夏純はまた一歩、くだんに近づく。

 夏純は、くだんの優しさを感じ取った。

 そして、助けてくれたお礼を言いたかったのだ。

 震えながらも、夏純はくだんをじっと見つめる。

 そして、ニッコリと笑った。

「ありがとう。くだんさん。私、くだんさんの予言に感謝してるよ」

「ク……ウ、ウウウ。クウウウウ」

 瞬間、どす黒いオーラが煙のように四散した。

 くだんの目も、元の目に戻った。

 

「あ、あああ」

 まとわりついていたオーラも消え、光一郎がよろける。

「光一郎」

 ユズは慌てて駆け寄り、光一郎を抱きしめた。

「ウウ、クゥウウ」

『僕、何をしてたの?』

 くだんは、ようやく我に返ったようだ。

 

 しばらくして。

 琴葉達は、空き地の一角に、くだんを連れて来た。

「クゥウゥ、クゥウウ」

 くだんは『ごめんなさい。ごめんなさい』と何度も謝っている。

「くだんさん、大丈夫だよ。そんなに謝らなくても」

「あの人が助けてくれたから」

 琴葉とユズが優しく声をかける。

「ああ。幸い、怪我人はいなかったからね。

 くだんさんが元の世界に帰れば、騒動もなかった事になる。だから安心して」

 光一郎も微笑む。

 くだんは、そんな三人の優しさを知り、目に涙を浮かべた。

 くだんは悪い怪ではない。

 琴葉達は一緒にいてそれがよく分かった。

「まあ、やけど、くだんはんはもうちょっとだけ冷静にならんとな」

 琴葉の肩の上に乗るたぬ吉がそう言うと、くだんは頷きながらも、声を出した。

「クウウ、ウウゥ、クククゥゥウ」

「えっ?」

 くだんの言葉に、琴葉は目を見開いた。

「どうしたんだい?」

「まさか、冷静にならんとって言ったから、くだんはん、怒ったんか?」

「そうじゃないよ」

 琴葉は、くだんの言った言葉を光一郎達に教えた。

 くだんは、人間の世界に興味があったものの、

 自分が暴走しやすい性格であると知っていたので、行くべきではないと思っていたらしい。

「だけどある日、声が聞こえてきたんだって」

 

―こっちへおいで。

 

 それは、人間の声だった。

 男なのか女なのか分からない。

 心の中に響く不思議な声。

 声がした直後、目の前に光の扉が現れ、ドアが開いたのだという。

「なんだって??」

 それを聞き、光一郎は驚く。

「くだんさん、その人間は何者だったんだい??」

 光一郎が尋ねたが、くだんは首を横に振った。

「クウゥウ」

「『分からない』」

 琴葉は戸惑いながら、言葉を訳した。

「誰かに呼び出されたみたい……」

 

 やがて光一郎はくだんを元の世界に帰す事にした。

 光一郎は、右手を強く握り締めた。

「鑰!」

 次の瞬間、光一郎の右手の甲が光り輝く。

 そして、鍵のような紋章が現れた。

 光一郎は、そのまま開けた空間を見つめ、右手を突き出した。

「人は人の世に。怪は怪の世に。安住の地へ、今帰らん!」

―ゴオオオオ……

 瞬間、大きな音が響き、地面から光の扉が現れた。

 光一郎は光の扉に近づくと、鍵の紋章が浮かび上がった右手で光の扉のノブを掴んだ。

「開!」

 ドアがゆっくりと開く。

 その向こうに眩い光が広がった。

「さあ、自分の世界に帰るんだ」

 光一郎はくだんにそう言う。

 くだんは頷くと、扉へと向かい、ドアをくぐる。

 光がその全身を包み込んだ。

 くだんが光の中に消え、ドアがゆっくりと閉まる。

 光の扉はまるで線香花火のように四方に光を散らすと、そのまま消滅した。

 無事、くだんを元の世界に帰す事ができた。

 しかし、琴葉、光一郎、ユズは浮かない顔をしていた。

 

「誰が、くだんさんを人間界に呼んだんだ……?」

 三人は、言い知れぬ不安感を抱くのだった。

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