Kaikaeshi and Automata   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

琴葉達は住宅地で翼猫を探していたが、見つからなかった。
男の子の話を聞き、ブランコ公園で翼猫を見つけるが、逃げられてしまう。
何とか光一郎が翼猫を捕まえ、交渉して元の世界に帰す事に成功するが、
翼猫は兄弟があと六体いると告げ、琴葉達は残りの翼猫を探し始めるのだった。


第36話 最後の翼猫

「ニャンニャンニャ」

 七体目の翼猫を追いかけながら、光一郎の肩に乗っていた翼猫が声を上げる。

「『僕達が止めるよ』だって!」

 翼猫達は一斉に飛び始めた。

「ニャアア、ニャアア!」

 彼らは弟に向かって、『止まるんだ』と言い続ける。

 しかし、七体目の翼猫は止まる気配がない。

 それどころか兄弟の翼猫の方を睨むように見つめた。

「ニャアアアアア!!」

 七体目の翼猫は猛スピードで兄弟達へと飛んでくる。

「あっ!」

「ニャンンン~」

 琴葉が声を上げた瞬間、七体目の翼猫が脚で一体の翼猫を蹴った。

 蹴られた翼猫はきりもみしながら頭から落ちていく。

「危ない!」

 玲人は走り、落ちてくる翼猫をキャッチした。

「ニャ、ニャニャ」

 蹴られて意識が朦朧となっているようだが、ケガはないようだ。

「どうして兄弟を!?」

 玲人が顔を上げると、目の前にもう一体翼猫が落ちてきた。

「うわっ!」

「玲人さん!」

 玲人の顔に翼猫のお尻が当たる。

 瑚江が慌てて玲人のもとへ駆け寄る。

「酷い奴だな……」

「だ、大丈夫だ……」

 ユズが嘆き、玲人はその場に倒れてしまったが、もう一体の翼猫も無事にキャッチしたようだ。

 その翼猫も、七体目の翼猫が蹴ったのだ。

「ニャ~ニャンニャ?」

 空中では、長男の翼猫が七体目の弟に話しかけていた。

 琴葉はその様子を見上げながら、言葉を訳す。

「『どうして暴れるんだ?』」

「ニャンニャニャニャ」

「『お前は兄弟の中で一番大人しい性格だろ』」

 長男の翼猫は七体目の弟にそう言うが、弟の毛は逆立ったままだ。

「ニャアアア! ニャンニャアアアア!」

「『来るな! こっちに来るな!』って言ってる」

「まさか、既に誰かと交渉してしまったのかも」

 光一郎が険しい表情でそう言った。

 この町には、怪を呼び寄せた紫音が潜んでいる。

 もしかしたら紫音と先に交渉し、凶暴になってしまったのかもしれない。

 光一郎は七体目の翼猫に向かって話しかけた。

「君は紫音と会ったのかい? その人は悪い奴なんだ。だから落ち着いて。僕達の話を聞いて!」

 先ほど、長男の翼猫が七体の翼猫は大人しい性格と言っていた。

 話せばきっと分かってくれると思ったのだ。

 しかし、七体目の翼猫は飛びながら叫ぶように声を上げた。

「ニャアアンニャ、ニャンニャアアアア!」

「え? だったらどうして暴れるの?」

 それを聞き、琴葉が戸惑う。

「琴葉ちゃん、彼は何て?」

「『そんな人とは交渉していない。僕はあそこにいた人達みたいになりたくない』って」

「あそこにいた人達?」

「12号ではないだろうな」

 七体目の翼猫は図書館を見ていた。

『とにかく落ち着け!』

 長男の翼猫が弟を捕まえようとした。

「ニャアアンニャニャ!」

 弟の翼猫は長男に体当たりする。

 他の兄弟達が慌てて止めようとするが、彼らにも体当たりをした。

「そんな!」

「琴葉ちゃん、瑚江、ユズ、翼猫達を!」

 光一郎が落ちてくる翼猫を見て叫ぶ。

 琴葉、瑚江、ユズは、光一郎と共に慌てて翼猫達をキャッチする。

 玲人も先程キャッチした翼猫達を地面に寝かせて、落ちてくる翼猫を抱き止めた。

「ニャアアアア~」

 七体目の翼猫は泣きそうな声でそのまま飛んでいった。

「わたしが捕まえる!」

 琴葉、光一郎、ユズは急いで七体目の翼猫を追う。

「ニャア、ニャアアア!」

 七体目の翼猫は鳴きながら空を飛んでいく。

「待って! 逃げないで!」

 琴葉、光一郎、ユズは必死に呼びかける。

 琴葉達の後ろには、長男の翼猫を始め三体の兄弟が飛びながら追いかけていた。

「何とか止めないと」

 だが兄弟の翼猫が捕まえようとしても、

 七体目の翼猫は先程と同じように暴れてしまうだけだろう。

「私達が空を飛べたら」

「捕まえられるのに」

 ふと琴葉とユズが言う。

 人間なら抱き締めて落ち着かせる事ができるかもしれない。

 だが逆に、レプリカントは命を持たず、握り潰してしまう。

 すると、隣を走っていた光一郎がチラリと空を見た。

「空を飛ぶ……」

 その時、図書館の敷地の向こうに道路が見えてきた。

 図書館は小高い丘の上にあり、道路は丘に沿って長い坂になっている。

 翼猫はそんな道路を横切るように、町の方へ逃げようとしていた。

「そんな!」

 坂を降りていたら遠回りになる。

 このままでは翼猫を見失ってしまう。

「早く捕まえないといけないのに!」

 また探すとなるとかなりの時間のロスだ。

 琴葉は何かいいアイデアはないかと、光一郎を見た。

「えっ?」

 光一郎は何故かそのまま坂を降りるのではなく、

 翼猫と同じように道路を横切るように一直線に走った。

「光一郎、何をしている?」

 前方にガードレールが見える……その先は崖だ。

「ジャンプしても翼猫には届かないよ!」

「分かってる! だから僕も翼を生やすんだ!」

「えっ?」

 光一郎はついてきた三体の翼に向かって叫んだ。

「僕を飛びながら引っ張って!」

「それってまさか!」

「無茶する気だな!」

 琴葉とユズは戸惑ったが三体の翼猫はピンと来たようで、慌てて光一郎のもとへ飛んでいった。

「さあ、やって!」

 次の瞬間、三体の翼猫は光一郎の肩を掴み、大空へ舞い上がった。

「光一郎君!」

 琴葉とユズの目の前で、光一郎が空を飛ぶ。

 光一郎はそのまま七体目の翼猫のもとに飛んでいった。

「ニャア、ニャアアア!」

 七体目の翼猫はパニックになる。

「大丈夫。もう心配する事はないよ」

 光一郎はそんな翼猫に微笑む。

 その表情を見て、翼猫は一瞬動きが止まる。

 光一郎はその隙をつき、優しく抱き締めた。

 

「光一郎の奴、流石だな!」

「意外と無茶をするんだ、あいつは」

「まさか空を飛ぶなんて!」

 玲人と瑚江が琴葉の傍にやってきた。

 一緒にいた残りの三体の翼猫も一緒だ。

 やがて、光一郎が道路に降りてくる。

 翼猫達が光一郎に抱かれた弟の傍に飛んで集まる。

 七体目の翼猫は少し落ち着いたようで、逆立っていた毛が元に戻っていた。

 琴葉達は、無事七体の翼猫を捕まえる事ができたのだった。

 

 しばらくして。

 琴葉達は図書館の芝生の広場に戻ってきた。

 みな、神妙な表情になっている。

 目の前にはあの巨大な足跡があった。

「まさか、この足跡にそんな意味があったなんて……」

 琴葉は足跡を見つめながらそう呟く。

 最初にこれを見た時の嫌な予感が的中してしまったのだ。

 それはこの足跡がユズの言う通り、怪のものだという事である。

 琴葉達は、先程光の扉を開けて七体の翼猫を元の世界に帰した。

 だがその前に、一番下の弟の翼猫からとんでもない事を聞いた。

 彼は図書館にいた人達にイタズラをして楽しんでいた。

 そこへ、見知らぬ怪が現れたのだという。

 それは三メートルを超える巨大で凶暴な怪だった。

 翼猫は怖くなり、慌てて図書館の返却ボックスの中に隠れた。

 すると人々の悲鳴が聞こえたらしい。

 気づくと、怪はいなくなっていた。

 しかしそれだけではなかった。

 図書館や芝生にいた人々も皆、消えてしまっていたのだ。

 翼猫はあまりの恐怖に、そのままボックスの中に隠れていたのだという。

「僕達が来た時、彼が凶暴になっていたのは、怯えてパニックになっていたせいだったんだね」

 そのため、兄弟の翼猫の説得にも耳を傾けなかったのだ。

「だけど、一体どんな怪なの?」

 図書館に全く人がいなかったのは、その怪の影響だろう。

 

 その時、玲人のスマホが鳴った。

 電話がかかってきたようだ。

 玲人はスマホを取り出して画面を見た。

 一瞬で表情が変わる。

「父さんからだ……」

「えっ!?」

「遅かったか!」

 光一郎達は玲人を見た。

 玲人が電話に出ると、父親は周りにも聞こえるほどの大きな声で、電話の向こうから叫んだ。

「二丁目の建設中のビルにいる! 巨大な怪が現れた!」

「あいつだ! あいつに違いない!」

 ユズが感情剥き出しで叫び出すと、父親は話を続けた。

「交渉は失敗した! ここにいる全員やられた!

 だから、光一郎! 絶対にここに来るな! 今すぐ逃げるんだ!」

 次の瞬間、電話が切れた。

「父さん!」

 叫ぶ玲人の横で瑚江が呟く。

「おじさま達がやられるなんて……」

 あり得ない事が起きた。

「父さん……」

 光一郎も呆然となる。

 そんな光一郎達に、琴葉が声をかけた。

「みんな、行こう! 助けに行かなきゃ!」

 ここで逃げるわけにはいかない。

 琴葉はそう思ったのだ。

「当たり前だ。わたし達はそのために来たんだ」

「あ、ああ、そうだね」

「ええ、すぐに行かないと」

「琴葉ちゃん、兄さん、瑚江、ユズ、行こう!」

 光一郎の言葉に、一同頷く。

 琴葉達は、急いで利光達のいるビルへ向かって走り出した。

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