Kaikaeshi and Automata 作:アヤ・ノア
琴葉達は住宅地で翼猫を探していたが、見つからなかった。
男の子の話を聞き、ブランコ公園で翼猫を見つけるが、逃げられてしまう。
何とか光一郎が翼猫を捕まえ、交渉して元の世界に帰す事に成功するが、
翼猫は兄弟があと六体いると告げ、琴葉達は残りの翼猫を探し始めるのだった。
「ニャンニャンニャ」
七体目の翼猫を追いかけながら、光一郎の肩に乗っていた翼猫が声を上げる。
「『僕達が止めるよ』だって!」
翼猫達は一斉に飛び始めた。
「ニャアア、ニャアア!」
彼らは弟に向かって、『止まるんだ』と言い続ける。
しかし、七体目の翼猫は止まる気配がない。
それどころか兄弟の翼猫の方を睨むように見つめた。
「ニャアアアアア!!」
七体目の翼猫は猛スピードで兄弟達へと飛んでくる。
「あっ!」
「ニャンンン~」
琴葉が声を上げた瞬間、七体目の翼猫が脚で一体の翼猫を蹴った。
蹴られた翼猫はきりもみしながら頭から落ちていく。
「危ない!」
玲人は走り、落ちてくる翼猫をキャッチした。
「ニャ、ニャニャ」
蹴られて意識が朦朧となっているようだが、ケガはないようだ。
「どうして兄弟を!?」
玲人が顔を上げると、目の前にもう一体翼猫が落ちてきた。
「うわっ!」
「玲人さん!」
玲人の顔に翼猫のお尻が当たる。
瑚江が慌てて玲人のもとへ駆け寄る。
「酷い奴だな……」
「だ、大丈夫だ……」
ユズが嘆き、玲人はその場に倒れてしまったが、もう一体の翼猫も無事にキャッチしたようだ。
その翼猫も、七体目の翼猫が蹴ったのだ。
「ニャ~ニャンニャ?」
空中では、長男の翼猫が七体目の弟に話しかけていた。
琴葉はその様子を見上げながら、言葉を訳す。
「『どうして暴れるんだ?』」
「ニャンニャニャニャ」
「『お前は兄弟の中で一番大人しい性格だろ』」
長男の翼猫は七体目の弟にそう言うが、弟の毛は逆立ったままだ。
「ニャアアア! ニャンニャアアアア!」
「『来るな! こっちに来るな!』って言ってる」
「まさか、既に誰かと交渉してしまったのかも」
光一郎が険しい表情でそう言った。
この町には、怪を呼び寄せた紫音が潜んでいる。
もしかしたら紫音と先に交渉し、凶暴になってしまったのかもしれない。
光一郎は七体目の翼猫に向かって話しかけた。
「君は紫音と会ったのかい? その人は悪い奴なんだ。だから落ち着いて。僕達の話を聞いて!」
先ほど、長男の翼猫が七体の翼猫は大人しい性格と言っていた。
話せばきっと分かってくれると思ったのだ。
しかし、七体目の翼猫は飛びながら叫ぶように声を上げた。
「ニャアアンニャ、ニャンニャアアアア!」
「え? だったらどうして暴れるの?」
それを聞き、琴葉が戸惑う。
「琴葉ちゃん、彼は何て?」
「『そんな人とは交渉していない。僕はあそこにいた人達みたいになりたくない』って」
「あそこにいた人達?」
「12号ではないだろうな」
七体目の翼猫は図書館を見ていた。
『とにかく落ち着け!』
長男の翼猫が弟を捕まえようとした。
「ニャアアンニャニャ!」
弟の翼猫は長男に体当たりする。
他の兄弟達が慌てて止めようとするが、彼らにも体当たりをした。
「そんな!」
「琴葉ちゃん、瑚江、ユズ、翼猫達を!」
光一郎が落ちてくる翼猫を見て叫ぶ。
琴葉、瑚江、ユズは、光一郎と共に慌てて翼猫達をキャッチする。
玲人も先程キャッチした翼猫達を地面に寝かせて、落ちてくる翼猫を抱き止めた。
「ニャアアアア~」
七体目の翼猫は泣きそうな声でそのまま飛んでいった。
「わたしが捕まえる!」
琴葉、光一郎、ユズは急いで七体目の翼猫を追う。
「ニャア、ニャアアア!」
七体目の翼猫は鳴きながら空を飛んでいく。
「待って! 逃げないで!」
琴葉、光一郎、ユズは必死に呼びかける。
琴葉達の後ろには、長男の翼猫を始め三体の兄弟が飛びながら追いかけていた。
「何とか止めないと」
だが兄弟の翼猫が捕まえようとしても、
七体目の翼猫は先程と同じように暴れてしまうだけだろう。
「私達が空を飛べたら」
「捕まえられるのに」
ふと琴葉とユズが言う。
人間なら抱き締めて落ち着かせる事ができるかもしれない。
だが逆に、レプリカントは命を持たず、握り潰してしまう。
すると、隣を走っていた光一郎がチラリと空を見た。
「空を飛ぶ……」
その時、図書館の敷地の向こうに道路が見えてきた。
図書館は小高い丘の上にあり、道路は丘に沿って長い坂になっている。
翼猫はそんな道路を横切るように、町の方へ逃げようとしていた。
「そんな!」
坂を降りていたら遠回りになる。
このままでは翼猫を見失ってしまう。
「早く捕まえないといけないのに!」
また探すとなるとかなりの時間のロスだ。
琴葉は何かいいアイデアはないかと、光一郎を見た。
「えっ?」
光一郎は何故かそのまま坂を降りるのではなく、
翼猫と同じように道路を横切るように一直線に走った。
「光一郎、何をしている?」
前方にガードレールが見える……その先は崖だ。
「ジャンプしても翼猫には届かないよ!」
「分かってる! だから僕も翼を生やすんだ!」
「えっ?」
光一郎はついてきた三体の翼に向かって叫んだ。
「僕を飛びながら引っ張って!」
「それってまさか!」
「無茶する気だな!」
琴葉とユズは戸惑ったが三体の翼猫はピンと来たようで、慌てて光一郎のもとへ飛んでいった。
「さあ、やって!」
次の瞬間、三体の翼猫は光一郎の肩を掴み、大空へ舞い上がった。
「光一郎君!」
琴葉とユズの目の前で、光一郎が空を飛ぶ。
光一郎はそのまま七体目の翼猫のもとに飛んでいった。
「ニャア、ニャアアア!」
七体目の翼猫はパニックになる。
「大丈夫。もう心配する事はないよ」
光一郎はそんな翼猫に微笑む。
その表情を見て、翼猫は一瞬動きが止まる。
光一郎はその隙をつき、優しく抱き締めた。
「光一郎の奴、流石だな!」
「意外と無茶をするんだ、あいつは」
「まさか空を飛ぶなんて!」
玲人と瑚江が琴葉の傍にやってきた。
一緒にいた残りの三体の翼猫も一緒だ。
やがて、光一郎が道路に降りてくる。
翼猫達が光一郎に抱かれた弟の傍に飛んで集まる。
七体目の翼猫は少し落ち着いたようで、逆立っていた毛が元に戻っていた。
琴葉達は、無事七体の翼猫を捕まえる事ができたのだった。
しばらくして。
琴葉達は図書館の芝生の広場に戻ってきた。
みな、神妙な表情になっている。
目の前にはあの巨大な足跡があった。
「まさか、この足跡にそんな意味があったなんて……」
琴葉は足跡を見つめながらそう呟く。
最初にこれを見た時の嫌な予感が的中してしまったのだ。
それはこの足跡がユズの言う通り、怪のものだという事である。
琴葉達は、先程光の扉を開けて七体の翼猫を元の世界に帰した。
だがその前に、一番下の弟の翼猫からとんでもない事を聞いた。
彼は図書館にいた人達にイタズラをして楽しんでいた。
そこへ、見知らぬ怪が現れたのだという。
それは三メートルを超える巨大で凶暴な怪だった。
翼猫は怖くなり、慌てて図書館の返却ボックスの中に隠れた。
すると人々の悲鳴が聞こえたらしい。
気づくと、怪はいなくなっていた。
しかしそれだけではなかった。
図書館や芝生にいた人々も皆、消えてしまっていたのだ。
翼猫はあまりの恐怖に、そのままボックスの中に隠れていたのだという。
「僕達が来た時、彼が凶暴になっていたのは、怯えてパニックになっていたせいだったんだね」
そのため、兄弟の翼猫の説得にも耳を傾けなかったのだ。
「だけど、一体どんな怪なの?」
図書館に全く人がいなかったのは、その怪の影響だろう。
その時、玲人のスマホが鳴った。
電話がかかってきたようだ。
玲人はスマホを取り出して画面を見た。
一瞬で表情が変わる。
「父さんからだ……」
「えっ!?」
「遅かったか!」
光一郎達は玲人を見た。
玲人が電話に出ると、父親は周りにも聞こえるほどの大きな声で、電話の向こうから叫んだ。
「二丁目の建設中のビルにいる! 巨大な怪が現れた!」
「あいつだ! あいつに違いない!」
ユズが感情剥き出しで叫び出すと、父親は話を続けた。
「交渉は失敗した! ここにいる全員やられた!
だから、光一郎! 絶対にここに来るな! 今すぐ逃げるんだ!」
次の瞬間、電話が切れた。
「父さん!」
叫ぶ玲人の横で瑚江が呟く。
「おじさま達がやられるなんて……」
あり得ない事が起きた。
「父さん……」
光一郎も呆然となる。
そんな光一郎達に、琴葉が声をかけた。
「みんな、行こう! 助けに行かなきゃ!」
ここで逃げるわけにはいかない。
琴葉はそう思ったのだ。
「当たり前だ。わたし達はそのために来たんだ」
「あ、ああ、そうだね」
「ええ、すぐに行かないと」
「琴葉ちゃん、兄さん、瑚江、ユズ、行こう!」
光一郎の言葉に、一同頷く。
琴葉達は、急いで利光達のいるビルへ向かって走り出した。