Kaikaeshi and Automata   作:アヤ・ノア

40 / 45
~前回までのあらすじ~

紫音と酒呑童子は町に恐怖をもたらすために駅に現れる。
酒呑童子は人々を煙で包み込み、ひょうたんに吸い込む。
駅前の人々は次々と吸い込まれ、酒に変えられる。
次に彼らはショッピングモールに向かい、再び人々を襲う。
夏純達は恐怖に立ち向かい、女の子を守ろうとする。
その時、琴葉達が現れ、酒呑童子と対峙するのだった。


第39話 酒呑童子との交渉

夏純ちゃん! みんな! 今の内に逃げて!

 琴葉は夏純達に向かって叫んだ。

「だけど琴葉ちゃん達は?」

 琴葉達が怪帰師と通役とは知らない夏純達は、

 酒呑童子と戦おうとしている彼らを見て不安になった。

 しかし、琴葉は真剣な表情で夏純達を見た。

「私達はこの怪を元の世界に帰すために来たの」

「えっ?」

 夏純達は戸惑うが、琴葉が真っ直ぐな目をしている事に気づいた。

 ふざけている様子でもウソをついているようにも見えない。

 それは琴葉だけではない。

 光一郎達も決意を固めた表情をしている。

「わ、分かった……」

 夏純達は心配になりながらも、琴葉達なら何とかしてくれるかもと感じるようになっていた。

「琴葉ちゃん! 光一郎君! 絶対にケガはしないでね!」

「わたしがいるからね」

 夏純達は琴葉達を信じ、女の子を連れてその場から走っていった。

 

「ふん。逃がしても、君達を吸い込んだらすぐに彼らも吸い込むだけというのに」

 紫音はクスッと笑う。

「だからそんな事させないって言ってるでしょ!」

 琴葉は声を荒らげながら反論した。

「じゃあ、彼と交渉でもしてやめさせればいいよ」

 紫音は指をパチンと鳴らした。

「シュウシュウウ!」

 酒呑童子が勢いよくひょうたんの中の酒を飲む。

 身体がさらに大きくなった。

 その大きさは十メートルを超えるほどだ。

「みんな、気をつけるんだ!」

「ああ。だけど光一郎、どうやって戦う?」

 光一郎と玲人は身構えながら、酒呑童子と距離を取る。

 ユズは防御しながら接近する。

「とにかく、これ以上暴れさせるのをやめさせないとだよね」

 琴葉の言葉に、光一郎達が頷く。

 だが、どうやって酒呑童子に言う事を聞かせればいいのか誰も分からない。

 そんな中、瑚江がふと呟く。

「せめて、弱点が分かれば」

「弱点?」

 戸惑う琴葉に、瑚江は説明をした。

「弱点が分かれば、そこを攻めればいいでしょ。当然酒呑童子はそれを嫌がる。

 それをしてほしくない一心で、私達と交渉すると思うの」

「そう言われれば、確かにそうかも」

 交渉ができれば、酒呑童子を元の世界に帰す事ができる。

「だけど弱点って?」

 その時、酒呑童子が大きく口を開いた。

「シュウゥウ、シュシュシュ」

「『お前達もみんな、今から酒にしてやる』って言ってるよ!」

 酒呑童子は大きく息を吸った。

「煙を吐く気だ!」

 光一郎が叫んだ瞬間、酒呑童子は黒い煙を吐いた。

「わっ!」

「させない!」

 ユズは回し蹴りを放つが、酒呑童子には効果がない。

 琴葉達は四方に分かれ、素早く避ける。

「ぬわ、危険や!」

 たぬ吉も琴葉のもとへ走り、扉に飛び乗った。

「シュウウウ!」

「逃がすか!」

 酒吞童子はそう言いながら、さらに口から煙を吐く。

「あの煙を何とかしないと!」

 光一郎達は必死に煙をよけながら、酒呑童子を見る。

 煙に包まれたら最後、ひょうたんに吸い込まれてしまう。

「せい! やぁっ! はぁっ!」

 煙は払う事もできない。

 ユズは格闘技で攻撃するが、酒呑童子には効いていない。

「だったら、あのひょうたんを奪えば」

 琴葉は煙から逃げながら、酒呑童子が持つひょうたんを見る。

 ひょうたんを奪えば吸い込まれる事はない。

「だけど琴葉ちゃん、どうやって奪うっていうんだい??」

 光一郎が焦りながら尋ねる。

「ユズちゃんみたいに、煙を何とか避けて近づければいいんだけど」

「煙を、よける……」

 その言葉を聞き、瑚江はハッとした。

 酒呑童子をじっと見つめる。

「もしかしたら」

 瑚江は琴葉達に何かを伝えようとした。

 だが瑚江が琴葉の方を見ると、後ろに煙が追ってきていた。

 琴葉はそれに気づいていない。

「琴葉ちゃん!」

 次の瞬間、瑚江は琴葉を突き飛ばした。

「きゃ!」

 琴葉はよろけながら、瑚江を見る。

 瑚江は煙に包まれてしまった。

「瑚江さん!」

「瑚江!」

 光一郎と玲人が慌てて琴葉達のもとへ向かう。

「煙を?」

 しかし、瑚江は手を挙げてそれを思った。

「来ちゃ駄目! みんな! 煙よ! 煙を見て!」

 瑚江を包み込んでいた煙がぐいっと引っ張られる。

「みんな! 諦めないで!」

瑚江さん!!

「瑚江!」

 瑚江はそのまま、酒呑童子が持つひょうたんの中に吸い込まれてしまった。

 

「そんな!」

 光一郎と玲人は愕然とする。

 そんな光一郎達を見て、紫音が笑う。

「残念だったね。だけど君達もすぐ同じようになるから嘆く事はないよ」

 紫音は酒呑童子に光一郎達も酒にするようにと話す。

「させるか!」

 ユズは酒呑童子目掛けて、蹴りを繰り出した。

 そんな中、琴葉は瑚江の言った言葉が気にかかっていた。

「煙を……」

 瑚江は「煙を見て」と言ったのだ。

 琴葉は煙を見つめる。

 煙は周囲一面に漂っていた。

(煙に何があるの? 包み込まれたら駄目って言いたかったのかな……?)

 そう思いながらも、瑚江の真意がそれではないと気づく。

(瑚江は、「避ける」という言葉に引っかかっていた?)

「避ける……避ける……避ける……」

 琴葉は呟きながら、煙をじっと見つめる。

 その時、風が吹いた。

 煙が風に靡き、風下に立つ酒呑童子の方に流れる。

「あっ!」

 それを見て、琴葉は大きく目を見開いた。

「みんな! 酒呑童子の近くへ走って!」

「えっ? 琴葉ちゃん、ひょうたんを奪うつもりかい?」

「そうじゃない! 瑚江さんはこの事を言いたかったの!

 酒呑童子の弱点は、私達がユズちゃんみたいに近づけば分かるはず!」

 琴葉はそう言うと、酒呑童子に向かって駆け出した。

「琴葉ちゃん!」

「光一郎、僕達も行こう! 彼女を信じるんだ!」

「信じる……」

 今まで怪との交渉で何度もピンチに陥った。

 そのたびに琴葉は勇気と行動力で救ってくれた。

「そうだね。琴葉ちゃん!」

 光一郎と玲人が琴葉を追って酒呑童子のもとへと走る。

 

「交渉する事を諦めたみたいだね」

 紫音はその光景を見て微笑む。

 酒呑童子もシュッシュッシュッと笑った。

「さあ、酒呑童子、彼らも酒にするんだ」

 酒呑童子は大きく頷くと、ひょうたんを構えた。

 周りを漂っていた煙が走る琴葉達を追う。

 煙はだんだん四人に近づいてきた。

 しかし、それを見て酒呑童子が目をパチクリさせた。

「シュウウウ! シュシュシュウウ!」

 酒呑童子は急にパニックになる。

「どうしたんだ?」

 紫音が驚いていると、琴葉が口を開いた。

「『やばい! 煙が俺のところに来た』って言ったの!」

「何だと?」

 酒呑童子は急にオロオロし始め、身を縮めてしまった。

「やっぱり、瑚江さんの思っていた通りだ!」

 その姿を見て琴葉は笑顔になる。

「琴葉、どういう事?」

「ユズちゃん、周りを見て」

「周り?」

 ユズは周りを見る。

 すると、煙が酒吞童子を取り囲むように浮かんでいた。

「煙に取り込まれると、ひょうたんの中に吸い込まれてしまうでしょ。

 だけどそれは私達だけじゃない。酒呑童子も同じ事なの」

「えっ?」

 先ほど風が吹いた時、酒呑童子の方に煙が動いた。

 酒呑童子はそれを見て慌てて煙から離れた。

「それを見て私も気づいたの」

 酒呑童子の弱点は、

 自分も煙に取り囲まれたらひょうたんに吸い込まれてしまうというものだった。

 琴葉は身を縮める酒呑童子を睨んだ。

「このままだとあなたも酒になる! それが嫌だったら私達と交渉をしなさい!」

 琴葉は睨みつけたまま、酒呑童子に一歩近づく。

「シュシュウウ」

「『なんて奴だ』? 私達を誰だと思ってるの。怪帰師と通役なんだから!」

アンドロイド(わたし)も忘れるな」

「ごめんなさい」

 酒呑童子は琴葉とユズに恐れをなす。

「さあ、光一郎君」

「あ、ああ」

 光一郎は琴葉とユズの横に立つと、酒呑童子に話しかけた。

「今すぐ交渉をしよう」

「シュウウ。シュウシュシュシュシュシュシュウ」

「『分かった。先の交渉はとりやめだ。今すぐ元の世界に帰してくれ。それが条件だ』

 って言っているわ」

 途端に、酒呑童子の身体が小さくなる。

 十メートルから五メートル、二メートル、そして五十センチほどになった。

「……小さい」

「もしかして、それがほんとのあなたの大きさなの?」

 琴葉が尋ねると酒呑童子は何度も頷く。

 どうやら元々は小さな怪のようだ。

「とにかく、帰ってくれるならそれでいい」

 光一郎が言う。

 酒呑童子が元の世界に帰れば、この世界も元に戻る。

 利光も瑚江も戻ってくるのだ。

「よくやった。ユズ、琴葉ちゃん、光一郎」

 玲人が笑顔で二人に声をかける。

 光一郎はさっそく光の扉を開こうと、右手に力を入れた。

 そのとき……紫音が酒呑童子に近づき、ひょうたんを奪った。

「まったく、自分の力が弱点なんて情けないものだね」

「シャアアア!!」

 酒呑童子は慌ててひょうたんを奪い返そうとするが、紫音はそんな酒呑童子を蹴った。

「シャッ!」

 酒呑童子は蹴られてよろけ、周りを取り囲んでいた煙の中に入ってしまう。

 紫音はそれを見てクスッと笑った。

「もういい頃合いだろう。君の役目は終わったよ。ご苦労様」

 次の瞬間、紫音は酒呑童子の方にひょうたんの吸い口を向けた。

「シャ、シャヒャアアア~!」

 酒呑童子は煙と共にひょうたんの中に吸い込まれてしまった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。