Kaikaeshi and Automata   作:アヤ・ノア

42 / 45
~前回までのあらすじ~

紫音はひょうたんで酒吞童子を吸い込み、計画を進める。
パワースポットである町のエネルギーを利用し、禁断の光の扉を開こうとしていた。
魔王の世界と繋がる扉が開けば、全てを魔王が食べ尽くしてしまう。
光一郎達は紫音を止めようとするが、二台のアンドロイドが立ちはだかるのだった。


第41話 意外な再会

「お父さん!」

「「心音!」」

 琴葉は車椅子に座る男性、二人は8号に必死に声をかける。

 三年前、琴葉の父親は病気で亡くなり、心音も事故で通役を引退し、アンドロイドも廃棄した。

 それなのに何故か、8号として、アンドロイドとして生きている。

「まさか」

 何かに気づいた玲人は、眉間に皺を寄せながら琴葉を見た。

「私を造ったのはお前だ。そして私は、死者をアンドロイドに変えられる」

「何だと」

「そんな」

 琴葉は改めて父親の姿をしたアンドロイドを見た。

 父親の姿をしたアンドロイドは言葉を発さず、青白い顔をして項垂れていた。

 目の焦点も定まっておらず、まるで意思がないようだ。

 そんな父親の姿をしたアンドロイドに琴葉は呼びかけ続ける。

「お父さん、琴葉だよ! ねえ、お父さん!」

 だが、父親の姿をしたアンドロイドは項垂れたまま、まるで反応しない。

 8号は槍を携える。

「この男がその子の父親だったとはな。だが、私は任務に忠実だ。全ては……紫音のために」

 8号は槍を携えながら、琴葉の父親を操っている理由を話した。

 紫音はこの町のエネルギーを集めるための怪を必要としていた。

 しかし、肝心の通役がおらず怪と交渉ができなかった。

 8号はその事を知り、協力する事にした。

 死んだ琴葉の父親をアンドロイドに変え、通役として仕事をさせたのだ。

「お父さんも通役だったの……?」

 戸惑う琴葉に、8号は首を横に振る。

「そうじゃない……。こいつは……その素質があっただけだ」

「それって……」

 琴葉はその意味を理解してハッとする。

 琴葉達の住む町はパワースポットになっていた。

 町で暮らす人達の身体にはそのエネルギーが蓄えられていた。

 そんななかで、通役の素質があった琴葉はその力に目覚めたのだ。

「そうか。琴葉ちゃんのお母さんには通役の力はなさそうだった。

 お父さんの方にその素質があったんだね」

「そんな……」

 琴葉は死んだ父を利用する紫音が許せなかった。

 一方、玲人は勇気を振り絞り、8号に一歩近づいた。

「いくら心音の顔をしていても、何故、あの男に協力するんだ?

 酒呑童子がどうなったか知らないのか?」

 玲人と交渉した酒呑童子はひょうたんの中に人々を集めるだけ集め、最後は紫音に裏切られた。

「紫音は君の事も利用しているだけだ。

 エネルギーを集めた今、裏切られて酒呑童子と同じような運命になるだけだぞ」

 紫音の目的は、魔王をこの世界に呼ぶ事である。

 そうなれば8号もただでは済まないだろう。

 すると、8号は無言で槍を携えた。

「それこそが私の待っていた世界だ」

「待っていた世界?」

 玲人も琴葉達も全く意味が分からなかった。

「何を言っている、ちゃんと分かるように話せ!」

 痺れを切らしたユズが怒鳴るようにそう言った。

 そんなユズを、8号は見下すような目で見る。

「な、なんだ」

「楽しそうで……羨ましい」

「はあ? 何だと??」

 首を傾げるユズを他所に、8号は空を見上げた。

「私は心音の代わりにしか生まれず、苛立っていた」

 8号は自分の事をゆっくりと話し始めた。

 通役を引退した心音の代わりになるべく、利光がアンドロイドを造った。

 しかし、いずれも心音の代わりになれずに捨てられ、3号を除いて全て廃棄処分された。

 そこを紫音に拾われ、8号として生まれ変わった。

「私と紫音はお互いに復讐の目的を持っていて、同調した。だから、紫音に従う」

「全てを知っていて協力してるって事……?」

 琴葉は真意を知り怒りを覚える。

「私は一番いい席で、世界の終わりを見る!」

 8号はその場から走り出そうとした。

「あっ!」

「待つんだ!」

 光一郎と玲人は追いかけたが、アンドロイドである8号の走るスピードが速く、追いつかない。

「お父さん!」

 琴葉も追いかけるが、どんどん離れていく。

「そんな!」

 このままでは逃げられてしまう。

 父親がどうなるか分からない。

 琴葉は必死に走るが、追いつく事ができない。

 その時、琴葉の前にユズが立った。

「わたしが、あいつを倒す!」

 アンドロイドにはアンドロイドで対抗する。

 ユズは8号と一騎打ちをし、8号もまた、ユズを止めようと迎え撃った。

 

「私にとっては、紫音こそが全て」

「たとえ裏切られても、か?」

 ユズの言葉に8号は何も言わない。

 最早交渉の余地なしと判断したユズは、接近戦を仕掛ける。

 ユズは手刀で、8号は槍による下段スイングを放った。

 バック転を繰り出すユズに、8号はフェイント上段を行う。

「双竜脚!」

「うぐぁっ!」

 ユズは素早く左右に蹴り飛ばし、8号の足を攻撃して強力な攻撃を出せなくする。

 続けて8号の槍を狙って蹴りを繰り出すが、8号は身を屈めて攻撃をかわした。

 

「紫音が魔王を呼び出せば、私の願いは叶う」

「……訳がない! 鷹爪襲撃!」

 ユズは飛び上がって急降下し、飛び蹴りを繰り出す。

 8号は槍で防御しつつ、ユズを攻撃したが致命傷にならなかった。

「錬気轟縮!」

「させるか……裂風迅槍衝!」

 ユズは気を纏った拳でとどめを刺そうとしたが、

 8号が槍で回転突きを繰り出して隙を突き、ユズのバランスを崩す。

「く……っ!」

「これで終わりだ、瞬殺迅槍衝!」

 8号がユズを吹き飛ばして追撃しようと槍を構えて突進したが、

 ユズは飛びずさって何とか攻撃をかわした。

 お互いに距離が届きにくい位置に移動し、8号は防御しながら接近して槍で突こうとする。

「双竜脚!」

「ぐぁぁぁっ!」

 そんな8号にユズは素早い二連撃を繰り出して怯ませ、

 さらに腕を狙った一撃が8号にクリーンヒットし、8号はノックダウンした。

 8号は槍の上に立って、ユズの攻撃をかわそうとするも、ユズはそれを逃がさない。

「終わらせる……光翼天翔!!」

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

 光の翼を纏ったユズの渾身の一撃が、8号に見事に命中し、8号は機能停止した。

 彼女の「心」を込めた一撃は、

 ただ主に従うというプログラムだけで動いていた8号を倒すに至ったのだ。

 

「お父さん!」

 琴葉は父親のもとへ駆け寄ると、力いっぱい抱き締めた。

「お父さん! 琴葉だよ! ねえ、お父さん!!」

 涙を流しながら、琴葉は必死に訴える。

 しかし父親は反応しない。

「お父さん、お父さん!」

 琴葉は抱き締めながら何度も何度も父親の名を呼び続ける。

 その目から涙が零れる。

 涙は父親の身体に落ちた。

「……とば」

 小さな声が聞こえた。

 琴葉はハッとして顔を上げる。

 車椅子に座っている父親の身体が震えている。

 その顔が僅かに前を向き、目が琴葉の目と合った。

「こと……ば」

「お父さん!!」

 父親が意識を取り戻したのだ。

「琴葉ちゃん!」

 光一郎と玲人が琴葉達の元へ辿り着く。

「光一郎君! お父さんが元に戻ったよ!」

 琴葉は涙を流しながら笑顔で報告する。

 その時、父親のアンドロイドの身体は淡く輝き始めた。

「お父さん??」

「8号を倒したから、怪の力がなくなったんだ」

 光一郎が琴葉にそう言う。

「力がなくなったらどうなるの??」

「それは」

 光一郎が言いにくそうにしていると、代わりに玲人が説明をした。

「君のお父さんは、あの世に帰るんだ」

「ええっ!?」

 琴葉は光に包まれた父親の方を見る。

「そんなの嫌! お父さんは機械の体とはいえ、やっと元に戻ったんだよ! お父さん!!」

 琴葉はまるで駄々っ子のように父親に泣きながらしがみつく。

 そんな琴葉の頭を、大きな手が撫でた。

「立派に……なったな……琴葉」

 父親が琴葉を見ながらにっこりと笑う。

「お父さん!」

「操られてしまって……済まなかった」

「お父さんが悪いんじゃないよ!」

「この町を……母さんを……みんなを助けてやってくれ」

 父親を包む光がさらに強く輝く。

 その身体がだんだん薄くなっていく。

「お父さん!」

「あの男は六六六に行って魔王を呼び寄せると言っていた」

「六六六?」

 琴葉が言葉を繰り返すと、父親はその手をしっかりと握り締めた。

「会えてよかった……。琴葉、正々堂々、正直に生きるんだ……」

 それは、父親が琴葉にいつも言ってくれていた言葉だ。

 次の瞬間、光が飛び散り、父親は煙のように消えていった。

 

「お父さん……」

 琴葉は自分の手を見つめる。

 最後の最後にアンドロイドとはいえ、父親が握り締めてくれた手だ。

「……そうだね。正々堂々、正直に生きるよ」

 そう呟きながら、拳を強く握り締める。

 そしてその拳で涙を拭うと、琴葉は光一郎達を見た。

「紫音さんを止めよう!」

 それが何よりも大切な使命なのだ。

「ああ、僕達が止めないと」

 光一郎は琴葉を見ながら頷く。

「だけど、六六六っていうのは?」

「知ってるのか?」

 玲人がふと疑問に思った。

 琴葉の父親は紫音がそこで魔王を復活させると言っていたのだ。

 すると、信楽焼きの姿になったたぬ吉が、お腹をポンと叩いた。

「それやったら、わてが分かるで」

「たぬ吉さん、ほんと!?」

「ああ、琴葉はん。わてはこの町に長く住んどるからな。それは住所や。六丁目六-六」

「それって!」

 琴葉は声を上げた。

「知ってるのかい?」

「うん、光一郎君の家の隣の地区だよ」

 その地区はこの町で唯一、六丁目まである場所だった。

 そこには六六六という住所がある。

「そこは工場の傍にある野原で、

 『ろくろくろく像』ってみんなに言われている像みたいな石があるの」

「よう分からへんけど、その石はずっと昔、この町ができる以前からあると言われているんや。

 触ると祟りがあるらしいで」

「そこに魔王がいるのか?」

「なるほど。そういう事か」

「兄さん、何か分かったの?」

「それがこの町のパワースポットの原因なのかも。

 そしてそここそがエネルギーが最も反応する場所だ」

 それを聞き、琴葉はハッとした。

「だから紫音さんはそこで禁断の扉を?」

 ひょうたんの中に溜めたエネルギーを使って魔王の住む世界と繋がる扉を出現させると言った。

 

「みんな壊すつもりだ……!」

「絶対にそんな事させない!」

「琴葉ちゃん、急ごう!」

 琴葉達は紫音の野望を食い止めるために、急いでその場所へ向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。