Kaikaeshi and Automata 作:アヤ・ノア
琴葉達は光の扉から現れた怪達と共に、紫音が呼び出そうとした魔王を止めようとする。
玲人は琴葉を守るために犠牲となり、怪達は次々と魔王の指に吸い込まれていく。
危機的状況に陥ったその時、今までに琴葉達が関わってきた怪達が協力してくれた。
そして怪達の協力もあって、琴葉達はついに魔王の扉を閉じて町を救う。
琴葉達は希望を持って未来を見据えるのだった。
魔王がいた世界で、紫音は彩夢と共に抱き合っていた。
既に魔王は奥に封じられており、二人を邪魔するものは何もない。
「彩夢……」
「紫音……」
「今になって思うよ……。僕のやり方は、一体何だったのだろうかと……」
紫音は、見返りという禁忌を犯して追放され、やけになって魔王を呼び出そうとした。
しかし、魔王が呼び出されるという事は、自分諸共消えてしまうという破滅なのだ。
「魔王を呼び出せば……みんなが僕をもう一度認めてくれると信じていた。
だが……結果はこうだ……」
「……ええ、魔王は子供達が止めて、あなたと私は今、この世界にいる。
けれど、あなたはこうなるまでに、怪帰師としてたくさんの人を助けてきた。
それだけで、あなたは立派に生きた……そう信じたい」
「そうだな……ありがとう、彩夢」
微笑む幼馴染の姿を見た紫音は、安心したように笑みを浮かべる。
「私達がなすべき事は、終わったわ。もう、私達は、幸せになっていいはず……」
「ああ……」
「さあ……行きましょう、私と共に……」
「ああ、行こう。どこまでも……」
「「どこまでも……」」
紫音と彩夢が光に包まれると、その光は天に昇っていく。
そして、光は町のどこかに飛んでいき、ハルジオンの花となった。
「……それで、あいつはどうなったんだ」
ユズはたぬ吉に向かってそう言った。
紫音は魔王を元の世界に帰した時、魔王と共に消えてしまった。
彼の生死はどうなったのか、ユズは聞きたかったのだ。
「紫音はんはもう、この世にはおらん」
「……死んだ、みたいだな」
ユズは紫音を救えなかった事に悔しそうになるが、アンドロイドなので涙は流れない。
代わりにぐっと唇を噛み締め、拳を握り締める。
すると、一人の女性がユズのところに駆け寄ってきた。
「ねえねえ、突然ろくろくろく像の前に、ハルジオンの花が咲いたんだって!」
「ハルジオンの花……?」
いきなり花が咲くなんてあり得ない。
首を傾げるたぬ吉とユズだったが、とりあえず、ろくろくろく像の前に行ってみた。
すると女性が言った通り、ハルジオンの花が咲いていた。
「これは……」
まるで、紫音と彩夢が生まれ変わったようなその花に、ユズは惹かれていた。
同時に、自分の気持ちも、彼らの気持ちも、救われたような気がした。
「そうか……ちゃんと、救ってくれて、よかった……」
紫音は復讐のために魔王を呼び出そうとして報いを受けただけではなかった。
世界はきちんと、紫音にも救いを与えてくれたのだ。
彼も元々は怪帰師として誇りを持っていた。
心はちゃんとあり、あのまま彼を終わらせるわけがないと世界は思ったのだろう。
「どうか、元気でな」
たぬ吉とユズは、ハルジオンの花に向けて手を合わせた。
「今日はほんといい天気だねえ」
そして、翌日の朝。
琴葉は光一郎と共に学校へと向かっていた。
魔王が元の世界に帰った事により、人間はもちろん、怪達も元に戻った。
酒呑童子も光一郎に説得され、自分の世界に帰っていった。
そのため、酒呑童子のひょうたんに吸い込まれていた人々も元の状態に戻ったのだ。
「やっと、怪帰師として一人前になれたような気がするよ」
光一郎はふと、琴葉に言った。
騒動が終わった後、玲人や瑚江、そして利光達怪帰師や通役も元に戻り、
ユズ、光一郎、琴葉が魔王を帰した事を知った。
「光一郎、私は今までの自分を恥じる。お前こそ真の怪帰師だ」
利光は光一郎にそう言った。
光一郎はようやく父親に認められたのだ。
「全て琴葉ちゃんのおかげだよ」
「えっ、私?」
「これからもずっと一緒にいてね」
光一郎はニッコリと笑った。
「ずずずずずっと一緒??」
琴葉は顔が真っ赤になる。
光一郎が通役として一緒にいてと言った事は分かっているが、それでも何だか照れてしまう。
「こ、こちらこそ、ふつつか者ですがどうぞよろしくお願いします」
琴葉はペコリと頭を下げる。
「ええっと」
琴葉を見て、光一郎はぼうっとなってしまう。
「とにかく、光一郎君、これからもこの町を守っていこうね!」
「ああ、そうだね。この町には僕達しか怪帰師と通役はいないものね」
騒動が解決し、玲人と瑚江は違う町へ引っ越した。
「兄さんは、これからもライバルだって言ってくれたよ」
光一郎が嬉しそうに言う。
「そうなんだね」
そう言いながら、琴葉は玲人に「光一郎をよろしくね」と別れ際に言われた事を思い出した。
(何だか瑚江さんにそう言われると、本当に光一郎君と付き合ってるみたいな気がしちゃうよね)
琴葉はまた顔が赤くなった。
「おーい」
前方から男の子の声がした。
和也だ。
傍には夏純と由香里もいる。
みんなも元に戻っていたのだ。
「光一郎君、今日も一日頑張ろうね」
「ああ、そうだね。琴葉ちゃん」
不意に、光一郎は琴葉の手を握った。
「えっ?」
「行こう」
光一郎は微笑み、和也達のもとへ歩き出した。
「あの、えっと、う、うん!」
光一郎に引っ張られ、琴葉も歩き出す。
その顔は、とても幸せそうだ。
「みんな、おはよう!」
青空の下、琴葉の明るい声がどこまでも響き渡った。
本日を持ちまして「怪帰師のお仕事」の二次創作長編「Kaikaeshi and Automata」は完結です。
「恐怖コレクター」の次回作「怪狩り」が前作より短い7巻で終わってしまったので、
どうして長続きしなかったのかを私なりに分析し(主要人物の男女比やストーリーなど)、
「怪帰師のお仕事」という児童書を実際に購入して読みました。
これは「恐怖コレクター」と「怪狩り」の原作者が書いた、
主人公がはっきり分かっているオリジナル作品の児童書で初の女性主人公なので、
これなら長続きすると思いましたが、結果は「怪狩り」未満の4巻で終わってしまいました。
どうして女性主人公なのに「怪狩り」より巻数が短かったんだろう、と思いましたが、
よくよく読み返したらストーリーの大筋が「怪狩り」とそっくりでした。
以下に、「怪狩り」と「怪帰師のお仕事」の類似点を指摘します。
1:平凡な主人公を優秀な男性の仲間が誘う
勇気と琴葉、キユウと光一郎は、色々な意味で私から見たら被ってしまっています。
前者は特別な能力を持っている以外は目立った部分がなく(それと「平凡な」茶髪)、
後者はハイスペックな能力や、ルッキズム的な表現(それと「変わった」髪の色)です。
私が言える立場ではありませんが、原作者はこんなキャラしか書けないようですね。
2:怪の大半が近現代出身
作中で「怪」と呼ばれる存在は、そのほとんどが19~20世紀の近現代出身です。
「怪狩り」と「怪帰師のお仕事」に登場した怪の時代区分を古代・中世・近世・近代に分けると、
半分以上が近代だったので、「これでは都市伝説と変わらないじゃないか!」と思いました。
コラボ短編で「都市伝説と怪は違うもの」と書いていたのに、ブーメランですよ。
3:怪を退けると一般人から記憶が消える
「怪狩り」と「怪帰師のお仕事」は、怪を退けた時の表現が以下のようになっています。
前者:怪が消えれば、その怪が起こした全てはリセットされる
後者:怪を帰すと皆の記憶からその怪の事はもちろん、怪が起こした騒動も全て消える
これは、どこからどう見ても似ていますし、明らかに似せて作りましたよね。
4:町が特別な力を持つ
「怪狩り」の舞台となる見捨里市と「怪帰師のお仕事」の舞台となる町は、
最終巻で「この町が特別な力を持っている」という真実が明らかになります。
明かす人物は違いますが、それでも同じような展開なのには変わりませんでした。
しかも「怪帰師のお仕事」は主人公達が別の時代に直接行っていないのでお察しください。
以上のように、「怪狩り」の反省を生かしていないどころか、全く反省していませんでした。
私から原作者への評価は、某戦闘教官の言葉を借りると「型にはまりすぎ、10点」です。
このように批判が大半を占めてしまい、申し訳ありませんが、
原作者の作品にしては女性キャラが多かったので、楽しく読む事ができました。
オリキャラのユズはアンドロイドという事で、人間と違う視点で書きました。
最初は感情が薄かったユズも、イライラしたり琴葉達を守りたいと思ったりと感情豊かになり、
最後はオリキャラの8号に勝つという活躍をさせました。
「怪帰師のお仕事」は基本的に怪が起こした問題は話し合いなどの和解で解決しますが、
8号だけは絶対に和解しないという誓いを元に書きました。
結局和解を選んだユズは生き残り、和解を拒否した8号は異世界に捨てられるという、
ある意味真っ当な結末で終わりましたが、これでよかったと私は思います。
某人工知能チャットも、「和解しましょう」「建設的な解決法にしましょう」と言いますからね。
私なりに精一杯抵抗して、こんな結末になりましたよ。
私はこれからもたくさんの小説を書くでしょう。
なので、これからも私の長編を、楽しみにしていてください!
それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!