Kaiju archive   作:ばりるべい

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1話目が終わってないまま2話目を書くクソムーブ


トリニティは燃えているか?
Firebird


 

トリニティ総合学園自治区内 S地区 午前11時27分

 

正義実現委員会によって2時間前に封鎖された広間ーその中央に巨大な緋色の鳥が佇んでいた。

既に周囲一帯をKDF並びにトリニティの治安維持を務める正義実現委員会によって包囲されているが巨鳥は眼を閉じたまま微動だにしない。巨鳥が出現した時刻は、情報が錯綜している為正確には把握できていない。分かっている事と言えばトリニティの朝礼が始まる前には出現しており、生徒が登校している時間帯には影も形も無かったという事だ。

 

15メートル超の巨大鳥が出現してから、トリニティ自治区内の気温は急激に上昇を始めていた。大型鳥類の尾や翼の先端からは火の粉が爆ぜており、時折翼を広げると孔雀の尾の様なアークを描いて爆炎が立ち昇った。中央公園のデジタル式気温計は、11月半ばであるにも関わらず35℃を示していた。1時間前にKDFの司令部から今回の討伐目標のコードネームが全体に伝えられた。ー巨大火炎害鳥獣:炎孔雀ーは、現着したKDFの威嚇射撃に驚き広場の中央から火の玉を四方に放った。これによりトリニティの歴史ある木造建築の幾つかが火災となり攻撃は一旦中止された。

 

一時間、双方は一切動きを見せなかったがKDF側は手をこまねいているだけでは無かった。

 

「KDFの上層部は炎孔雀に絨毯爆撃を行う事にしたらしい。」

KDFの現場司令塔を兼ねる装甲車両から、簡易テントまで戻った正義実現委員会の委員長剣先ツルギが開口一番に言った。

「我々の学園に攻撃を行うという事ですか!?」

テント内でツルギの帰りを待っていた副委員長の羽川ハスミが悲鳴に近しい声を上げた。KDF隊員や正義実現委員会の部下達が一斉にハスミを咎める目線を送った。ハスミは慌てて声のヴォリュームを落とした。炎孔雀は瞼を下ろしたまま彫像と化していた。ハスミはなるべく小さな、且つテント内の全員に聞こえる音量で次の台詞を紡いだ。

「絨毯爆撃となるとその被害は計り知れません。可能な限り火力を抑えつつ倒す方法を模索すべきでは?」

「既に包囲を始めて1時間経過している。その間に、トリニティ自治区内だけが真夏になった。恐らくこれ以上長引かせるなと誰かに急かされたんだろ。」と珍しく理性的且つ饒舌なツルギが答えた。

「これ以上、負傷者を出さないと言う意味では賛成ですが…絨毯爆撃ですか…」医療用テントで負傷者及び熱中症患者の救護にあたっていた救護騎士団の長が医療用手袋を外しながら言った。

「KDFの現場指揮官は何と?」

「現場指揮官がどう思っていようと関係ないさ。ただ命令をこなすだけだろう。」

テント内で神への祈りを捧げていたシスターフッドの長であるサクラコの質問にツルギが答えた。

「ティーパーティーはこの決定を受け入れたと言う事でしょうか。」

「お上の考える事はどうでもいい。それよりもそれで駄目だった時の事を考えるべきだ。」

いつにも増して口数の多いツルギが騎士団長、蒼森ミネの疑問を一蹴した。

 

結果から言えば、絨毯爆撃はトリニティの歴史的遺産、文化的に価値ある物を無駄に消失させると言う戦果を上げた。

炎孔雀は彫像のままだった。既に死亡しているのでは?と言う疑問の声も各方面から上がったが、現場の有力者は死亡確認を行う程接近するのは危険すぎると判断を下した。

 

事態解決を図る具体案は出ないまま時間だけが過ぎていった。

 

ミレニアムサイエンススクールのセミナーからKDF司令部に電話があったのは、午後4時ー炎孔雀出現からおよそ8時間が経過した頃であった。

ー数時間前に発注した実験用液体窒素が「手違い」で例年より一桁多く発注してしまった。良かったらそちらで買い取らないか?ーと。

時を同じくしてトリニティの生徒会であるティーパーティーのホットラインにも同様の電話がセミナー会長の調月リオからかかってきた。提示された額はトリニティの年度予算の約半分と言う法外なものであった。

ティーパーティー現ホスト代行、桐藤ナギサは断腸の思いで提案を受け入れた。受話器を置きぬるくなった紅茶を啜りながらナギサは言った。

「これで我々の来年度は暗澹たる物になるでしょうね…」

「来年度があればの話だがね。」

ペットのシマエナガを突きながら現ホストの百合園セイアが言った。

 

ミレニアムサイエンススクールのアルケミー・スターズもといミレニアムが誇る天才集団:エンジニア部の手によって、わざわざトリニティが正式採用している戦車の規格に合わせた砲弾に収納された状態になった液体窒素が運ばれてきた。

すぐさま、正義実現委員会の戦車がかき集められ炎孔雀を包囲した。KDF側には地対地ミサイルと念の為という事なのか、地対空ミサイルに収納された液体窒素が手配され30分後には全ての誘導弾が炎孔雀を射程に収めていた。

 

午後5時 既に日が落ち始め暗くなりつつあるが、トリニティだけは相変わらず高い気温と光源による明るさを保っていた。

炎孔雀の高温によって上昇した水分が上空で纏まり、雨となって降ってきた。

 

諸悪の根源に向けられていた砲門が一斉に火を吹いた。光源は眼を開き大きく顔を上げると咆哮を放った。空を噴煙の雲が覆い誘導弾の豪雨が広場を襲った。途切れる事の無い爆発と大気を震わす発砲音が広場を彩っていた。

もうもうと煙の舞う広場の中央に複数の火柱と炎の虹がかかった。

晴れた煙の中で不死鳥擬きは凍りつきがらも生命の火を灯していた。

 

火炎鳥は司令塔である装甲車の上に立ち、己を睨みつける剣先ツルギを真っ向から睨み返し、体と喉を大きく震わせた。

突如として怪鳥の口から消防車のホースから噴き出る水流の如き猛烈な勢いで真っ白な液体が放出された。

ツルギは直翅目もかくやという驚異的で跳躍を行い襲いかかる放水を回避した。液体は装甲車の前面から天井部を覆う程に降りかかり、車内のKDF隊員は慌てて車外に飛び出した。白濁した液体からは強烈な悪臭が漂い、装甲車はしゅうしゅうと音を立てて装甲から煙がたった。

火の鳥は耳を塞ぎたくなる絶叫と共に首を地面に伏せた。そして完全に沈黙した。

 

炎孔雀の放った液体は強酸性の胃液だった様だ。しかしその技は諸刃の剣であるらしくその代償は自身の命の炎であった。逆流する過程で自身の胃液が喉から口腔にかけてを溶かしてしまい絶命してしまうのだった。

 

トリニティの生徒は身を寄せ合って感動を分かち合った。

冷たくなった炎孔雀の首元に立ちシスターフッドと共に十字を切っていたツルギは到着したKDFの事後処理班の隊員は後始末が大変だとボヤいてるのを聞いた。

ふとツルギは顔を上げると沈みゆく太陽に照らされた炎孔雀の足元から新たな生命の火が灯っているのを見てふっと微笑んだ。

 

夕日が美しく輝いている。

 

トリニティに平穏が戻った。

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