クラネル君はナイフや防具を確認してウェストポーチにポーションを挿し込んでいる。
「クラネル君、そのポーションは?」
「ああ、そういえばロミアスさんは昨日会ってませんでしたね。これは【ミアハ・ファミリア】の方から頂いたものなんです。」
「ミアハハハミリア……ん?ミアハハ……」
「ロミアスさん失礼ですよ……ミアハハハミリア……ん?」
俺とクラネル君はお互いに首をかしげてなかったことにした。
「それでそのポーション見せてくれないかな」
「?どうぞ」
クラネル君からポーションを受け取って見てみる。ガラス瓶、というか試験管のようなものに入った薄い青色の液体だ。ふむ、軽傷治癒のポーションみたいなものかな。効果は疲労回復に即時回復か、面白いな。こういうの俺も作れるのだろうか?材料があればできそうだが……
「ありがとう。ポーションってこういう回復するものだけしかないのかい?」
「え?えーっと、多分そうだと思います。何でですか?」
「ん、いや俺の持ってるポーションがあるんだけど」
そう言いながら俺はポーションを見せる。イルヴァのポーションは丸底フラスコのような形をしているものだ。クソほど運び辛いだろうこれ。俺が取り出したのは……耐酸性コーティング液だ。ちゃぷちゃぷと中の液体を揺らす。
「これは相手に掛けるタイプのポーションでね、掛けると相手の皮膚が溶ける」
「溶ける」
「で、ダメージを与えられる。因みに人間に使っても溶けるよ」
「溶ける……」
「偶に飲む」
「飲んじゃうんですか!?」
寄生されたらね。今はエイリアンもいないし使うこともないしそもそもエンチャで寄生されないから心配はない。俺のエンチャはレボリューションだ!多分指輪一つ落とすだけでこの世界は壊れます。
「まあ結構使えるよ。それあげよう。気休め程度だけど」
「え、良いんですか?高いんじゃ……」
「+値付いてないから別に、1900ヴァリスくらいなんじゃない?」
「せ、1900!?そんなに高いんですか!?」
「いや分からん……」
クラネル君が大げさに驚くがマジで分からん。とりあえずイルヴァでは1900gpで取引していたが正直俺もなんでそんなに高いのか知りたい。これそこまで凄くねえだろ。ああいや、酸で傷つかないっていう特性を付けれるんだったか。終盤基本的に酸程度じゃどうとも思わんから失念してた。でも高くないか?
良いの良いのと大阪のおばちゃんぽく押し付ける。
「それじゃあ、有難くいただきますね」
「そんなん幾らでも作れるからじゃんじゃん使っていいよ」
そう言うと俺たちは地下室から出て早朝の澄んだ空気を肺一杯に詰め込む。空気が上手い気がする。そうして西のメインストリートに出るとあの酒場の前でエレアとキャットピープルの店員の二人が何やら考え込んでいた。
なんやろなぁと思いながら俺がスルー決め込もうと思ったがクラネル君が見つかってしまった。
「おーいっ、待つニャそこの白髪頭ーっ!」
「え?ぼ、僕ですか?」
「そうニャそうニャ!」
なんだろうと言いながらクラネル君はそちらへ向かう。仕方ないので俺も隠密を解いてさも人込みから出てきましたというふうに出る。まあ今の時間帯なんて人そうもいないが。
「おはようございます。ニャ。いきなり呼び止めて、悪かったニャ……って青髪の兄ちゃんそこに居たかニャ?」
「おはようございます」
「おはようございます。居ましたよ。影が薄いですかね?」
「青髪の兄ちゃんより影が濃い人はニャかニャかいないニャ」
手を水平にしてやれやれとかぶりを振るキャットピープル。これでイラっとしないのは彼女の愛嬌なんだろうな。もしイルヴァ世界の住人にやられていたら即殺していると思うが、いやはや俺も丸くなったもんだ。不本意ながら全NPC殺したこともある俺だ。
「ちょっと面倒なことを頼みたいニャ。はい、コレ」
「え?」
「白髪頭はシルのマブダチニャ。だからこれをあのおっちょこちょいに渡してほしいニャ」
キャットピープルの店員が渡したのは……がま口財布?どこぞのファミリアのエンブレムが刻まれている紫色の金入れ物。財布だ。こじんまりとしていて可愛らしい印象を受ける。この世界の少女も小さいものが好きなんだろうか?
まあ恐らくフローヴァさんが財布を忘れてどこかへ行ってしまったので見つけて渡してきてほしいって意味だと思うが……クラネル君を見ると案の定伝わっていない様子。そりゃそう。
「アーニャ、それでは説明不足です。クラネルさんも困っています」
「あ、おはようございます」
「おはようございます、リオン嬢」
「おはようございます。クラネルさん、ロミアスさん」
キャットピープルの店員では説明がつかないと判断したのかエレアの店員がやって来る。5日ほど前に『豊饒の女主人』で一触即発しそうになったあの薄緑色の髪をしたエレアの店員、名前はリュー・リオン。恐らくだがこの酒場で2番目に強い人だ。昨日リオンさんと色々話してまあお互いに知らない仲では無くなった。あの夜の食事との戦いは筆舌に尽くしがたいが、俺もクラネル君も冒険者だったとだけ伝えておこう。
因みにクラネル君ソロで送り込むことに関しては何も反省していません。これからも送り込むことがあると思います。対戦よろしくお願いします。
「リューはアホニャ、店番サボって祭り見に行ったシルに、忘れていった財布届に行ってほしいニャんて、そんニャ事話さニャくてもわかるニャ。ニャア、白髪頭?」
「というわけです。言葉足らずで申し訳ありませんでした」
「あ、いえ、良く分かりました。そういうことだったんですね」
「何ニャ、青髪の兄ちゃんは分かってたニャァ?」
「ええ、何となくですが」
ヤレヤレという顔をしてこちらに話題を振ってくるキャットピープルの店員、そしてそれを無視して話し出すクラネル君とリオンさん。『大体ニャーー』無視されたことに気付いてこちらにフローヴァさんやリオンさんの愚痴を言うキャットピープルの店員。そうですねー。なんか興奮して尻尾が逆立っているが大丈夫だろうか?それは大変ですねー。リオンさんがこっち鋭い眼で見たな。頑張ってますねー。
「ハァ……彼女は気にしないでください。それで、どうか頼まれてくれないでしょうか?私やアーニャ、他のスタッフも店の準備で手が離せないのです。これからダンジョンに向かう貴方には悪いと思うのですが……」
クラネル君がこちらを申し訳なさそうに見てくるので俺は軽く頷く。
「それは大丈夫です。それよりも、シルさんがお店をサボったって本当なんですか?」
「さぼる、という言い方には語弊があるかもしれません。ここに住まわせて貰っている私たちと彼女では環境が違うので」
というか君たち毎日この酒場で働いてるの?意外とブラックなんだな……ああ、はいフローメル嬢、大変ですねー。
「本当はミャー達もお祭りに行きたかったのニャ、でも母ちゃんが許してくれねえニャ」
「お祭り?」
クラネル君は良く知らないようでお祭りの単語に首を傾げる。何というか、彼ここに来てまだ半月だから仕方ないんだけど俺より知らないこと結構あるんだな……いや、ここ数日はずっと俺と訓練してダンジョンに潜って飯食って寝てたからしゃあないのか。
「
クラネル君を見た後に俺の方をみるリオン嬢。まあクラネル君の雰囲気がなんか初心者感抜けてるからね。恐らくここ2日でも結構差があるだろうし戦闘経験のある彼女なら急成長に気が付いても可笑しくない。
「ニャらミャーが教えてやるのニャ!」
今度こそ名誉挽回だというようにガバっと向こうの会話に入り込むキャットピープルの店員。
「
「ちょ、調教!?」
「別にモンスターを手懐けること自体はおかしい事じゃニャい。白髪頭だって冒険者ニャら一度はあるはずニャ、ぶっ倒したモンスターがむくりと起き上がり仲間にしてほしそうな目で見てくるあの瞬間を……」
「いえ、僕はありませんけど……」
「ん?俺?俺は特殊なモンスターならそう言うのもあるけど普通のモンスターは死ぬ寸前まで痛めつけて捕まえてペットにするな」
「それはヤベーのニャ」
モンスターボールの仕様が悪いと思います。
「まあ、ロミアスさんの言うことも強ち間違っていません。
「ダンジョンにいるモンスターは調教の影響を受けにくいニャ。だもんで普通は外からモンスターを持ってくるんだけど、【ガネーシャ・ファミリア】の構成員は実力半端ニャいから、迷宮育ちのモンスターでも調教できるのニャ」
「へー、それってつまりモンスターと格闘して大人しくさせるまでの流れを
「まあそんな感じニャ」
それ面白いのだろうか?と思ったがあれか、現代人の感覚だと実況動画でゼーム討伐までを見るみたいなもんか。つまり内容よりもやってる人間の演出が求められるというわけだ。
闘技場ね、俺もよく通ったものだ。1000回は倒したよ。
「で、シルはそんニャお祭りにお土産買って来るって言って敬礼して財布忘れてったニャ。シルはおっちょこちょい娘ニャ」
「それはアーニャも言えないと思いますが……」
「ははは……分かりました。それじゃあシルさんに渡してきますね」
「お願いします。闘技場に繋がる東のメインストリートは既に混雑しているはずですからまずはそこに向かってください。人波についていけば現地には労せず辿り着けるはずです」
「シルはさっき出てったばっかりだから今から追いかければ間に合うニャ」
クラネル君から背負っているバックパックを預かった。俺はどうしようかなぁ……フローヴァさんクラネル君に来てほしいんじゃねえかな……
「ということで、クラネル君はフローヴァ嬢に財布を渡す事。あー……そうだな。後、今日は
「え?分かりました。ありがとうございます」
何となくだが、何かありそうだ。
メインストリートへ走っていくクラネル君を見送ってしかし俺はどうしようか。祭りに行っても良い。俺の捕まえた強化種シルバーバックがどんな風に調教されるのか見たくもある。
「それでは俺はこれで」
「はい。ダンジョン攻略を邪魔してしまい申し訳ありません」
「いえ、どちらにしろ今日は恐らく行っていなかったので大丈夫ですよ」
「じゃあ青髪の兄ちゃんもじゃあニャ~又飯食いにくるニャ!」
そろそろ俺の名がフードファイターとしてオラリオに響きそうだからそれを何とかしてくれる餓鬼君が来たら行くよ。……この世界のポーションってランダムポーションの対象になるかな……ちょっと気になるな。
ランダムポーション、NC至上最大の沼と言っても過言ではないそれは廃人たちが模索している最高のポーションを作り出すためのものだ。廃人コミュニティを広げてどんな効果があるか実験もする人もいるが俺はそこまでじゃない。最も有名なランダムポーションはID980280か?俺はマニの分解術とインフェルニティ・ゼロと死の宣告を付与するポーションを発見したが、正直そこまで熱心にやっているわけじゃない。
いや、でも俺も頑張りはしたんだが如何せん地味な作業過ぎるし……俺はどこに言い訳しているんだろう。
そして今現在、俺は適当に祭りを見ている。いや闘技場行けやという気持ちも御尤もであるが、俺の姿を見た途端に彼ら大人しくなっちゃって【ガネーシャ・ファミリア】の皆さんから出てけと言われてしまったのだ。見世物にならないからと。なんでだろう……俺が手を出したのシルバーバックしかいないんだけど?とりあえず達磨にして運んだんだけどそれが駄目だったのかもしれない。可笑しいなちゃんと餌も上げたし最後には治したんだけど。
『ええ……ロミアスさんやべえ……』
『モンスターが可哀そうっすよ』
等と言っていたのは彼らだったか。しかし檻の中に入れても2度注意したが暴れてしまうので俺としては仕方なく達磨にしたしHPも残っていたのだから完璧に任務を達成したのだが……
まあそんなこともありナンパされながらも俺はふらふらと当てもなく彷徨い、祭りで売っているものを冷かしていると道中では面白いものが見れた。日中堂々と酔っ払って突っ伏している大男や、ヘスティア神にあーんを強請られているクラネル君やロキ神にあーんを強請られているヴァレンシュタインさんなどだ。成程神様というのは性質が似ているんだなと思っていると闘技場の方から歓声が上がっている。どうやら本格的に始まったようだ。
そして、地下から謎のモンスター達が来ている。なんだろこれ、触手?花かな?ん~俺がやっても良いが……対して強くないしたぶん大丈夫だろう。
等と考えながら酒場であった事のある馬鹿どもに出会いなんで闘技場行ってねえのと言われたりして食っちゃベりながらいると俄かに闘技場から焦りに似た張り詰めた空気を感じる。脱走したかな。飲み仲間に謝罪してそちらへ向かうとギルド職員と【ガネーシャ・ファミリア】の構成員がてんやわんやしていた。
「あっ!」
俺が見ていることに気が付いた一人の団員、あれは一昨日の隊長。が俺に指差しして向かって来る。
「ロミアスさん、すみません少しいいですか!?」
「了解、脱走したモンスターの確保ね」
「すげえ、まだ何も言ってないのになんでわかるんですか?実行犯ですか?」
「俺が檻から出しても彼ら怯えて逃げないんじゃね?」
「そりゃそう。詳しいことは向こうに聞いてください」
恐らく市民を避難させるために武装した彼らは走り去っていく。とりあえず正門付近に行くとそこにはかのクラネル君のアドバイザーであるチュールさんと俺の担当であるミイシャさん、そして何故か【ロキ・ファミリア】のアマゾネス2人とエレア一人がいた。
「こんにちは、チュールさんにフロットさん」
「あ、ロミアスさん、大丈夫ですか?」
「ロミアス氏、すみませんが今は……」
俺に気が付くと申し訳なさそうな顔をする二人、そしてあーっと声を張り上げるアマゾネス。
「ロミアス君じゃん!奇遇~!」
「ああ、この前の」
「こんにちは」
「はい、こんにちは【ロキ・ファミリア】の皆さん」
初心者の俺がオラリオ最大派閥の歴々と話し合っている。その姿がどうやら不思議なようでチュールさんとミイシャさんは首を傾げている。
「ロミアス氏は【ロキ・ファミリア】の方々と面識がおありで?」
「ん?面識というほどでもありませんが、一応顔は知っている程度ですね」
彼女たちから話を聞くと今からモンスターを倒しに行くようで、ヴァレンシュタインさんもいま塔に上ってモンスターの位置を確認しているそうだ。どうやら出てきたモンスターは強いやつでも20階層程度のモンスターであるためこの4人がいるならば大丈夫だと思うが。
「じゃあロミアス君も来てよ。あたし見てみたい」
「ちょっと、ティオナ?」
「いいじゃん、なんか見ておきたいんだよね」
そういう事になった。
さて、言い訳の時間に入る。俺は普通にモンスターの目の前に現れただけだ。確かあいつはトロールとか言ってたな。檻の中で煩かったのを覚えている。
『グゥゥゥゥ……』
バコバコと気持ちよく街を破壊していた脂肪の塊は俺を目視した途端に包まって動かなくなった。俺が静かに戻れと告げると首を大きく縦に振って【ガネーシャ・ファミリア】の構成員に連れられて行った。まるでお縄に着いた人みたいだった。
あの後、高いとこからモンスター見つければええやん?となったわけで屋根伝いに歩いて見つけて殺す若しくは鎮圧と繰り返していたのだが俺が前に出ると彼らは一瞬で大人しくなるためヴァレンシュタインさんの出番も2度しかなかった。彼女は少し拗ねた。
「よしよし、脱走なんかするからだぞ、怖かったな……」
彼らは【ガネーシャ・ファミリア】に慰められながら連れていかれた。なんか納得いかないんですけど!
そして8匹のモンスターを処理し終えた。ヴァレンシュタインさんは他に居ないか見てくると言ってどこかへ行った。するとその後に地下からあのモンスターが地響きを起こしながら地上へと上がって来るではないか。女性の金切り声が聞こえて見ると緑色の鱗のない蛇のようなモンスターが現れた。実際は蛇ではなく植物なのだが……
「ティオネッ、あいつ、ヤバい!!」
「行くわよ!」
モンスターの脅威を肌で感じたのだろう、顔を青くしたアマゾネス姉妹が丸腰でモンスターへと駆ける。一足遅れてエレアも駆けだして行ったのでとりあえず住民の避難をした後、少し遅れて俺も付いて行ってみる。
悲鳴を上げる市民が逃げ惑う中でアマゾネスの姉妹ティオネ、ティオナはダンと地面を蹴り宙に舞いながらモンスターへ接近する。彼女たちを脅威とみなしたモンスターは鎌首を上げるように見ると己の体を鞭のように使い襲い掛かる。力任せの体当たりを躱しながら二人は拳と蹴りでモンスターに迫っているが如何せん打撃が効きにくいようである。彼女たちは反作用で腕と足に衝撃を貰って驚愕に目を開いている。
「かったーぁ!!」
「っくそ!武器持ってくればよかった!」
皮の捲れた右手をブンブンと払って先程の打撃で怒ったのだろうか、モンスターはブンブンと触手を手当たり次第に動かす。流石は一級冒険者である二人は危なげなく往なして何度も拳打を見舞っている。が、埒が明かない。しかし戦いは一見二人の優勢に見える。攻撃は効きにくいがあちらの攻撃は掠りもしていない。そしておそらくは有効打であろう魔法を後ろにいるレフィーヤが放とうと詠唱する。
「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!!」
モンスターがティオネ、ティオナの対応で掛かりっきりだった為詠唱は然したる障害も無く完了し、最後の韻をふみ終えて解放のために魔力が収束した直後、ぐるんとあのモンスターが首を向けるようにレフィーヤの方を見た。
「えっ?」
恐らく自らの弱点である魔法、その行使に対する魔力に反応したのだろう。レフィーヤがそう直感した瞬間、地面から黄緑の突起物が自身に向かっていることに気が付いた。
極限状態故か、嫌にゆっくりと迫るそれを見て、せめて防御だけでもと思い間に合わないことを悟り――己を撥ねる筈だった触手はまるで瞬間移動でもしたかのように現れた拳に掴まれて停止した。
「まあこんくらいか」
さて、この触手を片手で微動だにせず受け止めたハンサムは誰でしょう?そう、私です。
しかし、この程度なら俺が受けなくても多分何とかなってたな……彼女たちには申し訳ないことをした。せっかく経験値を稼げる機会だったというのに……
俺が優しく受け止めた触手に少し力を入れるとあっけなく破裂してしまった。
「……え?」
俺が緑色の液体が付着してうわーってなっていると何故か魔法を発射しないエレア。何故だろう?まさか沈黙の霧でも吐かれた?
「「レフィーヤ!」」
遅れて触手が迫ったことに気が付いた二人がこちらに振り返るが俺が護っているところを見てほっと溜息を吐いてモンスターに改めて向かう。その時だった。
『オオオオオオオオオオオオォォ!!』
触手がエレアを叩けなかったからか?怒ったように身を震わせるとモンスターが蕾の部分を天を睨むように首上げると咆哮を上げ、咲いた。俺は植物って鳴けるんだとびっくりした。
「花!?あいつって蛇じゃなくて植物型のモンスター!?」
毒々しく極彩色に彩られた花びらの中心、本来では柱頭があるべき位置には牙の並んだ巨大な口が存在して、粘液を垂らしている。
あれだな、細長いモルボルだな。触手操ってるし。
その食人花はアマゾネス二人を更に生み出した触手で相手して本体はこちらに来ている。
「あっちょっと!ロミアス君レフィーヤお願い!」
「傷つけたら殺すから!」
まあ俺の目を盗んで傷つけられるならしてみてほしいものだが……そんなことよりこれ俺が倒していいのか?恐らくだがそこそこの難敵なのだろう。であれば俺が倒すよりもこのエレアに倒させる方が良いと判断する。
「えーっと……レフィーヤ嬢?あれ倒せそうですか?」
「え、は、はい!魔法に集中できれば何とか」
出来ると答えた彼女だがしかし、彼女はどことなく暗い顔をしている。どうやら助けられたことに不満のようなものを抱いているようだ。成程、この反応……恐らく前にも誰かに助けられたな。
「レフィーヤ嬢、後衛を守るのは前衛の仕事です。貴方は貴方の仕事をしてください」
「……はい、すみません」
「レフィーヤ!」
そして彼女が逡巡していると、金色の風が迫りくるモンスターの首を切り裂いた。ぽーんと弧を描いて飛んで行ったモンスターの首はドンと家屋の屋根に突き刺さって停止した。風の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。どうやら無理に振った剣が根元ごと折れかけていることに気が付いていないようだがふうと息を吐いていた。
「まだ3体います」
全体の空気が弛緩したので俺が警戒を促すと同時に地面から3体の先程の食人花が道を裂って現れる。
「ちょ、ちょっと!」
「まだ来るの!?」
もう沢山だと言いたげにアマゾネス二人が悲鳴を上げる。ヴァレンシュタインさんが切りかかろうと剣を構えたタイミングでパリンと剣が根元から砕け折れる。
「ちょっウソ!」
「なっ――」
アマゾネス二人が言葉を失いヴァレンシュタインさんは……あれ壊しちゃったって顔してるな。絶望とかじゃないわ。しかしこちらの状況が悪くなってもこれ幸いと攻勢を仕掛けるモンスター達。そいつらはエレアを無視してヴァレンシュタインさんを3体で狙い始めた。
「こっちを見向きもしない!」
「狙いはアイズ……もしかして、魔法に反応している?」
何とか躱しているヴァレンシュタインさんだが捕まるのは時間の問題だろう。この場にクラネル君放り込んでみてえな……
俺がぽいぽいと瓦礫に埋もれそうだったり逃げ遅れた人間を避難させているとこっちにも触手が来たので撫でてあげた。触手君は逃げた。酷くない?
「レフィーヤ嬢、あれどうにか出来そうですか?」
「……やります!」
俺を見刺す蒼い瞳に覚悟が見えた。じゃあ俺が護るよと言うと軽く頷き詠唱を始めた。彼女が詠唱すると足元から山吹色の魔方陣が現れた。思えばこの世界で魔法を見るのは初めてだ。色々検証してみたいが、まずは彼女を守ろう。
「では一応。聖なる盾」
「っ!?超短文詠唱!?」
どうやらモンスターは俺の魔法にも反応するようでヴァレンシュタインさんに2体がそのまま付き、そしてこちらに1体がやってきた。俺がニッコリ笑うと『うわっ』といった風にピタリと止まるが逃げない。
「じゃなくて逃げられないんだよね。ほら、俺の笑顔は優しいから」
フィート『優しい笑顔』 効果 相手は貴方から逃げられない
「そっちにモンスター行った!」
「一体はこちらで受け持ちます」
「りょーかいっ!」
こちらにやって来るモンスターは決意を決めたようで俺に牙を向ける!うおおお!これが俺の漢気や!とその姿には鬼気迫るものがあった。俺が彼を蹴り上げると地中に埋まった根まで空中に放り出された。それは上空彼方5000mまで吹き飛んでボール状の何かに捕まった。そう、モンスターボールである。
こいつの名前はモルホルとかで良いかな。
「なんか今あのモンスター吹っ飛ばなかった?」
「吹っ飛ばしました」
「そっかー……」
こちらをチラッと見てくる戦ってる3人はアマゾネスのうち一人はじゃあてめえがこいつら片付けろやという目線を向けるが無視した。残る2体のモンスターは俺の方を見向きもしなくなった。なんでやろな。
「これ私の魔法要ります?」
「いるいる」
「……【エルフ・リング】」
その名を唱えると彼女の魔方陣、いや魔法円が翡翠色に変化した。彼女が更に詠唱を進めていくと流石に看過できなくなったのか触手がいくつもこちらにやって来るが全部断ち切る。素手で。俺の戦術は伊達に99999じゃない。
「【吹雪け三度の厳冬——我が名はアールヴ】」
『————!!!』
流石に止めねばと理解したのか、生存本能よりも強い反射かは分からないが2体のモンスターがエレアに向けて突貫してくる。だが――
「はいはいっと!」
「大人しくしろ!!この糞花っ!!」
「っ!」
俺に任せればいいものを、ヴァレンシュタインさん達がモンスター達の前に立ちはだかりその突撃を防ぐ。そして不意を衝く気であったのだろう地面からの触手も俺が踏みつぶす。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
それは三条の吹雪。エレアは大気をも凍てつかせる極寒の白氷を発射する。ヴァレンシュタインさん達は魔法の発射直前に射線から逃れ、逃れられずに直撃したモンスターはその花弁を、体皮を極寒に晒し中から凍り付き、冷結されて行きやがてあらゆる活動を停止する。
活動を停止したそれは霜で白く彩られ氷像のようであった。
「ナイス、レフィーヤ!このぉ!」
「死に晒せ糞花っ!!」
そしてアマゾネス二人は凍り付いたモンスターに殴蹴を与えて木っ端微塵に砕け散る。砕けた氷片がキラキラと舞い太陽光を反射して輝いた。
elonaNC豆知識
【ランダムポーション】
沼
ガチのマジで沼
3種類のポーションを合わせる事でポーションを新しく作り出すことが出来る。
効果は順番と入れるポーションによって決まっておりID980280の効果は願いの神も殺すダメージを与える。⁺2000くらいで殺害可能なので願いの神殺せてない人は是非。作成方法はググれば出てくる。