廃人がダンまち世界に行くのは間違っている   作:沸騰

3 / 14
兎はさらに跳ねる(物理的に)

 二人で早朝の人気のない道を歩く。

 

「朝からとんだハプニングでした……」

「まあ神ヘスティアも寝ぼけていたんでしょう」

「そうですよね」

 

 多分わざとだと思うが、言わないで上げよう……周りを見ても昨日の昼時と比べて商店は軒並みしまっているか開店の準備をしている。繁華街近くに入った途端にクラネル君からお腹の音がした。

 

「そ、そう言えば僕朝何も食べてないんでした」

 

 彼が恥ずかしそうに頬を掻くとアハハと笑う。とりあえず今出せるものといえばハーブティーか肉饅頭か乳くらいなものだが果たして彼に祝福飯を与えても良いのかと疑問になる。もし与えるなら誰かに検証してからの方が良いだろう。ならば何処か空いてる店で小腹を満たそうかと言おうとしたところ。

 

「っ!!」

 

 クラネル君が後ろを振り向く。俺も気が付いたが誰かに見られている感じがする。これは神?イルヴァでも良く見守られているような感覚はあったが、でもこれ俺じゃ無いな。クラネル君に向けられている。何だろうこのネットリした視線、彼はもしかして神に好かれる性質でもあるんだろうか?難儀なものだ。と言うかクラネル君凄いな誰かに見られているのを分かるなんて、凄い危機察知能力だ。

 

「あの、冒険者さんですよね?」

「え?」

 

 周囲を警戒していたクラネル君は後ろから近づいてきたカフェテラスに居た店員さんにバっと振り替える。草色のジャンパースカートに白いサロンエプロンを着た銀髪銀眼の少女……神だな。

 その神様だがクラネル君が急に振り向いたせいで驚いたような声を上げていた。彼らはお互いに驚かせてしまい謝罪している。

 

「あの~これ、落としましたよ」

 

 そういって彼女が差し出したのは紫色の水晶のようなものだ。一応鑑定するが呪われているわけではないらしい。

 

「えっ魔石?す、すみません。ありがとうございます」

「いえ、お気になさらないでください」

 

 なんというか二人の空間が出来上がってしまっている。あれから銀髪のウェイトレス、シル・フローヴァというらしいが、彼女から弁当を受け取って今夜彼女が働いている『豊饒(ほうじょう)の女主人』に来てほしいと迫られていた。

 

「あなたもですよ、えっと……すみません、お名前を聞いても宜しいですか?」

「ロミアスです」

「ロミアスさんですね、それではベルさんと一緒に今夜お待ちしていますね」

「お伺いさせていただきます」

「お待ちしております。ふふっこれで今日のお給金は期待できそうです」

 

 もしかして神様ってみんな金欠なんだろうか?

 

 

 白亜の摩天楼と呼ばれることもある天空の雲さえ突き抜ける塔バベル、その下の迷宮、つまりダンジョンに今俺は入った。

 

「ロミアスさん、どうですか?ロミアスさんのいたところのダンジョンと違いとかって」

「あんまりないね、ベーシックな洞窟型ネフィアに近い」

「ネフィア、ダンジョンの事ですよね?ロミアスさんってどのくらい強かったんですか?」

 

 雑談をしているとふとそんな言葉を投げかけられた。ふむ……人類最高峰のネームドNPCを考えると俺とステータスが大体5000倍くらいの差があったが、例えば『すくつ』では?俺は23万層で飽きたのであれだが『すくつ』で負けることはない。となると……

 

「イルヴァではダンジョンって5層とかで終わることが多いんだ。中には1層しかないようなダンジョンもある。だから『ならく』っていうどこまでも続く最高難易度のダンジョンを潜ったらって考えると余裕で100層あたりで死ぬし……そこそこかな?最強ではなかったと思うけど戦いにはなるんじゃない?」

「最強クラスではあるんですね……」

 

 そりゃ主人公キャラだからね。最強は誰か?本気願いの神です全ステ5000万とか話になんねーよ。仕様悪用しないと俺は勝てなかった。あれ近接で倒そうとしたらどうすりゃ良いんだろうね?ランダムポーションとか?あれ近接じゃねえけど。

 

 しかしここ1層1層が広いな……魔法の地図を見てもネフィアの1層の数十倍はある。面倒だな近道唱えるか?

 

「ロミアスさん、出ました……」

 

 そしてやっと現れたのは狼人間だ。確かコボルトか、イルヴァのコボルト君と全く違い過ぎて最初驚いたのを置覚えている。

 

「コボルト、だっけ?8体か。確か1,2体で出るって書いてあった気がするんだけど」

「ぼ、僕やっぱり運が悪いんですかね?本来はコボルトはこんなに群れて出てこないんですけど」

「コボルトは確か序盤の壁だからね、じゃあ6体は俺が受け持つから2体頼める?」

「は、はい!」

 

 コボルト、懐かしいものだ。出現レベルはレベル3で低いくせに職業戦士のせいで普通に育てたキャラならワンパンされる。恐らくelonaでスライムに次いで嫌われているだろう。しかし登竜門的な役割をしているのも事実。引きながら弓を打って倒すことなども出来るのでelonaでの戦い方を教えてくれる先生のようなものだろうか。

 

『グルルル……』

 

 戦闘モードをオンにする。途端にコボルトの動きが遅くなる。歩いて斬ってみる。何の抵抗もなくコボルトは死んだ。それを後5回して2体のコボルトの後ろに立ち逃げ道を無くす。

 

「よろしくお願いしま……す?」

 

 戦闘モードを解除するとコボルト6体がはじけ飛び魔石と爪やら牙やら皮を落とした。残ったコボルトが俺とクラネル君を見てクラネル君へ飛び掛った。

 

「え?えええ!?」

「頑張れクラネル君~」

 

 俺は魔石を拾いながらクラネル君の戦いを見ていた。おーすばしっこい。どうやら得物は短剣のようだ。明らかに握り慣れていない、振り慣れていないそれをコボルトの首に突き立てる。勘がいいなこの子、立ち回りが危ういけど才能でなんとかしてるわ。そして数分でコボルトを倒したクラネル君は俺に詰め寄ってくる。

 

「ろ、ロミアスさんさっきのなんなんですか!」

「普通に歩いて斬っただけだよ」

「いや僕全く何も見えなかったんですけど……」

「そりゃあね、逆に駆け出しで俺の速さが見えるんならヤバいよ」

 

 聞けばクラネル君冒険者になって半月しかたっていないらしい。まあたどたどしい短剣の使い方はしかし一瞬光るものも見える。俺が短剣教えて上げられればいいんだがなぁ……所詮俺のスキルなんて1000くらいまで工場で上がって後全部願いで99999まで持ってったので多分俺レベルまでは教えられない。

 いやまあコレでも《エヌルタ》であるし極めてはいるのでスキル2000くらいまでなら教えることができるだろう。無理そうだったらもうひたすら俺の攻撃受けてもらおう。

 

「ドロップアイテム!ロミアスさん見てくださいコボルトの爪ですよ!」

「え?うん……そうだね?」

「ああ、そういえばロミアスさんオラリオのダンジョンは初めてでしたっけ…ここのモンスターは倒すと偶に爪や牙とかの異常発達した体の一部をアイテムとして落とすんですよ。これが武器や防具になるので高く売れるんです!」

 

 へー俺が殺したモンスター全部ドロップアイテム落としてたわ。解剖学のお陰かな?

 

「うーんしかし、これじゃあクラネル君の修行にならないな」

「えっ?」

「さっきのも俺居なくても多分クラネル君倒せてただろうし……」

「あ、あのロミアスさん?なんか、凄い嫌な予感がするんですが……」

「よし、サモンモンスター」

 

 モンスター召喚の魔法をとりあえず10回くらい使用すると周りの壁から50体くらいのゴブリンやらコボルトが現れる。どうやらここでサモモするとイルヴァのモンスターは出ないようだ。ホッとするような、少し寂しいような気もするな。

 

「普通にサモモは使えると……帰還が使えなかったのは時の管理者がいないからかな」

「あのロミアスさん!?ロミアスさん!!モンスターが!何やったんですか!!」

「よしクラネル君、今から君はあのモンスターに向かって突き進むんだ!大丈夫、君ならできる!」

「ロミアスさんなんかキャラ変わってませんか!?ちょ、うわああああああ!!」

 

 顔を真っ青にして俺を連れて逃げようとしたクラネル君をモンスターの方へ放り投げると俺は彼に聖なる盾を掛ける。これでよっぽどの事が無ければ死なないだろう。ガンバ!『うおおおおおお!ふざけんなああああ!!!』と言っても彼の強みはその敏捷を活かしたヒットアンドアウェーになるだろうから囲まれて逃げ出す事も出来ないとなるとあまり良くないか……仕方ないのでなるべく自然に逃げ道を作るようにモンスターを間引くとしよう。

 

 

「ぜぇ……はぁ……」

 

 クラネル君が汗びっしょりで大の字になっていた。まるで三途の川を渡りかけた人間のようだ。

 

「クラネル君大丈夫かい?ひどい…一体誰がこんなことを」

「ロミアスさん……ほんとマジふざけんなって思いました……」

「ははっそれにしても凄いね、24体君が倒したよ」

 

 あれからクラネル君は何度も悲鳴を上げて逃げ回りながらなんとか67体の群れを殲滅した。増えてるって?あの後色んなモンスターが集まってきて大変だったんだ。

 

「魔石も、ドロップアイテムも結構落ちてますね……僕こんなに稼いだのは初めてです」

「そうだね、そうだそれ俺が預かるよ。クラネル君のバックパックじゃ何回も換金しなくちゃならないだろう?」

「ありがたいんですけど、どうするんですか?ロミアスさんのバックパックもそんなに容量が無さそうですけど……」

「結構入るから大丈夫だよ。それにここには入れないよ、かざばると面倒だからね」

 

 四次元ポケット、アイテムをインベントリとは別の空間に保管でき、同じ魔法を使う事でいつでもどこでも取り出す事が可能になる魔法を使いアイテムを収納する。黒い空間の歪みのようなものが出来てそこに腕を突っ込むと収納できた。記憶では知っていたけどこんなんになるんやなーと少し感動。

 

「ロ、ロミアスさん!今のってもしかして魔法ですか!?」

「え?うん魔法。四次元ポケットって言ういつでも取り出せる便利魔法で要らないもの保管するときに役に立つんだ」

「ロミアスさん魔法使えるんですか!凄いですね!」

 

 おおぅ、クラネル君が凄い目をキラキラさせている。どうやら彼魔法に憧れがあるようだ。魔法書をあげれば彼も覚えられるのだろうか?拠点で読ませてあげよう!というクソカスゴミ妖精の顔が頭に思い浮かんだので心の中で殺しておく。もしイルヴァに帰ることができたら真っ先にあいつを殺そう。

 

「クラネル君は魔法を使いたいのかな?」

「はい!やっぱり魔法って憧れちゃって……」

「じゃあまず魔法書の解読するために読書スキルを鍛えないとだね」

「読書スキル?」

 

 まあ今は良いだろう。彼には拠点に戻ったら話す事を伝えて動けるかを聞く。

 

「はい!もう動けます。すみません途中で休憩してしまって」

「いや、スタミナは大切だからね。サモンモンスター」

 

 今度は20体くらいのモンスターを呼び寄せてクラネル君を投げる。

 

「は?」

「俺の感覚ではまだ30分も経ってない。これを後10回はやってみようか」

「はああああああああ!!!!???」

 

 本日ダンジョン1層にクラネル君の悲鳴が何度も轟いたと言う。

 

 

 少年の成長というのは凄まじいものだと感心してしまう。最初20体のモンスターに囲まれたクラネル君は何度か攻撃を喰らいながら怪しい立ち回りをしていたが3回目からは一度も攻撃を喰らわずに倒し切った。5回目ともなると立ち回りも安定してきたので追加で20体入れてみた。クラネル君は俺にキレた。俺がヴァレンシュタンさんの名前を出したら面白いくらいに張り切った。

 それを10回も続けると流石に精魂尽き果てたのか死んだようにクラネル君は倒れた。這い上がれ!ガンバ!

 

「し、死ぬかと思った……」

「大丈夫大丈夫、俺がいるから」

「いやロミアスさん僕がコボルトに頭殴られた時も助けてくれませんでしたよね?死ぬかと思ったんですけど……」

「俺の魔法でクラネル君は大分打たれ強くなってるから大丈夫だよ。それに耐久上げるには被弾しないと上がらないんだから何度も何度も攻撃食らっていこうぜ」

 

 勿論ちゃんと聖盾が発動してPVが上がっているのを確認していたので大丈夫やろなぁとは思っていたが一応ジュアの癒しを用意していたのだ。もし死にそうになっても死ぬ前なら蘇るだろう魔法なのでアフターケアバッチリだ。

 

「……その、ロミアスさん僕は今日で強くなれたでしょうか?」

「勿論。側から見ても立ち回りとナイフの使い方が上手くなっていた。モンスターを見て怯んでるようなことも無くなったし何より敵からの逃げ方が超上手い。めっちゃ上手い」

「それ喜んで良いんですか?」

 

 何をいう、elonaなんて序盤はどれだけ敵から上手く逃げれるかのゲームだぞ。テレポ杖、あなたは神だ。あとマジミサ杖も神。

 

「とりあえず今日はこれくらいで帰ろう。休憩諸々で半日くらい潜っちゃったね」

「こんなに戦ったの初めてですよ、もうクタクタです」

「ああそう言えばクラネル君、俺はとりあえず異世界から来たことを内緒にしていてね。ギルドに入った際には捨て子で一人でずっと生きていて最近ここに来たって事にしたんだ」

「凄いボロが出そうな設定ですけど大丈夫ですか?」

 

 まあボロ出てもすみませんでいいしな……それに聞いたのはあのミィシャと言う職員だ。覚えてない可能性が高い。バレたらその時はその時だよと言い俺達はギルドに向かった。

 

 

「じ……じゅうにまんきゅうせんヴァリス……!?」

 

 大金を抱えたクラネル君が面白いくらいキョどりながら道中を歩いている。あの後魔石とドロップアイテムを全て換金したらちょっと騒ぎになった。何でも1日で上層しか行けない2人パーティが300超える魔石を持ってくるのは初で何か異常が起こったのでは無いかと職員が騒然としてしまったのだ。ミスったなーと思いながらクラネル君はエイナさんからお叱りを受けて俺はミィシャさんからどしたん?と聞かれたので素直にモンスター大声で呼びまくってたんすよと嘘をついた。どうやら1層で大声を出す噂が広まっていたらしく信じてもらえたが俺もお叱りを受けた。解せぬ……

 

「これでファミリアの家計が大分良くなりますよ!ありがとうございますロミアスさん!」

「いやあ俺はモンスター呼んだだけだから、大半はクラネル君が倒したものだよ。クラネル君、これはクラネル君のお金だ。12万ヴァリス、君が使いなさい」

「えっいやいや不味いですよ。神様にも——」

「それは俺が出しておくよ。君が倒れている時に何回かモンスター召喚して殺して換金したから俺も5万ヴァリスくらい持ってる」

「いつの間に……」

 

 クラネル君の1分は俺の1万分くらいだからね。サクッと倒して換金所まで歩いて換金してもらったよ。んで歩いて帰ってきた。換金込みで5分掛かったくらいかな?

 

「良いかいクラネル君……願いの神を倒し、邪武器を育成し、大体のスキルを2000以上にあげた俺だから言える事だけど」

「……」

 

 俺の言葉を待つようにクラネル君は真っ赤な眼で俺をじっと見る。何を言われるのか固唾を飲んで見守っている。

 

「装備が強けりゃ使うやつが弱くてもなんとかなる!」

「身も蓋もない!ええええ!!僕どんな事言われるんだろうってちょっと期待したんですけど!」

 

 でも大半のelonaプレイヤーは賛同してくれると思うよ。あれ行く着く先は装備ゲーだから。結局プレイヤーのステータス最大値は99999だから装備いくつかつければ余裕で超えるんよな。

 

「クラネル君が俺の装備使えばさっきの俺と同じような事出来るよ。マジで」

「そ、それは何と言うかちょっと違いませんか?僕は確かに強くなりたいんですけどそう言うのは少し……」

「まあさっきのは流石に冗談だよ。そもそもここオラリオでそこまで強い武器があるかも分からんしね。でもクラネル君、武器防具は大事だ。それこそ生命線だろう。今は俺もいるんだからファミリアの金銭面を気にせずに少しは自分の為にお金を使ってくれよ」

「ロミアスさん……ありがとうございます!」

 

 

 

 ヘスティアファミリア拠点に着いた俺は早速ヘスティア神からステイタスの更新をさせてもらった。

 実は初めてのステイタス更新でワクワクしている。どれだけ強くなっているかな。俺正直elonaプレイヤーの中では大分弱い部類だからね、装備だって全く育ててない大抵の装備がいわゆるルージィ装備だ。やはり俺も少しは強くなりたいし特殊なスキルが欲しい。めっちゃほしい。地味にバフ消すの面倒だからバフ剥がしできるスキルとか魔法覚えないかな……そう思っているとヘスティア神から終わったと声を掛けられた。

 

ロミアス

Lv. 1

力:I0→I10 耐久:I0 器用:I0→I15 敏捷:I0 魔力:I0→I10

魔法【】【】【】

スキル【】

 

 ヘスティア神から俺のステイタスの写しを貰う。俺の元のステとあまりに違うことからもelonaのステータスとこの世界でのステイタスは別枠なのだろう。加算されるのかな、加算されたら嬉しいな。

 改めて数字を見るが……ふむ、俺の本日の冒険結果がこれということか。全体的に合計で35上がっているがコレが大きいのか分からんな……特殊なスキルや魔法も覚えていなかった俺冒険者の素質ないかもしれんわ。

 

 しょんぼりしている俺を見兼ねてヘスティア神はあわあわしながら俺の肩を叩いてくれる。

 

「大丈夫だって!今日は初めての冒険だったんだろう?耐久が上がってないって事は攻撃を受けなかった事なんだろうし堅実な冒険をしたんだ!偉い!」

 

 そう言ってアハハと笑ってくれたヘスティア神、優しい……もしやあなたが神か?神だったわ。もうちょいヨヨヨとしておこう。

 

「ん?君異世界で強い冒険者だったんだから上層の戦闘が経験にならないのは当たり前じゃあ……ん?魔力が伸びてる?」

 

 不味い!ヘスティア神が真実に気付きかけている。魔力が伸びたのはサモモと四次元ポケットと聖なる盾の影響だろう。

 

「まあ俺は良いんですよ。それよりもクラネル君がどのくらい上がったか気になります」

「ん~?まあいっか!ベル君、そこにうつ伏せになってくれ」

「あの、ロミアスさんは普通に座って更新してましたよね……?」

「ロミアス君がそうしたいって言ったからね。なんだいベル君、もしかしてボクと触れ合うのは嫌なのかい…?」

「え!?いえいえ!そんなことないですよ!」

「じゃあほらそこにうつ伏せになってくれ!」

 

 クラネル君がヘスティア神から更新されたステイタスの載っている用紙を受け取る。ヘスティア神は明らかに挙動が可笑しいしクラネル君も首をかしげながら受け取るとギョッと紙を凝視した。そしてヘスティア神と俺を見てまた紙を見て3度見位してまた俺を見てヘスティア神を見た。

 

「かかかか神様、これって書き写すの間違えちゃったとか……」

「ベル君は僕が読み書きも出来ないなんて言ってるのかい?ふん!」

「い、いえそういうことじゃなくって!ただ明らかに上り幅が可笑しいというか……」

「それだよベル君!君何かとんでもないことしたんじゃないだろうね!例えば5層よりずっと深く潜っちゃったとか!いや、もしや君はそんなにもヴァレン何某の事を!?ボクというものがありながら~!」

 

 ヘスティア神がクラネル君を掴んでぶんぶん振っている。やいやいしているとクラネル君の手から用紙がひらりと落ちてこちらにやってくるので捕まえて見てみる。

 

ベル・クラネル

Lv. 1

力:I82→G231 耐久:I13→H176 器用:I96→G265 敏捷:H172→E421 魔力:I0

魔法【】

スキル【】

 

 どうやらクラネル君のステータスは爆増したようだ。少なくとも俺より伸びてる。やはりあのスキルのせいだろうか?常にエヘ特訓しているようなスキルなんて強いに決まっているからな。となるとやはり俺もスキル欲しくなるなぁ……ん?

 

「神ヘスティア?どうしました?」

「ベル君は吐いたよ……今度はロミアス君に吐いてもらおうかぁ……!」

 

 チラリとクラネル君を見るとソファに横になって死んでいた。南無……ヘスティア神がこちらにニッコリと笑いながらやってくるが、はて?俺がやった事と言えばモンスターを呼んでクラネル君を放り込んだだけなんだが……

 

「そのことを言ってるんだよ!もう!ベル君から50体のモンスターに何度も襲われたって聞いたときボクの心が張り裂けそうだったよ!」

「ははっ生きてるんだし大丈夫ですよ」

 

 その後ヘスティア神はプリプリと怒ってしまいコートを着て外に出て行ってしまった。俺は付いていこうとしたが彼女からバイトの打ち上げをするからクラネル君と二人で寂しく豪華な食事でもするんだね!と言われてしまったので追いかけることも出来なくなってしまった。

 

「神様、なんで怒ってたんでしょうか……」

「嫉妬じゃないかな?」

「嫉妬?」

 

 俺たちは今朝の約束もあるのであのウェイトレス神のいる場所に行こうという道中だ。クラネル君は初めて神様の反抗期に会ったらしく目に見えて落ち込んでいる。

 

「君のステイタスを見せてもらったんだけど……と、ごめんね、ステイタス勝手に見ちゃって」

「いえ、大丈夫です。それで嫉妬ってどういうことですか?」

「いやね、君のステイタス今日でありえないほど伸びただろう?あれは俺があれだけモンスターを用意できたからってものあると思うんだよね。だからヘスティア神は俺に嫉妬しちゃったのかもね、俺が1日一緒に行っただけで君がこんなにも成長して……半月二人三脚でいた彼女にとっては少し面白くないだろう?」

 

 まあ嫉妬の対象は俺と言うよりヴァレンシュタインさんだと思うが……

 

「僕は……許されるんでしょうか」

「え?いや君は許されるよ。許されるか分からないのは俺だね。絶対キレてるよヘスティア神『ベル君になんてことするんだ~!』って。まあ大丈夫だよ、明日になってれば仲直りできるよ」

 

 俺の言葉で立ち直ったのかは分からないがクラネル君はとぼとぼ歩くのをやめてしゃんとした。段々とオラリオの中心街に着くころで俄かに周りに人が多くなり人々の喧騒が耳に届くようになってきた。そろそろ赤い光を浴びせてくる日が地平に沈もうとしていた。




elonaNC豆知識
【称号≪イシス≫】
マクロを組め
【称号≪トバルカイン≫】
マクロを組め
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。