廃人がダンまち世界に行くのは間違っている   作:沸騰

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ノースティリスの民は基本的に人情に薄い

 人の往来が絶えないメインストリートと呼ばれる繁華街を歩きながら空が冥色に染まりかけたところ、そろそろあのウェイトレス、シル神のいた所だなと思っているとクラネル君が店を見つけたようでそわそわしている。

 『豊饒(ほうじょう)の女主人』、たしかそんな名前だったなと記憶を掘り起こしているとクラネル君が覗き込んでなかなか入ろうとしない。どうやら覗き見ると全員美女美少女のウェイトレスのみでさては彼緊張しているな?

 

 ウェイトレスは猫耳を生やした子だったり薄緑色でショートの髪のエレアだったりなんか糸目っぽい子だったりだ。だが猫耳多くない?後みんな強いな、一番強そうなドワーフらしき人とかノースティリスで言うとかのザナンの紅血『ロイター』、もしくはザナンの強肩『ロイター』くらいの実力だ。とてもつよい。

 

「クラネル君、行かないの?」

「いや、これちょっと僕には難易度高い気がするんですけど……」

 

 彼には全員美女美少女なあの空間で食事をすることに若干のハードルの高さを感じているようだ。正直俺からすれば酒場だなくらいのイメージだ。ヴェルニースの酒場にイメージは近いか。シーナは元気だろうか?

 

『シーナの尻は最高でおじゃるな!』

 

 毒電波食らったわ、あいつ帰ったら殺そう。

 

「クラネル君、一応言うけどテラス席の人とかストリートにいる人から奇異な目で見られてるよ」

「くぅ……!」

 

 まあ彼女が気づいたようだしそろそろ観念した方が良い。俺が店内に視線を向けると銀髪のシル神がクラネル君の方へ寄ってくる。やはり俺に見向きもしないな彼女……そういえば今朝の魔石も本当に落としていたなら俺とクラネル君の2択になってクラネル君へ直ぐに行くのはおかしいはずだ。まああれ99%彼女が仕組んだことであろうが……やはりクラネル君は神に好かれる独特の何かを醸し出しているのかもしれない。

 

「ベルさんっ」

「……あはは」

「ロミアスさんも、来てくださったんですね」

「こんばんは、フローヴァ嬢」

 

 恐らくシル神は身分を隠して働いているのだろう、ということで敬称を付けなかったが良かったようだ。 

 

「……はい、やってきました」

「ふふ、いらっしゃいませ」

 

 カウンター席へと案内され女将と思われるドワーフの女性と対面する。ミアさんというらしい彼女は俺とクラネル君を見比べて更に再び俺を見て怪訝な顔をするがそれをすぐに隠した。

 

「あんたらがシルのお客さんだね?冒険者ってのに随分かわいい顔してるねぇ、そっちのは随分と強そうだ。なんでも二人でアタシ達に悲鳴を上げさせて在庫空にするほどの大食漢らしいじゃないか」

 

 そうか、俺大食漢だったのか……

 

「へぇ、クラネル君ってそんなに食べるんだ。じゃあ普段の食事大丈夫?足りてる?」

「いやいやいや!ちょっと、僕いつから大食漢になったんですか!」

「えへへ……」

「えへへ……じゃねー!」

 

 どうやらシル神の冗談を真に受けた様子。彼女もスッと目をそらしているがあれはお茶目なんだろう。ここの神様は皆可愛いしぐさをするものだ。俺の知ってる女神など電波神か全裸神かツンデレくらいのものだ。……イナリとクルーラとセリアってどんな発言してたっけ?AF賜った瞬間改宗したから覚えてねえわ。願いの神?あいつは出した瞬間殺してるから分からん。

 

 

 その後、酒はいらないと言ったのに出して来たり頼んでもない今日のおすすめを出されたり1品1品が明らかに成人男性2人前くらいはある料理を出されたりと俺とクラネル君は必死に出された料理を食べた。味は成程このメインストリートに居を構えるのも納得の味で俺は大変満足した。がそろそろ餓鬼君が恋しくなって来る頃合いだ。あんなに一緒に居たのに君がどれだけ大切だったのかをやっと気が付くなんてね……

 

 俺が様々な料理を攻略している最中、クラネル君とシル神は二人で話し合いをしていた。中々いい雰囲気じょん……羨ましくなんてないんだからね!

 

 

 そして俺が3品目に手を付けようとしたその時、どっと数十人規模の団体が酒場に入ってきた。あの声と共に。

 

「にゃあ!ご予約のお客様、ご来店にゃ!」

「この世界ダンまちだ!!!?」

 

 俺はびっくりして速度40万で立ち上がり驚愕の言葉を叫ぶ。いや俺もダンまちについて詳しく知らないがこのベル・クラネルが主人公だというのは知っている。あとヒモ女神。そっか~ヘスティア神がヒモ女神か~生ヒモ女神見れて満足です。そしてさっきの言葉はダンまちのガチャ演出だ。むしろそれしか知らん。何故俺が転生したんだろう……もうちょい原作知識あるやつ転生させろよ。まあいいや、気にしたってしゃあない。寧ろデジャブの違和感が解ったので喉につっかえた魚の小骨が取れたような快感を覚えている。

 ふう……俺はよっこいせと椅子に戻った。するとぶおんと店内に風が吹き荒れる。

 

「うわっ何、嵐?」 

 

 どうやら俺の動きは誰にも目に追えなかったようで俺に注目する奴は皆無だった。ミアさんも見えなかったぽいな。風も一瞬吹いて止んだので周りの冒険者たちもなんやろなぁという顔で食事に戻った。さて、現れた団体も一瞬身を止めたが何もないと分かると店内に入ってきた。クラネル君がその団体を目にするとある人で視線を止めた。金眼金髪の美少女あれが話に聞くアイズ・ヴァレンシュタインさんあろうか?ゴクリと喉を鳴らす音が隣から聞こえた。うわクラネル君顔あっか……

 

『うお、えれえ上玉ばっか』

『ばっかお前、エンブレムよく見て見ろ』

『げえぇ【ロキ・ファミリア】だ』

『あれが噂の【剣姫】か』

 

 周りの冒険者からも様々な声が聞こえる。かのファミリアで最も目立っている存在、いわゆる一軍のメンバーはどれも面がよく黄色い声野太い声どちらも上がっているが、彼らは慣れているのか反応しようともしない。【ロキ・ファミリア】ふむ、確か第一線を走るオラリオ内2大ギルドのうちの一つだったか、確かにクラネル君の50倍は強そうだ。けどミアさんより強そうな人数人しかいないな……これはミアさんが強すぎるんだろう。ノースティリスにだってここまで強い人間はなかなかお目にかかれなかった。

 

「ベルさん?あのーベルさーん」

 

 横を居ればシル神がクラネル君に声をかけているがクラネル君これを無視。いや、かのヴァレンシュタインさんに気を取られ過ぎて気が付いていないんだろう。だんだんと顔をテーブルに突っ伏して本格的に聞き耳を立て始めた。これが……主人公?

 

「よっしゃあ!ダンジョン遠征みんなご苦労さん!今宵は宴や!飲めぇ!!」

 

 小柄な赤髪の少女が何故か関西弁で音頭をとると【ロキ・ファミリア】の人々は騒ぎ始める。音頭を取ったりしているあの少女、神だなぁ……オラリオは本当にどこにでも神がいる。一人くらい殺してもバレんかな……AF落とさんかなぁ……いや俺は善良なノースティリスの民であるので意味の無い神殺しなどあんまりやらないが。

 

「【ロキ・ファミリア】さんはうちのお得意さんなんですよ。彼らの主神であるロキ様に、私たちのお店がいたく気に入られてしまって」

 

 シル神は諦めずにクラネル君にアタックしている。クラネル君もヴァレンシュタインさんに繋がる話だからか首を縦に振っている。視線はヴァレンシュタインさんに合わせたまま……彼もしかして結構アレなのでは?将来ストーカーとかになったら俺が頑張って矯正しよう。

 

「そうだ、アイズ!お前あの話を聞かせてやれよ!!」

「あの話……?」

 

 銀髪の狼耳を生やした男がヴァレンシュタインさんに話しかける。やはり美形だ。ただあの青紫色のフェイスメイクは何なんだろう?そういう掟だったりしきたりがあるのだろか。

 

「あれだよ!帰る途中で何匹か逃したミノタウロスの最期の1匹、お前が5階層で見つけて殺したやつ!そんでそん時に居たあのトマト野郎!」

 

 クラネル君の息使いが変わった。成程、そのトマト野郎とはクラネル君の事だろう。昨日の彼全身真っ赤だったし。

 

「あの17階層で私たちを見るなりすぐに逃げ出したあの?」

「そうそう!んで俺らが疲れてるってのに必死で見つけ出して殺したんだけど5階層まで奇跡的に登っちまったやつがいてよ!それでいたんだよ、如何にも駆け出しですって感じのひょろくっせえガキが!そいつ震えあがりながら兎みてえに逃げてよ!壁際に追い詰められてプルプル震えてやがんの!」

 

 クラネル君がぎゅっとズボンを握りしめる。彼にもこの話は聞こえているのだろう。しかし、俺としては災難だったなとしか思えない。本来17層で出てくるモンスターが5層に出てきたのだ。そりゃ逃げるだろう。逆に立ち向かうやつはアホだ。クラネル君の悪いところは脱出経路をしっかり考えずに逃げ出したところか。それでもパニックになって動けないなんてものよりましだ。

 

「その冒険者君助けられたん?流石に死んでたら目覚め悪いで?」

「うちのお姫様が正に間一髪ってところで細切れにしてやったんだよ。なっ?アイズ」

「……」

 

 ヴァレンシュタインさんはあまり快く思っていないようで眉をひそめて答えない、

 

「んで!こっからなんだけどよ、そいつあのクソ牛のくっせえ血浴びてトマトみたいになっちまったんだよ!それにだぜ?あのトマト野郎助けてもらった礼も言わずに叫んでどっか行っちまって!ぷっくく……うちのお姫様、助けた相手に叫びながら逃げられてやがんだぜ!」

 

 どうやら話の焦点はここらしい。クラネル君を貶したいのではなくあんなに可愛いヴァレンシュタインさんが助けた相手に叫びながら逃げられた。という話を身内で盛り上げたかったようだ。彼の目論見はどうやらまあまあウけたようでアマゾネスの少女や他の構成員もちらほら笑っているが、勿論ヴァレンシュタインさんを筆頭に全く笑っていない人もいる。1軍の人たちはどうやら愉快には思っていないようだった。

 

「しっかし、久々にあんな情けねえ奴見ちまったぜ。こっちの胸糞が悪くなるってもんだ。野郎のくせに泣くわ泣くわ。ああいうやつが冒険者ですって名乗るから俺たちの品位が落ちるってもんだ」

 

 今度はクラネル君を貶す発言になってきたな。流石にこれには構成員のみんなも苦笑いだ。彼はそういう役回りを持っているんだろうが、酔いの状態異常を確認したありゃ完全に酔ってらっしゃる。

 

「その喧しい口を閉じろベート、元はと言えばミノタウロスを逃がした我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪はすれど貶し、酒の肴にするなど恥を知れ」

 

 そういうと緑髪のエレアが彼、ベート君を窘める。えっ緑髪のエレア!?瞬間、俺の脳内に溢れ出した、俺に彼と過ごした存在する記憶……

 

 

『……本当に食べてしまったのか?』

『ニヤリ、と彼は嗤った』

『あの酒場の娘には参ったな!』

『ヴェルニースの炭鉱街までは、子供の足でも一日でたどり着けるだろう』

 

 嗚呼懐かしき異形の森の使者『ロミアス』……君の名前使わせてもらっているよ。elonaプレイヤーから蛇蝎のごとく嫌われている彼だが廃人度が増すにつれてプレイヤーの方がヤバいことしてるのでカタツムリすら救うロミアスは聖人なのではという風潮になっている。少なくともジャビ王と会うために奔走する彼は間違っても王都に核爆弾を設置しないし、勝手に王城掘ってベッドに寝るために侵入しないだろうしジャビ王に餅食わせて殺すこともないだろう……俺は結構好きだよロミアス。ロミアス牧場とラーラララ牧場作りました。

 

 と、俺が懐かしの存在に思いをはせていると何故か彼らの話は自分とクラネル君のどちらと付き合いたいかという話に飛躍していた。え、あの話からそんな話になるの?

 

「ベート、君酔ってるね?」

「うるせえ。ほらアイズ、選べよ。お前は俺とあのトマト野郎どっちを選ぶんだ?」

「私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」

「ふん、無様だな」

「黙れババア、じゃあアイズ……お前はあのガキにもし好きだの愛してますって言われてそれを受け入れるのか?そんな筈ねえよなぁ!自分より弱くて軟弱で、気持ちだけが空回りしてる雑魚にお前の隣に立つ資格なんてねえ!」

 

 ふとクラネル君の方を見やると歯を食いしばり今にでも爆発しそうなくらい真っ赤になってぎゅっと裾を握りしめていた。あと一言だな……

 

「雑魚じゃあアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

 その一言がとどめになったようでクラネル君は椅子を飛ばして立ち上がり、その勢いのまま店から飛び出して行った。

 

「ベルさん!?」

 

 シル神がクラネル君を追いかけようと外に出るが、神の速度では間に合わないだろう。

 

「うわっミア母さんのいるところで食い逃げ?」

「ミア母ちゃんのいるとこでやらかすなんて怖いもん知らずやなぁ……」

 

 するとヴァレンシュタインさんもクラネル君を追いかけるように外に出て行った。彼女は……まあ止めることはないだろう。

 するとミア母さんが俺の方へやって来る。

 

「いいのかい?」

「ミア嬢、申し訳ありませんがクラネル君の分も俺が払います。明日にでも謝罪に向かいますね」

「ミア嬢だぁ?アタシをそんな風に呼ぶなんてアンタ変わってるね。まっそんなことよりあの坊主、いいのかい?」

「ああ、大丈夫です。彼、男の子ですからね」

 

 それともあれかな、同じファミリアの眷属を馬鹿にされたけどやり返さなくて良いのかって意味かな?でもそれは俺じゃなくてクラネル君の役割だからね。俺は彼の道をより頑強に、荒く塗装してあげればいいんだ。全く、損な役回りだ。

 ……これ俺薄情すぎるかな?でも俺が仮にベート君を吹っ飛ばしてもクラネル君嬉しくないだろうしなぁ……ここは誤魔化しのアルカイックスマイルで行こう。俺はやさしい笑顔で有名です。

 

 俺が笑っているとシル神とヴァレンシュタインさんが戻ってきた。二人とも明らかに気が沈んでいる。ヴァレンシュタインさんが赤毛の神に連れられ、シル神がこちらにやってきた。

 

「ロミアスさん、そのベルさんが……」

「ダンジョンに行った?」

「……はい」

「良いよね、強くなろうって必死に努力するのは……男の子だなぁカッコいい」

「その、心配されないんですか?」

「してないけど、まあ事情を神ヘスティアに話してから俺も後で追いかけるよ」

 

 シル神は俺の言葉にあまり納得していないようだがそうですかと飲み込んで奥へ行ってしまった。『シル!?大丈夫にゃ!?』など彼女を心配する声が奥から聞こえてくる。

 さて……向こうの方へ眼をやると先ほどのベート君が縄に縛られて外に放り出されているではないか。周りの客もめったに見られない高レベル冒険者の痴態ということで騒ぎはやし立てている。ベート君が『今嗤ったやつの顔覚えたからなゴラァ!』とブチ切れている。

 

「あの……」

 

 すると向こうにいた一人から声を掛けられる。ヴァレンシュタインさんだ。赤毛の神様はなにやら頭に手を当てて沈んでいる。げんこつでも落とされたのだろうか?

 

「こんばんは、ヴァレンシュタイン嬢」

「……こんばんは、その……さっきの子」

「うちのファミリアの子ですね。まあ大丈夫です」

「オラァ!同じファミリアのやつが大丈夫って言ってんだろうが!おろしやがれクソババア!!」

「そう……なんだ……」

 

 ベート君は元気だ。だが俺はクラネル君が外に出て行ったのを大丈夫と言ったまでであり人の痴態を酒の肴にすることを大丈夫と言ったのではないので吊られていてほしい。ヴァレンシュタインさんは俺の言葉を聞いて正に悄然と言った感じでトボトボと席に戻っていった。

 

「阿呆、お前の罰とは話が別だ。私はいつも貴様にその口と態度を直せと何度も忠告したはずだが」

「しかし、まさかここに本人がいたとはね……リヴェリアも言っていた通り僕らの完全な不手際だ。改めて謝罪がしたいね」

「当人にしっかりと謝罪させよう。私からも、笑いの種にしてしまってすまなかった」

 

 何やらこちらにやってくる1軍の人たち。落ち着いた言葉使いの小柄な少年と緑髪のエレアの2人。少年の方は小人族(パルゥム)と呼ばれる種族らしく確か名前は『フィン・ディムナ』だったか?少しくすんだ金髪に蒼い瞳を持った120㎝ほどの小柄で童顔な少年だ。エレアの方は『リヴェリア・リヨス・アールヴ』だったか、物語のエルフのようで身長が170㎝ほどありスラッとしている美女である。たしかオラリオ1の魔法使いと言われているらしい。

 彼女らが謝罪をしてくれるが俺に言われてもな……正直クラネル君も謝罪してほしいわけじゃないと思うんだよな……ああ、ただヴァレンシュタインさんに会える口実になれば行くかも。とりあえずクラネル君に話を通してみると言いその場は済んだ。

 

「そういえば僕たちが遠征している間に神が天界に還ったそうだよ」

 

 おっと不味いな?

 

「マジで?誰が還ったんか分かる?」

「いや、それが全くの謎……少なくとも【ガネーシャ・ファミリア】の捜査では知っている神やギルドに登録している神は誰も欠けていないって」

「奇妙だな、では誰が?」

「それを目下確認中とのことだ……どうも遠征のあのモンスターと言い、最近はきな臭いからね。ロキも気を付けてくれ」

「なんやフィンうちを心配してくれとんの~ま、『神の宴』も近いからな、行く気なかったけどしゃあないな、そん時ちょーっとばかし情報集めたるわ」

 

 席に戻った彼らはちょっと不味いことを話していた。いや俺なんも悪くないんですけどね?elonaの頃の記憶をたどるとあの光の柱信仰ポイント高いほどデカくなるっぽいんだよね。むしろ俺の信心深い所が出てしまった。美徳だね。しかし、どうせなら祭壇置いて適当なの祝福してもらったら良かったなぁ……もったいないことをした。帰ったら精肉工場を稼働させないとだめかぁ。

 

 さて……俺はもしやクラネル君が残した料理も処理しないと行けないのだろうか?俺まだ3品目手つけて無いんだけど。ちらっとミアさんを見る。

 

「残したら許さないからね」

 

 餓鬼くん、今は君が恋しい……

 

 俺が今も自宅の2階で健気に俺の帰りを待っているであろう餓鬼くん8体(友好度:天敵)に思いを馳せていると店の奥が俄かに騒がしくなる。何やら『リューを止めるにゃ!』と言う声が聞こえる。

 見るとここのウェイトレスに居た薄緑髪のエレアが木刀を持ってこちらに向かってきている。ウェイトレスであった時の彼女は無表情ではあったが決して圧のある顔ではなかった。が今はその目には険が宿っており何やら只事では無い様子。そして俺に木刀を向けてきた。

 

「貴方の連れの方が帰ってからシルが塞ぎ込んでしまいましたのですが……どうしてでしょうか?」

 

 今からこの剣お前にぶつけるよって目をしてエレアの人が俺を睨みつける。シル神そんなに落ち込んだん?それ多分演技とかじゃ無い?あの人恐らくクラネル君の活躍見ようとなんかで覗き見してるだけだと思うよ。

 

「恋する乙女の悩みとかじゃ無いでしょうか?」

「巫山戯ないでください」

 

 巫山戯てないんだけどなぁ……俺はとりあえずクラネル君とシル神の事を話した。

 

「んで、あそこでクラネル君の話を酒の肴にされて出て行っちゃって感じです。フローヴァ嬢は優しいので今日連れて来たことに罪悪感を抱いたのかもしれませんね」

 

 自分で言うのも何だが完璧な話の持って行き方だったと思う。交渉の神の面目躍如と言ったものだろうか?

 

「貴方は何をしているんですか!」

 

 んで俺はキレられた。何でさ……

 

「同じファミリアの仲間が一人でダンジョンに向かった!?しかもその冒険者はまだ半月しか経っていない初心者!?何故一人で向かわせたのですか!彼が死んでしまうかもしれないと考えないんですか!」

「ああ……ん〜クラネル君は大丈夫だよ」

「話になりません!ミア母さん、私が迎えに——」

「それは——困るなぁ……」

 

 俺は今にでも飛び出しそうなエレアを止めるために食べる手を止めて立ち上がる。いやこの隙に四次元ポケットに入れとこう……こうして俺の腹は満腹でキープできた。いや食べ過ぎ一歩手前だが。

 

「まあクラネル君なら大丈夫だと思うけど……そうですね、ここで死なれても困りますし無駄な事をやらせる趣味もないので、お世話様でした。お会計お願いします」

「……わかりました」

 

 こちらが引くと向こうもファミリア内の話になるため引かざるを得ないようで明らかに軽蔑したような目で会計をしてもらえた。ミアさんには悪いがこの店はもう来ないかもしれないな……店員に嫌われてしまった。すっかり暗くなった街中、天を仰ぐと雲が月を隠してしまっていた。

 

「テレポート」

 

 魔法を発動すると景色がぐにゃりと曲がり次元の穴が開く。それに入ると【ヘスティア・ファミリア】の拠点、俺が貰った部屋に戻ってきた。やっぱり便利だな転移マーカー、結晶はまだ1万個くらいあるのでよく行く場所に仕掛けておこう。

 

 どうやらヘスティア神はまだ帰ってきていない様子だ。机の上にダンジョン行ってますと紙に書いておこう。これで俺のやることは終わったな。あとはクラネル君を見つけるだけだ。俺に特定の誰かを見つけるなんて言う機能備わっていないためここからはゴリ押しでクラネル君を見つけることになる。もっともはやいのは聖武器を持って媚薬メテオを降らせることだが……あれどこにいるかとかは分からんし、というか今の時間でもどの層にも冒険者はいるだろうから意味ないか。願いが使えたら呼び出しできるんだが……まあしゃあない。俺は忍刀を持った。

 

「加速」

 

 これで時間だけなら稼げた。後は虱潰しに探すとしようか。




≪職業ピアニスト≫
NC環境でも大人気な職業のうちの一つ。初期スキルに重量挙げを覚えておりこれのお陰でインベントリに入れることのできる重量がかなり増える
Q 何故ピアニストが重量挙げを覚えるんですか?
A ピアノを持ち運ぶからです
尚大半の生まれつき持っていたピアノは洞窟に置いて行かれるのでピアニストはピアノを持ち運ぶために重量挙げを持っているがピアノを持ち歩かないという矛盾が生じる。
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