廃人がダンまち世界に行くのは間違っている   作:沸騰

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ベル・クラネルの異常

——side ベル・クラネル——

 

 時刻は正午少し過ぎ、ロミアスさんが部屋から出て行って僕も装備一式着用してダンジョンに向かう。

 神様に言われた通り今日は無理をしないでやれるところまでやって行こうと思う。ロミアスさんもいないし6階層くらいまでで今日のところは辞めようかな。

 目標が出来た。あの人の剣技に見惚れて追いつきたいと思ってしまった。きっとそれは途方も無く長く辛い道のりだと思うけれど……僕は、僕の最高速度で追いかけるだけだ。大丈夫、昨日で僕は今までとはありえないくらいに強くなった。その実感がある。

 

 太陽がちょうど真上にくるくらいの時間、メインストリートは人で混み合いになってぶつかって喧嘩になってるのも見かける。足早に進むとやがてある場所に辿り着いた。

 

「ちょっと気まずいなぁ……」

 

 『CLOSED』と札がかかっている扉の前で頬をかく。聞けばあの後ロミアスさんが僕の分まで支払ってくれたらしい。頭が下がる一方だ。

 僕は意を決して酒場『豊饒の女主人』に足を踏み入れた。カランカランと小気味良い鈴の音が鳴る。緊張しているからかそれが少し大きく聞こえた。

 

「申し訳ありません、お客様。当店はまだ準備中です。時間を改めてお越しになって頂けないでしょうか?」

「まだミャー達のお店はやってニャいのニャ!」

 

 店内でテーブルにクロスをかけていたエルフの店員とキャットピープルの店員が、僕にすぐに気づいて反応してきた。

 どちらもすごく可愛い。エルフの店員は眉目秀麗、キャットピープルの店員は天真爛漫と対照的な二人だった。最近エルフ好きだと自覚した僕は、耳の長い彼女の声に理由もなく緊張してしまう。

 

「すいません、僕は客じゃなくって、その……シルさん……シル・フローヴァさんはいらっしゃいますか?あと、女将さんも……」

 

 僕の言葉に目を丸くした二人は、何かに気づいたようにこちらを見る目線を改めた。

 

「ああ!あん時のでてったやつにゃ!シルに貢だけ貢がせといてファミリアの仲間に支払い任せてバックれた!あの時の白髪野郎にゃ!!」

「うぐっ!?」

 

 ぼ、僕ってそんなふうに見られてるの……?で、でもロミアスさんに奢って貰っちゃったしシルさんに迷惑かけちゃったし……

 

「貴方は黙っててください」

「ぶにゃっ!?」

「失礼しました。今シルとミア母さんを連れてきます」

「は、はい!」

 

 す、凄い……キャットピープルの店員さんへ見舞った一撃が()()()()()()()()()()()

 獣人の少女の襟を掴みずるずると引きずって行くエルフの店員を汗を流しながら見ているとふと彼女が足を止めたので僕もビクッと気を引き締めてしまう。

 振り向いたエルフの店員は僕をじっと見つめてくる。な、なんだろうか?僕何かしたんだろうか……

 

「貴方のファミリアの方に冒険者になって半月と聞いたのですが……貴方、ここにくる前にも何か、自警団などで訓練をしていましたか?」

「え?い、いえ……僕はお爺ちゃんと一緒に田舎に住んでいたのでそう言うことは無かったですけど……」

「そう、ですか」

 

 エルフの店員はそう聞くと少し顔を暗くしてしまった。な、なんでだろう。僕間違ったことを言ったのかな。

 

「一昨日貴方と一緒にいたあの青い髪の男性はいらっしゃらないのですか?」

 

 青い髪の男性、恐らくロミアスさんだと思う。ロミアスさんは深い空色の髪に翠玉(エメラルド)色に輝く眼をしたもの凄い美男だ。同性の僕から見ても見惚れてしまう時がある。その事を本人に言ったら『俺魅力値99999だからねぇ……』と言っていた。数字の意味は分からなかったけど凄い魅力的な顔をしているので高い方が良いんだろうと思う。

 

「ロミアスさんですか?今日は観光するって別れましたけど……あの人何かご迷惑をかけましたか?」

「いえ、私が……勘違いで剣を向けてしまって、改めて謝罪がしたいのです。……私は、いつも空回りしてしまう……」

 

 キャットピープルの店員を握ったまま落ち込んでいるエルフの店員。

 

「ロミアスさんなら大丈夫だと思いますけど……伝えておきますね」

「ありがとうございます。はっ!?申し訳ありませんでした。今シルとミア母さんを呼んできます」

 

 言うや否やエルフの店員はキャットピープルの店員をずるずると引きずって奥に入って行った。

 

「ベルさん!?」

 

 すると直ぐに店の奥からシルさんが現れた。最後に別れた時を思い出すと穴を掘って入りたくなる。けど僕は腹に力を込めて彼女に歩み寄って腰を90度曲げる。

 

「一昨日は!すみませんでした!!」

「……ふふっいえ、大丈夫ですよ。こうして戻ってきて貰えただけでも私は嬉しいです」

 

 あんなことがあったのに同情するわけでも無く本当に嬉しそうに微笑んでくれる彼女に涙が出そうになる。泣いてるなんて知られたくなかった僕はさも目にゴミが入ったように目元を指で擦って顔を上げる。

 

「そう言えば、お料理どうでしたか?私ベルさんから美味しかったか聞いてません」

「とっても美味しかったです!本当に!」

「ふふっ良かったミア母さんの料理は最高でしょう?」

 

 それから少し話すと彼女は何かに気がついたように、ぱんっと手を打って鳴らした。「少し待っててください」とキッチンの方へ消える。

 戻ってきたシルさんは大きめなバスケットを抱えていた。

 

「ダンジョンに行かれるんですよね?でしたら貰っていただけませんか?」

「えっでも……」

「今日は私たちの料理人(シェフ)が作ったものでして、味は折り紙付きです。その、私が手をつけたものもあるんですが……」

 

 僕はロミアスさんから貰った布袋を無意識に触ってしまった。こ、こんな時どうすれば——!?いや考えるんだ男ベル・クラネル……女の子からのお弁当を貰う機会なんてもう一生ないのかも知れないんだぞ?でも、ロミアスさんから貰ったお弁当もある……ど、どうすれば良いんだ……

 

「ベルさん?どうしましたか?」

「えっい、いや何でも無いですよ!」

「もしかして……迷惑、でしたか?」

「そんな事ありません!シルさんの思いはとっても嬉しいです!」

 

 バツが悪くなって布袋に手を入れると何か紙が入っていることに気がつく。そう言えば、ロミアスさんメモを入れたって言ってたな……シルさんに断って中身を見てみる。

 

『クラネル君へ

この手紙を読んでいると言うことは君は今『豊饒の女主人』でフローヴァ嬢からお弁当の差し入れを提案されて女子免疫ゼロの工業系の男子高生のように慌てているところだと思います』

 

 ロミアスさんあの人エスパー!?と言うか男子高生ってなに!?

 

『この袋は入っているものが腐らなくなる不思議なマジックアイテムです。なので気にせずフローヴァ嬢からの好意を受け取ること』

 

 さらっとこの袋の凄いところが書いてあった気がしたけど……でもそれなら僕も気兼ねなくシルさんのお弁当を受け取ることができる。

 

「いえ、大丈夫でした。ありがとうございますシルさん。でもなんでこれを僕に?」

「差し上げたくなったから……ではダメですか?」

 

 どこか照れくさそうにするシルさんはきっと僕の事を応援してくれているんだと鈍い僕でも察することができた。

 

「嬉しいです!ありがたく頂きますね。シルさん」

 

 彼女の気持ちに応えるべく僕はちょっと照れくさくって笑ってバスケットを受け取る。見つめ合うシルさんも又頬を少しだけ染めて穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「坊主が来てるって?」

 

 突如カウンターバーから現れたのは女将さん——ミアさんだった。僕はなんだか変な所を見られた気分になりサッとシルさんから目を離してしまった。

 

「ふぅん……シル、あんたはもう引っ込んでな。仕事残ってんだろう?」

「はい、分かりました」

 

 シルさんはミアさんにお辞儀をしてそそくさと戻って行った。ミアさんは僕を見て豪傑に笑っている。

 

「あ、あの……?」

「なるほどねぇ……坊主、あの兄ちゃんに伝えときな。昨日来なかった詫びに今度はじゃんじゃん頼んでくれって」

「え?えっとロミアスさんに伝えれば良いんですか?分かりました」

「シルと兄ちゃんには感謝しとくんだね。飛び出したアンタを追いかけにいって結局追いつけなくってね。塞ぎ込んだシルを見てリュー……あのエルフの。アイツが剣持って出ていってね。兄ちゃんが誤解を解いてくれてシルもその後リューに色々聞かせてくれたんだよ」

 

 エルフ好きの僕はどうやらエルフの事を誤解していたらしい。さっきの手刀もちょっとしか見えなかったしもし僕が対峙していたら……と思うとブルブル震えてしまう。

 でも、(シルさん追いかけてくれたんだ)そう思うと胸がジンと暖かくなる。恩が増えていくばかりだけどいつかは返したいな。とそんな事を思った。

 

「……坊主」

「なんですか?」

「冒険者なんてカッコつけるだけ無駄な職業さ。最初のうちは生きる事だけに必死になれば良い。背伸びしたってろくなことにならないからね」

 

 僕は目を見開いた。あの時のミアさんもカウンターにいたから僕の事情をある程度わかっているのだろうか?

 まさかあの後アイズ・ヴァレンシュタインがロミアスに話しかけにいったせいであの場にいた人たちにはほぼバレているなんて知らない無垢な少年であった。

 それはそうと彼女はニッと笑みを浮かべる。

 

「最後まで二本の足で立ってた奴が一番なのさ。惨めだろうがなんだろうがね。そうすりゃあ帰ってきたソイツにアタシが酒を振る舞ってやる!そら、勝ち組だろう?」

「み、ミア母さん!」

「調子に乗るんじゃないよ坊主が。……ただまあ坊主。あんたあの兄ちゃんに教わってるのかい?」

「はい。と言ってもまだ1日ですけど……」

 

 僕が1日と言うと途端にミアさんの目つきが変わる。

 

「1日……?坊主」

「?なんですか?」

「アンタ、オラリオにくる前にどっかで鍛えてもらってたかい?」

 

 なんでみんなその事を聞くんだろう?僕はエルフの店員さんに言ったことと同じことを話した。そしたら釈然としてなさそうな顔でもう直ぐ開店だから行った行ったとくるりと体を回されてドンと背中を押された。

 

「坊主、アタシにここまで言わせたんだ。くたばったらただじゃあおかないよ」

「はい!ありがとうございます!いってきます!」

 

 勢いよくメインストリートを走る僕は今更「いってきます」なんて言ったことに気がつき顔を真っ赤にしていた。

 

 

 ダンジョン4階層、前まで僕が潜れた最深階層だったそこで僕は4本の足を持つトカゲのようなモンスター『ダンジョン・リザード』と対峙していた。今まではその不意打ちに何度も辛酸を飲まされたが今は違う。

 ダンジョン・リザードは僕に向かって舌を伸ばしてくるけど、前に比べて少しだけど遅く感じる。ギリギリで回避してそのまま首を襲影の刃で断ち切る。

 

 そして僕が魔石を回収しようとしたところを奇襲しようとずっと天井で息を潜めて隠れていたもう一体もナイフで上手く舌を弾いて空いた口に向かって投擲。命中して暴れ回り地面に落ちてきたダンジョン・リザードをその鱗ごと貫通して突き殺すと塵になって消える。

 強くなってる。

 

 ロミアスさんがいない事であのモンスターが大量に襲ってくることが無くて多くても1対5なので昨日と比べると凄い安全なダンジョン探索になっている。囲まれてもパニックになる事は無くなったし、あんなに苦戦したダンジョン・リザードをこんなにあっさり倒せるなんて……僕はステイタス更新もしていないしこれは僕自身が強くなっているんだ……出発前にロミアスさんに言われた言葉が蘇る。

 

『クラネル君良いかい?力任せは絶対に力で負けない確信がないとしちゃいけないんだ』

『なんでこの話をって顔だね?神ヘスティアがステイタス更新を行わなかったのは俺からの助言もあるんだ。今クラネル君がステイタス更新したら恐らくその身に余る力を持ってしまうってね』

『おおっと怒らないでくれよ。折角技術を磨き始めたのにあのへっぽこ短剣術になるのはいやだろう?』

『技術を極めれば木で鉄を切ることだって出来るよ』

 

 その後ロミアスさんは実際にどこからか持ち出した木の棒で持っていた短剣(物凄く高級そうだった)をすっぱり切ってしまった。

 いつかは僕も、あんな風になれるのかな……でも、これからもドンドン成長していけばきっと——

 

 

 初めは順調だと思っていた。でも僕はロミアスさんがいない壁に当たることになる。

 

「あれ?魔石がいっぱいだ……」

 

 そう言えば一昨日はロミアスさんに魔石を全部預けていたんだった。……僕の頭の中にミアさんの言葉が蘇る。無理をせず……そうだ。僕は僕の速度で歩いていくんだ。

 

「っ!?ゴブリンが!」

『グギアァア!』

 

 そして魔石がいっぱいになってしまった僕が気を取られていると横道からゴブリンに奇襲されてしまい左腕に浅い傷を負ってしまう。ぬかった!馬鹿か僕は!

 なんとか二撃目を与えられる事なく脳天にナイフを刺すことに成功したけど、今日初めて傷を負った。ロミアスさんに見てもらおうと思い振り返るがそこには誰もいない。

 

 僕は今日一人でダンジョンに来ているんだから当たり前だ。寧ろロミアスさんが異常だったんだ。無詠唱で回復魔法を唱えることができて、何度も切り傷を治すだけに回復魔法を唱えることなんて普通はしない。

 

 僕はポーションを左腕の傷にかける。染みて涙が出てきた。

 

「クソ、クソ……」

 

 1日だぞ?たった1日で僕はどれだけロミアスさんに頼り切ってるんだ!ダンジョンに行く時にネックになる魔石の保管は全部してもらって、武器も貰って気力は不思議な武器で回復してもらって怪我をしても直ぐに魔法で治って……

 自力で6階層まで行けた?馬鹿か!がむしゃらに魔石も採取せずに下に降って行っただけじゃないか!あの後ロミアスさんが来なかったら僕は死んでたかもしれないんだぞ!

 

 僕は怖くなって周囲を確認した。今になって思えばロミアスさんと一緒に探索している時に不意の強襲にあったことが無かった。モンスターを呼ぶあの魔法も分かりやすいとこから来ていたじゃないか。あの時はロミアスさんが事前に教えてくれたか、僕が気づく前に倒していたんだ……

 先程のダンジョン・リザードとの戦いを思い出して僕は自分をぶん殴りたくなる。何が少しは強くなってるだ。僕が憧れている人はその程度じゃ無いだろうが!一人になった途端にコレかよ!

 

 先に進もうとする僕の足を止めたのは今朝ミアさんと話した内容だった。落ち着け、僕。このまま潜っても無理な動きが増えるだけだ。……そう言えば、ロミアスさんから貰ったこの袋、確か入れたものが軽くなるって言う効果があるって……ロミアスさんから貰ったものにまた頼るのは情けないけど魔石を入れさせてもらおうかな。

 

 そう思って袋の中を確認しているとまたメモが見つかった。あれ?さっきのメモは抜いてバックパックに入れたはずなんだけど……

 開いてみてみると僕は目を見開いた。

 

『この中に魔石を入れるのを禁止にします。落ち着きなさい』

 

「ロミアスさん……」

 

 僕は目を瞑った。そうだ。今までを思い出すんだ。今は冒険者として何をするべきか……少しでも身軽になって経験を得ることだ。僕にはそれしかない。

 ふとエイナさんの言葉が蘇る。『冒険者は冒険しちゃいけない』そうだ、僕はまた自惚れるところだった。今朝誓ったはずだ。無理せずに、僕の速度で目指すって——でも、もし無理をしないと届かない場所があるなら……

 

 僕は息を吸って帰りの道へ足を進めた。2階層に差し掛かったところで途中でゴブリンが出てきた。ただ倒すだけじゃダメだ。思い出すんだ。一昨日のロミアスさんの動きを。あの神業と形容することすら生ぬるい極みの技術を!

 

「うあああああ!!!」

 

 

 

——side ロミアス——

 

 あの後近くのそこそこ賑わってる酒場に入ってどんちゃん騒ぎを起こした俺は是非ともうち専属のピアニストになってくれと迫ってくるバーの店長を気絶させて馬鹿どもとサヨナラする。

 

「ロミアスうううう!お前は新しい演奏の神だあああ!!!」

「ロミアス!お前の唄を僕は後世に語り継ぐと誓うよ!」

「ロミアス!私の眷属になってくれえええ!!!」

 

 なぜ俺がピアノを弾いたか、それは酔った勢いでピアノ弾いてる奴どかして絶技を披露していた。俺は何曲か弾き終わってやっと正気に戻った。

 俺、酔いに耐性ないんだよね。あ、あぶねえええ……コレでメテオ打ってたらオラリオ終わってた……お酒はシェルター内で飲むことにしよう。俺は固く誓った。 

 

 その日の話は噂に尾鰭と背鰭と顔と鰓と肉がくっついて魚になってあらゆる方面に噂になるがそれは別の話。

 

 さて、クラネル君はどうなったかな……俺的には俺に頼ったままじゃヴァレンシュタインさんに追いつけないって思って欲しいな。簡潔に言うとクラネル君には仲間ができてほしい。俺とクラネル君の2人だけでも強くなれるだろうが、健全じゃない。コレで仲間の大切さを再確認してくれると嬉しいんだが……

 

 

 拠点に帰るとクラネル君がソファで寝ていた。所々傷ついているのが見える。この傷、ウォーシャドウの爪か?今更クラネル君が傷つく相手でもない気がするが……

 

「ん?ぅんん……」

 

 俺がジロジロみているとクラネル君が起きてしまった。目を擦ってまだ高い声を出す姿を見ると少年なんだなと改めて思い知らされる。

 

「ロミアスさん?あっす、すみません!僕寝ちゃって」

「良いよ。寝る子は育つよ」

「それ、お爺ちゃんにも言われました。そう言えばロミアスさん、『豊饒の女主人』のミアさんが昨日来なかった代わりに今度来た時はじゃんじゃん頼んでくれって言ってましたよ。エルフの店員さんも謝罪がしたいって」

 

 ミアさん、気ぃ使ってくれたなこれは……エレアの人とも禍根は残したくないか……

 

「わかった。こう言うのは早い方がいいからね。明日か明後日にでも一緒に行こう」

「はい!」

 

 笑顔で返事をするクラネル君だけど一瞬陰が見えた。どうしたんだろうと思っていると重々しく口を開き始める。

 

「あの、ロミアスさん……もし宜しければなんですけど……僕に戦い方を教えてくれませんか?」

「前に見せたようなものではなく、戦い方を?」

「はい。僕に訓練をつけて欲しいんです」

 

 あの日と同じ、いやそれ以上の熱量で俺を見るクラネル君。何故彼がこんなにやる気になったのか微塵も覚えがない……何かダンジョンであったのだろうか?ふーむ、まあ良いか。ただあれだな……

 

「折れないか心配だな……」

「……腕とかですか?」

「いやそれは絶対に折れるから心配してない。心がね、2桁で済むといいんだけど」

「ココロガニケタ」

 

 ダラダラと汗を垂らすクラネル君だがもう遅い。俺はクラネル君をガシッと掴む。

 

「あのーロミアスさんまず何をするか教えてもらっても良いですか?」

「俺との組み手。瀕死で絶対に耐える技持ってるんだ」

「ヒェ……」

 

 その前にペットフォンでクラネル君の今のスキルを確認してみる。まあ今日1日でそんな変わってないと思うけど——

 

「は?」

 

ベル・クラネル

【力】  22

【耐久】 19

【器用】 58

【感覚】 46

【意思】 18

【魔力】 18

【魅力】 33

【速度】 130+20

スキル

【戦術】 25

【短剣】 44

【二刀流】21

 

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