『スラグホーン先生の忘れられない教え子たち』の第一弾は、ハリーの両親から始まった。
スラグホーン先生に、印象に残っている昔の教え子について語ってもらう企画である。
ジェームズ・ポッターとリリー・エバンズ。
闇の帝王に立ち向かい、ハリーを守って亡くなった二人について、学生時代の恩師に話してもらった。
ロメルダも監修に加わった結果、当初の予定より恋愛要素が大幅に増えた。
*
スラグホーン先生の忘れられない教え子たち
第一回 ジェームズ・ポッターとリリー・エバンズ
長く教師をしていると、忘れられない生徒が何人もできる。
ジェームズ・ポッターとリリー・エバンズも、その二人だった。
もっとも、二人は最初から仲が良かったわけではない。むしろ、リリーはジェームズを嫌っておった。
ジェームズは優秀だったよ。変身術にも長け、クィディッチでは活躍し、人を惹きつける華もあった。
本人も、それをよく分かっておった。
友人たちと騒ぎを起こし、目立つ魔法を使い、教師に叱られても翌日には同じことをする。才能はあったが、模範的な生徒とは言い難かったね。
一方のリリーは、実に聡明だった。
特に魔法薬学の才能は素晴らしかった。材料や手順を覚えるだけでなく、なぜそうするのかを考える生徒だった。
マグル生まれと知った時には驚いたものだ。もっとも、才能は血筋に遠慮して生まれてくるものではない。
リリーは、誰に対しても間違っていると思えばはっきり言った。当然、ジェームズにも容赦がない。
「あなた、自分が面白いと思っているだけでしょう」
彼女がそう言うところを、一度ならず見た。
それでもジェームズは、何度もリリーを誘った。
ホグズミードへ行かないか。クィディッチの試合を見に来ないか。スラグクラブで隣に座らないか。
ほとんど断られておったよ。
ロメルダ嬢からは正確な回数を聞かれたが、教師が生徒の失恋を数えていたら、その方が問題だろう。
ただ、ジェームズも少しずつ変わった。
自分が目立つためだけに魔法を使うことが減り、誰かを笑わせることと、笑いものにすることの違いを覚えた。
ある夕食会では、珍しくリリーの話を最後まで黙って聞いていた。
「今日は随分と静かじゃないかね」
わしが尋ねると、彼はこう答えた。
「僕が話さない方が、リリーが長く話してくれるので」
若者にしては、なかなか賢明な発見だった。
リリーも、その頃からジェームズを見る目を変えていった。
彼が調子に乗れば叱っていたが、以前のように最初から相手にしないことはなくなった。
二人が付き合い始めたと聞いても、わしは驚かなかったよ。
何年も生徒を見てきた教師には、そういう変化が分かるものだ。
まあ、ジェームズが浮かれすぎていたので、誰にでも分かったという事情はあるがね。
二人は似た者同士ではなかった。
ジェームズは先に動き、リリーは考えてから動く。ジェームズが輪の中心に立ち、リリーはその輪が間違えば止める。
違ったからこそ、互いに足りないものを補えたのだろう。
あの二人が迎えた結末について、わしが語れることは多くない。
教師は、自分より先に教え子が亡くなることには慣れんものだ。
ただ、リリーがジェームズを選んだことを後悔していたとは思わない。
ジェームズは最後まで家族の前に立ち、リリーは息子を守った。
ハリー・ポッターを見ると、時折二人を思い出す。
ジェームズによく似た顔で、リリーと同じ目をしているから、というだけではない。
無鉄砲なところも、譲らないところも、妙な相手に立ち向かっていくところも、実によく受け継いでおる。
ジェームズとリリーは、最初から運命の恋人だったわけではない。
運命で片づけるには、ジェームズはあまりにも多く断られ、リリーはあまりにも長く彼を嫌っておった。
あの二人は、自分たちで相手を選び直したのだ。
そして、自分がどのような人間になるのかを。
だからこそ、わしにとって忘れられない教え子たちなのだろう。
*
今日も魔法書研究会は、図書室の奥にある長机を占領していた。
パドマは次号の紙面を確認し、アーニーは読者から届いた手紙を分類している。
ロンは自分の新しい本に入れる原稿を書いていたが、隣のロメルダが肩にもたれかかっているので、さっきから一行も進んでいない。
ジニーは二人を見ないようにして、投書欄を読んでいた。
ハーマイオニーは来ていない。
最近、ハーマイオニーが魔法書研究会へ顔を出す回数は減っていた。
ロンとロメルダが付き合い始めた頃からなので、二人がいちゃいちゃしているところを見たくないのかもしれない。
「あたしたち、そんなにいちゃついてないよね?」
ロメルダがロンの肩へ顎を載せたまま尋ねた。
「ああ」
ロンが答える。距離はこれ以上ないくらい近い。
二人の認識には、かなり問題があった。
図書室の扉が開き、スラグホーン先生が入ってきた。
先生の腹部が机の間を通るたび、椅子が少しずつ押し退けられていく。
「やあ、諸君。精が出るね!」
スラグホーン先生は、大きな声を出した直後、少し離れた席で本を読んでいたトムを見つけた。
「……ジェドゥソール先生もいたのかね」
「います」
トムは本から顔を上げなかった。
「もちろん、いてはいけない理由はありませんが」
「いやいや、そんなことは言っておらんよ!」
スラグホーン先生は妙に明るく笑い、トムから最も遠い椅子へ座った。
二人はずっとこんな調子だった。
スラグホーン先生はトムを避けている。
トムは避けられていると分かっているので、時々わざと近くへ行く。
仲が悪いというより、スラグホーン先生だけが一方的に気まずそうだった。
「それで、スラホン先生。どうしたんですか?」
ロメルダが尋ねる。
「クリスマスパーティーの招待に来たのだよ」
スラグホーン先生はローブの内側から、金色の封筒を何枚も取り出した。
「今年のパーティーには、魔法書研究会の諸君を全員招待したい」
「全員?」
ロンが顔を上げた。
「もちろんだとも。君とハリーは、クィディッチの練習でスラグクラブへなかなか来られんからね。今回は必ず参加してくれたまえ」
「ウッドが卒業してて良かったな」
ハリーが小声で言った。
先生は封筒を一枚ずつ配った。
「ローゼマイン。君にはぜひ来てほしい。今回はニコラス・フラメルを招待している」
「錬金術で有名なニコラス・フラメルですよね?」
「そうとも。賢者の石を作った、あのフラメルだ。さらに、『血兄弟──吸血鬼たちとの日々』の作者、エルドレド・ウォープルも来る」
「絶対に行きます!」
「君のことはよく分かっているつもりだよ」
スラグホーン先生は満足そうに頷いた。
その発言は正しかった。
著名な錬金術師と作家を同時に呼ばれて、断る本好きはいない。
「客人は一人まで連れてきてよい。できれば、皆パートナーと一緒に来てくれたまえ」
スラグホーン先生が机を見回す。
「では、楽しみにしているよ。マクドゥーガル君も」
「マクミランです」
アーニーが訂正した。
「もちろん分かっておるよ」
「今、マクドゥーガルと言いました」
「似たようなものだ」
「似ていません!」
先生はアーニーの抗議を聞かず、図書室を出ていった。
アーニーは金色の招待状を握ったまま、しばらく扉を睨んでいた。
「なんでいつも僕の名前を間違えるんだ?」
「先生にとっては、忘れられない教え子になるまでが長いんじゃない?」
「僕は魔法薬学の成績は悪くないぞ!」
パドマは招待状を裏返し、何かを書き始めた。
「せっかくだから、クリスマス特集でスラグホーン先生主催のパーティーについて書くわ」
「僕も手伝う」
アーニーがすぐに言った。
さっきまで名前を間違えられて憤慨していたとは思えない速さだった。
「じゃあ、取材の役割分担を決めましょう。自動速記羽ペン忘れないでね」
二人は当然のように、パートナーとして参加するらしい。
本人たちには恋愛のつもりはないのだろうが、パーティーの最中も一緒に取材するなら、結果は同じである。
「僕たちは一緒に行くよな?」
ロンがロメルダを見る。
「当たり前じゃん」
ロメルダはロンのローブを上から下まで見た。
「でも、服はあたしが選んでいい?」
「まだ何も着てないだろ」
「普段の服を見れば分かるし、かっこいいの着てほしいじゃん」
ロンは理不尽そうな顔をしたが、断る気はなさそうだった。
「ハーマイオニーには、わたしから伝えておくわ」
ジニーが言った。
ハリーは招待状を眺めていたが、ふと期待のこもった顔でジニーを見た。
「ジニーは、誰と行くんだ?」
「ディーン」
「そうか」
ハリーの声が少し低くなった。
ジニーは気づかなかったのか、気づかないふりをしたのか、そのまま投書欄へ視線を戻した。
ハリーはしばらく招待状の角をいじったあと、今度はわたしを見た。
「マインは?」
「まだ決めてないよ」
「一緒に行く?」
「いいよ」
パートナーを探す手間が省けた。
ハリーも一人で参加せずに済む。
お互いに得しかない。
「ハーマイオニーは良かったの?」
「誰か見つけるだろ」
ハリーの返事は適当だった。
その判断を、後になって少し後悔していたかもしれない。
*
クリスマスパーティーの日、ハーマイオニーはコーマック・マクラーゲンという男を連れてきた。
どうしてその人を選んだのかは、誰にも分からなかった。
本人にも分かっていないかもしれない。
コーマックは会場へ入ってからずっと、クィディッチで自分がどれほど優秀なのかを話していた。
ハーマイオニーは横で微笑んでいたが、目はまったく笑っていなかった。
「助けた方がいいかな」
わたしがハリーに聞く。
「自分で選んだんだから、自分で何とかするだろ」
「冷たいね」
「さっきから何回か、僕に助けを求める顔をしてるけどね」
「気づいてるなら助けてあげればいいのに」
「コーマックと近づくのは嫌だ」
ハリーは料理を取るふりをして、ハーマイオニーから目を逸らした。
会場は金色と緑色の飾りで埋め尽くされていた。
天井には本物の妖精が飛び、壁際には氷で作られた彫刻が並んでいる。テーブルには見たことのない本が置かれていて、わたしはハリーと来たことを忘れかけていた。
会場を見回すと、アストリアがセオドールと一緒にいた。
セオドールは黒い正装用ローブを着ている。隣のアストリアは銀色のドレスで、二人で話していた。
わたしは首を傾げた。
アストリアは、ドラコと付き合っていたはずだ。
少なくとも、わたしはそう認識していた。
そのドラコは、少し離れたところでダフネと一緒にいる。
「お兄さま」
声をかけると、ドラコがこちらを向いた。
「何だ」
「アストリアと一緒じゃないの?」
ドラコの顔が露骨に険しくなった。
「断られたんだ」
「どうして?」
「僕が聞きたい」
「それでダフネと?」
「誰も連れて行かないわけにはいかないだろう」
ダフネは隣でワインを飲みながら、他人事のように頷いた。
「私もあの子が何を考えているのか分からないわ」
アストリアは、わたしたちが見ていることに気づいた。
けれど、ドラコへ近づくことも、視線を逸らすこともしなかった。
セオドールだけが、こちらを見てわずかに頭を下げる。
何がどうなっているのか分からなかった。
恋愛関係は、本よりも登場人物の説明が足りないことが多い。
「ローゼマイン!」
スラグホーン先生に呼ばれた。
先生の隣には、口髭を整えた細身の男性と、青白い顔の吸血鬼が立っている。
「紹介しよう。こちらがエルドレド・ウォープル。そして友人のサングイニだ」
「初めまして」
「君がプロングズ出版のローゼマインか」
ウォープルはわたしと握手をすると、そのまま隣のハリーへ目を向けた。
「ロン・ウィーズリーの本は実に良かった。本人の視点を残しながら、周囲の証言を組み合わせている。ところで、ハリー・ポッター本人の自伝を出す予定はないのかい?」
「今のところは」
ハリーはあまり興味がなさそうだった。
「出すなら、ぜひ私に書かせてほしい。君の人生には、少なくとも三巻分の価値がある」
「三巻も話すことはありません」
「一歳で闇の帝王を倒した時点で一巻になる」
「僕は何も覚えてません」
「記憶がないという苦悩から始めればよいじゃないか」
作家は何でも本にする。
「書くなら、ぜひうちの出版社でお願いします」
わたしが口を挟むと、ウォープルの目が輝いた。
「プロングズ出版だったね。もちろん検討しよう」
「プロングズ出版?」
背後から女性の声がした。
振り返ると、仮面をつけた女性が立っていた。
顔の上半分は白い仮面に隠れ、深い赤色のドレスは中世の肖像画から抜け出してきたようだった。
「もしかして、『マグノリアの令嬢は名乗らない』の作者ですか?」
ロメルダが飛んできた。
「ええ」
「いつも読んでいます! どこからアイデアを考えているんですか? モデルになった人います? マグノリアの令嬢はまたシリーズ内に出てくるんですか?」
「質問が多いわね」
「読者代表なんで」
ロメルダは羽ペンと手帳を取り出し、仮面の作家を逃がさなかった。
ロンは少し離れたところで、別の作家たちに囲まれていた。
『つまり、ハリー・ポッターは英雄なのか?』は予想以上に売れている。ロンは文章が鋭い、観察眼がある、次回作は何を書くのかと次々に褒められていた。
ロンは照れながらも、かなり嬉しそうだった。
ロメルダは作家への質問に夢中で、ロンが褒められていることには気づいていない。
あとで全部教えれば、本人以上に喜ぶと思う。
その頃、トムはスラグホーン先生のそばに立っていた。
スラグホーン先生は露骨に逃げる機会を探している。
「先生」
「な、何かね、ジェドゥソール先生」
「『忘れられない教え子たち』の第二弾は決まりましたか?」
スラグホーン先生の手から、パイナップルの砂糖漬けが落ちた。
「その企画は、まだ始まったばかりだからね!」
「そうですか」
「君について書くという意味ではないぞ」
「僕は何も言っていませんよ」
トムは平然としている。
スラグホーン先生だけが汗をかいていた。
昔のトムについて尋ねたい気持ちはあったが、今はフラメルを探す方が先だった。
「ああ、ローゼマイン、ちょうどいいところに来た。こちらへ!」
ちょうどタイミングよく、スラグホーン先生が再びわたしを呼んだ。
トムから逃げるために呼ばれた気もするが、先生の隣にいる老人を見た瞬間、どうでもよくなった。
「ニコラス・フラメルだ」
老人は細身で、髪も眉も真っ白だった。
けれど、目だけは澄んでいる。
「あなたが賢者の石を作ったニコラス・フラメルですか?」
「そうだよ」
「おいくつですか?」
「六百を越えると、十や二十の違いは気にならなくなるよ」
フラメルは穏やかに笑った。
「最近は、妻と二人で身辺を整理しているところだ」
「身辺整理?」
「終活だよ」
「賢者の石を持っているのに?」
わたしは首を傾げた。
賢者の石があれば、不老不死の薬を作れる。
それなのに、どうして死ぬ準備をするのだろう。
フラメルではなく、ハリーが答えた。
「賢者の石なら、もう壊してしまったんですよね」
フラメルが頷く。
「アルバスと話し合って、そう決めた」
「壊した?」
思わず聞き返した。
「どうして?」
「またヴォルデモートに狙われる可能性があったからだ」
ハリーが言う。
「僕が一年生の時、ダンブルドア先生が守っていたんだよ。ヴォルデモートに狙われていたから、奪われる前に壊したらしい」
「もう、ないの?」
「ない」
胸の奥が急に冷えた。
賢者の石。
物質を変え、命を引き延ばし、錬金術の常識を越える石。
あれがあれば、トムへ身体を与えられるかもしれないと思っていた。
日記から生まれた記憶ではなく、一人の人間として生きるための身体を。
魂が独立すれば、ヴォルデモートとのつながりも切れるかもしれない。
ダンブルドア先生が言ったように、ヴォルデモートの分霊箱を壊すためにトムまで死ぬ必要はなくなるかもしれない。
けれど、その石はもうない。
「そう、なんですね……」
声がうまく出なかった。
フラメルがわたしの顔を見る。
「賢者の石が必要だったのかね?」
「作れないかと思っていました」
「石を?」
「人間を」
フラメルの白い眉がわずかに上がった。
わたしはトムの方を見た。
スラグホーン先生に話しかけられているが、先生の方は会話を続けたくなさそうだった。
「身体のない魂に、身体を与えたかったんです」
フラメルはすぐには答えなかった。
驚いた様子も、笑う様子もない。
ただ、わたしが何をしようとしているのか確かめるように見ていた。
「なるほど」
やがて、老人はローブの内側へ手を入れた。
一冊の薄い本を取り出す。
表紙には、赤い円といくつもの錬金術記号が描かれていた。
「これは、賢者の石の生成について私が書いたものだ」
「作り方が書いてあるんですか?」
「一応は」
わたしは両手で本を受け取った。
見た目より重い。
「ただし、私と妻以外に、最後まで読み解けた者はいない」
「どうしてですか?」
「危険な知識だから、簡単には読めないようにした」
「読めるように書いてください」
「君は正直だね」
フラメルは笑った。
「解けないように書いたものを渡されても困ります」
「だからこそ、渡す相手を選べる」
表紙を開く。
最初の頁から、知らない記号が並んでいた。
文字のようにも、図形のようにも見える。一つの文章が円を描き、次の頁へつながっている。
普通には読めない。
けれど、本である。
本ならば、読む方法はどこかにある。
「もらってもいいんですか?」
「終活の一つだよ。誰にも読まれないまま処分するより、読もうとする者へ渡したい」
「ありがとうございます」
さっきまで胸を塞いでいた絶望が、少しだけ動いた。
賢者の石は壊された。
それなら、もう一度作ればいい。
作り方が難しいなら、読み解けばいい。
本人と妻にしか分からなかった本なら、本人がいるうちに質問すればいい。
「マイン」
ハリーが怪訝な顔でわたしを見ていた。
「最初から、トムを人間にする方法を考えてたの?」
「うん」
「僕には言わなかっただろ」
「まだ何も分かってなかったから」
「賢者の石を作ろうとしてたことも?」
「今、決めたところだよ」
ハリーは本と、離れた場所にいるトムを交互に見た。
「身体を作ったとして、本当にヴォルデモートから切り離せるのか?」
「分からない」
トムはヴォルデモートの魂から切り離され、日記に残された記憶から生まれた。
今もヴォルデモートの一部なのか。
それとも、すでに別の魂なのか。
身体を得れば、一人の人間として定着できるのか。
何も証明されていない。
「でも、トムが魂として完全に独立すれば、ヴォルデモートとは切り離されるかもしれない」
「かもしれない、だろ」
「可能性があるなら調べるよ」
ハリーは少し黙った。
わたしの手にある本を見る。
「危険なんじゃないか?」
「賢者の石だからね」
「そうじゃなくて、君が作ることが」
「ハリーも手伝って」
「僕が?」
「一緒にパーティーへ来たでしょう?」
「それとこれに何の関係があるんだよ」
「パートナーだから?」
「そういう意味のパートナーじゃない!」
ハリーの声が少し大きくなった。
近くにいた人たちがこちらを見る。
ジニーも、ディーンの隣から顔を上げていた。
「違うの?」
「違う」
「じゃあ、どういう意味?」
「今説明する話じゃない」
ハリーは顔を逸らした。
よく分からないが、完全に断られたわけではなさそうだった。
わたしはもう一度、本を開いた。
読めない記号が、頁の上で赤く光っている。
賢者の石は失われた。
けれど、作り方まで消えたわけではない。
トムを生かす方法も、まだ失われていない。
誰にも読み解けなかったというのなら、ちょうどいい。
わたしが読み解いてみせる。