サムライ恋記!   作:山崎五郎

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大神(おおがみ)ミコト

キヴォトス、百鬼夜行連合学院。

 

トリニティの正義実現委員会、ゲヘナの風紀委員会の様に、この学園にも治安維持の為の部活動は存在している。

 

その名も、百花繚乱紛争調停委員会…長いので以降は百花繚乱で。

が、彼女らと対を成す、もう一つの調停者達の存在をご存知でしょうか。

 

銃社会たるキヴォトスにて、刀や槍を主たる得物とし、

時に時代遅れとすら揶揄される。

されど、その実力は百花繚乱にすら劣らぬ…現代に生きる『侍』達の集団。

 

その名は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで…その花火玉を盗んでやるってのか?」

 

「そうそう!

それで、皆が忘れた頃に改めて打ち上げてやるんだよ、『魑魅一座』の花火玉も一緒にさ!」

 

「そりゃ名は売れるかもだけど…絶対邪魔されるだろそれ。

もし盗めても“あいつら”が黙ってないだろうし…」

 

「平気だって!

あんな変態集団なんてどうせ名前だけだよ!

 

本当に戦うことになったら余裕だよ!」

 

「変態集団?それって…」

 

「何だよ知らないの?

今の時代に刀を振り回すような時代遅れの…あれ?」

 

「今の声、って………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「憧れの先輩たちのこと、そんな風に呼ぶだなんて…ちょっと、許せないかな…?」

 

「げえっ!?そ、その羽織…!?」

 

「まさか…新撰組(・・・)!?」

 

「左様。

…御用改である、魑魅一座!!」

 

水色を基調とした、袖口と前幅に白い三角…ダンダラ模様の入った羽織を纏った少年(・・)が、高らかに叫んだ。

収めていた刀を抜き、不良達にその切っ先を向ける。

 

「ひっ…!?」

 

「ひ、怯むなって!本当に戦うなら余裕なんでしょ!?」

 

「い、いやでも…」

 

「銃で撃たれても平気な私達が刀に怯んでてどうすんのさ!

それに、よく見たらこいつ一人しか居ないじゃん!」

 

「…あ、ホントだ。

何だよ、勢いで押し切るつもりだったのか!!舐めやがって…!」

 

「一人じゃねえっすよ!!」

 

「「ひっ!?」」

 

 

辺りに大声が響き、不良たちはまたしても縮み上がってしまいました。

そして、少年の隣には同じ羽織を纏った巨漢が。

 

カイ!遅かったじゃんか!」

 

「いや、ミコトくんが早すぎるんスよ…!

もうすぐ上がりの時間だってのに突然走り出すんだから…!」

 

「そりゃ、悪いやつの気配は見逃せないからね!!

さあ、二人でこいつらふん縛るよ!」

 

「お、おっし!」

 

「こ、こいつら…舐めやがって…!」

 

「チョーシ乗んなよ変態集団!

刀だの槍だので銃に勝てるか!!」

 

不良たちはとうとう我慢の限界に達したのか、自らの武器()を抜いて発砲した。

しかし羽織の少年たちは放たれた銃弾を難なくヒラリと躱し、それぞれの得物を構え不良達に向かって行く。

 

刀が、金棒が、不良達を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――それから数時間後。

 

百鬼夜行連合学院内、『新撰組』屯所…

 

 

 

 

「……………」

 

の一室。

和服を纏った青年が、書類仕事をしている。

 

 

トントン

 

 

「…入れ」

 

その許しとともに障子が開かれ、若干傷ついた少年二名と苦笑いを浮かべた少年1名が部屋に入ってきた。

全員同じダンダラ模様の入った羽織を着ている。

 

「新撰組三番隊隊長、斎藤ハジメ

及び、平隊士大神(おおがみ)ミコト島田カイ

 

悪事を行おうと画策していた魑魅一座の者を数名(・・)、戦闘の上鎮圧し引っ捕らえましたのでご報告に参りました」

 

「そうか、ご苦労。

 

…ところで、大神と島田はどうしてそんな風になってやがるんだ」

 

「いやー、それがですね。

 

最初に悪巧みしてたのは二人だけで、見つけたのもそれだけだったんですね?

だからミコ…大神と島田の二人で呆気なく倒せたんですけど、その直後に仲間が駆けつけてきて…」

 

「成る程な。

それで袋叩きにあってたとこにお前が駆けつけたってとこか、斎藤」

 

「まあ、だいたいそんなところです。

ま、少なくともうち二名は大神達が捕らえたのも事実なんで、大目に見てやっても…」

 

「駄目だ。

島田はともかく、大神はこれで何度目だと思ってやがる」

 

「っ…」

 

傷ついた少年の一人…大神ミコトの身体がビクリと震えた。

どうやら、このような自体は一度や二度ではないらしい。

 

「いいか大神。俺達新撰組の戦いは『多数対一』が基本だ。

それは平隊士だろうが、準幹部だろうが同じこと。

一対一、まして一人で敵を複数人相手取るなんざそれこそ隊長級の腕でもなけりゃ許されるもんじゃない。

 

お前だって耳にタコが出来るぐらい聞かされてきただろうが」

 

「し…しかし!

あの状況では私とカイの二名しか居ませんでした!

 

だからといってその場を離れ仲間を呼びに行っていては逃げられていたかも…」

 

「だから急ぎ自分達で解決しようとした、か?

その結果は?敵方の連中に袋にされたんだろうが。

 

斎藤達が駆けつけなけりゃどうなってた?」

 

「う………」

 

ミコトは何も言えない。

実際、やってきた不良の増援に自分とカイは一方的にやられていたのが現実だった。

もし斎藤率いる三番隊が駆けつけなければ、今頃人質にされて今以上に迷惑をかけていたかも知れない。

 

ミコトはそれが理解できないほど馬鹿ではない。

ゆえにこそ、何も言えなくなってしまった。

 

「………まあ、とはいえだ。

実際不良の計画を未然に阻止できたのは事実。

不良を捕らえたのも事実だ。

 

給料にはそれなりに色つけといてやるよ。

もう下がれ」

 

「はい。失礼いたします」

 

「「……失礼いたします」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…」

 

「元気だしな〜ミコトちゃん。

お咎めは…まあ、ちょっとお叱りぐらいはあったけど、お給料はそれなりに上がるんだからよ」

 

「それは…」

 

「駄目っすよ、斎藤隊長…ミコトくんがそんなんで喜べるタイプじゃないって知ってるでしょう?」

 

「………ま、そうだね。

とにかく二人とも今日は休みな」

 

「「………」」

 

二人はペコリ、と頭を下げ、それぞれの自室に戻っていった。

その背中を見送った後、斎藤はふぅとため息を一つ。

 

「………悪党を見つけるのは新撰組(うち)でもズバ抜けて得意なんだがねぇ、ミコトちゃんは」

 

「が、肝心の実力がアイツには伴ってねぇ。

いくら正義感があっても、それじゃ宝の持ち腐れだ」

 

「ありゃ副長。

盗み聞きなんて趣味悪いんじゃないんです?」

 

「うるせえ。

 

………しかし、どうしたもんかね」

 

「ま、それは本人の頑張り次第でしょうよ。

じゃ、自分もこれで失礼しますよっと」

 

斎藤もまた、自室への道をスタスタと歩き始めた。

部屋の中の副長…土方(ひじかた)トシゾウは、手元の中の書類の一つに目をやった。

 

 

「――――連邦捜査部シャーレ、ねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

大神ミコトは日課である素振り修練を行っていた。

が、その太刀筋はとても整っているとは言えず、むしろ荒れていると言えるものだった。

 

先日の醜態から心は荒れ模様。

その有り様は剣にも如実に現れている。

 

「…っ、はぁ…」

 

その後もしばし振り続けていたものの、やがて疲れのほうが先に来たのか項垂れて地面に座り込んでしまった。

 

「はあ、もう…」

 

ミコトは焦っていた。

百鬼夜行における治安維持の為の部活動であり、個人的にも憧れていた新撰組に所属できたものの、彼自身はまだ大した手柄を挙げられていない為である。

 

念の為断っておくが、彼はまだ高等部1年であり、成果がそれほど挙げられていなくても無理はないはずである。

が、憧れに近づきたい、或いは並び立ちたいという焦燥がその判断を曇らせてしまっている。

 

「………いつになったら、僕も隊長達みたくなれるんだろう…」

 

地面に寝転がり、仰向けになって朝日の登り始めた晴天にポツリと呟く。

無論、その答えが返ってくることはない。

空ではただただ雲が風に流れていくのみである。

 

「…もっと、強くなりたいなぁ…

……そろそろ支度しないと…」

 

「ハァ、ハァ……ミコトくん!!

ぜぇ、はぁ…」

 

「………ん?カイ?

どうしたんだよそんなに息を切らして…」

 

「そ、それが…

 

副長が、ミコトくんを呼んでて…」

 

「………副長が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、来たか大神」

 

「………」

 

「そう固くなるな。

ホレ、座れよ」

 

「……………ハイ」

 

固くなるな?無理だろう、どう考えても。

新撰組の現リーダー格である副長に、その他隊を率いる隊長などの幹部集も揃っているこの場面に、平隊士に過ぎぬ自身が呼び出されているのだ。

 

これで緊張しないものは、心臓に毛が生えているか余程の呑気者かのどちらかであろう。

とはいえ、座れる以外の選択肢は自分にはなく、ひとまず案内された座布団の上に座る。

 

「さて、大神ミコト。

本日お前を呼んだのは他でもない。

 

お前に辞令を出すためだ」

 

「じ、れい…」

 

その言葉を聞いた瞬間、ミコトの脳内には新撰組で過ごしたこれまでと、最悪の言葉がいっぺんに流れた。

ああ、これが走馬灯というものなんだなあ、とミコトは思ったのでした。

 

「おい、念の為言うが辞めさせようなんてわけじゃあねえ。

そうだな…ちょっとした出張みたいなもんか」

 

「………しゅっ、ちょう」

 

「そうだ。新撰組平隊士、大神ミコト。

 

―――――お前に連邦捜査部シャーレへの出向を命じる

 

「…シャーレ?って…」

 

「お前も名前くらいは聞いただろう?

連邦生徒会の招いた“先生”………ソイツが活動するための拠点にして、キヴォトスのあらゆる問題が舞い込むって特殊な部活だ。

 

お前にはこれから暫くそこに所属してもらう」

 

「…し、しかし新撰組は…」

 

「百鬼夜行の問題なんざ幹部連中で勝手に解決できる。

厳しい言い方をするが、お前が動き回るよりよっぽどそっちのほうが円滑に問題を解決できるだろうさ」

 

「……………」

 

「…大神。お前に何より足りていていないのは、実力と力量を測る目、そして経験だ。

さっきも言ったが、シャーレには多くの問題が舞い込んでくる。

シャーレのリーダー…先生にはこっちから話を通した。

 

先生のもとで経験を積んでこい。

聞いた話じゃ、指揮能力の腕は確からしい。

 

お前の力を存分に引き出してくれるだろうさ」

 

「………承知、致しました」

 

 

 

 

 

 

 

そして、出発の日。

正直、今日までの記憶が朧気だ。

 

出向という名目になってはいるものの、結局は自分の実力不足が原因だ。だからこその『経験を積め』なのだろう。

 

「付近までは車で送る。

仮の住居はシャーレと連邦生徒会の方が用意してくれてる。

 

先生への挨拶も頼んだぞ」

 

「………はい」

 

「ミコトくん!部屋は自分がキッチリ守っとくから安心して!

土産話よろしく頼むッスよ!」

 

「………うん」

 

少しだけ笑みを見せて、車に乗り込む。

シャーレへの少しばかり長い道程(みちのり)を走り出した。

 

 

 

 

到着した頃には日が傾きかけていた。

百鬼夜行ではそうそうお目にかかれぬ、高くそびえるビルが至る所に立っている。

自分が今まで過ごしてきた世界とはまるで違う。

 

「では、後の話は先生とお願いしますね。

私は…うーん、今日はホテルかどこかで泊まらないとかな」

 

「…ありがとうございました」

 

車は去っていく。

自分が取れる選択肢はもう一つしかなくなった。

 

諦めて背後の建物に向き直り、入口に向かった。

 

 

 

 

 

特にセキュリティなどないのか、呆気なくシャーレの内部に入ることができた。

屋内は漫画などの本で読んだことのある、いかにも『オフィス』という感じのものだった。

 

…しかし、いざ中にはいってみても誰も居ない。

 

“先生”と言えるようなものの姿も見つからない。

どこかに出かけてしまっているのだろうか。

 

…ちょうどいいところにソファーがあった。

思いの外長旅で疲れた。申し訳ないが、少しばかり休ませてもらうことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅ…すう」

 

…仕事から帰ると、見知らぬ男の子がソファーで眠っていた。

何を言っているか分からないかも知れないけれど、私も驚いてる。

…そういえば、百鬼夜行から生徒が1人出向してくるとかなんとか言ってたような…

 

『先生忘れてたんですか?

アレだけ朝のうちにも言っておいたのに…もう!』

 

「ご、ごめんアロナ…」

 

にしても、ぐっすり眠ってるなぁ。

ちょっと可愛いかも…ほっぺツンツンしちゃえ。

 

『ちょっ!ダメですよ先生!』

 

「でも、寝てる今がチャンスだし…」

 

「…ん?」

 

「…ふぇ!?や、やば…」

 

この子目を覚ましちゃった!

と、とにかく落ち着いて、先生としてしっかり出迎えを…って先に来ちゃってる時点で出迎えも何も無いじゃん!どうしよ…

 

 

 

 

 

 

ガッ!ツルッ。

 

…あれ?

 

バタン!

 

 

 

 

 

「いったぁ…あれ?」

 

「いっ、つ…ん?」

 

少年と、女性は顔を上げた。

…女性は少年に凭れこんだ状態であり、二人の距離はほぼゼロに近かった。

 

 

 

 

―――――その日、彼/彼女は運命に出逢った。

 

 

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