2月の中旬、雄英に入学する前の最後の一仕事を行っている村紗。
ヒーローと共謀して大規模テロを起こそうとしていたという
しかし、未だ仲間が首都近辺のホテルに潜伏しテロを計画しているとの情報を掴んだ為に残りの情報を得る必要があった。
その為、拷問の為に拘束している場所に呼ばれた村紗は眠そうな眼を擦り生欠伸をしつつ拘束されているヒーローと
「23時になるのにご苦労な事で……ふわぁ、ねっむ……そんで、今わかってる情報は?」
村紗は眠気を抑えて椅子に座りながら拷問により得た情報を公安委員会の職員から受け取ると拘束されている2人を見る。
既に何本かの歯を麻酔無しで引き抜かれたり指を圧し折られて血塗れのヒーローと
しかしながら高度に訓練された非合法な人員による拷問にも屈しないのは流石というべきか。
村紗は眠気を隠す事なく欠伸をしつつ同僚たる職員の1人へと語る。
「この首都近辺のホテルのリストの上から順に読み上げてください」
困惑しながらも20数枚のリスト……1ページにつき500件はあるであろうホテル名を村紗の指示通りに読み上げていく。
それを聴きながら村紗は椅子に座りながらジッと拘束された2人を見る。
村紗が注視して見ているのは微細な表情の動きや心拍音、流れる汗の量や匂い、そして身体の動きや視線である。
20分程して、あるホテル名が紡がれた瞬間、村紗は片手を上げてストップを示す。
「……このホテル名が紡がれた瞬間、先程かいてなかったのに突如として多量に汗をかいた……匂いがあるから緊張や恐怖、動揺や怒りといった心理的なものだ……ここのホテルだな」
ホークス先輩へのホットラインを繋いで伝えると1分後には爆発物を見つけたらしく無事に撤去出来たと謝辞を伝えられた。
伸びをして椅子から立ち上がり帰ろうとすると拘束されているヒーローが叫ぶ。
「ざけんな……なんでこんな」
「なんでこんなに簡単に分かったのか? と続けるつもりならばこう返した方が良いでしょうか? 私の個性は水を操り支配する……正確に言うならば液体を操作して支配する個性、鍛えすぎて水の三態を操作して支配する事も出来ますがね、それに付随し……人間が人間の生体構造をしている限り、身体のおよそ70%が水分の人間相手となれば私には凡ゆる人間の生体反応が筒抜けとなる、ま……そんなのは個性の副産物でしかありませんがね、この読心は弛まぬ努力と地獄の中で得た私の強さだ……さて、極秘事項を君達に喋ったということは君達に明日は無い、来世で頑張れ、good luck」
そう語りかけて2人の体内の液体を全て凍らせて2度と喋れない様に処置をする。
体内の深部から全身の液体が急激に凍結し全身の細胞をズタズタに破壊されたヒーローと
これでこの2人は死んだ、そして死体が残る事のない処理方法の為に永遠に行方不明として扱われる。
「じゃ……後始末よろしく、ここから家まで遠いのでホテルに泊まって朝帰ります……」
眠い眼を擦りながら村紗はコートを羽織りながら歩いて用事を済ませると、眠る為にとあるホテルのエントランスにふらりと入る。
周囲には当然ながらホテルマンと宿泊客……ホテルマンはプロ故に村紗を見て表情を崩さずに応対するが宿泊客は違う。
村紗水蜜を見て、あり得ないと言った表情が顕著に出ている。
尤も……それを気にする村紗ではないのだが。
周りの視線を意にも介さずにフロントへと歩いて列に並んで行く、その途中顔見知りから声を掛けられ会釈で返す村紗。
村紗はポケットから特別な金貨を1枚取り出して語る。
「1泊だ……安眠したい……ずいぶん綺麗に改装したな? チェックアウトまで誰も入れないでくれると助かる」
「かしこまりました、4年程前です……ですがご安心ください、大きく変わってはおりません」
礼儀正しくそう告げてくるフロントマン。
それに対して村紗は一つだけ問いかける。
「オーナーも同じかな?」
端的に問いかけられたその質問に答えるフロントマン。
「同じでございます……お部屋は818号室になります」
そう語るとフロントのスタッフより部屋の鍵を渡されて毎度の様にこのホテル独自の注意事項が語られる。
毎回宿泊時に必ず行われるホテル・コンチネンタルでの注意事項と当該ホテルの存在意義についてだ。
何万回と聞いたそれを反芻する。
世界中で殺し屋達をサポートする機関。
基本は「コンチネンタル・ホテル」という形で運営されており、武器や情報の調達から死体の処理まで対応してくれる。
利用には特殊な金貨が用いられており会員制。
ホテル内での『仕事』は厳禁である。
この他にも『誓印*1』は絶対遵守の「掟」があり、これを破ると追放や粛清が行なわれる。
説明が終わり鍵を受け取り部屋へと向かおうとした村紗の耳へと届いたのはフロントマンからの言葉であった。
「今も昔と同様に貴女様をお迎え出来るのを光栄に存じます……村紗水蜜様」
その言葉を聞いて小さく会釈をする村紗。
部屋へと入りシャワーを浴びてバスローブへと着替えると最高級のベッドへと倒れ込む。
心地良いベッドのマットレスがゆったりと村紗を包み込む。
夢の世界へと誘われて微睡に落ちていく村紗。
数分もすると夢の世界に完全に行っている。
元々殺し屋である村紗が安眠出来る場所はそう多くない。
誰かに常に命を狙われているというストレス、仕事でかかるストレス……そう言うしがらみから逃れる事の出来る数少ない場所がコンチネンタルホテルだ。
村紗が眠りに落ちてから4時間。
部屋のドアノブが回されて闖入者が1人。
その闖入者は片手にサプレッサ付きハンドガンを待っており村紗が寝ているベッド、村紗の頭部へと狙いを定めて弾丸を撃ち込んだ。
村紗がそれに気づいたのは本当に偶然であった。
珍しく目が醒めて水でも飲もうとした瞬間、闖入者を感知し寝返りを打った瞬間に肩を撃ち抜かれ弾痕と鮮血がベッドを穢す。
痛みを堪えながら傷口から流れ出る血を自身の個性を使って止血を行いつつ闖入者の正体に気づいた村紗は叫ぶ。
「ぐっ⁉︎ トゥルーデアか⁉︎ 400万ドル以下の仕事は受けないんじゃなかったのか?」
そう叫ぶと相手も気づいた様で戯けた様な口調で語る。
「ハァイ村紗、勝手に入ってごめん……アンタの首に賞金が掛かってる、それにね、掟を破れば800万貰える」
そう喋りながらその手に持った銃を連射してくるトゥルーデア。
村紗は放たれた銃弾を全て自身の個性を行使して水の壁を作り上げて即席の防弾ガラスを構築し回避すると素早く接近して銃を叩き落として怒鳴る村紗。
「このホテルの中で仕事をするとは……愚かな女だぞお前は‼︎」
しかし、相手もプロの殺し屋である。
近接格闘はお手のものであり投げ技を仕掛けられ部屋の壁に叩きつけられ、叩きつけを繰り返していると部屋に備え付けられた電話が鳴り響く。
恐らくはフロントからであろう。
他の部屋からの苦情だろう、主にこの部屋の騒音騒ぎについての。
テレビを破壊し、仕切りガラスを破壊し……挙げ句の果てにベッドの脚は粉々になっている。
村紗は一瞬の隙をついてトゥルーデアの背後を取りベッドシーツで視界を塞いで頸動脈洞を絞め落として気絶させると電話を取る。
電話の先はフロントマンであった。
『こんなに遅い時間に電話をおかけして申し訳ございません……そちらのフロアのお客様方から騒音についての苦情が多数出ておりまして……』
ゼェハァと息を整えて村紗は語る。
『申し訳ない……今この部屋に
電話を耳に当てながら村紗は自身の個性を使いトゥルーデアの四肢を拘束する。
『それは大変申し訳ございません……そういう事であれば
そう問いかけてからフロントマン。
ここで言うディナーとは……死体処理の隠語だ。
暫し考えてから村紗は電話口へと語る。
『頼むかもしれない……その時になったらこちらから掛け直すよ』
そう告げて電話を置き村紗は考える。
トゥルーデアは私に賞金が掛かってると言った。
その辺りを調べなければならない。