キャプテン・ムラサのヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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死神の化身

 広い敷地に建てられた邸宅の書斎で1人の男性が高級そうなワインを注いだグラスを持ちながらペラペラと本を捲り雇った護衛に語りかける。

 

「なぁ其処のお前……お前も一緒に飲め……どうせ相手は小娘1人だ……そんなに怖がってもどうしようもないだろ?」

 

 50人程のボディガードの1人として雇われたマスキュラーは辟易し絶句していた。

 マスキュラーは相手が村紗水蜜だと知っていたら、そもそも絶対にこの仕事を受けはしなかったのだ。

 溜め息を吐いて呑気に酒を飲もうとしている依頼主に語る。

 

「……遠慮しておきます、俺の仕事は警護だ、脳味噌が蕩けた老人の話し相手兼介護じゃない」

 

「はっ、小娘1人に萎縮とは……私はブギーマンなんて怖くはない」

 

 雇われる直前になって初めて対象があの村紗水蜜だと知らされた時はマスキュラーがこの男の事を殺してやろうかと思った程である。

 今護衛しているヒーロー公安委員会前会長は下っ端の、それも現場に出ているヒーローの事などは消耗品と言っても過言では無い考えの持ち主故に消耗品の経歴など興味ない、確認もしていない。

 故に知らない……村紗水蜜(ブギーマン)を敵に回した時の恐ろしさを。

 現にこうして手に持ったワインボトルの栓を開けて飲もうとしている。

 そのワインボトルを奪い取りマスキュラーは依頼主を睨みながら静かに呟く。

 

「そうか、怖がったほうがいい」

 

 そう語りながら退室し所定の位置に着くマスキュラー。

 

 そうして……1時間後。

 

 煙草に火を付けて深く吸い込んだ瞬間、背後から滲み出る殺気。

 突き付けられたグロックを尻目にマスキュラーは語る。

 

「……Ms.村紗、此処には仕事で来たんですよね……殺し屋達から狙われたと聞きましたが」

 

 マスキュラーの片眼は義眼となっており喪失している、そして、首には7cmにも及ぶ深い切り傷の傷痕。

 それは過去に村紗と敵対した時に与えられた傷であり選ばされたのだ、此処で村紗と敵対したまま死ぬか、それとも傷を抑えて失血死をする前にコンチネンタルホテルへと行き……医者の治療を受けて生き延びるかを。

 

 今回も選ばされている。

 銃器からは硝煙の匂いが仄かに漂っており村紗の腰に装着しているナイフには血がベットリと付着している。

 そして、コンチネンタルで仕立てたと見えるスーツには注視しなければ分からない程度の返り血が掛かっていた。

 

「やぁマスキュラー……そうだね、君も知ってるだろう? 敵対した者には死を……それが私だ、所詮は金に釣られた羽虫どもだ、叩き潰してきたよ……それにしても痩せたな?」

 

 その言葉の裏を敏感に感じ取ったマスキュラーはゆっくりと口は開く。

 

「えぇ……56(・・)kg落としました」

 

「そうか、偉いじゃないか……マスキュラー、今日は疲れただろう? 帰ってゆっくり休め」

 

 そう告げられたマスキュラーは装着しているインカムを外して振り返りながら村紗へと礼を告げる。

 

「恩に着ます……村紗さん」

 

 インカムを破壊してその場から立ち去るマスキュラー。

 それを見送ってから……村紗はやるべき事を行う。

 

 地図屋である唐之杜から受け取った電子IDの解除キーを差し込み解錠すると間取りを正確に思い出しつつ個性を使って生体反応を検知していく。

 

 そして……56人の生体反応を検知。

 遭遇しない様に慎重に足を進める村紗。

 

 警報装置の電子制御盤は既に根本から破壊している為に警報は鳴らずセンサーも機能しない。

 防犯カメラも設置されているが死角に入り込む様にしている為に今の所はバレてない。

 そう感じ取り、潜入を続ける村紗であった。

 


 

 場面は変わりコンチネンタルホテル。

 

 

 コンチネンタルホテルにて……アンネリーゼはトゥルーデアを手錠で縛り付けて椅子に座らせたまま拘束しながら呟く。

 

「それにしても……お前は弩級のバカだなぁトゥルーデア、このホテルの中で仕事をするとは……支配人が怒ってたぞ? ルールを破った挙句に村紗を襲うとはな……あぁ勘違いしないでくれたまえ? 私も怒ってる」

 

 ベッドに腰掛けながらヘラヘラとした表情でそう語るアンネリーゼ。

 それに対してトゥルーデアは殺気を隠さずに、表情に怒りを滲ませながら呟く。

 

「淑女に対して無礼よ?」

 

 それを聞いた瞬間、アンネリーゼは大きな笑い声をあげて腹を抱えて転げ回る。

 

「しゅ、淑女!? ははははは‼︎ 笑わせるなよお前は淑女とは真逆だろうが……はぁー笑いすぎてお腹痛い、そうそう、親指の間接外してもその手錠からは抜け出せないから、そのつもりでな……それにな? 仮にその手錠から抜け出たとしても……地獄を歩んでいないお前の様な虫ケラが地獄の底の底から這い上がってきた私や村紗に勝てる道理はないぞ?」

 

 そう語っているとドアが開かれてウィンストンと掃除係が入室する。

 ウィンストンはアンネリーゼを見るとその手に持ったアタッシュケースをアンネリーゼに渡しつつ朗らかに語る。

 

「見張り番をご苦労アンネリーゼ……あともう一つ頼まれてくれないか? 村紗の護衛を……少し前にとある情報が入ってね……助けてやってくれ」

 

「うん……いいね、じゃあその金貨は口座にでも入れといてくれウィンストン……」

 

 

 そう語りながらコンチネンタルやサポートに利用可能な特別な金貨が満杯に入ったアタッシュケースを手渡してくるウィンストン。

 アタッシュケースを手に持ったアンネリーゼはズッシリとした確かな重みを感じ取った……和やかな笑みを浮かべつつアンネリーゼはコート掛けに掛けてあるオーバーコートを羽織り仕事に使う愛用の銃器をホルスターに収めて手触りを確かめフロントへと歩く。

 そして、フロントにいるであろうシャロンへ電話を掛けながら通路を歩く。

 

「さて……車を回しといてくれないか? シャロン……忙しくなるぞぉ」

 


 

 

 場面は再度戻って村紗水蜜へと。

 

 通路の角でナイフをその手に持ってボディガードの1人が歩いてくるのを個性を使用して感知した為に気配を殺して待っている村紗。

 巡回している護衛と鉢合わせた瞬間にボディガードの口を右手で塞ぎ……壁に叩きつけ動きを封じる。

 そして左手に持ったナイフを心臓へと突き刺しそのままナイフを引き抜いて流れる様に喉元へ突き刺す。

 くぐもった声音が小さく漏れるが気道に流れ込んだ血液がボディガードを窒息させていく、尤も……心臓にナイフを突き刺した時点で大概はほぼ即死なのだが。

 しかし、稀とはいえボディガードや護衛を請け負う者の中には再生系の個性を持っている事がある、それ故に確実なる死を与える。

 その為にそのまま再度ナイフを引き抜いて首の骨を圧し折り、ナイフで首を胴体から切断し頭蓋骨を叩き割り脳に直接ナイフを突き立て殺す。

 

 超再生を除いた大概の再生系は此処まですれば再生できない、仮に再生出来たとしても多大な時間が掛かる為に公安委員会元会長を殺すまでには戻れない。

 

「これで14人目、さて……と、そろそろバレた頃合いだな」

 

 そう呟くとナイフを仕舞い、あまりにも広すぎる屋敷のダイニングに到着した村紗。

 AR15を構え個性を使い生体反応を確認しながら進む。

 点在する44の生体反応の内、残った42はスリーマンセルで固まっており14組……しかも全てが村紗から10mも離れていない。

 そして、この建物の最奥に感じ取れる生体反応がターゲットたる公安委員会元会長。

 どう捌くか思案していると突如として41人の生体反応が消え失せる。

 

 突如として大量の生体反応が消え失せた事による違和感を感じた刹那……屋敷ごと切り刻む勢いで……いや、もう天井や柱などを切り刻みながら村紗に向けて高速で迫る大量の歯刃。

 斬り刻まれるギリギリの所で歯刃を回避して村紗は語る。

 

「……ボディガード、じゃないな……ムーンフィッシュ、飼われた狂犬か、えぇ? 死刑囚ムーンフィッシュ……そーいや前任の会長の記録漁った時に見たな……攫われた幼女の何人かが元会長に買われてた、ペドフィリアとでも思ったが……お前の為の餌だったわけかムーンフィッシュ」

 

 そう語る村紗。

 しかし、眼の部分と口だけが開く様に設計された拘束衣でギチギチに拘束されているムーンフィッシュはご乱心の様で自身が切り刻んだボディガードの肉の断面を見ながら涎を垂らして恍惚の表情らしきものを浮かべていた。

 

 崩落する屋敷……しかし村紗は慌てる事なく空気中の水を液体に変換して水の刃を生成して落下してくるコンクリートの天井や瓦礫を全て細切れにする。

 しかし、歯刃の一部が銃器に接触したのか銃器の機構が破損していた、使えなくなった銃器を投げ捨てて語る。

 

「……ムーンフィッシュ、お前の殺害依頼もあったっけ……子供を殺された親からの殺害依頼だよ、無差別に欲求を満たすだけの害を振り撒く害虫が、喜べ……ブギーマンがお前の命を刈り取ってやる」

 

 村紗はスーツのポケットには12ゲージ弾の予備弾薬が入れてあり、その内訳は通常のシェルが6発。

 ドラゴンブレス弾が4発。

 

 村紗はショットシェルを手に取りドラゴンブレス弾である事を確認すると水の刃を用いてショットシェルの雷管部分を切断し中身が溢れない様に慎重に扱う。

 

「来いよ害虫、駆除してやる……」

 

 刹那……100を軽く超える歯刃が鞭の様にしなりながら、そして日本刀の様な鋭利さを持ち合わせて村紗へと襲い掛かる。

 恐らく硬度もかなり高い、しかし……狂ったムーンフィッシュはそれを上手く扱う事など不可能、数による暴力で圧死及び断割するという事と断面を見る位にしか働かない思考能力。

 思考の欠如した害虫、人間以下の羽虫……今まで殺してきた奴らとほぼ同じであろう。

 

 歯刃を水の弾丸でへし折りつつゆっくりと足を進める村紗。

 大量の水を生み出してガチガチに拘束するとムーンフィッシュの歯刃の大元である歯そのものを全て、ムーンフィッシュの歯茎に流れる血液という名の液体を操作して内から砕く。

 

 麻酔無しでの抜歯は気絶する程の痛みというが……纏めて砕かれたムーンフィッシュはギリギリ意識を保っていた。

 驚愕に値するが歯を全て失えばムーンフィッシュは個性を扱えない。

 

 尤も……生え変わると記載されていたのでしばらく日を置きさえすれば新品の歯が生えるのだろうが。

 しかし、ムーンフィッシュにはもう2度と明日はない。

 水による拘束でムーンフィッシュを拘束しつつ液体を操作してムーンフィッシュの口をこじ開けるとドラゴンブレス弾の中身をサラサラと取り出してその全てをムーンフィッシュの口の中にぶちこむ。

 

「さて……ドラゴンブレス弾の中身はジルコニウムが主流だが……私はマグネシウムの方が好きでね、私の個性の都合上だよ……」

 

 村紗は1ℓ程の沸騰させた水を生み出して操作しムーンフィッシュの口へと無理やり流し入れる。

 すると……口に先に入れていたマグネシウムが反応して水素ガスを発生させた。

 

 それを感覚で確認した村紗。

 無言でハンドガンを取り出して……ムーンフィッシュへと撃ち込むと水素ガスに引火して大爆発が起きた。

 

 爆音と爆炎、煙が村紗を襲うが個性を使用し水を防壁にして防ぐとムーンフィッシュだった物の肉片や臓物の欠片が辺り一面に飛び散っているのを確認し完全に死んだのを確定させると残るたった1つの生体反応を消失させる為に行動を開始しした。

 

 

 数分後……書斎へと到着した村紗。

 扉を開けるとハンドガンによる乱射が為されるが全て狙いが外れており掠りもしない。

 拳銃……というか銃の扱いそのものが不得手と言うのが丸わかりである。

 

 ……5秒もすると弾倉の弾薬が切れてカチカチと言う引き金(トリガー)の作動音と銃特有の機械音が静かに響くのみであり村紗はゆっくりと足を動かす。

 

「ま……まて‼︎ ワシが誰か分かっているのか無礼者‼︎」

 

 尻餅をつきながら後退りし惨めったらしく喚く初老の男性。

 それを溜め息を一つ吐いて被りを振りながら村紗は語る。

 

「誰かと問われているならば、私から見たらお前は私の事を殺す為にオープン契約で契約した馬鹿な発行元だよ、オープン契約を止めるには方法は2つ……発行元自身が停止するか発行元が死ぬかの2択だ……くだらない話をしたね」

 

 グロック34を取り出して弾薬が装填されているのを確認して銃を構える。

 

「ま……まて‼︎ まてまて‼︎ 話を……」

 

 命乞いをしてきたが聴く意味はない。

 銃声が鳴り響き……額に弾痕が刻まれた公安委員会前任の会長。

 

 額から流れる血を確認した後、水の刃を生成して切り刻む。

 

 そうして……村紗水蜜(ブギーマン)は仕事を終えた。




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