キャプテン・ムラサのヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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アンネリーゼ・リーパー

 村紗は仕事を終えると全ての死体を水の膜で包み込み地面に並べるとスマホを取り出して電話をかける。

 どこに電話をと問われれば当然、コンチネンタルホテルである。

 

 地面に座り安楽な姿勢を取りながら村紗は腕時計の時刻を確認しながら電話口の相手へと語る。

 

「村紗水蜜だ、ディナーを頼みたい……場所は……そう、頼むわね」

 

 電話を切ってゆっくりと空を見上げる村紗、とりあえずはこれでオープン契約は打ち切られた。

 契約主が死ねば契約は打ち切られる、その他にも色々あるのだが……愚かな公安委員会前会長はそこまで詳しく知らなかった様だ。

 5分程で掃除係が到着した。

 

 金貨を規定の枚数よりも15枚多く渡す村紗。

 

「期待枚数よりも多いですが? 村紗様」

 

 そう告げて返金してくるディナー係だが村紗は受け取らず、それに対して村紗は首を振りながら呟く。

 

「君達への礼を兼ねている……私にはこの位しか出来ないからね……さて、帰るとするかな……」

 

 伸びをしてゆっくりと歩き出そうとした刹那……村紗の前方15m付近に空高くから着地したナニカ。

 凄まじい衝撃音と土煙が辺りを数秒ほど覆い尽くす。

 そして……それが晴れてブギーマンと謳われた村紗を見て語る。

 その男の外見はいわゆるウェアウルフと言われる姿であり……ツンと鼻につく特有の匂いが過剰に違法薬物を摂取しているのを村紗に伝えてきた。

 

 その鋭い爪牙をカチカチと打ち鳴らし、チラつかせながらカタコトの……まるで言語能力を喪失したかのように拙い言葉遣いで殺意を滾らせながら村紗水蜜を見ると膨大な殺意をその身に纏い襲いかかってきた。

 

「シシシシシシ……シネ、ムラさムラみつ」

 

 その体躯は3mはあろう、そして腕も相当に長い。

 デカくて長いのは一種のアドバンテージである。

 しかしながら村紗も名高い殺し屋、上澄みの更に上澄みに位置する人間である。

 

 この程度の襲撃は飽きる程喰らったしこの程度でやられていたりしたら村紗水蜜という人間はここに居たりはしない。

 

 鋭い爪牙による斬撃を冷静に回避しつつ指先から銃弾の形にした水の塊を撃ち込む。

 50口径のライフル弾と同等の威力を持ったソレは寸分違わず対象となったウェアウルフの心臓と肝臓、そして脳の大部分を貫通し吹き飛ばす。

 致命の一撃であり確実なる死を与えた村紗は動きが止まり倒れ込んだウェアウルフの死を確認しディナーにこの死体を追加する為にディナー係を呼び止めた刹那……背後から5本の鋭い爪による一撃により背中を大きく裂かれる。

 

 何とか致命傷は回避したものの背中の肉を大きく抉られ鮮血が地面を色鮮やかに染め上げる。

 

 完全に殺した筈の相手の肉体を見ると撃たれた箇所がゆっくりであるが再生している。

 村紗は荒い息を落ち着かせて相手の動きを見る。

 

 確かに死体となった相手だ、と言う事は死なないと言う事ではない。

 死ぬが、そこから驚異的な再生力で再生しているだけだ……何も珍しい事ではない。

 数ヶ月離れているとやはりカンも腕も鈍るものだと自嘲した村紗はジクジクと痛みを訴えている背中の裂傷を無視して眼前に迫り来るウェアウルフの肉体を流れる血液の操作を行う。

 

 死なないならば死ぬまで殺し尽くすのみである。

 眼前に迫り来るウェアウルフの爪牙……しかし、村紗は慌てる事なくウェアウルフの体内に流れる血液を操作し、血液を沸騰させてウェアウルフの肉体を体内から爆散させる。

 

 腕を爆散させ、脚を吹き飛ばされたウェアウルフの身体は再生を試みるが再生しようとした刹那……氷漬けにされた首から下が霧散する。

 首から上のみとなったウェアウルフの頭部を掴んで村紗は語る。

 

「成程……君は圧倒的な再生能力を有しているが死なない訳じゃない……あくまでも再生だ、凄まじい速度と凄まじい治癒能力に過ぎない……ならばやりようはいくらでもある……例えば氷漬けにして放置するとかなら、君の再生能力は機能しない」

 

 氷漬けの生首を更に圧縮……極限まで圧縮して水圧で跡形も無く圧し潰す村紗。

 ここまですれば再生できないと踏んでいたがしかしながら村紗水蜜は見誤っていた。

 

 ウェアウルフの再生力を。

 

 チリとなったウェアウルフ、しかし……そこから5体満足で再生した。

 

 再度氷漬けにして黙らせるがそうなると面倒だ。

 永遠に氷漬けにして置くしかない。

 

 そんな思考を巡らせていると聞き慣れた声音が村紗の耳朶へと届く。

 

「ハァイ村紗……困っているような感じね? あらあらあらら? 貴女、腕が落ちたわねぇ……そんな大怪我するような子じゃなかったのにねぇ」

 

 コンチネンタル謹製のスーツに身を包んでいるのはアンネリーゼであった……。

 

 息を整えて村紗は語る。

 

「……良い所に、アンネリーゼ、宜しく頼みます」

 

 血塗れの金貨を投げ渡すとアンネリーゼは頷いて氷像と化しているウェアウルフに近寄る。

 アンネリーゼが近づいたのを確認した村紗は氷漬けを解除するとウェアウルフが動き出すが何も心配はいらない。

 

 アンネリーゼが居るのだから。

 

 村紗水蜜と双璧を成すアンネリーゼ・リーパーが此処には居る。

 

 ウェアウルフがアンネリーゼを切り裂こうとした刹那……その腕が止まる。

 感じ取ったのだろう、獣の本能で。

 

 アンネリーゼの……万物に死を与える能力を。

 

「バイバイ……貴女は私の逆鱗に触れたの……死になさいな」

 

 アンネリーゼの個性は『リーパー』……その名が示す通り、死神である。

 ただの死神ではない。

 

 聖書に記載されているあの四騎士……その内の騎士の1人……『(Death)』の能力を個性として有している。

 村紗水蜜が知る限り……彼女に勝てる存在はそう多くない。

 

 彼女が触れるものは……死ぬ。

 戦争や飢饉、疫病のような死の原因などと違い死そのものは避けられない事象だ。

 

 アンネリーゼはソレを自在に遠ざけたり近づけたり出来、また相手が異常な再生能力を持っていようとも一切関係がない。

 あらゆる物に対して死を行使する個性を有している。

 

 自然死は全てに訪れる終焉だ。

 ソレを自在に行使する者に勝てるとするならば……ソレは不死であるが死を行使する彼女曰く不死など有り得ないとの事であり、また自身は騎士の1人だとか。

 

 彼女は「終末による死」を司る騎士だと言う。

 実際は彼女の存在が「死」そのものであり彼女が有する能力は全ての生命に必ず訪れる終わりの瞬間、つまり寿命による自然死である。

 その力は他の騎士達と一線を画している。

 その他三体の騎士が司るのが「死の原因」であってある程度退けることが可能であるのに対して、自身が「死」そのものであり死を退けることが不可能なことからアンネリーゼは自分自身の存在と力を世界で唯一絶対であると認識している。

 

 自身の個性が意味をなさなくなる瞬間は全ての「生」が絶滅または「不死」の力を手にした時、つまり「生」に対する「死」が必要無くなった時だろうと語る。

 当然「不死」が不可能だと言うことも自身を絶対的の物とする確信の裏付けになっている。

 能力だけではなく思想も他の三騎士とは異なる考えを持っており、彼らが意図的に能力を酷使して人間を殺しているのに対しアンネリーゼは特に興味はないらしい。

 

 それは自身の存在が「自然死」であるため無意識のうちに生物が次々に死んでいくことや今まで不死の生物がいなかったこと、自分=死を「自然の摂理」と称し、人を選ばずやがて全ての人に降りかかる為自身をこの世で最も平等なものだと明言する。

 道端で人が死んでも気にもとめないが、それは死ぬのが当たり前だと分かっているため人がバクテリアが消滅しても気にとめないのと同じことだと言う。

 

 何はともあれ……村紗水蜜の仕事は終わった。

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