キャプテン・ムラサのヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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血の誓い

 個性把握テストを終了しその後に教室へと戻りカリキュラムを確認する。

 さっと眼を通してこれからの予定を構築していく。

 そうして、帰ろうとしていた村紗であったが耳郎響香や芦戸三奈、女子組全員から一緒に近くのファミレスで親睦を深める為に懇親会をしないか? と言う提案をなされて暫し考えた末に快諾する。

 懇親会in女子会と銘打たれたそれは非常に楽しいものであった。

 

「ふふふっ、面白いですね……そうそう、私と芦戸さんは意外と相性が良いんですよ? 芦戸さんが個性を使いすぎて脱水に陥ったとしても即座に私が回復させる事が可能です」

 

 個性の相性について話が広がったので一例を提示しつつ他の女子達に話を振る村紗。

 3時間も話してそろそろ帰ると言う話になったので解散して別れる。

 


 

 帰宅後……雄英の制服からスーツに着替えてコンチネンタルへと向かう村紗。

 フロントへ到着して金貨を渡して目的の人物が待っている部屋へ向かう。

 そして既に入室していた人物の対面に座る。

 

「……何なんですかい? アンタと会ってる事がバレたら俺はヤバいんだ……」

 

 そう語るのは大腸の様なマフラーを首に巻いた男。

 名を義爛という……犯罪専門の人材ブローカーでありその腕は数あるブローカーの中でも超一流と言って差し支えない。

 

「なに、そんな大層な事は言わないよ……僕はね、この世界で幾つかの優秀な『耳』や『眼』を持っている、それは理解しているね? 優秀な他の『耳』から仕入れた情報で(ヴィラン)連合という個人的に気になる言葉が出てきた……これについて君はそうだね……定期的に僕が欲しい情報をその都度流してくれるだけで良い、契約期限は……2年にしておこうか」

 

 そう語る。

 村紗水蜜の持っている数多の『眼』や『耳』や『口』は非常に優秀だ。

 村紗に心酔し自主的に手伝っている者も居るし誓印で縛っている者も居るが……全員に共通するのは世界という単位でみても各々がそれぞれの分野で5本の指に入る程度には優秀だと言う事。

 

「それだけは……それだけは出来ない、いくらアンタの頼みだろうと……この世界で信用を失ったら何も出来なくなる……無理だ、他を当たってくれ」

 

 義爛の言葉を聞きつつも村紗は無言で懐から誓印を取り出す。

 誓印の血判を見せて、義爛に対して優しく諭す様に告げる。

 

「義爛……どうやら僕と君の間で、この話し合いに関してちょっとした誤解がある様だ……僕の足りない言葉のせいで誤解させて非常に申し訳なく思う……済まないんだが、これは頼みじゃない、君が果たさなければならない義務であり契約だ……これはなんだ? ん? 君の血だ、君が助けを求めてきたから僕は応じた……これは誓印、誓いの印だ……この誓印を押した者同士は血の誓いで結ばれる、断ればどうなるか分かるだろう?」

 

 誓印とは相互の交換条件を血の捺印をもって契約として交わしたメダル状の証。

 このメダルとは別にコンチネンタルが管理する台帳もある。

 契約者は誓印の持ち主の依頼を一度だけ受けなければいけない義務があり、拒否したり、持ち主を殺害した場合は規約違反となる。

 過去、義爛自身ではどうしようもない立場に追いやられた際に縋ったのが村紗水蜜であった。

 当時、犯罪組織の殺し屋であったが故に当然、ブローカーとの繋がりもあった村紗は義爛の頼みを快諾しその『どうしようもない立場』から見事救い出した。

 誓印と言う形で契約を残した直後……組織から救出される形でヒーロー公安委員会に取り込まれた。

 そして、誓印は使われる事なくそのまま数年が経過した。

 だけれど今、使用される。

 誓印を断れば義爛の人生は終わる。

 比喩でも何でもなく……終わるのだ。

 ならば2年と言う期間……村紗の『耳』になるしか生きる道はない。

 苦渋の決断の末に……義爛は村紗の申し出を受け入れた。

 

「では……詳細は追って連絡するよ、契約満了後も良い関係を保っていきたいね、お互いに」

 

 そう語り椅子から立ち上がって部屋を出る村紗。

 部屋から出るとスーツのポケットに突っ込んでいたスマホに通知が入る。

 エレベーターに乗り込んでから確認すると別の『耳』からの情報であった。

 

「ふむ、最近流れてたあのクスリ……死穢八斎會が違法薬物の元締めか……違法薬物の材料は幼い女の子……ねぇ」

 

 フロントを出て綺麗な夕焼けを目に焼き付けつつ、今手に持っている物とは別に4台あるスマホの内、高度に暗号化された秘匿通信回線を使用している公安委員会直通のスマホを取り出してナガン先輩に直接電話をする。

 

「ナガン先輩、村紗です……えぇ、死穢八斎會はやはり黒でした……今送られてきた情報を整理してますが……人の所業じゃないですよ……惨すぎる、生きたまま切り刻んで解剖なんて……一応、会長には資料を提出して報告という名目を作りましたが……今から死穢八斎會を強襲してきます……えぇ……え? 待て? 副会長? あの欲の皮が突っ張った業突く張りのクソジジィから牽制? 面白い冗談を言いますね、ナガン先輩も……私の過去を知っているでしょう? 第二、第三の私を作る訳にはいかない、では行ってきます」

 

 電話口からはナガン先輩の焦る声が響くが最後まで聞かずに通話を終える村紗。

 タクシーを呼び止めて『金貨』を手渡して行き先を告げる。

 

「死穢八斎會本拠地」

 

 運転手へとそう語り……後部座席に寝そべると着いたら起こす様に告げ暫しの安眠を求める村紗であった。

 2時間後、目的地へと着いた為に起こされる村紗。

 お礼を言い車から降りると……村紗は今現在の情報を整理する。

 現在時刻は21時45分。

 標的は死穢八斎會幹部及び死穢八斎會若頭、治崎廻を痕跡すら残す事無く『失踪』させる事。

 そして、パッケージである『壊理』という少女の即時保護を行う。

 あとは、この件に絡んでおり死穢八斎會からの賄賂やその他多数の犯罪組織から裏金や献上された『薬物』を売り捌いて甘い蜜を吸い取っている副会長もこの際に始末する。

 そもそも副会長もこのクスリの販路拡大に携わっていたという最悪な結末故に……消す以外の方法はない。

 これが公になればヒーローへの信頼は地に堕ちる。

 

「さて、やりますか……」

 

 スーツを着直して死穢八斎會のデカい塀を軽々と飛び越えて敷地内に侵入する村紗。

 その眼は……とても冷たい氷の様な鋭い眼差しであった。




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