駆くんと私が出会った高3の夏休み。あれから早くも1年が経とうとしていた、8月。
私、深水透子は無事に地元の美術専門学校に合格し、毎日のように絵を描き続ける日々を送っている。やなちゃんは東京でモデルとして活躍中。雪くんは隣町の大学で体育科を選択して、スポーツインストラクターになるという夢に向かって頑張っている。さっちゃんは小説家になりたいらしく毎日家で小説を書いている。祐くんは地元の大学で文学部を選択して、勉学に励みながら登山を楽しんでいるようだ。
それぞれ違う場所で、それぞれの夢に向かって頑張っている。去年みたいに「カゼミチ」に集まって話をする機会こそなくなってしまったものの、私たちには大切な約束がある。
“来年もこの5人で花火見に行こう!”
そう、今年こそはさっちゃんも一緒に。あと、駆くんとも一緒に見たかったな。今年の花火大会は2週間後にある。みんな花火大会の日は地元に帰ってくるそうだ。
━━━2週間後、カゼミチにて。
「透子ー!久しぶり!元気だった?」
「うん!元気元気!やなちゃんこそちゃんと食べてる?」
「食べてるよ、うち今減量してないから」
久しぶりにやなちゃんの声を聞いて安心している自分がいる。単純だなあ、私。
「あっさっちゃん!祐くんも久しぶり!」
「透子ちゃん久しぶり」
「透子さんお久!」
「さっちゃん、体調は大丈夫そう?」
「あんまり無理したらダメよ?悪いときはうちらに言ってね」
「うん、今日はすごく調子がいいの。祐くんもいるから大丈夫だよ」
「さっちゃん…。うん!さっちゃんには俺がついてるよ!」
祐くんったら顔が赤い。本当に変わってないなあ。可愛い。
「あれ?そういえば雪くんは?」
「雪なら少し遅れるって言ってた。でももうすぐくるはずよ」
この時間だと去年なら走りこみしてる時間だよね。まさか…。
「あ、雪くん来たよ」
さっちゃんのその声と同時なお店のドアが勢いよく開いた。
「悪い、遅れた」
「もう雪ったら。なんでこんな大事な日に走りこみなのよ」
「なんか、この町に戻って来たら久しぶりに走りたくなったんだよ。なんにも変わってないな、この町は」
「そ、そうか…?でもそれ言ったらみんな変わってないだろ」
「「「「確かに!」」」」
私たちは約半年ぶりに全員で笑いあった。
外を見ると、日が暮れ始めていた。
━━━夜、花火大会にて。
まずは恒例の屋台巡り。今年もたくさん屋台がありわくわくが止まらない。
私、やなちゃん、雪くんとさっちゃん、祐くんに分かれて屋台巡りをすることになった。
「じゃあ、8時に丘の上に集合ね!」
「みんなで見る花火、綺麗なんだろうなあ」
「すごーく綺麗だよ!特に丘の上からは絶景!」
「早く見たいね!」
「うん!じゃあまた後で!」
そう言って私たちは2つに分かれ屋台巡りがスタートした。
「2人共どこ行きたい?」
「俺はどこでも」
「私もなんでもいいよ!」
「それが一番困るんだけど…」
「やなぎは行きたいとこあんの?」
「うちも、どこでもいい」
そんな会話をしていると人がやたらと集まっている屋台を見つけた。あの屋台はなんだろう?
私はそこに近づくと思わず目を奪われてしまった。綺麗…!売ってあったのはビー玉サイズのガラス玉。私も昔作ったなあ。
“やっと見つけた”
…え?今声が聞こえた。不思議、耳に残る透き通った声だ。でもこの声、聞き覚えがある…。
“透子、俺はここだよ”
この声は…!まさか駆くん!?同時に頭の中に映像が流れる。
ここは…丘の上!丘の上に駆くんがいるの…?行かなきゃ!行かないと行けない気がする。駆くんがもしいるのなら…!
「やなちゃん!雪くん!私ちょっと行きたいとこあるから2人で行ってて!8時には間に合うようにするから!」
「え…うん、わかった。どうしたのかしら」
「まさか…あいつ?いや、ないか」
「雪、なんか言った?」
「なんでもない」
━━━丘の上にて。
駆くん、駆くん、駆くん…っ!私は必死に階段を上る。
「はあ…やっと着いた」
全力疾走したせいで、息がかなり切れた。しかし休んでいる暇はない。駆くん…!どこなの!?私はここにいるよ…!
“透子、こっちだよ”
また駆くんの声。私は声に導かれるまま足を動かしていた。
すると目の前に見慣れた髪、以前よりもたくましくなったような懐かしい背中が現れた。
「駆くん…?駆くんだよね?」
私は少しためらいながら目の前の大きな背中に話しかけた。
「信じていたよ、来てくれること。久しぶりだね、透子」
振り向いて微笑みかけてくる駆くん。やっと会えた…!
「駆くん…!どうしてここに?」
「透子に会いたかったから。ここに来れば透子に会えると思ったんだ」
「私も、駆くんに会いたかったの…駆くんとも一緒に花火が見たかった」
「俺の声、ちゃんと届いてた?」
「届いてた。駆くんの声、ちゃんと聞こえたよ」
「透子がくれたこれのお陰かな」
駆くんは青いガラス玉がついた腕輪を見せてきた。そっか、これだったんだ。私はポケットから赤いガラス玉がついた腕輪を取り出した。屋台のガラス玉なんかじゃなくて、ここから声が聞こえていたんだ。
「なんか、意思が通じ合ってるみたい!久しぶりだったなあ、未来の欠片を見るのは。未来の欠片って言うのもおかしいけどね。駆くんがいなくなってからキラキラしたものを見ても未来の欠片が見えなくなってしまったの。でも今日、また見れた!」
「そうだったのか。俺も久しぶりだったよ、未来の欠片。やっぱり俺と透子が一緒にいると見えやすくなるんだな」
「だから…なんだよね。この町からいなくなった理由。私もなんとなくいなくなっちゃうんじゃないかって予感はしてた。でも、急にいなくなっちゃっうから…!」
思わず涙が出てくる。すると大きな手が私の頬を包んだ。
「ごめん。俺、怖くて逃げてた。これ以上透子といると透子を傷つけるんじゃないかって。それが怖くて何も言えなかった。心配かけてごめんな…」
「駆くん、そんなこと気にしないで。確かに未来の欠片が見えたとき、すごく怖かったし苦しかった。でも、それ以上に駆くんは私を支えてくれた…!いつも傍にいてくれた…!すごく…寂しかったんだよ…。私がどれほど駆くんを失いたくなかったかわかる…?」
駆くんの大きな手は私の背中に回り、気がつくと私の手も駆くんの背中に回っていた。泣き崩れそうな私の身体を今、駆くん 支えてくれているんだと実感する。
「俺も透子を失いたくなかった。いつからだったんだろうな、こんな気持ち。離れたくなかった、離したくなかったんだよ…!俺はこの気持ちに気づくのか遅かったんだ…!」
私を抱いている手に力が入る。取り乱している駆くんを見るのは初めてだ。さっきよりも力強く抱きしめてくる。
「本当に駆くんは鈍感だよね。でも、遅くたってまた会いに来てくれたじゃない。今ね、私とても幸せだよ。駆くんは?」
「幸せだよ。透子、好きだよ」
「私も。駆くん、好き」
そのまま見つめ合った私たちは静かに唇を重ねた。
「おーい!透子さーん!ってあれ!?」
「あ、祐くん!みんな!駆くん帰ってきたの!」
「そうなんだ!久しぶりね!ねえ、駆くんもうちらと花火一緒に見ない?」
「お言葉に甘えさせてもらうよ」
「よかったね、透子ちゃん!」
しばらくすると第一発の花火が上がった。毎年見てるけど今年は一段と綺麗な気がする。花火は次々と上がり、周りの熱気も高まる。
「透子」
私の名前を呼んだ駆くんは、そっと私の手を握ってくれた。温かい…。
初投稿でした。ポンコツが書いた拙い小説ですが楽しんでいただけたなら幸いです。