ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation 作:Haturu
作品を充分に楽しむためにそちらも含め閲覧していただけると嬉しいです。以下、サイトへのリンク。
https://gumpla.jp/hg/1824725
GBNーー約2000万人がプレイしている大人気ゲーム。
作ったガンプラをスキャンし、実際に操縦することができる。ビルダーたちはこの世界に魅入られ、ダイバーとして切磋琢磨していた。
「もうやめろ!彼女の望みはこんなものではないはず!!」
X字のスラスターの機体を駆るダイバーが叫び、負けじと青色の悪魔を操るダイバーが慟哭する。
「うるせぇ!あいつはもういない、違うんだよ!アレは!ーーーだから!!俺がこの手でぇ!!」
今この瞬間、彼らにとって、この世界は本物で、この戦いは戦争だった。決してゲームや遊びの類ではない。
3年後ーーー
「ケンイチーー?もう11時よー早く降りてきなさーい」
母親の叫び声で目を覚ます。
「ふぁ。。。もうこんな時間……」
何度も止めた様子のある、目覚まし時計を元の場所に戻し、ケンイチと呼ばれた少年は目を擦りながらリビングへ向かった。
「おはよぉ。。。母しゃん……」
「おはようじゃないわよ11時まで寝て!!今日の予定は?」
玄関で靴を履いている母親を尻目にリビングに用意してあった朝食に手を伸ばす。
「なんも…散歩ぐらい?」
「わかった!じゃっ戸締まりよろしくね!」
バタンと閉められたドアに向かって行ってらっしゃいの意味を込めて手をひらひらとさせる。声を出せばそれで済むのだが、あいにく彼の口はバターロールで埋まっていた。
「今日はどこへ行こうかな」
バターロールを飲み込み、誰に言うわけでもなく呟く。
田舎から引っ越して約一カ月。やっと我が家の違和感に慣れつつあるが、それでも故郷への想いが消えたわけではない。そんな彼にとって散歩は心を落ち着かせ、なおかつ、新しい近所に慣れる絶好の手段だった。
「目ぼしいところは歩いたからなぁ……少し遠くに行ってみるかなーーー」
朝食を終え、昨晩のうちに用意しておいた服に袖を通す。
「行ってきます!」
無人の我が家にそう叫び、少年は一歩を踏み出した。見慣れない道をてくてくと歩いていく。
引っ越して来た新居の周辺はごく一般的な住宅街だ。数分ほど歩くとそこそこな大きさの駅があり、周辺には居酒屋やショッピングモールなどが並び、活気がある。だがもちろん見慣れた田んぼや、鬱蒼とした森は全くない。
(引っ越して一か月経ったけど……まだ知らない道ばっかりだ。みんな元気かなぁ)
故郷へのノスタルジーに浸りながら大通りに出たその瞬間ーーーー.
ズガビビビ!と、けたたましい爆音がケンイチの耳元で炸裂した。
「うわっ!?何!?何?!」
突然の出来事に尻餅をつきながら叫んでしまう。周りを見渡すと犯人であろうスピーカーと、ゲームの紹介動画を写したディスプレイをガラス越しに見つけた。あった。なんの店かと顔を上げると大きな看板が見える。
ホビーショップうみもと
(ホビーショップ?おもちゃ屋か)
状況整理を終えると同時に店のドアが開く。
どうやら先ほどの叫び声が聞こえたらしい。
店員の顔には焦りの色が見えた。
「君!大丈夫かーー」
ズガ(ry
爆音再来。
2人して耳を塞ぐ。店員の方は状況を把握したようで店の方に叫んだ。
「おい店長!!またスピーカーの設定ミスっただろ!!」
店の中からドタドタと何かの倒れる音が聞こえた。
「全く……君、大丈夫?」
ツンツン気味の前髪の青年が手を差し伸べてくれた。青色のエプロンを着ており、胸には「はるま」と書かれたネームプレートが付けてある。十中八九、この店の店員だろう。
差し伸べられた手をとりゆっくりと立ち上がる。
「ありがとうございます…大丈夫です。」
「いやはや本当に申し訳ない…ほら店長も。」
絆創膏だらけの店長と呼ばれたメガネのお兄さんーーーみるからにおっちょこちょいな人がドアから顔を出す。
「本当にごめんなさい!!」
先ほどの叫び声以上の大声と直角に曲がった誠心誠意の謝罪をくらい思わず怯んでしまう。
「大丈夫!大丈夫ですから!そんな謝らなくていいです!」
「そう言ってもらえると助かるよ……」
うなだれる店長。手を差し伸べてくれた店員が爆音スピーカーをいじるのをやめ、店長に肘打ちをしながら口を開く。
「ただ設定ミスってただけっすよ。音量60って…騒音じゃないっすか。おおかたリモコンの上になんか置いたとかでしょ。んじゃ品出しいってきまーす」
適切な音量になったおかげでようやく流れてる映像の内容に目を向けれるようになった。宇宙のような場所で紫と白のロボットが大きな光の剣を振り下ろしている。バックでは先ほどまで爆音を鳴らしていたスピーカーがさすがはGBNチャンピオン!などと叫んでいる。
「GBN?」
「おっ!興味あるかい?!」
先ほどまでの暗い顔から打って変わって店長の目が輝く。
「確か…ガンプラのゲームですよね?前に友人に誘われたことがあります。」
その誘いに乗る前に引っ越してしまったけど、と心の中で呟く。
「そうそう!どうだい、やってみないかい?お詫びも含めてサービスするよ!」
このような誘いを断れないのが彼のいいところでもあり悪いところでもある。要するに優しすぎるのだ。
(まぁサービスしてくれるって言うし悪いようにはならないだろう)
数分後、彼はこの単純な考えに後悔することになる。
「よっし!そうと決まればまずガンプラ選びだ!そこに飾ってある内から好きに選んでよ!」
店長に案内され入店。先ほどのスピーカーの近くの展示スペースに足を運ぶ。店の天井まで届きそうなショーケースに、数え切れないほどのガンプラが並んでいる。
「決まったら呼んでね!僕は準備してくるから!」
テンションの上がった店長に戸惑いつつも展示ケースに目を移す。
「うーん、とは言っても……よくわかんないなぁ」
ショーケースの真ん中にはプラモデルとは思えないほどの完成度のガンプラが数個、金色のトロフィーやメダルと一緒に飾られていた。流石にこれを借りるのは図々しいよなぁ……と思いながら、下の方に飾られているガンプラに目を向ける。
三つ四つ目を通した後、あるガンプラに目が止まる。
「これってさっきの……」
「ガンダムAGEー1だね!」
(この人いつのまに?!?)
「さぁ準備はできてるよ!」
半ば強引に手を引っ張られ店の奥にあるスペースに案内される。店の朗らかとした雰囲気とは打って変わってサイバー的な雰囲気の部屋に、コックピットのようなマシンが並ぶ。そのうちの一つに腰を下ろし、GBN用語を一通り説明してもらい…三割程度しか理解できなったが‥…店長曰くやってるうちになれるとのこと。
ログイン手前まで案内してもらい、操縦桿を握りしめる。
「ログインしたらメインエントランスに着くだろうからそこで少し待っててね。さっきの店員さん寄越すからーーーじゃあ楽しんでね!」
ログインが開始され視界が光の中へ吸い込まれていく。
(ちょっとした散歩のつもりだったのにまさかゲームの世界に行くなんて)
光の中に意識が吸われる。
ーーーーー
「あの子ダイバーだったんですか?」
品出しを終えたハルマが満足げな店長に話しかける。
「うんにゃ、僕が誘ったの。またお得意様が増ちゃうなー♪」
「あぁ………貸しd……待ってください、うちのダイバーギア貸したんですか?!」
「何をそんなに焦っーー」
「店長つい最近ハロで雪山転がるんだ〜って貸出用のアカウント使ってましたよね?!?」
血気迫るハルマ。徐々に店長の顔が青ざめていく。
「しっっ、しまったぁぁーーーーー!!!!!!」
ーーーーー
GBN雪山ディメンション中腹
「さっ寒い……どうして雪山にいるんだ?」
吹き荒れる雪の中に緑色のハロが1人。(一個?)
もちろんケンイチである。近くにはガンダムAGE-1が膝立ちで佇んでいた。
「どうにかして乗れないかなぁ?」
もちろんコンソールを開き搭乗コマンドを押せばそれでAGE-1を動かすことは可能だ。しかし初心者であるケンイチにはその方法がわからない。ましてやこの球体の体だ。動くことすらぎこちない。
(まさかこんなことになるなんて……やっぱり気軽に誘いなんて乗るんじゃ------
瞬間、とてつもない爆発音が雪山に響く。
「ばっ爆発?!まさか戦闘でもしてるんじゃ…」
音のした方を見てみるがあいにくの吹雪で何もわからない。
--い--ーん
(人の、声?しかも聞いたことがあるような…)
うぉおぉい!しょおねぇぇん!!!AGE1のしょうねぇぇぇん!!!!
明確に人の声だ。それもかなり必死の。
「ここでぇーーす!多分AGE1のし少年でぇーす!?!」
大声の方に向かって叫ぶ。おそらく自分のことを探しに店長かハルマという店員が駆けつけてくれたのだろう。
5分程度の遭難を乗り越えたケンイチ。助けに来たハルマに諸々の事情と謝罪を受けた後、AGE1のコックピットに2人で搭乗し、操作を教えてもらう。
「そうそう現在地送るから……え?めんどくさい?そこをなんとか……いやケーキ奢るのは…わかった!わかったから通話切らないで!うん、あぁ…ありがとうございます………」
操作を一通り試すケンイチの裏で通話するハルマ。焦ったりしょぼくれたりと見ていて面白いが、要件は済んだようでウィンドウを消して通話を終える。
「そういえば自己紹介してなかったな。俺はハルマ。よろしくな」
先ほどのようにまた手が差し伸べられる。が先ほどとは違い、リアルに似た服の上に、黒いジャケットを羽織っていた。
「ヒヤマ•ケンイチです。」
ダイバーネームの方を……いや説明してないな……と小声で呟くハルマ。不思議そうにみるケンイチに気付き仕切り直す。
「まっいいや、さっさと降りようぜ、こんな寒い山。操作できるか?ケンイチ」
「はいやってみます!」
伸び縮みするハロの腕に少々の驚きを見せながら、操縦桿を握ると、AGE1のスラスターが点火した。少しの助走の後、空へと登る。
雪山を抜け、ガンプラで空を駆けるとそこには広大な森林が広がっていた。
「わ〜!凄い!!」
目を輝かせるケンイチにハルマは少し安心した。
店長による雪山拉致が露呈した後、フォースネストにあった飛行機を使い、全速力で雪山にまでひとっ飛びしたのだ。殴られても文句が言えない状況だったので、緊張半分、苛立ち半分ぐらいの気持ちでいたのでそれが杞憂に終わりほっと胸を撫で下ろす。
「全体マップって言ってな。見渡せるとこ全部飛んでいけるんだぜ。」
「凄いです!もっとバトル、バトルしてると思ってました!」
興奮したケンイチに笑みを返すも心の中では少しずつ店長への苛立ちが蘇って来た。とりあえず帰ったら土下座させようーーそんなことを考えながら、ケンイチに返事をする。
「そうでもないさ。まったりプレイしている人も多い。よっと、とりあえずここへ向かってくれ。」
マップを開き操縦桿を握るケンイチに見せる。
「?何かあるんですか?」
「フォースネ……まぁ家みたいなもんがあるんだ。出だしが最悪だったからな、そこで仕切り直しをーー
!!caution!! !!caution!!
突如コックピットに警告音が鳴り響く。
「ん?なにこれ?」
「ーーっ!ケンイチ、代われ!」
ハルマが操縦桿を取ろうとしたその瞬間、AGE1に何かが衝突した。コックピット内に衝撃が走る。
「わっ!落ちる!」
体勢を崩し落下していくAGE1。回転するコックピット。ハロの体で跳ねるケンイチ。突如訪れたカオスな状況ながらハルマはぶつかってきた何かの正体に気づく。
(大破したクランシェ!?戦闘に巻き込まれたか!いやだが、こんな高高度まで吹っ飛ぶなんて……)
「なんて言ってる場合じゃねぇな!」
生い茂った木々にぶつかる直前にハルマが操縦桿を握り直し、AGE1の背面スラスターで着地を試みる。が素組みによる低出力が災いし、木々を犠牲にしながら森の中の開けた広場に不時着してしまった。
ふーっと息を吐くハルマ。足元には「目がまわる〜」とぐるぐる目になったハロが転がっている。
「一体どうなって……」
caution!caution!状況を理解する前に、再度警告音が鳴り響く。コンマ数秒後、巨大な斧がAGE1の傍を掠めた。地面に突き刺さり、鈍い音と土煙が舞い上がる。
明確な攻撃だ。そう断定したハルマは斧が飛んできた方向に目を凝らす。
数秒後、ハルマにとっては予想通りの、ケンイチにとっては本日何度目かわからない衝撃が走る。
「でっ、デッカァァァ!!」
「やっぱりな……グレイズアイン!」
黒光りする装甲、作り込まれたフレーム、巨大な体躯、全身の繊細なディテール……その一つ一つの要素が制作者の技量を物語っていた。血の色のようなモノアイが点滅する。仕掛けてくるかと、ハルマがスロットから唯一の武装であるビームサーベルを選択する‥…が、
「何だぁあんたら、こんなところで何してんだ?」
サウンドオンリーではあるものの、接触回線から気の抜けた声が聞こえてきた。戦闘を覚悟していたハルマは少し気が抜けてしまう……が騙し討ちの可能性を考慮し、警戒は解かずに、気だるげな声で返事をする。
「……どうもこうもアンタとクランシェの戦闘に巻き込まれたんだよ。」
「あーー、それはすまなかった。なに分まだこの世界には慣れていなくてな」
言葉と同時に右腕に握っていた大型斧を背面にマウントし、手を上に上げる。騙し討ちの類ではないだろうとハルマも警戒を解く。
「あの〜〜ハルマさん?大丈夫そうですか?」
ようやく冷静さを取り戻したケンイチの不安そうな質問にハルマが口を開こうとしたその刹那。
「ハルマ?アンタ、ガルフのハルマか?」
食い気味な問いが回線の向こう側から聞こえてきた。
飄々としていたハルマだったが、苦虫を潰したかのように顔を歪めてしまう。
「悪りぃなケンイチ……たった今、大丈夫じゃなくなった……どこでもいい、何か掴まっとけ」
いわれるがままにケンイチがハルマの足に掴まる。少しだけ笑みを浮かべてから……先ほどの問いに返答をする。
「そうだ。俺はフォース、ガルフ所属の…………フォースリーダーハルマだ。」
コンマ数秒後金属を擦り付けたかのような音が響き渡る。気がつくとグレイズアインはAGE1の目の前に立ち塞がり、巨大斧を振りかぶっていた。
「騙し討ちのようで悪いが……こっちにも訳があってな、不用心な自分を恨んでくれ。」
言葉と共に斧が振り落とされる。
「あーーぶぅねぇなぁ!」
すんでのところで回避しようとするものの、スラスターの出力が足りず左肩から下が切り落とされてしまう。
コックピットの色がイエローに変化し、ヒットポイントの減少を知らせる。フラフラと倒れ込むAGE1。徐々に近づいてくるグレイズアイン。絶対絶命だ。
「クッソ!いきなり殴ってきやがって!!」
続け様に繰り出されるドリルキックを間一髪でかわしながら叫ぶ。
「どうしよう……このままじゃ…」
「下を向くなケンイチ、まだ俺たちは負けてない!」
片手でウインドウを、もう片方で操縦桿を握り締め、足元のハロに真剣な目で尋ねる。
「作戦がある。この状況をひっくり返して、あいつにぎゃふんと言わせるとびっきりのやつが!協力してくれるか?」
それがハッタリや痩せ我慢ではないことをケンイチはハルマの真剣な眼差しから感じ取った。
「わかりました……僕にできることなら…」
サンキューな、とハロを撫で耳元で囁く。
「30秒だ、30秒経ったらこいつをお前が操縦して全力で俺から離れてくれ。いいな?」
「ハルマさんは……?どうす」
「作戦会議はもういいか?こっちも連戦で疲れてんだ」
痺れを切らしたグレイズアインが長い足を振りかぶった。
「させるかよぉ!」
背部のスラスターをフルスロットルでふかし、振りかぶらなかった方の軸足にAGE1をタックルさせる。
「うぉ?!」
どんなにパワーの差があったとしても蹴りの最中に軸足を崩されてはたまらない。長い足が仇となり盛大に転倒してしまうグレイズアイン。既に20秒近く経過していた。
「よっしゃぁ!今だ!頼んだぜケンイチィ!」
台詞と同時にコックピット内からハルマのアバターが消失する。
「えっ!?ちょっ?!ハッ…ハルマさん!?」
次の瞬間彼の目に映ったのはAGE1の足元にいるハルマであった。困惑しながらも、約束通り全力でAGE1を後退させる。
(まさか……囮になって僕だけを逃すつもりじゃ?)
ようやく立ち上がったグレイズアインが目を丸く(元々丸いが)した。
「なるほどな……潔いじゃねぇか。犠牲は自分だけでいいってか?」
「勘違いすんなよ……俺が今ここに立つのはこれからお前をぶちのめすためだぜ?」
不敵な笑みを浮かべ上空に指を向けたその瞬間大きな影が周囲を包む。
(何かがくる!まずい!)先ほどの判断が誤っていたことに気づき、グレイズアインの足で踏み付けようとする。
だが
「ジャスト30秒!!完璧だラナ!!」
上空から落下してきた巨大な影が地面に衝突し、
砂煙が大量に舞い上がる。
「なっなにが起こって……」
「よぉーし!作戦成功だ!!」
小さなウィンドウにハルマの上半身がうつしだされる。
「え!?なにが起こったかわからなかったんですけど……」
「まぁまぁ!あとは俺に任せとけ!!」
砂煙が段々と晴れていき、18メートルほどのシルエットが浮かぶ。
「見ていってくれよな!!GBNの……最高の瞬間ってやつをよ!!」
シルエットが砂煙をかき消す。
青と白の……機械の悪魔がそこにいた。
[newpage]
ガンダムバルバトス•ラグナⅠ
ハルマが作り上げた改造ガンプラだ。ガンダムフレームにGUND-ARMをミキシングし、オリジナルのフレームとして作り上げている。
「あれが……ハルマさんのガンプラ……」
「そうだ。かっこいいだろ?ラナ!回収、頼む!」
「アンタね!店長が誘拐した子ってのは!」
上空から輸送機、ガンペリーがAGE1の脇に着陸し、中から小柄な女性が現れる。ド派手な金髪を白色の花のブローチでまとめており、腰にはハルマと同じデザインのジャケットを巻いていた。手を振りながらAGE1に走り寄る。
「ほら!さっさと移動するわよ!」
AGE1の足をペチペチと叩きながらラナと呼ばれた女の子は叫ぶ。
「あっちは大丈夫そうだな……で?アンタは?どうする?」
喧嘩なら買うと言わんばかりにグレイズアインに刀を突きつける。
「そうだな……」
歯切れの悪い返事をしながら、グレイズアインのカメラアイが動く。目線の先にはガンペリーの搭載に四苦八苦するAGE1がいた。
瞬間、グレイズアインが地面を蹴った。体が弾丸のように加速する。
「わっ?!こっち来てますよラナさん!!」
「焦らない!!絶対……大丈夫だから!」
「悪いなニュービー!!人質になってもらうぞ!!」
グレイズアインがガンペリーに向けて巨大斧を振り下ろす……が
「人の質問無視すんなよ」
巨大斧はすんでのところでバルバトスに止められていた。
「バカな!!グレイズアインのフルパワーだぞ!!」
「迂闊すぎなんだよアンタは」
他者との戦闘中にもかかわらず乱入者に気を取られたこと。
数少ない武器である巨大斧を初手で投げ捨てたこと。
馬鹿正直にAGE1を人質にしようとしたこと。
「確かにそのガンプラはよく出来てる……ただでさえ肉抜きが多いそのガンプラをそのクオリティで仕上げるのは至難の業だ。」
だが、とハルマは続ける。
「操縦者が使いこなせなければ意味がない……違うか?」
「……抜かせぇ!!」
グレイズアインがバックステップを踏み、距離を取り肩部格納式40㎜機関銃を乱射した。
「甘ぇんだよ狙いがぁ!!」
ハルマは左腕で胸部を守りながらグレイズアインに大きく円を描くように接近する。
軌道の先には先ほど投げつけられた巨大斧が突き刺さっていた。
「よっと、借りるぜ!」
背丈ほどの巨大斧を盾にし、機関銃をやり過ごす。
「くそっ!オーバーヒートか!」
このタイミングを待っていた。弾痕まみれになりつつも巨大斧は未だ健在だ。完成度は見た目以上に高いらしい。斧を放り出し刀を構え、再度突撃する。
「バルカンはなぁ!!こう使う!」
両者の距離が50mほどになったところでバルバトスのアンテナが火を吹く。肩の機銃を狙ったバルカンは的確に肩部格納式40㎜機関銃を貫いた。小規模な爆発がグレイズアインを襲う。
「ぐっっ!」
グレイズアインが爆発で怯む隙に、バルバトスがスラスターを急稼働させ接近する。グレイズアインが体勢を立て直す頃には目と鼻の先まで接近していた。
「舐めるなぁ!!!!」
グレイズアインは咄嗟に左腕を伸ばしパイルバンカーを構えた。
「遅い!!」
しかしながらバルバトスは、体を回転させ回避しながら跳躍した。落下の勢いに任せ左腕をフレームごと切り捨てる。
「な?!」
「まだまだぁ!」
着地と同時にグレイズアインの足元を回転しながらくぐり抜け、背後にまわる。グレイズアインの装甲は堅牢だが、背後にまわれば関節など露出している部分も多い。ハルマはその弱点をついた。バルカンで脚部の関節を崩し、よろけた瞬間に腰のフレームを刀で切断する。
「一刀両断っと……トドメ、ささせてもらうぜ。」
「ここまで……か」
全長が3分の1ほどになった上半身だけのグレイズアインを見下ろしながら、刀をコックピットに突きつける。
「なーんてな、俺に初心者狩りの癖はないよ。」
刀を納めながら笑い混じりに呟く。
「なぜだ……なぜトドメをささない?」
右腕だけで立ちあがろうとするグレイズアインを持ち上げながらハルマは質問に答える。
「うーん、なんて言うか……俺は勝つためにGBNやってるわけじゃないし…… まぁ色々あったけど楽しかったからok……ってことじゃダメか?」
「……っははは!勝負でも人としての器も負けとはな!完全敗北だ!」
緊張の糸が途切れる。先ほどまでの殺気に満ちた空間は完全に消滅していた。
「俺の名はルイ!ハルマ!いずれ貴様に再戦を申し込む!いいな!!!」
「ああ!楽しみにしてるよ」
抱き抱えていたグレイズアインが光の粒となって消滅した。ハルマのフレンド一覧に”ルイ”が追加される。
「すごい……これがガンプラバトル……」
ケンイチは目を輝かせながら目の前の光景をじっと見つめていた。
10分後、
ーーーフォースネストーーー
「なるほどね、事情は理解したわ。」
あの戦いの後、ハルマたちはガンペリーに乗って、AGE1と衝突したクランシェのダイバーをロビーに送り届けた後、ハルマと同じフォースのメンバー、ラナに事情を説明しながら、自分たちのフォースネストに向かった。彼らのフォース、GRF(ガルフ)のフォースネストは巨大な湖の中心にある島の、そこそこな大きさの和風テイストの家である。三人はその家の客間でお茶を片手に話していた。
「理解したけれど……ひどいわね、負の連鎖もいいところじゃない。」
飲み干したティーカップの縁をなぞり、ため息混じりにつぶやく。
「ははは……まぁ壮絶な一時間でしたね……」
「まぁ発端は店長だから、帰ったら一発かましてやりましょ、ケンイチくんもどう?」
「あんまりからかうなよ、ラナ。それはそうとして……」
ハルマが真剣な顔つきでケンイチに向き直る。
「今回は本当に…すまなかった。案内すると誘っておいて……初GBNで散々なものにしてしまった………謝罪してもしきれないがーーー」
ハルマの言葉を遮るようにケンイチが勢いよく立ち上がる(ハロの体だから正確には足を伸ばすだろうか?)
「待ってください!謝る必要なんてありません!ハルマさん、すごいかっこよかったです!最後に拳で語り合った後の男同士の友情みたいな、そんなところが特に!!」
とてつもない勢いで捲し立てるケンイチにハルマもラナも目が点になる。
「僕もハルマさんみたいになれますか?あんな風にかっこよく闘う、かっこいいガンプラを作れますか?」
想像もしなかった言葉にハルマは息を詰まらせた。彼は……彼は自分に憧れてくれているのだと、GBNを楽しむ自分のようになりたいと、言っているのだと気づくのに数秒ほどかかった。
「………なれるさ、もちろん。俺なんかよりもずっとずーっとかっこよくさ。」
「ホントですか?!あっ、でも努力もしなきゃですよね!ガンプラ作るんだったら!道具とか揃えて、知識も蓄えて!色々教えてください!」
「もちろんだ。うちの店を、好きなだけ使ってくれて構わないよ。」
「そーそっ、店長ゆすっちゃいましょ。」
「じゃあ早速お店行きましょう!……ログアウトってどうするんですか?」
「あぁそれはここをこうして……先行っててくれ、片付けがあるからさ。」
リビングからハロのアバターが消える。
「………俺なんかでよかったのかな。人に憧れられる資格なんてないのに。」
ハルマの顔から笑みが消える。その中には言葉では言い表せない複雑な感情があった。
「ハルマ……」
「あの子には俺みたいになって欲しくはない。ただただGBNを楽しんでほしい……でも、最近のGBNは………」
「今から考えたって仕方なくない?あんなに楽しそうにしている子に水をさすわけにはーーー」
「そうだな……」
「ほらほら、ログアウトしちゃいましょ、待たせちゃってるよ。ね?」
「ん」
ーーーー彼らの物語は今、動き出した。ハルマの純粋な願いは叶うことなく、彼らはGBNを揺るがす大きな動乱に巻き込まれていく。彼らは何を見、経験し、成長するのか、彼らの導き出す答えとはーーーー