ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

10 / 23
第10話胎動

ケンとアカバネの決着から数分前……

 

「これでも…喰らえぇ!」

 

バルバトスの放つレールガンをディランザは空中で回転し、バックパックに接続されたウェポンラック兼シールドブースターで受ける。

 

「何?!」

 

直撃確定の射撃をいとも簡単にいなされてしまい、動揺してしまう。

ディランザはお返しとばかりにミサイルを発射した。

 

「うぉ!」

 

ミサイルの追撃を逃れるため、数メートル先の森林へ逃走を計る。

 

 

『やっぱ強えな……あんの赤ディランザ……』

 

木々に身を隠しながらハルマが悔しそうに呟く。

バルバトスの装甲値は既に七割を切っていた。

メイン武装がビーム主体の、機体相性のいい赤ディランザにこの体たらくでは、ダイバーとしての操縦技能の差があるとしか言いようがない。

機体を屈めながら索敵を行うと、遥か上空であの赤いディランザがこちらを捜索している。

 

(わざわざ追撃してくるってことは……)

 

何かやましいことがあるからあのディランザはミラージュコロイドを使ってまで隠れていたのだ。

という考えに至る。

用もないところでミラージュコロイドを使うのはマナーに反する……というGBNお決まりの暗黙の了解を全力で無視しているのだ。

その理由はわからないが、見つかってしまったのなら普通なら難癖をつけられる前に撤退するべきだろう。

それでも追撃を優先するということはここから離れられない事情があるのだとハルマは推測した。

 

(狙撃できるか……?)

 

左腕のレールガンを展開し、ロックオンモードへと移行する。ロックオンマーカーが不規則に揺れる。

 

「聞け、ハルマ」

 

「?!」

 

索敵中だと思われたディランザが突如空中で停止した。

アンブッシュが看破されたのかと思ったが、ただオープン回線で呼びかけているだけのようだ。

 

「貴様を裁く準備ができた。俺の姉を奪い、今なお愚弄し続けている貴様のな」

 

(俺の……姉?!何を言って……まさか……!彼は………!!)

 

おもむろにディランザが上空へとライフルを一発だけ放つ。

禍々しい色のビームは一撃で雲を貫いた。

貫かれた雲から、巨大なゲートが現れる。

通常、青緑の透き通った美しいゲートのはずが、その現れたゲートは黒く歪んでいた。

 

 

「なっ……!」

ハルマがゲートに気を取られた隙にディランザはリチャージを完了したミラージュコロイドで姿を消した。

 

だが、ハルマは既に赤ディランザの存在に注意を払っていなかった…

ゲートからは少しづつあらわれた"何か"に目を奪われていたからだ。

それはMAでも、ましてやMSでもない。

あえて例えるなら……人骨。

人の骨の形をした腕のようなものが地面に向け手を伸ばしている。

アレを人骨と仮定した場合、その大きさはとてつもないものだった。現状、見えているのは人で言う関節の部分。しかしその時点でバルバトスの背丈の数倍の大きさだということが分かる。

 

(ヤバいっ……!!)

 

迫る腕をすんでのところで躱す。

それほど速度の出ていないように見えた人骨腕が地面に触れたその瞬間、地震と錯覚するレベルの揺れと津波のような土煙が舞い上がった。

森の木々は次々と倒れ、森を住処とする鳥は一斉に空へと羽ばたいた。

土煙に呑まれないように、バルバトスを全力で加速させる。

 

「ちょっと!何よあれ!」

 

土煙から逃れようと全力で加速するバルバトスの目の前に、見慣れた黄色のSDガンプラが現れた。

気づかないうちに潜伏先まで来てしまったようだ。

無言でルナエクシアを抱き抱え、トップスピードを継続する。

しかし、ラナを拾ったことが災いし、迫る土煙に2人とも呑まれてしまった。

土煙の中では、衝撃に薙ぎ倒された木々や岩が吹き荒れている。その中の一つにバルバトスが衝突し、木々に潰されかける。

なんとか木々の隙間から、機体を立ち上がらせる2人。

 

「うえっ……なんなの?この煙!」

 

ルナエクシアが可愛らしく、装甲についた砂埃を払うが、土煙の中なのでほとんど意味がなかった。

鮮やかな黄色の装甲が土で汚れる。

 

「俺もわかんねぇよ……」

 

あの腕は一体、どれほどの質量あるのだろうか。これだけの衝撃を与えられるなんて……

そんなことを考えているうちに段々と土煙が薄れてきた。リアルならこうはいかないだろうが、ここはGBNだ。そこらへんの描写は簡略化されている。

周りの惨状に思わず目を背けたくなるが、状況確認が今は最優先だ。

 

ハルマが逃げてきた方向に目を凝らす。ぼんやりだが、この災害の犯人のシルエットが見えてきた。

しかし、ハルマはここで致命的な勘違いをしていたことに気づく。

こらほどの災害起こす物体の質量があの腕だけのはずがないことに。

 

「ラナ!!見るな!」

 

エクシアの眼を塞ごうと駆け寄るが、エクシアのカメラアイは既に、人骨の現れたゲートを捉えていた。

 

巨大な骸の目が2人を捉える。

 

 

この世界に住む生物はたったの2種類。

人間と、ELダイバー。それだけのはずだ。後は中身のないNPDやそれに似たペット達だけのはず。間違いない。だが……

その骸の酷く充血した赤い目は……まるで……まるで……

 

……生きているようだったんだ。

 

 

「き、きゃああああ!!!」

 

「ラナ!?ラナ!おい、しっかりしろ!!」

 

エクシアを抱えながら必死に呼びかけるが全く反応がない。

ELダイバーにとってこの世界、GBNはゲームなどではなく、安心安全の故郷だ。

だからこそ、突然目の前に現れた化け物に対して、根源的な恐怖を抱いてしまった。

 

「ヴァアアァアアアァ!!」

 

ゲートから完全顕現した巨人がこちらに向かって歩みを進める。それは決して速いとは言えない動きであったが、100m級の体躯の大きな一歩で確実にハルマたちに近づいていた。

 

(撤退するしかない……!)

 

「ケン!ケン!聞こえるか!?」

 

Sound Onlyで開かれたオープン回線にケンは立ち上がりながら返答する。

 

「ハルマさん?!どうしたんですか?!」

 

「説明は後だ!!今すぐガンプラに乗って逃げろ!!あ、あいつら……とんでもないもんを呼び出しやがった!!! 」

 

ーーー

「おい!しっかりしろ!」

 

アカバネが激しくケンの肩を揺らす。だがケンはただ、呆然と立ち尽くしていた。

 

(なんだあの化け物は!!)

 

「チッ……」

 

舌打ちをしながらアカバネがケンの頬に平手をお見舞いした。ケンの目に光が戻る。

 

「仲間からの通信が聞こえなかったのか?!逃げるぞ!!」

 

「に、逃げるってどこに………」

 

「忘れたのか!!ここはGBNだぞ!ログアウトすればいい!!」

 

アカバネがケンの手を無理やり掴み、強引にウィンドウを開かせログアウト画面を出現させた。

あとはYESのボタンを押せばこの世界から逃げられる。

 

「さぁ、押せ!」

 

「で、でも……」

 

「ええい、まどろっこしい!!」

 

アカバネは掴んだ腕でボタンをタップさせた。

ケンの体が光の粒子となって消えていく。

 

「………あっ」

 

ケンが目を開くとそこは見慣れた模型店の一室だった。

 

ーーーー

 

「よし、ログアウトできたみたいだな……!」

 

ケンがログアウトしたのを確認するとアカバネは後ろに振り向き、全速力で走り始めた。

向かう先は先ほど落下してできたクレーター。

そこに墜落したOOクラッシュに近づき、搭乗する。

 

「よし!なんとか動ける!流石は我が愛機だ!」

 

コックピットの中で思わずガッツポーズをしてしまう。その反応が見えたかは定かではないが先ほどよりも切羽詰まった口調でハルマが口を開く。

 

「おい、何してんだ!アンタも逃げーー」

 

「それはこっちのセリフだ」

 

OOクラッシュを浮遊させながら、アカバネがさらに言葉を続ける。

 

「私たちに状況を伝えた時点でお前もログアウトできたはずだ、それをしないということは……何か理由があるはず。見たところ……その抱えているエクシアか?」

 

アカバネの言う通りだ。ハルマは今すぐにでもログアウトできる。しかし、今、彼が抱えている少女の為、その選択を取ることはできない。少なくとも彼女を安全な場所へ運ばなければ。

 

「そのエクシアは私が安全な場所へ連れて行く!だからお前はその化け物を引きつけるだけ引き連れてくれ!」

 

理に適った提案だ。だが、すぐ首を縦には振れなかった。目の前のアカバネは赤ディランザのダイバーと手を組んでいる可能性だってあるのだ。そんな相手にラナを……

 

「ヴァアアアァ!!」

 

全速力で逃げるハルマに追いつけず、痺れを切らした巨人が身を屈めながらその腕を振り下ろした。

 

「あっぶね!」

 

間一髪で腕をかわす。

地面に叩きつけられた長い腕はまるでドミノのように木々を薙ぎ倒していった。鬱蒼と茂った森林に一本の道ができる。例え高火力のライフルを自損覚悟で放ったとしてもこうはならないだろう。

 

(背に腹は変えられない……か)

 

膝をついた巨人が起き上がろうとする隙にOOクラッシュへと近づくバルバトス。

 

「……頼んだぞ」

 

「あぁ、任せておけ」

 

バルバトスがエクシアのコックピットに手刀を突き刺し、装甲を引っ剥がす。中には気を失ったラナが。まだ目は覚ましてはいないようだ。

マニュピュレーターを慎重に動かし、OOクラッシュへと託す。

巨人は既に立ち上がりこちらへ向かってきていた。

 

(……ん?あのディティールは……)

 

「何してんだ、早く行け!」

 

「あ、あぁ……」

 

ラナを片手で抱えながらOOクラッシュが飛び立つ。

それを見送ったあと、バルバトスは一目散に巨人の方へと駆けた。

 

「よぉし、こっちだ!」

 

巨人の顔の高さまで上昇した後、ライフルで射撃。弾丸は巨人の額に命中するが、効いている様子はなかった。

巨人は止まることなくただひたすらに前進している。

 

「な、なんでだ!?」

 

ーーーーー

 

「貴様を裁く準備ができた。俺の姉を奪い、今なお愚弄し続けている貴様のな」

 

ーーーーー

 

突如として先程の仮面の男の言葉が脳裏によぎった。

 

「まさか……」

 

はやる気持ちを抑え、ハルマはウィンドウを操作する。今ならまだ、そう距離は離れていないはずだ。

 

「おい、聞こえるかアカバネ!!右でも左でもいい、今すぐ方向転換してくれ!!」

 

「なっ、なぜだ!近くの安全圏はこのまま直進ーー」

 

「いいから!」

 

言い返したい気持ちもあったが、あまりにも切実な願いであったためにアカバネは何も言わずに進行方向を変えた。

それに反応するかのように巨人が足踏みをしながら向きを変える。

 

「クソっ!!最悪だ!!」

 

ハルマが力任せにコンソールを叩く。

 

「こいつは……こいつの狙いはラナだ!!」

 

「ラナ?!この少女のことか?」

 

「あぁ、そうだよ!」

 

最悪の展開だ。これでは当初の作戦が全く意味をなさない。

そもそも、安全圏が離れているからハルマが身をもって引きつけ役を任されたのだ。だが、注意を引けないなら、いずれは追いつかれてしまう。

 

「どうする、ハルマとやら?!」

 

「……黙ってそんまま逃げてろ」

 

「だが、それでは……」

 

「いいんだよ!こいつを、今ここでぶっ倒せばいいだけなんだからな!!」

 

バルバトスが刀を構え、巨人の顔面に突撃する。

目標は目玉だ。

眼前に現れた羽虫を落とそうと巨人が手で払い除けようとするが、バレルロールでそれをかわし、追撃よりもほんの一瞬早く、刀が巨人の左目に突き刺さる。生々しい感触とドス黒い煙が噴き出てて思わずえずいてしまう。

 

刀を抜き、次は右目だと、狙いを変えようとしたその時、その右目がギョロッとバルバトスを見つめる。

 

(なんだよ……怒ってんのか……?)

 

「あ"あ"あ"ぁ'!!」

 

巨人が雄叫びを上げながら力強く拍手

いや、バルバトスを狙い手を叩く。衝撃波の出るほどの凄まじい威力だ。

刀と足を上手く使って、潰れるのだけは回避したものの今にも刀が折れそうなほど軋んでいる。

 

「ぐっぅ…………さ、せ、る、か、よぉ!!」

 

コンマ数秒で刀の角度を変え、機体を回転させながら掌を切り刻む。元がスカスカの人骨だ。脱出は容易。

だが、先程の拍手の衝撃で接続していたⅡフェイザーに異常が発生して、空中機動に支障をきたしてしまう。

地面に叩きつけれられる前に姿勢を戻すことに成功はするが、かなり高度が下がってしまい、

巨人の腰あたりまで来てしまった。

見上げないと奴の顔すら視認することができない。

 

「ゔあ"あ"ぁ!」

 

雄叫びと共に巨人が足を振り抜く。土煙と暴風が足元で巻き起こされる。

 

「うぉっ!」

 

飛行スキルに異常をきたしたバルバトスではその暴風に耐え切ることができなかった。

なすすべもなく、吹き飛ばされていく。

同じく吹き飛ばされた木々の残骸と共に地面に追突し、横たわるバルバトス。視界の隅では巨人はバルバトスへの興味を失い、進行を再開し出した。

 

「クッソォ……」

 

舌打ちをするハルマの耳に聞き慣れたコール音が届く。フォース専用回線だ。

 

「やっと繋がった!おい、聞こえるか!今、どういう状況だ!?」

 

「……んでお前がフォースの回線に……?」

 

「この少女の腕を借りた!この距離をかいせんで繋ぐにはフォース専用のものしかないからな!」

 

ラナの腕を借りてフォースに入団したのか。

確かにフォースの専用回線なら距離に関係なく繋ぐことができる。

 

「今の状況は……大丈夫だ…問題ない……!!」

 

アカバネからの通信を適当に返し、バルバトスを立ち上がらせ、今一度目標である巨人を見つめる。墜落してからほんの数十秒ほどしか経っていないはずだが、既に巨人はハルマに背を向け、ラナへと進行を続けている。

 

「聞け!奴の正体がわかった!やつは俺の作った"フラナガンの悪夢"だ!」

 

「……はぁ?」

 

アカバネの言う『フラナガンの悪夢』とは彼の初めての受賞作品のガンプラである。

『フラナガンブーン戦記』と言う外伝小説を元ネタに作られたこの作品は、その小説内で登場する悪夢に出てくる恐ろしい姿のガンダムをこれでもかと再現している。

 

「……いや早く言えよ!」

 

「しょうがないだろう!見た目が少し変わっていたのだ!……話の本筋はここからだ」

 

アカバネが言うには、この作品はジオラマ用であり、GBNのスキャンシステムにも反応しなかったらしい。

なんでも独創性を求めるがあまり、作品におけるガンプラの割合がシステムに求められる基準値に達しなかったそうだ。

 

「ここからは俺の推測だが……今の奴には"ガンプラ"として認識されるほどのコアがあるはずだ」

 

「つまり……そこを叩けば……」

 

奴を仕留められる。

ハルマは思考をめぐらし、今までの戦闘を思い返す。確かに装甲面への攻撃は全く効いている様子はなかったが

内部への攻撃、刀による刺突は手応えを感じた。

 

「……アカバネ、そのシステムの求める基準値ってのはどれくらいだったんだ?」

 

「通常サイズのHG三機分だ」

 

18m×3か。

もう一度、巨人のいる方へと視線を向ける。奴のスカスカな人骨の手足にはそのコアはないだろう。あるとするならば装甲のついた頭。

そして気味の悪い胴体のどこかだ。

 

「っし、弱点がわかったところで……反撃開始だ!」

 

 

まずは頭部だ。先ほどの目玉への刺突でダメージがあったのを見るに、頭部にコアがあるのは確定している。

背面のスラスターを噴射し、巨人の背中へと迫る。

 

(コイツは俺のことを見ていない………勝てる……!)

 

加速の勢いをそのままに巨人の頭部に目掛け、刀を振り抜く。

だが、刀の切っ先が触れる直前、cautionアラートがコックピットに響いた。

 

「なっ……」

 

次の瞬間、バルバトスはまたも地面に叩きつけられていた。

巨人が背後に迫るバルバトスを右手で捕え、そのまま叩きつけたのだ。

 

「クッソ……何回墜落すりゃいいんだよ……」

 

悪態をつくハルマを嘲笑うかのように巨人が

右手がトドメを刺そうと迫る。

 

やべっーーーーー死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところがギッチョン、ってね!!」

 

一筋の光が後方から見えたコンマ数秒後、その光……超高威力のビームは巨人の頭を一撃で消滅させた。

失った頭を探すかのように手を動かしながら巨人が後ろへ倒れ込む。

レーダーを見ると同フォースの機体を示すマーカーが映っていた。

 

「店長!なんでここに……」

 

「言ったでしょ!何かあったら頼れって!」

 

店長はログアウトしたケンから、GBNに化け物が現れたと聞いて急いで駆けつけた。向かう途中、ラナを抱えたアカバネと出会い、事情を把握。全速力で回り込み、巨人に対し狙撃を仕掛けた。

 

「アカバネ達はウチのフォースネストに招待しておいた。もう安心だ。ハルマ」

 

「師匠まで……!」

 

目の前の巨人が力任せに立ちあがろうとする。

その行動には、怒りが含まれているように見えた。

 

「さぁて、久方ぶりの三人組だ……!派手に暴れようじゃないか!」

 

気合十分のテルミに微笑みながら指示を出す店長。

 

「僕が狙撃で奴の動きを妨害する。テルミさんは合図したら必殺技で奴の土手っ腹をぶち抜いて!」

 

「あぁ!」

 

レギンレイズが背面の全スラスターを稼働させ、重心を低くさせる。

 

「3…………2………1、今!」

 

店長の掛け声と共に爆発的な加速を見せるレギンレイズ。潜伏場所である岩山を瞬時に駆け、空へと身を投げ出す。

 

「アタシの必殺技はシンプルだ……加速すればするほど威力を増す、ただそれだけだ……だが!」

 

立ち上がった巨人は向かってくる何かを迎撃しようと右手を振り上げようとする。

だが、手を動かそうとした瞬間、またも後方からの光が発生し、次の瞬間、巨人の右肩が消滅し、腕がずり落ちた。

 

「人の奥さんに軽々しく手を出さないでくれるかな……!!」

 

[[rb:天災兵器 > ハザード•ウェポン]]

Hzw-02『クロカガチ』

 

光の正体は店長が用意した高火力のビーム兵器、

"クロカガチ"。

この武器の最大の特徴はその威力。

利便性など威力以外の全てを犠牲にしたその一撃はどんな装甲であろうとも削り、消滅させる。

 

制約として、威力以上の反動がかかるが、それはクロスボーンの十字スラスターで補われ、

またパーフェクトストライクのエネルギーパックを一発で半分消費するその燃費の悪さは、本体であるクロスボーンの機能を照準のみに制限することでなんとか二発分の猶予を持たせている。

 

「さぁテルミさん!やっちゃって!!」

 

「あぁ、おかげでトップスピード……!最大火力を喰らえ!」

 

 

彗星のようにも見えたテルミの一撃が、巨人の腹を貫いた。

貫かれた腹の中からは見慣れたプラスチックのようなものが露出している。あれがアカバネの言っていたコアだろう。

 

「どうなった……?」

 

巨人は無くなった腑を塞ごうとしているのだろうか、必死に左手を腹の前で世話しなく動かしている。

残るコアはあと一つだ。頭、腹、奴の装甲に覆われている場所はあと一つ、胴体、それも心臓のあたりだろう。

 

突如、バルバトスの頭上から何かが落ちてきた。勢いよく地面に刺さったそれを確認する。

 

「レジリエンサー……」

 

見上げるとGRFの紋章のついたガンペリーがホバリングしている。店長あたりが用意してくれたのだろう。重い足取りで突き刺さった大剣に近寄る。

全身を使って刺さった大剣を引き抜き、なんとか担ぐ。ダメージと重量オーバーでコックピットが赤く染まり、アラートも響いているが、一撃加えるだけならなんとかなるだろう。

 

気がつくと、巨人は体を震わせ跪いていた。

まるで全てを諦めたかのように。そこにはもう先程までの恐ろしさはなく、ただひたすらに哀愁が漂っている。

バルバトスを心臓の前で浮遊させ、もう一度全体を見つめる。

 

「一思いにやってくれってか」

 

そのままバルバトスを操作し、一閃。

すると巨人の体は段々とひび割れ、ヒビが全身に行き通ると……ドス黒い煙と共に爆散した。

バルバトスが煙に包まれる。

 

「ゲホッゲホッ……んだよ、この煙……なんでコックピットまで……」

 

コックピットが煙に満たされ、むせてしまう。

同時に先ほどの一閃でガタがきたバルバトスは背部のⅡフェイザーが爆発したことで飛行能力を失い、頭から落下していく。

 

ドクン

 

ないはずの心臓が大きく脈を打った……気がした。

 

バルバトスが不時着し、地面が揺れる。

倒れ込んだバルバトスは、まるで魂の抜けた死体のように1ミリも動くことなく、ただただ、ツインアイを朧げに光らせていた。

 

エラーコードE1K34

ダイバーの脈拍に異常を検知しました。

強制ログアウトを実行します。

 

 

 

 

「ククク……アーハッハハ!」

 

バルバトスの倒れた姿をモニターで監視する男が1人。男の高笑いが部屋中に響いた。

 

「ボス!!話が違うぞ!!」

 

部屋の中に仮面の男が入室してくる。

仮面のせいで顔色は窺えないものの、その声だけで彼が怒っていることは誰の目から見ても明らかだった。

 

「どーしたんだい?いきな「黙れ!何故狙いを彼女にした!それにあの巨人の中身は……!!」

 

仮面の男がボスのスーツの胸ぐらを掴み、叫ぶ。

仮面の中の瞳は酷く震えていた。

それを見て、ため息をつきながらボスが口を開く。

 

「落ち着け……順番に説明しよう。まず、我々は誰か1人を不意打ちで人質にしてから、実験をするつもりだった……理由はわかるね?」

 

「ログアウトされたら元も子もないから……」

 

ボスは胸ぐらを掴んでいる腕をそっと振り解き、言葉を続けた。

 

「その通り。しかし君が彼、ハルマに恨み節をついたせいで不意打ちは失敗。人質は手に入らず、偶然、気を失った君のお姉さんを目標に変えることでなんとか計画の修正をした……」

 

ボスはそれ以上言葉を綴らなかったが、仮面の男は自分のミスを指摘されているのだと感じた。それほど、彼の目は冷たかった。

 

「そうだな……確かにそれは俺のミスだろう……だが、あの中身のことは聞かされてるていないぞ!!アレは……あの巨人の中身は、[[rb:アーティファクト > ・・・・・・・・]]だろう!!」

 

ボスは悪びれもなく、仮面の男の叫びに返事をする。

 

「あぁ、そうだよ。お陰でいいデータが取れた………"死"のデータなんて滅多に取れるもんじゃないからね」

 

ーーーーー

「ハァ……」

 

無人の店内でため息をつくケン。カウンターに体を預けながら、ぼーっとしている。

ログアウトした後、店長とテルミはGBNへログインした。

何故かログアウトしないハルマの様子を確認するためだ。ケンは店長たちが帰ってくるまで店番を任されている。

 

店長に店を任されたのはいいが、降りしきる大雨のせいで何分経ってもお客さんは1人も来なかった。

誰もいない静かな店内をぐるりと見渡す。この店に通い続けて数ヶ月が経つが、これほど静かなことはなかった。

どんな時でもGRFのメンバーは必ずこの店内で働いていた。

しかし、ハルマとラナはダイブルームで、店長とテルミは2階の自室でそれぞれGBNにログインしているのをダイバーギアのフレンド一覧が示している。

 

ケンはレジの裏で座りながら自問自答を繰り返す。

誰1人ログアウトしていないのはあの化け物と戦闘しているのだろうか?

ならば自分も助けに行くべきではないのか?

いや、店を無人にするのはまずい。

それに運営にも連絡はした。自分にできることはもうないはずだ。

ひとりぼっちの議論に結論が出そうになったその時、

ぼーっと眺めていたダイバーギアの画面に変化が。

ハルマがログアウト状態になったのだ。

 

「ハルマさん!」

 

ケンはダイブルームへと早足で向かった。

ハルマは操縦桿を握り締め、ゴーグルをつけたまま座っている。

 

「……ハルマさん?」

 

ケンが動かないハルマの肩に手を置いたその時、ずるり、とハルマの体が横へ倒れた。装着しているゴーグルごと、頭が床に勢いよくぶつかり、ゴーグルの破片が飛び散る。

飛び立った破片はハルマの額に傷をつけた。血がドクドクと床へ流れ出す。

 

「ハルマさん?!どうしたんですか?!ハルマさん!」

 

ケンの悲痛な叫びにハルマは返事をすることはなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。