ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第18話 決戦前夜

「すいませんっ!遅れました!」

 

急いで店のドアを開けるケンイチ。

いつもの場所でハルマは座って待っていた。

 

「気にすんなー、まだ全ーっ然揃ってないからー」

 

昨日戦いあった二人。

勝敗の是非はともかくとして、ハルマはちゃんと帰ってきた。

ケンイチの望みは叶ったが……問題はまだ続いている。

 

「今来てないのは……コウ君とアカバネ君だね」

 

「師匠は?」

 

「寝てる……少し、体調が良くないって」

 

「……そっか」

 

その時、入店音である鈴が鳴る。ドアを潜り抜け、二人の男が店に入ってきた。

 

「……揃ったみたいだね」

 

ーーーーー

 

「リアルで会うのは初めてだな……私はアカバネ。ケンの協力の要請のもと、こちらに参った」

 

簡単な挨拶のあと、アカバネはそれぞれ誰がどのダイバーの中身かを確認していった。

そして、その確認の順番がコウに回ってくる。

 

「……貴様は仮面の」

 

「察しがいいな」

 

「当たり前だろう、昨日GBNで会っているのだから……だがしかし、私と取り引きしていたのがこんな子供だったとは……」

 

「はっ、年下に出し抜かれた癖に、ずいぶんと上から目線だな」

 

「なんだと……!」

 

「ストップ!!ストップ!!二人とも落ち着いて!」

 

ケンが慌てて二人の間に入る。

 

「僕達協力するために集まったんですよ!身内で争っててシンラに勝てるわけないじゃないですか!」

 

「ぐっ……」

「チッ……」

 

二人の関係を考えれば当然の反応だが、それでも今はそれを許すわけにはいかない。

空気が戻ったとこを見て店長が話を切り出す。

 

「ケン君の言う通りだ……無駄話はやめて作戦会議と行こうか」

 

作戦会議を始めたケン達がしたのはシンラから届いたメールの確認からだった。

 

「これが俺に届いたメールだ」

「僕の方にも同じのが来ました」

 

ケンイチとコウがダイバーギアを取り出し、皆に見せるように机に置く。

シンラから届いたメールは次のとおりだ。

 

 

一週間後の◯月◯日、午後◯時からゲーム開始だ。

ゲーム内容は簡単。君たちの勝利条件は開始から一時間以内に僕のサーバーにいるラナを救出すること。

逆に僕達の勝利条件は君たちの殲滅だ。

ハンデとしてラナの座標は共有してあげる。

人数に制限はない。フレンドでもなんでも呼んでくれたまえ。

ただし……何があっても"自己責任"だからね。

サーバーに入る方法はコウ君が知っている。

「自己責任、ということはシンラは容赦なくウィルスを使ってくるだろう」

 

コウの推測に皆が息を呑む。

一見、こちらが有利な条件のようにも見える。

しかし自己責任、その一文で彼らは戦力の増強の手段は断たれてしまった。

シンラがウィルスを使う。それはこのゲームが命懸けになると言うこと。

つまり有志連合のような数に頼った手段は取れない。

今ここに集まっている事情を知りながら、作戦の参加に了承している関係者だけが、実質的な戦力数だ。

だが……

 

「そしてこれが……俺だけに届いたメールだ。」

 

ハルマが新しいメールを皆に見せる。

 

ハルマ君へ

以下の座標で僕は待つ。一人までなら同行を許可しよう。では一週間後に。

 

「そして……この座標を調べたら……メインサーバー、それも、何もない宇宙ディメンションだった」

 

ハルマが座標の場所と思われる画像を出す。

彼の言うとおり、画像には宇宙、そう言うしか他ない光景が広がっていた。

 

「で………みんな、コレどう思う?」

 

「罠」

「罠だろ」

「罠だろうね」

「罠だと思います」

 

ハルマの質問に皆が一斉に同じことを答えた。

 

「……だよなあ」

 

「でも、従わないわけにもいかないよね」

 

「ですね、あっちがラナさんを捕らえてる以上、下手に反抗できないですし」

 

「……ちょっといいか?ラナが無事だという確証はあるのか?」

 

「それに関しては大丈夫だ。アカバネ。ご丁寧なことにメールと一緒にラナからメッセージが届いてた。毎日送るってさ」

 

「変なとこに律儀だな、シンラって奴は……すまん話が逸れたな」

 

「とりあえず、僕達の現状を整理しようか」

 

店長がホワイトボードに箇条書きで情報を書き出す。

 

 

今日を入れて7日後が決戦日。

 

戦力はこれ以上増やすことは厳しい。

 

二手に分かれる必要がある。しかしハルマはメインサーバー担当に固定。

 

この作戦ではーーー…。

 

ここまで書いたところで店長の手が止まった。

ホワイトボードに向いたまま、口を開く。

 

「相手はアーティファクトを使ってくるだろう、そこで……コウ君とアカバネ君に聞きたいんだけど……彼らを……殺せる?」

 

「無理だ」

「嫌だね……私のガンプラをそんな風に使いたくはない」

 

「ありがとう、安心した」

 

店長はホワイトボードに続きを書く。

 

この作戦では誰一人、傷つけてはならない。

 

「……難しくなっちまったな」

 

「でも、大切なことでしょう?」

 

「……あぁ、当然だケンイチ」

 

「さぁ、僕達の時間は限られてる!!やれることをやり尽くそう!」

 

店長の鼓舞に皆が頷いた。

 

「で、俺たちは何処に向かっているんだ?」

 

「えーと、ハルマさんの話では……そう、ここです」

 

迷路のようなフォースネストをハルマの書いた地図で進むケンとコウ。

そこにあったのは荘厳で巨大な扉だった。

 

「……っと失礼しまーす」

 

ケンが扉をあけ、中に入る。

そこには二人……いや片方は獣人型のダイバーだから、一匹と一人?

 

「来てくれてありがとうケン君」

 

「こちらこそお時間いただきありがとうございます、ロンメルさん」

 

ーーーー

 

「ふむ……なるほど」

 

ケンはロンメルに詳細なデータを渡した。

幾つかな質疑応答を繰り返すだけでロンメルは大体の経緯を把握したようで、資料を机に伏せる。

 

「よもやここまで事態が深刻になっていたとは……」

 

「はい……正直、プレイヤーの僕達に手に負える状況じゃありません」

 

「それがわかっていながら……ここに来たと?」

 

「はい」

 

ケンは頷きながら答えた。

彼はなぜ、このような報告は運営にするべきだとわかっていながら、この場所に訪れたのか。

 

「簡潔に言えば……運営は信用できません」

 

かつて運営は一人の少女とこの世界を天秤にかけ、世界を選んだ。運営としては何も間違っていない選択だろう。

正しい、正しくないに関わらず、この世界を管理するものとして、その選択しか取れないことはわかっていた。

 

「君達の言い分は分かる、だが、私とてあの時は運営の側として戦った」

 

「だからこそです。もし僕達の作戦に賛同できないなら、この情報を全て運営に渡してもらっても構いません」

 

「ずいぶん自信があるようだね」

 

「えぇ、そうでもなければ、こんなことはしません」

 

「つまり……この行動こそが信頼の証だと?」

 

「はい」

 

ロンメルはため息をつき、机から降りた。

 

「ダメだな……」

 

「っ……」

 

「ダメだな、その目は……三年前……あの時の彼らと同じだ」

 

「?」

 

「ケン君。私は君に賭けようと思う」

 

「と、いうことは……」

 

「運営にこの情報は渡さない。そして……できる限りの協力は約束しよう」

 

「……!あ、ありがとうございます!」

 

ケンの提出した資料には第七機甲師団への要求が二つ書かれていた。

一つ。噂を流すこと。

その内容はダイバーへの直接攻撃時に致命的なバグが発生するというものだ。

それは最悪の事態、つまり、シンラがウィルスを流しても犠牲が増えないようにするためだ。

もう一つは……

 

「ではクルト。早速……」

 

「待ってくれ」

 

今までずっと口を塞いでいたコウが初めて言葉を発した。

ケンは予定になかったコウの行動に疑問符が浮かぶ。

 

「俺はその人に用があってきたんだ」

 

コウは椅子から立ち上がり、クルトへと近づく。

 

「数年ぶりか?俺のこと……覚えているか?クルさん」

 

「君は……まさか!?」

 

「知り合いかね?」

 

「はい大佐、彼は支援者プログラムの……関係者です」

 

「クルさん……貴方がプログラムのリーダー格なのは知っている……その上で頼みたい。シンラは多分、プログラムの関係者だ」

 

コウは確信していた。

シンラとの初対面、あの時に言ったプログラムを支援しているというセリフ。あれは嘘ではないだろうと。

 

「何だって……」

 

「貴方なら、奴の情報を抜き出せるだろ?頼む。少しでも情報が欲しいんだ」

 

コウは頭を下げた。

 

「この通りだ」

 

「わかった、それを含めて、今回の件、協力させてもらおう」

 

「ありがとう……クルさん」

 

 

一方その頃、ハルマとアカバネはガンプラの強化に勤しんでいた。

 

「………」

 

「……」

 

(気まずいなぁ……アカバネさんと俺、全く接点ないし……頼むケン早く帰ってきてくれっ!)

 

余計なことを考えながら刃物を扱っていたためにハルマは自分の指を切ってしまう。

 

「痛っ!」

 

「大丈夫か?ほら」

 

「あ、ありがとう……」

 

アカバネは自身の工具箱から絆創膏を取り出してハルマに渡した。

 

「なぁ、アカバネ……さん?」

 

「アカバネでいい、何だ?」

 

「アンタほどの天才でもやっぱ怪我とかするのか?」

 

「当たり前だろう……私だって失敗することはある」

 

「ほーん……例えば?」

 

「そうだな……そう、怪我といえば、一度血を使ってチッピングだったか、何かをしたことがある」

 

「うっわ……」

 

「その作品をコンテストに出したら……まぁ、それなりにいい賞を取れた」

 

アカバネは写真をハルマに見せた。

それは見事というほかない、素晴らしい作品だった。

よくよく見ればコックピットの部分に少し赤い色が見える。

 

「……全然失敗してなくね?」

 

「この作品、有名なモデラーが批評してくれたんだよ……"赤い塗料の使い方が上手い"って感じだったかな……私の流した血は全くの無駄になった訳だ」

 

「そうか、伝わらなかったのか。それは残念……せっかくなら言えばよかったじゃないか、これは私の血ですって」

 

「……ハルマ。君はガンプラが自由だと思うか?」

 

「いきなりだな……でもまぁ……そう思うよ」

 

「なら、雑誌に掲載されるかもしれない作品に下手なコメントを出来るか?」

 

「……無理かも。頭おかしいのかと思われたくないし」

 

「だろうな。ガンプラが自由、よく聞く台詞だが、私はそうは思わない。私は色々なことに挑戦した。さっきの血だってその一つだ。だが、他人に認められ技法として扱われたのは、ほんのわずかな一部だけ。時には失敗として扱われることもあった。その度に思うんだ……ガンプラは自由ではなかったのかと」

 

「それは……そうだけどさ、失敗が認められないのは当たり前じゃねえの?」

 

「だがそうであるならば、自由を謳いながら、可能性を否定しているのではないか?」

 

「まぁ……そうなるか」

 

「そこで、だ。私は一つの仮説を立てた。ガンプラは自由なのではなく、自由だと勘違いできるくらいの無限の選択肢があるんじゃないのか?」

 

「無限の……選択肢?」

 

「あぁ、例えば、公式には存在しないカラーパターンの塗装。ポージングで魅せる四コマ漫画風の写真。関係ない作品とのコマ取り………こういった一つ一つの遊び方の選択肢。その積み重ねがガンプラが自由だと言い張れるほどにまでなっているのではないかと私は思う」

 

「そういうもんか……気にしたこともなかったな」

 

「そういった選択肢を生み出してくれたのは過去のモデラー達だ。彼らにも失敗はあっただろう。それでも、私たちに多くの選択肢を彼らは残してくれた。私は彼らに対して敬意を払う。そして彼らの努力が無駄にならないように……"自由"を楽しむ。そうするべきだと思っている」

 

「……アンタが天才だって言われた訳が分かったような気がするよ」

 

「まぁ、こんな事ばっか言っていると新規が減るのだがな」

 

「それも一理ある。子供には、そんな事考えず楽しんでもらいたいもんな」

 

「全くだ。こんな大人のしがらみなんぞに縛られてほしくはない」

 

「それもまた自由……いや、可能性かな?さて……そろそろ気合い入れますか!」

 

「そうだな」

 

 

 

「……大丈夫?」

 

「あ、あぁマサ。ありがとう。」

 

テルミさんはベットから体を起こし、僕の差し出したペットボトルを手に取った。

 

「……僕は行く、ラナ君を助けに」

 

「……なんで」

 

「だって……」

 

「何でよっ!だって死ぬかもしれないんでしょ……?!それに……あの時みたいに……」

 

テルミさんは俯いた。おそらく自分で手にかけた巨人を思い出しているのだろう。

僕はベッドに腰掛け、少し考えてから、口を開いた。

 

「そうだね……僕だってそう思う」

 

「なら、何で……」

 

「……テルミさんは……ハルマと初めて会った時、覚えてる?」

 

「もちろん……私達、丁度今のケンぐらいの年齢だったよね」

 

「そう。あの頃、僕達は若かった……ハルマは幼いって言った方がいいかもしれないけど……」

 

「ふふっ……そうだね」

 

「大変だったなぁ、今思い出しても……爺さんが亡くなって……このお店だってどうなるか分からなかった」

 

「そう……だね」

 

「でも、周りの人達が協力してくれた。もちろんテルミさんもね。僕に親身になって……沢山の大人が僕の日常を守ってくれた。おかげで今の僕の人生がある。」

 

「……。」

 

「僕も大人になった。子供の日常を守ってやれるような人になりたい……なーんてカッコつけてるけど!ラナ君が心配なだけかも!」

 

「ううん、とても……立派だと思う」

 

店長はベッドから立ち上がる。

 

「僕に何かあったらーーー」

 

「いやだ」

 

「……テルミさん?」

 

「嫌だそんなの……私の日常にマサがいないなんて、嫌」

 

やっぱり許してくれないか。

僕はそう思っていた。

けれど。

 

「私も行く」

 

「え?!」

 

「私だって、強い、戦える」

 

「でも……」

 

「でも?何か?」

 

体調悪いんじゃなかったっけ……

でも、テルミさんのいつもの強気な顔が戻ってきた。

 

「わかったよ……じゃ、行こうか!僕達の日常を取り戻しに!」

 

ここは……何処だろう。

真っ暗な視界に動かない体。

でも……誰かの声だけ聞こえてくる。

 

「はいおつかれ!」

 

足音が近づいてきたと思ったら、視界が急に晴れた。

と言っても、視界に映るのは薄暗く、狭い空間にぎゅうぎゅうに機械が詰められた部屋。

視線を下にし、自分の体を見ると拘束具のついた椅子に縛り付けられていた。

ここまできて私……ラナは思い出した。

 

(あぁ、誘拐されてたんだっけ……)

 

段々と記憶が戻ってくる。

何日も何日もこの椅子に縛り付けられて、よくわからない機械に繋がれて。

時たまに休憩とよくわかないメッセージを作らされた。

特段、酷いことはされてない。

それでも何日経ったかも分からずに、自由を奪われているのは苦痛だった。

 

「疲れた?」

 

私に向かってシンラは顔を向けずに質問した。

 

「当たり前でしょ……」

 

自分の声がしゃがれていることに気づく。

人と話すのが随分久しぶりに感じた。

 

「そんな君に朗報です!」

 

シンラはくるっと回って私にタブレットを見せる。

 

「読める訳……ないでしょ」

 

「それもそうだ!じゃあ説明してあげる」

 

シンラは偉そうなことを言って私に説明し始めた。

 

曰く、シンラが求めていた情報が手に入ったらしい。

それはELダイバーを作るための最後のピース。

ガンプラスキャン時の余剰データに人の思いの集合体……。

 

「これがねぇ……わかる訳ねぇだろって感じでさ……反則だよこんなの!」

 

「……?」

 

「僕も仮説は立てていた。だって君のような存在がいるなら……可能性はゼロじゃない」

 

「意味不明なこと言わないで」

 

「あぁ、ごめん、興奮しちゃってさ……」

 

「興奮……?貴方が?」

 

「うん。僕も男の端くれでSFは大好きなんだ……まさかまさかだよ……この宇宙の遥か遠くの地で僕達とは違った生命があるなんて」

 

「はぁ?」

 

私は素っ頓狂な声を上げた。

だけどそれがシンラにはもう聞こえていないようだ。

私の反応など気にもせずに、独り言のように言葉を捲し立てている。

 

「惑星の名前は……エルドラって読むのかな?これ。まぁともかくELダイバー生成の最後の条件は人のデータだったてことだ、全く……こんなのわかるわけがない」

 

「じゃあ……私は……?」

 

そこで生まれる当然の疑問。自分自身のルーツ。

この男が何を言っているかはわからなかった。それが事実かも。

けれど私は無意識にこの言葉を発していた。

 

「君はELダイバーが本来受け継ぐはずのエルドラ人のデータがGBNに接続した瞬間、えーと、何だっけ、そうツキハって人が死んだ時の死のデータ、それが混ざっちゃっだんだろうね」

 

だからか。あの生まれた時に味わった底なしの恐怖。痛いとか苦しいとかそう言ったものが胸の中から突き出すようなあの感覚。

 

ラナはシンラの言っていることは半分も理解できなかった。しかし、なぜだか納得できてしまっていた。

 

「やっとだ……」

 

シンラが何も無いところを見つめ呟く。

 

「やっと、ここまできた。死者蘇生はもう成し遂げたも同然だ……よかった、間に合ったよ……母さん……」

 

「間に……あった?」

 

「……君には関係ないよ」

 

シンラは体を伸ばし、首をポキポキと鳴らした。

 

「さーて、どうしよっかな……約束の日まであと何日もあるし……いっそのこと、エルドラについてもっと調べよっかな……」

 

そして数日後………決戦前夜。

 

「寝れない」

 

明日に向け早寝しようかと思ったが、なかなか寝付けない。布団に入ってからもう一時間は経っている。

 

(どうしよっかな……スマホ……いやダメだ寝れなくなる……)

 

一度手に取ったスマホをまた元の場所へ戻そうとすると、メッセージを受信し、液晶が光った。

 

Harma 起きてるか?

 

「?」

 

メッセージをすぐさま返すと「窓の外」とよくわからない返信返しがあった。窓に近づくとそこにはハルマさんが手を振っていた。

 

ーーーー

 

親にバレないようこっそりと家を抜け出し、近くの公園へ向かった。

ベンチに腰掛けながら、僕達ははなし始める。

 

「どうしたんですか?こんな夜中に」

 

「いや……何か用がってわけじゃないんだけどな……帰り際にさちょっと」

 

ハルマさんの手は塗料だか何だかで汚れていた。

 

「ガンプラ、完成したんですね!」

 

「あぁ、アカバネに協力してもらって最高のが……って、今はその話はいいんだ」

 

ハルマはケンイチに向かってピンと背筋を伸ばした。

 

「?」

 

「その……何というか、ごめんっ!」

 

座りながら直角九十度で腰が折れている。

誠心誠意の謝罪。

 

「はい?何がです?」

 

「こんなことに巻き込んだこと、それと……色々酷いことを言った」

 

「酷いこと?」

 

「ほら、戦った時に……」

 

「あぁ」

 

ケンイチはスマホを操作してハルマに突き出した。

 

言葉にしなきゃわからねぇか……!足手纏いだから、帰れって言ってんだよ!!

 

「これのことです?」

 

「待って何で録音してんの?」

 

「あとこんなんも」

 

勘違いすんなよ……初心者にしたらって意味だ

 

「待って」

 

「いやぁ、酷いなぁ……」

 

「本当にごめん!そんなに恨んで……」

 

「ふふっ、冗談です。いつか少し、やり返したくって」

 

「なら、いいけど……」

 

しゅんとしたハルマ。

ケンイチは面白いなぁと思ったが、本題に戻すため、真面目な声で言った。

 

「気にしないでください。僕はやりたいから、やっているんです」

 

「そうか……そうだよな……」

 

ハルマは小さな声でありがとうと言った。

それが僕にはしっかり聞こえたけど、あえて聞こえないふりをした。

 

「……明日の作戦少し変更があるんだ、確認していいか?」

 

「もちろん」

 

二人が作戦の確認を始めた。

 

まずラナ救出班とシンラ対応班に分かれる。

 

救出班は僕、店長、テルミさん、コウさん。

対応班は残りのハルマさんとアカバネだ。

 

救出班はコウさんによる先導のもと、シンラのサーバーへの侵入する。

侵入方法がまた厄介で、ある特定のマスドライバーを使い、改造ゲートを潜らなければならないらしい。

だが、それ専用の装備は製作済みだ。

侵入後、サーバーにある人が活動できる場所は一つのコロニーのみ。

僕達はそこを目指す。

おそらく、アーティファクトの護衛が数多くいるだろう。それに手加減しながら相手をするのが店長とテルミの役割だ。

 

僕とコウさんはコロニーを探索。幸いなことにある程度、ラナさんがいそうな場所は絞られているそうで僕はコウさんの護衛の役割だ。

 

一方対応班の二人は作戦と呼べるほどのものはない。

シンラから与えられた情報だけでは、作戦を練ることはできなかった。

二人にはアドリブ力……臨機応変に対応してもらうしかない。

生命がかかっているので、最善の策は用意しているが……どう転ぶかはわからない。

でも、あの二人なら大丈夫だろう。

ちらりと見た程度だが、二人の作っていたガンプラは最終兵器と呼べるほどのすさましものだった。

 

ーーーー

 

「だーかーらー!!これがロマンだって言ってるだろ!!」

 

「バカか!ロマンに命をかける気か!?」

 

「だからって性能を抑えるなんて嫌だね!」

 

「そうでもしなきゃ扱いきれんのだ!!」

 

「いやでもさぁ!!こいつらには俺の魂とこだわりが……」

 

「ただでさえ、お前のバカなアイディアに付き合ってやってるのだ!!少しは譲歩しろ!!」

 

ーーーー

 

ガンプラの前で言い合っているハルマとアカバネを思い出すケンイチ。

 

(やっぱりちょっと不安かもな……)

 

「で、ここからが変更なんだけどな、やっぱシンラが自暴自棄になった場合も考えて……」

 

「なるほど……よくこんな作戦が……」

 

「みんなのおかげさ」

 

変更点をスマホで確認すると、二人のスマホに同時に通知が入る。

 

「なんだ?」

 

「コウさんからです、何でしょうか……」

 

夜遅くにすまない。

たった今、シンラの情報が手に入った。

 

そのメッセージにはシンラの情報がつらつらと書き記されていた。

中にはとても個人的な情報まで……

 

「……あいつ大丈夫だよな?これ、ヤバいルートからの情報じゃないよな?」

 

「……多分大丈夫かな?」

 

「ま、これで準備は万全ってわけだ」

 

「えぇ、そうですね」

 

ハルマは立ち上がり、ケンイチに拳を突き出す。

 

「……勝つぞ」

 

「はいっ!」

 

ケンイチは拳をトンっとぶつけた。

 

 

 

シンラ

本名 クスノキ シンラ

 

4年前、GBNにシンというプレイヤーネームでログイン。

ガンプラはスキャンせず、プレイしていた模様。

同時に支援プログラム対象者の母親もGBNに。

父、母と一緒にプレイしていた姿があったそうだ。

しかし、初ログインから一年後、母親が他界。

時期はELダイバーサラの事件があった頃。

それ以降、シンはログインの形跡なし。

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