ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation 作:Haturu
「すいませんでした」
ハルマたちがダイブルームから出ると、土下座した成人男性と、それにあたふたするメガネをかけた高校生がいた。
「すいませんでした」
「あっ、ハルマさん!!助けて!!」
「おう、任せとけ」
数秒間間隔で「すいませんでした」と言葉を発するだけの機械になってしまった店長の尻を、ハルマがわざとらしく足を振り上げ、蹴る。
「いっっったぁ!!」
「目ぇ覚めたか?ドジっ子店長」
「うん覚めたよ……ありがーーー」
店長の視界に、胸を撫で下ろすケンイチが映る。
「よかった……」
「すいまーーー」
「もういいんだよ!!それは!!」
現在時刻12時半、ちょうどお昼時だったので、店長が頼んだ出前のカツ丼を飲食okの工作室で食べることになった。店もついでにお昼休憩にして、男三人で食卓を囲む。
「へぇぇ、そんなことがあったんだね」
「そうそう、ケンイチにいいガンプラ見繕ってくれよ。GBNデビューしたいんだってさ」
「お願いします!!あっ、お題はもちろん払います!」
「いいよ、いいよそれくらい!その代わりうちのお得意様になってくれれば……」
遠慮がちに言ってはいるものの、店長の目がキラリと光ったのを、ハルマは見逃さなかった。ご存知の通り、ガンプラは始めるのは簡単だが続けるとなると……かなりの費用がかかる。
「……ま、食い終わったら探しに行こうぜ」
「……そういえばラナさんって店員さんじゃないんですか?」
箸を置き、キョロキョロしながら店の中を見渡す。ダイブルームにも、お店の中にもそれらしき人はいなかった。
「あー…それはだな……」
「いるわよ、ずっと」
「……ラナさん?今の声、どこから?」
「ここよ、こーこ」
どれだけ声の方に目を凝らしても、そこにはハルマしかいない。じっと見つめているとハルマのエプロンの胸ポケットがモゾモゾと動いていることに気づく。
「ぷはっ、やっぱりポケットなんて入るもんじゃないわね、移動は楽だけど、息苦しいったらありゃしない」
ポケットから出てきたのは、手のひらサイズの小人だった。姿形が先程までGBNで話していたラナであることに気づく。よく見るとウミモト模型と印刷されたエプロンまで着ている。
「え?え?人形???」
「うーむ……どこから説明しようか……」
ELダイバー。GBNから生まれた電子生命体。
数年前のブレイクデカール事件から、第二次有志連合戦まで事細かに説明する。
「あぁ、そう言われると確かにニュースで聞いたことがあるような、ないような……人権問題がどうとか……」
「うん、多分それよ」
「凄いんですね……GBNって……」
未だ困惑が抜けきれていないが、理解はできた。
「さて!ご飯も食べ終わったことだし、早速ガンプラを探そうか、ケンイチくん!!ガンプラコーナーはこっちだよ!」
店長がパンっと手を叩き、本題に戻らせる。気づけば皆、器を空にしていた。立ち上がって工作室を出る店長にケンイチが続く。
「ホントのこと言わなくっていいの?」
2人っきりになった工作室でラナがハルマに耳打ちをする。
「別に嘘ついた訳じゃないし……それに、なんて説明したらいいんだ?」
「それもそうだけど……」
何か言いたげなラナの言葉をダイバーギアの通知が遮った。
「誰から?」
「ルイだろ、多分。さっきメッセージ送っといたんだ。」
メッセージ一覧
Harma なんでいきなり襲ってきたんだ?戦闘中だったんだろ?
Ruiそうだな、それを説明するには少々長くなる。
お察しの通り、俺はGBN初心者でガンダムも詳しくない。
Harmaそういえば言ってたな、この世界に慣れてないって。
Ruiそうだ。
Harmaじゃあなんであんなガンプラ持ってんだ?だいぶ完成度高かったぞ?
Rui説明するより見てもらった方が早いな。
決して怪しいサイトではない。https:gbn.gumpla.rental.jp/
Harmaなんも見れん、合ってるか?それ
Ruiサイトが消えてるだと……
Harma名前的にガンプラのレンタルサイトか?
Rui正確に言うならば、GBNのテスターとしてガンプラをレンタルする。と言うサイトだ。依頼をこなすと報酬が貰える。待ってろ、ちょうどスクショを見つけた。これが証拠だ。
Harmaなんだこれ、レンタルのラインナップ、MAクラスの機体ばっかじゃないか!!怪しすぎだろ、これ。実際、消えてるし。
Ruiしょうがないだろう。金に困っていたんだ。
Harma働け!!
……ってことはその依頼の中に俺を倒す……みたいなやつがあったのか?
Rui Aランク以上のダイバーを倒すって依頼だったな、アンタ最近有名になってるだろ?GBNレスキューフォースだっけ?
Harma略してGRF!ってのは置いといて……
なるほどな、宣伝が裏目に出たってところか……
Rui初心者相手にセールスしてただろ?アンタを知らない初心者なんてほとんどいないぜ。
恨まれないように注意しろよ。
「…人に恨まれるようなことした覚えは……少ししかないぞ」
「ダメでしょ、それ」
最近のGBNは妙にMA級が多い。正直な話、初心者に優しいとはいえない環境だ。レンタル品が出回っているのだろうか。
「やっぱ対策しといた方がいいかなぁ、アレ、ひっぱり出すか……」
「ハルマー?店開けるから、ケンイチくんに付き添ってー」
「あいよー」メッセージ欄を閉じ、ハルマたちも工作室をでる。
「結局、AGE 1にしたんだな」
「はい!こいつが一番かっこいいと思いました!」
工作室に戻り、早速ガンプラの箱を開ける。中にはトリコロールのランナーが詰まっていた。
それに見とれるケンイチ。
「わぁ……これが、あんなかっこよくなるんだ……」
「じゃ、作っちゃいますか。自分の手で作ったガンプラほどカッコよく見えるってもんよ」
二度切り、やすりがけ、etc…ガンプラ工作の基本的なことから始まり、段々と頭、胴体、腕…と順調に組み上げていく。大きな失敗もせず、武器を作る頃には、雑談しながらでも手を止めずに作れるようになっていた。
「できたぁ!!」
AGE 1が工作室の散らかった机に立つ。墨入れ、ツインアイの塗装、艶消しが施されたAGE1は、素組みの時よりも何倍もの存在感を放っている。窓から差し込む夕日が、AGE1を赤く輝かせた。
「お疲れ様」
体を伸ばすケンイチに飲み物を差し入れるハルマ。
出来上がったAGE 1を眺める。
「1日で完成させるとはな……頑張ったじゃないか」
「ハルマさんや店長さんが手伝ってくれたおかげですよ!……ってもうこんな時間!」
「今日はもう遅いから、試し乗りはまた今度だな」
「はい!ありがとうございました!」
「また来てね〜」と店長、机の上ではラナが小さな手をひらひらと振っていた。
帰宅したケンイチは風呂や夕飯を食べた後、
サービスでもらったプラモ用工具を勉強机にしまいながら、机の上を簡単に片付けていた。
綺麗になった机の上にAGE 1を置くと、それだけで幸福感が湧いてくる。
「僕だけの……ガンプラ……」
時計の針が22時を刺す。寝るのにはまだ少し早い。なので、ハルマに教えてもらったガンプラの投稿サイトを見ることにした。パソコンに電源を入れ、URLを打ち込む。多種多様のガンプラがディスプレイに映し出される。
(凄い!こんなにかっこいいガンプラがたくさん……!!)
気に入った作品にいいねをつけながらスクロールしていく。その中の一つの作品のコメントを見て、手が止まった。
「原作通りの綺麗なガンプラを作るのもいいですけど、GBNをやるんだったら自分専用機を作りたいですよね!!」
ふと、自分の机の上に目をやる。確かに初心者にしては出来のいいガンプラかもしれない。だが、“ケンイチのガンプラ“と胸を張って言えるのだろうか?そんなことを考えながらベットの中に入る。疲れが溜まっていたのだろう。ものの数分で眠りに落ちた。
夢を見た。
炎の中で二機のガンプラが闘っている。
赤いAGE 1に乗りながらケンイチは闘っていた。
炎の中に18m程のシルエットが見える。
相対する敵機は……
それからケンイチは毎日のようにウミモト模型に通った。GBNにログインしながら少しづつ、AGE1を改造していく。一ヶ月ほどもするとケンイチはすっかり常連客の1人になっていた。
「こんちはー!」
「おっいらっしゃい、ケンイチくん」
「おーい、ケンイチーこっちだ〜」
奥の工作室でハルマが手招きする。
工作室に入り、ハルマの向かい側に座る。
「バッチリ乾いてるぜ、ほら」
昨日、ついに全身の改造が終わり、艶消しを吹いた後、乾燥をお願いしていたのだ。
ビルダーならお馴染みであろう、猫の手に刺したクリップが机の上に置かれる。
「やっと……」
「おっと!まだ完成した気になるのは早いぜ。慎重に組み立てるんだ」
「…はい!」
クリップからパーツをひとつづつ外していく。
色とりどりに染まったパーツが形を成していく。
「………出来た!」
「見違えたな……一ヶ月前とは大違いだ」
ケンイチによって改造されたAGE1は、装甲の色だけでなく、アンテナや腕などが大きく変化している。中でも目を引くのは全身の各所に取り付けられた蒼色のクリアパーツだ。名実ともに“ケンイチのガンプラ“と言っていいだろう。
「完成おめでとう、ケンイチ、名前どうすんだ?」
「名前?」
「せっかくかっこいいガンプラ作ったんだ、自分だけのかっこいい名前があった方が愛着が湧くだろ?」
そういえば、投稿サイトにあったガンプラにも、多種多様な名前がついていた。数秒、考え込む。
(僕が改造しようとしたキッカケは……そうだ、サイトのコメントから……そういえば、あの後、へんな夢も見たなぁ)
「……火花」
「ん?」
「こいつの名前、ヒバナにします!」
ケンイチがAGE1ヒバナを手に取り、ハルマに見せる。
「ヒバナか……確かにこのカラーリングは炎っぽいが……何かモチーフでもあるのか?」
その問いにケンイチは戸惑った。夢で見たからー、と言ってもハルマはバカにするような人ではないと思うが、なんだか恥ずかしい気がするので、適当に誤魔化す。
「い、いや特に……」
「そう?まぁ名付けもしたことだし、早速行きますか」
「そうですね、行きましょう!ーーーGBNへ!!」
「ここら辺にしようかケンイ、じゃねぇや、ケン」
「はい!」
正式にアカウントをとったケンイチはダイバー「ケン」としてGBNにログインしている。
空軍パイロットのような服装を、ゲーム用にカジュアルアレンジしたダイバールックは、リアルとはかなり印象が違う。本人的には「メガネをゴーグルに変えただけなんですけどね」らしい。
戦場はフォースネストから少し離れた平原だ。
遮蔽物もなく、単純な実力勝負になるだろう。
「今日こそは……勝ちます!」
「出来立てのガンプラだからって、手加減しないぜ!」
ビームサーベルを抜き放つAGE 1、半身になって刀を構えるバルバトス。
(バルバトスにビームは相性が悪いのはケンも知っているはず……だがAGE1の武装はビーム主体だ。何か考えてんな……)
「そっちから来ないなら!」
AGE1がスラスターを噴かし、ステップを踏みながら、合間合間に腰のグレネードランチャーを打ち込みつつ、接近する。
バルバトスはバックステップで回避。さっきまでバルバトスが立っていたところにグレネードが着弾すると、地面から火が立ち昇った。
「なるほど、焼夷弾か」
バルバトスのビーム耐性はナノラミネートアーマーという特殊塗料に頼っている。しかし、この塗料には継続的な熱に弱いという設定があるため、焼夷弾などは明確な弱点として知られている。
「けどなぁ!」
空中に浮遊したバルバトスが叫びとともに、左腕のユニットを展開させた。
(きた、レールガン!)
シールドのようなユニットの見た目から放たれる高威力のレールガンに、ケンは何度も痛い目に遭わされた。
だが、それは今までのAGE 1の話だ。
瞬間、戦闘機のような轟音と共に、レールガンが放たれる。機体の芯を捉えた正確な射撃だ。命中は確実。
「間に合えっ!」
着弾するコンマ数秒前、AGE1はビームサーベルを放り投げ、両腕でビームシールドを展開した。
着弾の衝撃でAGE1がノックバックしたがダメージは……0。防ぎ切った。
「よし!成功した!」
「やるなぁ!まさか0ダメとは!」
「驚くのはまだ早いですよ!」
拳を構え、再びAGE1が突撃するーーー
「はい、ターゲットは現在、戦闘中です、姿形は変わっていますが、相手はここ最近、共に行動しているAGE1でしょう」
ハルマたちの闘いを一km先の山脈から監視する男。仮面を被った、いかにもなダイバールックだ。今、他のダイバーと会ったとしても、彼はGBNを満喫する一般ダイバーにしか見えないだろう。
「どうしますか、少々予定と異なりますが……はい、わかりました……では」
sound onlyの通話を切断し、ウィンドウを開く。
「なぜ…………お前はこの世界で笑える、ハルマ」
山の向こうで巨大な爆発が起こる。仮面の男は爆発音を確認した後、ガンプラを呼び出し、去っていった。
「まっ参りました……」
AGE1が降参の意味を込め、両腕を挙げる。
コックピットスレスレにはバルバトスの刀が突きつけられていた。
「途中までは……よかったのに……」
「そんな落ち込むなよ!今負けちまったら俺の立場がないだろ?!」
刀をしまい、AGE1の肩に手を置くバルバトス。
「そうですね!次こそは!」
自分の顔を手で軽く叩き、気持ちを切り替える。
この戦いで問題点はいくつも見つかった。帰ったら調整が必要だ。
「それにしても……あの爆発音、なんだったんですかね?」
「凄かったよなーMAでも………」
突如、脳の回路が繋がったかのような感覚が走る。
爆音への興味は、いつしか嫌な予感へと変わっていた。
ビー!ビー!ビー!
瞬間、コックピット2人のコックピットに警告音とマップが表示された。
「ハルマさん?!これは……」
「これは……救難信号、方角は……あの山の向こうだ!!行くぞ!ケン!」
山脈を超えた先には以前、ルイと戦った森林がある。緑豊かで綺麗な場所なのだが、ハルマたちの視界に映ったのは、薙ぎ倒された木々と、立ち上る炎だけだった。
あまりの光景に言葉が詰まるケン。
ハルマの方に目を向けるが、その当人は山脈を超えたあたりから、熱心にウィンドウを操作していて口を開かない。
「想像以上の荒れ具合だな……一体、何処のどいつが……」
ようやくウィンドウを閉じて、周囲を見渡すハルマ。
「ハルマさん!アレ!」
AGE1のマニュピュレーターが指す方向に、巨大な黒い影、サイコガンダムが見えた。目を凝らしてみると、ビームらしきエフェクトが四方八方に撒き散らされている。戦っているのは、おそらくアストレイ系の機体だ。
嫌な予感が的中し、思わず舌打ちをしてしまうハルマ。
2人共、全速力でサイコガンダムに接近する。
「あっ危ない!」
距離が数十メートルほどになるまで接近すると、
サイコガンダムの指先から光が漏れ出していることに気づく。
「ケン?!待て!」
「止めて見せます!!」
サイコガンダムがビームを放つその瞬間、ボロボロになったシビリアンアストレイの間にAGE1が割って入る。
「ビームシールドッ!!!」
刹那、サイコガンダムから放たれたビームはAGE1のビームシールドと衝突し、激しいスパークが起こる。
「うわぁっ!」
先ほどまでの戦いの消耗も相まって、シビリアンアストレイ共々、背後へ吹き飛ばされてしまう。幸いなことに、両者ともギリギリのところでバトルアウトにはならなかった。
「痛てて……君大丈夫?」
「あぁ、問題ない、もしかして……救難信号を見て、来てくれたのか?」
「うん、そうだよ僕の他にも、もう1人…」
「ケン?!大丈夫か?!」
サイコガンダムをいなしながら、ケンたちに通信が入る。切迫詰まった表情だが、致命的なダメージはもらってないようだ。
「はい!大丈夫です、こっちの……」
「ハジメだ、レッドゲージだが、なんとかバトルアウトはしていない」
「待ってろ、このデカブツぶっ倒して……」
セリフと同時にバルバトスがサイコガンダムの懐に入る。狙いは頭部。一撃で仕留める算段だ。
「終わりだ!!」
「……ッ!!ダメだ!!!そいつはサイコガンダムではない!!」
「なに?!」
バルバトスに急制動をかけ思考を巡らすハルマ、現状と通信の不一致から、ほんの一瞬動きが止まってしまう。
その隙を見逃さずにサイコガンダムが右腕を振り上げる。そこに握られていたのは……一振りの大型ビームサーベル。
「ッ!そういうことかよ!」
刀を構え直し、防御の体制を取る。ほんの数秒鍔迫り合いが発生するが、質量差で押し切られてしまい、刀が焼け爛れてしまう。
「やっべ?!」
続け様に放たれた左ストレートがバルバトスを大きく吹き飛ばした。
何度かバウンドした後、大木に激突。
コックピットが赤に染まる。
「ハルマさん!!ハルマさん!!」
AGE1とCアストレイが駆け寄る。
「大丈夫……ではないなぁ、ちょっとまずいかも……」
「すまない……俺がもっと早く忠告していたら……」
Cアストレイがうなだれる。
「しょうがないさ……俺も、もっと早く気づくべきだった……」
「一体どういうことですか?アレはサイコガンダムじゃ……」
GBNを始めてから、少しずつガンダム知識を増やしてきたケンイチでも、サイコガンダムなら知っている。記憶の中でネオホンコンの映像を流しながら、少しずつ近づいてくるサイコガンダムに視線を向けるが、やはり違いがわからない。
「アレは……ムラサメだ」
ムラサメ、クロスボーンガンダムDUSTに登場するMAだ。右手に握っているのはイカリマルと言うビームサーベル兼スラスターで、設定ではムラサメ用の装備だが、本編ではひょんなことから主人公機であるアンカー用の装備として活躍した。つまり目の前のサイコガンダムもとい、ムラサメはマイナーな設定を忠実に再現したガンプラということになる。
「ケンと……ハジメだっけか?俺を置いて逃げな」
「そんな!ハルマさんも……」
「見ろ、さっきの衝撃で……スラスターがイカれちまってる……俺が一緒に行っても足手纏いになるだけだ、行け!」
「っ……わかりました……」
AGE1がCアストレイの手を取り、戦線を離脱する。
「行ったか……」
ムラサメの足音が近づいてくる。
「距離は……ちくしょう、間に合わないか」
ムラサメがバルバトスの目の前に立ち塞がり、巨大な影を作る。見せつけるかのように、イカリマルを起動し、空に掲げる。
バトルアウトを覚悟し目を瞑……
「うわぁあぁぁ!」
ろうとした瞬間に聞こえた叫び声のせいで体が跳ねる。
「ってケン?!」
モニターに映るのは、ムラサメの足をビームサーベルで斬りつけるAGE1の姿。
「ハジメさんは……安全そうな洞窟に隠してきました!」
「そうじゃない!逃げろって……」
「嫌です!逃げません!」
ムラサメによるビームを掻い潜りながら叫ぶ。
「自分が犠牲になる人助けなんて……なんか……その……モヤモヤするじゃないですか!!!!」
「ケン……そうだな」
バルバトスをなんとか立ち上がらせる。ツインアイが光を取り戻す。
「そうだ……まだ……切り札はある!」
上空からAGE1が牽制しヘイトを買う。隙ができたら、木々に隠れたバルバトスがレールガンを放つ。2人はこの戦法で時間を稼いでいた。
「ハルマさん!まだですか、切り札は!」
「残り距離1キロだ!もう少し時間、稼ぐぞ!」
痺れを切らしたムラサメがAGE1を集中的に狙い始めた。
レールガンを放つも、少しよろけながら無視するムラサメ。
「しまった!」
この戦法は、レールガンでバルバトスが気を逸らすからこそ成り立っていた。ダメージ覚悟でAGE1に攻められると…
「うわぁあ!」
いくらケンがここ一ヶ月、ハルマとバトルの練習をしていたからと言って、初心者であることには変わりない。その初心者が一撃アウトの対MA戦闘をこなせるか……答えは当然、NOだ。
「ケン!」
墜落したAGE1を走って追いかけるバルバトス。
迫るムラサメとAGE1の間に全力で割って入る。
「ありがとなケン。よく頑張った」
清々しい声でハルマはそう言った。まるでこの戦闘が終わったかのように。
「ハルマ……さん」
だが、ケンは知っていた。ハルマは決して諦めた訳ではないことを。
もういいだろう。
と言うかのようにムラサメがイカリマルを起動させ、大きく振りかぶる。
それをみたハルマは笑い混じりに叫ぶ。
「今だ、やれ!!Ⅱフェイザー!!」
突如、上空からノコギリのような金属音が鳴る。
見上げると赤い鳥の様な何かが太陽を背に、ムラサメに発砲しながら飛行していた。
ムラサメがそれに気付き、叩き落とそうとする。
だが、それをヒラリとかわした赤い鳥、もといハルマのサポートユニットは、バルバトスの方に向かう。
バルバトスが飛び上がり、赤い鳥と合体した。
『ガンダムバルバトスラグナ•Ⅱ 』
「バルバトスに翼が生えた……かっ、かっこいい……!!」
「驚くにはまだ早いぜ!ケン!!」
再度、上空から何かが落ちる。AGE1の目の前に落ちたソレは巨大な剣だった。
対MA専用武装
近接大型大剣
『レジリエンサー』
「さぁ、反撃開始だ!!」
流れが変わった。そう感じたムラサメは雑にビームを乱射する。
「当たるかよ!!」
(この剣をハルマさんに届けなきゃ……!!)
AGE1が剣の柄を握り、引き抜こうとするが、びくともしない。
「ケン!伏せろ!!」
AGE1が剣から手を離すと、最大加速したバルバトスが速度を使って大剣を抜く。
WEIGHT OVER‼︎ WEIGHT OVER‼︎
コックピットにアラートが鳴り響く、がコンソールを叩き、警告音を黙らせる。
「悪りぃなバルバトス……帰ったら治してやっからよ……」
関節がスパークを発しながら動く。
何かを察したムラサメはイカリマルを構え、突進した。
「大剣同士の斬り合いか!面白れぇ!!」
大きく振りかぶる両者。バルバトスが上から、ムラサメが下から大剣を振り抜く。
衝撃波が巻き起こり、戦闘によって折れた木々が吹き飛ばされる。
少しづつ、少しずつだがムラサメが押されていく。
「俺の……いや違うな……」
言葉を言い直しながらバルバトスがスラスターを全開にする。
「俺たちの……勝ちだ‼︎」
バルバトスがムラサメの頭を切り離す。戦闘ログに、ムラサメ撃破の文字が刻まれた。
「いや〜助かった!まさかアレを倒すだなんて!」
へとへとになった2人に感謝するハジメ。
ムラサメを倒した後、三人は"安全そうな洞窟"で休憩していた。
「それにしても、なんであんなバケモンと戦ってたんだ?」
「いやそれがね……いきなり降ってきたんだよ」
「はぁ?」
ミッションでもなければ、プレイヤー同士のデュエルでもない、そうなると……
「バグ…ですかね?」
「どちらにせよ、俺の救難信号で2人に迷惑をかけた、本当にありがとう、ケン、それと……」
「GRFのハルマ……だよな?」
「あれ?俺名乗ったっけ?」
「いや、俺も初心者だからな、噂で聞いただけだよ、バルバトス使いのお節介な変態ダイバーがいるって」
「待ってどんな噂流れてんの?」
セールスが過剰すぎたか…?いやでも噂になるくらいの方が…と呟くハルマを尻目に、ハジメはケンに手を差し出し、握手を求める。恥ずかしがりながらもケンがそれに応える。
お礼の[[rb:BC > ビルドコイン]]を渡すとハジメはCアストレイに乗って去っていった。手を振ってそれを見送る。
「あっ!」
「どうした?」
「フレンド登録……し忘れちゃった」
「戦闘ログからできるぞ?ログアウトした後にしときな…俺たちも帰りますか」
「はい!!」
2人ともガンプラに乗り、帰路に着く。
「今日はありがとなケン、お前がいなかったら俺は諦めていた」
「結局、最後はハルマさんに頼っちゃいましたけどね……」
「大事なのは結果じゃないさ、でな……その……お願いと言うか、誘いというか……」
珍しく歯切れの悪いハルマに?が浮かぶケン。
「俺のフォースに入ってくれ!」
「??フォースってなんですか」
ズッコケるハルマ。
「あっそっか!説明してないか……」
「でな、俺たちのフォースはさっきみたいに人助けをしてんだ、あと初心者に格安で雇われたりしてる」
「つまりハルマさんの仲間になってほしい……てことですか?」
「あぁ、嫌ならいいんだーー」
「もちろん喜んで‼︎よろしくお願いします‼︎」
「早いな!?決断!?」
「そりゃハルマさんにはお世話なってるし……それにもっともっと教えてもらいたいことありますから!」
「そっか…そうだな!これからよろしくな‼︎」
夕陽を背に、二機の機体が拳を打ちつける。