ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第21話 さよなら

「二人共、聞こえますか?!こちらケン、ラナさんの救出に成功しました!!」

 

ケンからの通信は確かに店長とテルミ、二人のコックピットに届いていた。

しかし、彼らはそれに返答する余裕はなく、ぜぇぜぇはあはあと、熱に苦しむ子供のような息切れで、かろうじて生存しているということを伝えるだけで精一杯だった。

 

それでも二人は弾幕の嵐の中、クロスボーンがビームシールドでヘイトを買い、レギンレイズが隙を見て反撃、取り残した敵をクロスボーンが後方から射撃で援護。

二人の連携は見事と言うほかなく、一機、また一機と確実に潰し、既に数百のアーティファクトを無力化することに成功していた。

 

しかし、いくら二人が歴戦の猛者といえど限界はある。

それは通信が来てからすぐのことだった。

 

「っーーマサ!」

 

クロスボーンのビームシールドが、不運にも艦砲射撃に直撃し、破られたのだ。

 

「しまった……!」

 

瞬時に立て直そうとしたものの、連携の要であるシールドが破られたことが、限界の近かった二人にとって最後の決定打となってしまった。

やっとできた隙を見逃すまいと無数のアーティファクトが二機に群がる。

(せめてっ……!)

 

「え、マサ?!マサ!!」

 

クロスボーンは無事だった方の片腕でレギンレイズを後方へ勢いよく投げた。

アーティファクト達がクロスボーンに群がる。

隻腕となったクロスボーンはかろうじて数撃、ビームザンバーで対処したがその程度で精鋭達の連撃を対処出来るわけがなく、無惨にもコックピットにビームサーベルが突き刺さる。

 

「マサ?!マサ!返事をーーー」

 

必死に呼びかけるテルミ。今にも爆散しそうなクロスボーンに駆け寄ろうと操縦桿を動かそうとしたその時。

 

「待って、大丈夫だから!」

 

店長はギリギリでコアファイターを発射していた。安堵し、ほっと胸を撫で下ろすテルミ。

脱出したコアファイターはレギンレイズに抱えられ、なんとかアーティファクト達の包囲網から逃れようとする。

しかし満身創痍の機体にコアファイター分の重量はこたえた。レギンレイズの自慢のスピードはほとんど機能せず、すぐに敵機に追いつかれてしまう。

 

「しまっーーー」

 

「させるかぁああ!!」

 

敵機は背後から現れた機体の奇襲に対応できず、体から四肢が切り離される。

だるま状態になった機体の背後から現れたのは、赤いAGE1、及び黄色のSDエクシア。

 

「「ラナ!!」」

 

「お、お久しぶりです……」

 

何故か塩らしくなっているラナに二人はいつも通りの声をかける。

 

「なーにかしこまってんの!!」

 

と、店長。

 

「お帰りなさい、ラナ」

 

優しい声でテルミが言う。

ラナが無事だったという事実が、疲れ切った二人の心をほんの少し癒した。

 

「コウは………どこに……?」

 

店長の訝しげな質問にケンがすぐさま答える。

 

「大丈夫です、やることがあるらしくて……少しだけ遅れてくるそうです」

 

ケンはそのまま、コロニーで起こったことを二人に説明した。

ところどころラナによる補足が入り、店長とテルミも状況を理解する。

コウが残った理由に察しがついた店長は安心した声で言った。

 

「そっか、みんな無事なんだね………!」

 

ここまでの会話をして、テルミはどういうわけか敵が襲ってこなくなったことに気づいた。

周りをキョロキョロとレギンレイズが頭部を動かす。

 

「あぁ、それは……」

 

その様子に気づいたケンはAGE1がマニュピュレーターで方向を示す。

するとその先には、素早く動く何かが無数の敵機を相手取り、大立ち回りを演じていた。

流れるように動くそれは、まるで演舞のようで見る者を魅了する……

 

「なにあれ……」 「AGE2?どうして?」

 

 

訳がなく、疑問符を浮かべる二人。

ラナのエクシアはケンの方向へ視線を向ける。

 

「話せば長くなるんですけど……とりあえず、あの人は味方……です」

 

唯一AGE2の正体を知っているはずのケンですら、少し困惑した様子だった。

その証拠にたびたび「うわ、つよ……」とボソボソ言っていたのを他の3人は聞き逃さなかった。

 

しかし、状況はどうあれ、少しだけ作戦を立て直す時間ができた。

本来の計画では無事だった者がハルマの援護に行く予定だったが、今まともに機体を動かせるのはラナのエクシアのみ。

AGE1はかろうじてAGE2との戦闘で破損したパーツを回収したものの、コックピットは赤く染まっていた。先ほどのような奇襲ならまだしもまともな戦闘はできないだろう。

 

クロスボーンは言わずもがな、コアファイターのみの状態。

腕や足などのパーツは所々周囲に漂ってはいるが、アイテムで治せるほどの綺麗な状態ではなく、レギンレイズも同様に酷い損傷具合だ。

 

「……考えがあるの」

 

そう口を開いたのはラナ。

思いついたアイデアを3人に伝える。

 

「それは……本当なの?」

 

店長の不安げな質問にラナは頷く。自信に満ち溢れたと言うよりは、それが出来ると知っているというような印象を受ける。

 

「あとは……何か運べるようなものがアレば……」

 

「なら僕の《ノッセタ》を使いなよ。まだ少しなら動くはずだ」

 

「……行ける、これなら、いける!」

 

四人はすぐさま行動を開始した。

 

ーーーー

 

四人が合流する数分前。

 

「黒い……バルバトス……?!」

 

「そう、これが僕の機体、《Gラグナロク》さ!」

 

そう言いながらシンラはファンネルを展開した。

四つのソードファンネルと、二つのライフルファンネル。計6機のファンネルが瞬時にバルバトスの周囲を取り囲む。

 

(まずいーーー!!)

 

攻撃が始まる瞬間、ハルマは全力で前方へとブーストを噴かした。《オーフィンズ》から爆発に近しいほどの轟音と大規模な排熱がなされ、バルバトスの巨体は瞬く間に最高速度を叩き出す。

稲妻のごとく駆けるバルバトスは、すれ違い様に攻撃を入れる余裕はなく、ラグナロクの横を過ぎ去った。

 

「ふーん……」

 

シンラはバルバトスの位置が既に遥か遠くへと行ったのを確認すると、ファンネル達に指令を出し、そのまま佇む。

 

「加速をいかして突撃ってところかな」

 

バルバトスはUの字を描くような軌道で加速をし始めた。折り返しのところでハルマは通信を開く。

 

「アカバネ!聞こえるか!?」

 

「あぁ、なんだ?」

 

「アレの準備を頼む、おそらく………」

 

「わかった!」

 

一方シンラはコンソールパネルを開き、ファンネルの位置を一瞥し、焦ることなくバルバトスを待っていた。

 

「速いねぇ……けどまぁ……わかっているなら対処は容易い」

 

ラグナロクが左手を開き、バルバトスに向ける。

バルバトスは既にシンラからでもはっきりと姿が確認できるほど近づいていた。

 

「これが必殺技……心が踊るね」

 

シンラは操縦桿でコマンドを入力。それが承認されると、かざしたラグナロクの左手から高熱が発せられた。

 

(左手から高熱原体反応……?!それに、あの形は……!!)

 

ハルマの思考がその可能性に至った次の瞬間、熱線がバルバトスに向けて放たれた。

直撃を避けるバルバトスだったが、その巨体が災いし、《オーフィンズ》を含む機体の各部に熱線が擦り、爆発が巻き起こる。

 

「ぐっ……」

 

シンラはしてやったりと言った顔でニヤリと笑った。

 

「パルマフィオバーナー……だっけ?君の機体、必殺技だけが気に入らなくてさ……変えさせてもらったよ」

 

「…っ!!」

 

損傷部を切り離しながら、望まぬ減速を調整し、バルバトスはラグナロクに《レジリエンサー》を叩きつけようと左腕部を動かした。

しかし、速度を十分に生かしたその攻撃は、いとも容易くラグナロクに受け止められてしまう。

 

「なっ……」

 

なんで。そう言おうとしたハルマを煽るためにシンラはわざと憎たらしい口調で通信を開き、オープン回線に言葉を流した。

 

「なんで、だろうね?」

 

ラグナロクの細身の刀が、バルバトスの《レジリエンサー》を押さえつけている。二倍近いサイズ差を持つ大剣が、押さえつけられているその光景。それがハルマの冷静さを欠いた。

 

(どんなトリックを使ったかは知らないが……!!押し切らせてもらう!!)

 

衝突によって消えた慣性が、《オーフィンズ》の再点火によって再び蘇る……

 

ーーーいや、変わらない。ラグナロクはそこから一歩も動かずに、バルバトスと競り合っている。

 

「脚、見なよ」

 

ぶっきらぼうにシンラが言い、ラグナロクが、刀を握っていない方の手でバルバトスの足を指差す。

そこにはいつのまにか、ファンネルがバルバトスのブースターに突き刺さっていた。

 

「なっ!」

 

(いつだ……どのタイミングでやられた?!)

 

ハルマの思考を読み取ったかのようにシンラは得意げに言葉を発する。

 

「君が減速した時……あそこにファンネルを配置して待っていた。それだけのことだよ」

 

「あぁ、そ、う、か、よっ!!」

 

先ほどから続くシンラの得意げな様子が琴線に触れたのか、ハルマは叫んだ勢いで、次の瞬間にバルバトスは全ての武装、及び装備をパージした。

 

一部を装甲を残して、フレームの状態になったバルバトスは拳を握りしめ、ラグナロクの顔面へとそれを振るった。

拳は顔面へクリーンヒットし、ラグナロクが後方へ吹き飛ばされる。

 

「チッ!!」

 

シンラの舌打ちをハルマは嘲笑う。

 

「どうしたぁ!!ぶん殴った!それだけのことだろうがよぉっ!!」

 

強気に煽るハルマであったが、バルバトスは先ほどまでの巨体を失い、貧相なスラスターでなんとか姿勢制御をしているような状態だった。

すぐさまラグナロクは体勢を立て直し、刀を構えバルバトスの体を貫かんと突撃を始める。

 

同時にバルバトスの後方から、大きな爆発音がなった。ラグナロクのファンネルがバルバトスのパージした装備を破壊し尽くしたのだ。

その破壊者は次の標的を捉え、まっすぐに迫る。

 

バルバトスは前後2方向からの挟み撃ちを受ける形となった。

だが、ここは宇宙だ。三次元の戦闘においてこの程度の挟み撃ちは対した効力を持たない。

シンラもそれは分かっていたのだろう。いや、正確にはシンラの作ったAIか。

奴らはこの状況から最もハルマを効率よく殺す方法を模索した。

その結果、ファンネルは後方と上下の三方向に二機ずつ分散し、簡易的な360°の包囲網が作られてしまった。

装備を失い、機動力の乏しい状態のバルバトスでは、この包囲網を突破することは不可能。

 

「今の一撃には驚いたが……これで終わりだ!!」

 

 

ライフルファンネルの弾丸が上下の方向から放たれた。

後方からはあの装備を切り裂いたソードファンネルが迫っている。

前方には、刀を構えた黒い悪魔が。

ハルマは死を覚悟した。

 

 

「なーんてな!!」

 

弾丸は金属質の何かによって受け止められ、

ソードファンネルも同様に何かに行手を阻まれている。

残りの悪魔の刀もまた、何も切り裂くことはなく、鍔迫り合いを始めた。

 

「何が……起こった………?」

 

動揺するシンラを無視して、ハルマは通信を繋ぐ。

 

「サンキューなアカバネ!!ベストタイミングだ!」

 

「無駄話をしてる場合か!そいつが俺たちの……最後の切り札だ!それでさっさと決着をつけろ!!」

 

「……了解!」

 

 

ーーー

 

「天災兵器?」

 

「あぁ、コレ何かに使えないかな?」

 

いつもの工作室でハルマとアカバネは決戦に向け、着々と準備を進めていた。

 

「無理だ」

 

「な〜ん〜で〜ぇ?」

 

ハルマにとって天災兵器とは己のロマンを全て注ぎ込んだ最高傑作だった。

それがコンマ数秒で否定されたことで、驚きと悔やみの混じった間延びした声で彼は抵抗する。

 

「命が掛かっているんだぞ、忘れたか?そんなバカ兵器に自分の命を預けたあというなら止めはしない」

 

「なんだと……!」

 

バカ兵器と呼ばれ、表面上は怒りの感情を見せたが、ハルマもそれは内心感じていた。

ぱっと見では、アカバネの言うことは至極正論で、ハルマの方が命のやりとりの場面でふざけようとする狂人に映るだろう。

 

だがそれでも彼が天災兵器などというものに頼ろうするのには理由があった。

 

それは不安だ。

自分の命、仲間の命、それに加えてGBNという世界。

自分のミスで失うものがあまりにも多すぎる。

その不安が、彼の目を濁らせ「分かりやすい強さ」に執着させていた。

 

「堅実に行くべきだ。お前のバルバトスをそのまま強化して決戦に挑む。それが最善だ。」

 

「……でもよ」

 

アカバネがハルマの目を見る。彼の不安をアカバネは読み取ったのか、ため息をついた後、提案をした。

 

「……一つだけ、考えがある」

 

ハルマは机に顎を乗せ、不貞腐れながら言った。

 

「どんな?」

 

「先ず、バルバトスを強化しよう。そこは譲れない。」

 

「ん〜」

 

求めていた答えが返ってこないために、顎どころか顔面を机にめり込ませるハルマ。

 

「だが、それとは別に……専用の装備を作ろう」

 

「ん?!」

 

ばっと勢いよくハルマが顔を上げる。

アカバネは真剣な表情で言葉を続けた。

 

「残り一週間もないが………まぁ、なんとかなるだろう」

 

そこからは地獄だった。

 

「だーかーらー!!これがロマンだって言ってるだろ!!」

 

右手でやすりを小刻みに動かしながらハルマはアカバネに顔面を近づけ威嚇する。

 

「バカか!ロマンに命をかける気か!?」

 

こちらも負けじとモデラーズナイフ片手に威嚇。

と言ってもこちらはナイフから目を離していない。流石はアカバネ。安全にとても配慮しながらキレている。

 

「だからって性能を抑えるなんて嫌だね!」

 

やすりがけが終わり、塗装の剥がれた《レジリエンサー》をアカバネに突き出しす。

 

「そうでもしなきゃ扱いきれんのだ!!」

 

《レジリエンサー》を受け取ると、アカバネはそれを器用にクリップで止め、塗装の準備に入った。

 

「いやでもさぁ!!こいつらには俺の魂とこだわりが……」

 

「ただでさえ、お前のバカなアイディアに付き合ってやってるのだ!!少しは譲歩しろ!!」

 

地獄は三日三晩続いた。

その分、完成した時の喜びはとてつもなく、二人は静かにガッツポーズをした後、拳同士を打ち付け、互いの健闘を讃えた。

 

ーーーー

 

「なるほどね。アカバネを装備運搬に使うとは……」

 

コンソールパネルを叩きながらシンラが感心したように言う。

 

「使うじゃねぇわ、こう言うのは役割分配って言うんだ……よ!!」

 

親友を物扱いされ、またハルマの怒りのボルテージが上がる。

ファンネルに遅れて、装備がアカバネの機体からばら撒かれた。

一つ一つを装着していき、最後に右手に背の丈ほどの大剣が握られる。

バルバトスが左手をクイっと動かすと、それに呼応しファンネルがバルバトスに装着された。

 

ガンダムバルバトス ラグナフィフス

八つのファンネルに加え、レールガンと銃大剣を装備したラグナだ。

今まで以上の機動力を確保するバックパックスラスターも追加され、今までのような支援機はないものの、名実共に最強のラグナだ。

 

「「ファンネル!!」」

 

シンラとハルマ、両者同時に叫ぶ。

ファンネルは様々な軌道を宇宙に描きながら、ドッグファイトを開始した。

付かず離れずの距離を保ちながら、研ぎ澄まされた刃をぶつけ合う。

シンラのファンネルは専用AIを搭載しているものの、数で上回るハルマのファンネルは、支援機の操縦で鍛えられた本人自身の高い技量も相まって、ほぼ互角の競り合いが続く。

 

「何故だ……!!」

 

バルバトスは銃大剣を抱え、ビームバルカンを掃射。牽制をしながらラグナロクへと接近する。

そうして本体である二機も近接格闘を開始した。

ラグナロクの刀とバルバトスの銃大剣が2度3度鍔迫り合いになった後、ラグナロクの側が押し切られる。

ラグナロクは距離を取り、持ち直そうとするが、バルバトスの腰部レールガンがそれを許さない。

 

「ぐっ………!」

 

防戦一方のラグナロク。ここぞとばかりにハルマは攻撃の速度を何倍にも早めた。

連撃がさらにラグナロクの体勢を崩し、ガードすら間に合わなくなっていく。

 

「終わりだ……シンラ!!」

 

銃大剣を下段に構える。

しかし。

 

(今だ……やれ!!)

 

シンラはバルバトスが装備換装する直前に、バックパックを分離させていた。

ファンネルはないが、バックパックには、レールガンが装備されている。背後から直撃すれば致命傷は確実。

シンラはダメージをより大きくするために、銃大剣のリーチギリギリのところでレールガンを放とうと設定した。

今まさに、それが放たれようとしている。

 

「何っ?!」

 

レールガンが放たれる直前にハルマは背後の支援機の存在に気づいた。だが、届かない。シンラは逆転を確信してほくそ笑んだ。

 

「残念だったねぇ!!」

 

バルバトスが振り向き、レールガンに向け銃大剣を振るう。だが、緻密に計算されたAIによる完璧な位置どりは、バルバトスの無駄な足掻きを嘲笑うかのように発射のコマンドを入力ーー

 

「ビームサーベル展開!!」

 

される直前に銃大剣の真ん中、銃の部分であるところからビームのエフェクトが形成された。

ビームはレールガンの先端部を切り裂き、バックパックは爆散する。

 

「あ………??な………?!」

 

「間合いの錯誤。戦闘において基本のテクニックだ。他人を動かしてばっかで、自分じゃ手を汚さない……そんなんだからこうなるんだ」

 

「き、貴様ーーー!!」

 

「おせぇよ!!」

 

ラグナロクの突撃をヒラリと躱し、左腕をラグナロクのコックピットへと走らせた。

数度の剣戟で脆くなっていた胸部は簡単に砕かれ、コックピットの中のシンラをバルバトスが握る。

その様子を近くで見ていたアカバネはつい声を漏らした。

 

「勝った……のか………!?」

 

「あぁ、俺たちの勝ちだ」

 

その瞬間、示し合わせたかのようにアカバネに一件のメッセージが入る。差し出し人はケン。

ラナの救出成功を報告する物だった。

 

「勝った……やったぞ、ハルマ!!」

 

同じものはハルマにも届いていた。

メールを一瞥した後、バルバトスが握るシンラを見つめながらハルマは言った。

 

「お前の負けだ、シンラ。」

 

「……だ、…こ……ない……位置……ち………う。」

 

「……あ?」

 

ぶつぶつと何かを口にしているシンラ。ノーマルスーツを着ているため、ただでさえ聞こえにくい囁き声に雲がかかっているかの如く、何も聞き取れない。

 

「おい、なんて……」

 

ハルマの質問の返答なのかはわからないが、シンラは確かに、今度は誰にも聞こえる声で叫んだ。

 

「ここは違う!!!!」

 

次の瞬間、爆発がバルバトスの左手で起こった。

握られていたシンラは宇宙空間へ放り出され、

胸部を失ったラグナロクの頭部にぶつかる。

 

「なっ!自殺する気かよ!!」

 

この宇宙域全体にはシンラがウィルスをばら撒いている。

それは負ったダメージが、リアルにフィードバックされるということ。

そうであるから、ハルマはシンラを撃墜ではなく、捕獲したのだ。

だが、シンラは自らの体のことを全く気にも止めていないのか、逃走するために体の近くで爆発物を用いた。

予想外の行動にハルマは困惑したが、すぐさま再捕獲をしようとシンラに向けバルバトスの手を伸ばした。

 

「ここだ……ここじゃなきゃダメなんだ……!!」

 

シンラは目の前に迫るバルバトスの手に全く目を向けることなく、ストレージからあるアイテムを取り出す。

 

(なんだ?!また爆発させる気か?!)

 

バルバトスの手が少しだけ速度を緩めた。

また逃げられてはたまらないからだ。

だが、シンラの取り出したアイテムは拳銃だった。躊躇なく、その銃口を自分の頭へと向ける。

 

 

「なっ!!よせ!!」

 

 

「3……………2……………1……………

 

陳腐な発砲音が、ハルマとアカバネ、二人のコックピットから流れた。

体のコントールを失った死体が宇宙に漂う。

 

ハルマはその様子を見て唇を噛み締めた。

自殺なんて卑怯だと、口を開こうとした。

 

 

その時だった。

どこからともなく雷鳴がとどろき、一筋の稲妻が、頭を貫かれた死体とコックピットを失ったラグナロクを包んだのは。

至近距離の稲妻がハルマの視界を塞ぐ。

この現象をハルマは知っていた。

見たことがあった。

コレはツキハの時と同じだ。

 

「ハルマ!!危ない!!」

 

鉄同士がぶつかる音、少し遅れて爆発音。

閃光にやられた目がぼんやりと視力を取り出していく。

ハルマが見た、その光景は………

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