ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第3話駆け抜ける宇宙

 

「ハルマー、ダイバーギア、鳴ってるよー」

 

おもちゃ屋として多忙なGWが開けた次の週。

お昼休憩でほっと一息ついていたハルマを店長が呼び出す。

 

「へいへーいっと」

 

自分のダイバーギアを手に取り、メッセージ一覧を開く。

 

「って、ルイじゃん、」

 

GRFとして活動しているハルマのメッセージ一覧は、仕事の依頼で埋まっている。だが今回は少々事情が異なるようだ。

 

「えっ〜と……なになに……」

 

メッセージ一覧

Rui今回はクライアントとして、アンタに依頼をしたい。再来週行われる対艦戦イベントの報酬のパーツデータが欲しいのだが、生憎、俺のアインではフィールド適正のせいで参加すらままならない。そこでGRFの出番ってわけだ。報酬はたんまり出す。どうだ?

 

「ほーぅ、たんまり出す、ねぇ」

 

最後の一文につられたハルマは、すぐさま返信した。

 

Harma任された。けど、そのグレイズアインはレンタルだろ?新しくガンプラ作るのか?

 

Rui例のサイトが消えた後、メールが届いてな、

報酬が支払えない謝罪としてそのままプレゼントしてくれたよ。

 

Harmaおーう、太っ腹だな。まぁ依頼の件は任せとけ。

 

「さーて、フレンドの為に人肌脱ぎますか」

 

言葉とは裏腹に、ハルマの頭には報酬の使い道しかなかった。

 

 

GRFフォースネストにて

 

 

「さて諸君、今回の依頼は先ほど説明した通りだ」

 

「諸君って、2人だけじゃない」

 

フォースネストの中のブリーフィングルームで、

ハルマ、ラナ、ケンの三人は集まっていた。

やけに気合いの入っているハルマに、

2人は顔に?マークを浮かべながら、説明を聞いていた。

 

「こういうのは雰囲気も大事なの!ゴホン、何か質問は?!」

 

ラナのツッコミに悪態をつきながら、"雰囲気"を戻そうとする。

「はい!」

「はい、ケン!」

元気よく手をあげるケン。その反応に嬉しそうに反応するハルマ。男子特有のノリに、少しめんどくさそうな顔になるラナ。

 

「対艦戦って言われてもよく分かりません!!」

 

ハルマの目が点になる。

 

「俺、説明してなかったっけ?」

 

「10分近く説明してたけど、私もよくわからなかったわよ、どうするの?隊長殿?」

 

「……いつも通りやろっか」

 

「そうですね」

 

「では仕切り直して……」

 

今回の対艦戦イベントは90対90の大規模戦闘イベントだ。1フォース3名までなので、30近いフォースが参加することになる。フィールドは宇宙で各チームは、ランダムに選ばれる艦船3隻を守りながら、相手の艦船を全て落とすか、90機のガンプラを全て撃墜することで勝利となる。

 

「……なるほど、意外と複雑なルールですね…」

 

頭を抱えるケン。

 

「って言っても再来週なら、まだまだ時間はたっぷりあるわね」

 

「んだな、ケンはスケジュール大丈夫か?」

 

「えぇと……はい、なんも予定ないです」

 

「決まりだな、今日はとりあえず解散して、明日から特訓だ!」

 

「……」

「……」

「あれ!?反応は?!」

 

 

「それじゃ、また明日〜」

 

「「「じゃあね〜」」」

 

ウミモト模型の3人に手を振り、別れる。

学校帰りに立ち寄ったので、辺りはもう真っ暗だ。

満月が街灯の少ない道を照らす。

ボッーと歩いていると、帰り道にある唯一の横断歩道の信号が、運悪く赤になってしまい、立ち止まる。ここの信号はやけに長いのだ。手持ち無沙汰になり、ふと、空を見上げる。

(GBNの宇宙って、どんな感じなんだろう……)

重力から解放された自分のAGE1を想像する。

そういえばAGE本編は、宇宙戦闘中心だったな……などなど、色々考える。気がつくと信号が青に変わって点滅していたので慌てて横断歩道を渡る。

 

「初めての依頼……!頑張ろう!」

 

人目がないことを確認してから、両手を挙げるとキラッと星が光った……気がした。

 

 

翌日、休日なのを良いことに、ケンは朝早くからGBNにログインしていた。ハルマたちは仕事があるので、お勧めされたミッションを受注してから、ケンは1人で宇宙ディメンションに向かった。

 

「ミッション内容は……百錬と百里の撃墜…?」

 

なんだ、たったの二機か。

心の奥底で漏れ出た言葉を、ケンは数分で取り消すことになる。なぜなら……

百錬がビームを弾くたびに、

「硬すぎ!!」と言い、

百里がデブリの間を高速で航行するたびに、

「速すぎ!!!」

と叫ぶハメになったからだ。

最初の出撃ではそもそも宇宙でまともに機体を動かせず撃墜。

二度目は百錬にビームが弾かれまくり時間切れ。

三度目は百里に散々振り回された後、スピードを制御できずにデブリに激突し、大破。

四度目はスラスターの噴かしすぎでエネルギー切れ。

五度目は……

 

 

 

「うわあぁー!!!なんでだぁ!」

 

mission filedの文字がコックピットに数十回表示された結果、頭を掻きむしりながら発狂してしまう。

このミッションの難点は百錬、百里両者がナノラミネートアーマーを保有していることだ。そもそもがビーム主体のAGE1では相性が悪い。前回ハルマとの戦いでやった焼夷弾を使用しても、躱され意味がない。

 

一度ログアウトしてハルマにアドバイスをもらうことも考えたが、ほんの僅かなプライドがそれを許さなかった。とはいえ、このままではまずいのも頭では理解している。

 

「どうしよう……」

 

「やっぱり、そんなことだと思った」

 

コックピットで頭を抱えながら1人唸っていると

背後から聞き慣れた声が聞こえた。

振り向くと小さな黄色の機体が腰に手を当て肩をすくめている。

 

「その声は……ラナさん?」

 

接触通信で問いかけると、その小さな機体……SDガンダム、ルナエクシアは小さく頷いた。

 

「えぇ、ずいぶん困ってたようだけど大丈夫?」

 

「全然!全く!大丈夫じゃないです!」

 

疲れからか表情も文法も大丈夫ではないケン。

 

(そりゃそうよ、このミッション、ワイヤー系武装装備推奨だもの。)

 

そう言いたい気持ちを必死に抑えて口を開く。

 

「……今から手本見せるから、しっかり学んでね」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

ケンの顔にほんの少し輝きが戻る。

 

(騙してるみたいで気分が悪いなぁ)

 

今からラナが実演するのは上級者御用達の高難度テクニックだ。

ログイン前のハルマとの会話が、ラナの脳裏によぎる。

 

「ラナ、ケンイチに宇宙での戦い方、教えてやってくれよ」

 

「別にいいけど……知ってるでしょ?あのミッションは初心者がやるもんじゃないって」

 

「もちろん、知ってるよ」

 

「ならどうして……」

 

「そりゃぁ、ケンイチはもう初心者じゃないし、あいつも強くなりたいって望んでる」

 

ガンプラスキャナーに立つラナに目線を合わせながら、ハルマが頭を下げる。

 

「頼む」

 

「……やるからには手加減しないよ」

 

「師匠みたいに?」

 

イタズラっぽい笑顔を浮かべながらラナに顔を近づけると、小さなプラスチック製の指で額にデコピンをもらってしまう。

「痛って!」

「茶化さないの、……行ってくるね」

 

「いってらっさい〜」

 

ーーーー

mission start!!

目を開けるのと同時にバトルが開始され、百錬と百里が出現する。

 

「ケン?聞こえてる?一応聞くけど、どれくらいまでいけたの?」

 

ルナエクシアが振り向きながら尋ねる。

 

「えぇと……片方の機体を半壊させる程度です…」

「なるほどね」

 

そうしてる間にも百錬が先行して2人に迫る。

 

「ラナさん!?後ろ!!」

 

「じゃ、まずは基本のテクニック、AMBACよ!」

 

ルナエクシアが小さな手足を大きく動かして体を捻る。

GNブレードと片刃式ブレードが衝突し、火花が舞う。

「アレ?今のどうやって……」

 

「手足を使って勢いをつけるの、このテクを使えば無駄なエネルギーを使わず戦えるわ」

 

片手間で鍔迫り合いをしながら指導を続ける。

 

「そしてここからが応用編!!」

 

鍔迫り合いを制し、百錬の頭部をすれ違いざまに切断した後、百里の方へ向かう。

 

(ラナさんも速いけど、あのスピードじゃあ百里には…)

 

「なんて思ってるのかしらね!!」

 

エクシアと百里がデブリ帯に入る。器用にデブリを潜り抜ける百里。それを追うエクシア。その差は明確……いや、違う。エクシアがデブリ帯に入った途端、急激に加速し、百里に追いつく。

 

「トランザムを……使わなくったって!!」

 

追いつかれたことに気づいた百里は、急旋回をして振り切ろうとするも時すでに遅し、エクシアに張り付かれてしまった百里は為す術もなく撃墜された。

 

「シャアの五艘飛び……AMBACを極めて、デブリを利用すればこんな芸当もできるわ」

 

爆発を背に、ラナが問いかける、

 

「で、コレ……できるようになりたい?」

「はい!ご教授お願いします!!」

 

それから地獄の特訓が始まった。

 

「AMBACは体を使うの!!関節が擦り切れるぐらい動かして感覚を掴みなさい!」

「はっ、はい!」

 

翌日、

「あの……なんですか?このガンプラ……?」

 

ログイン前に手渡されたガンプラに乗りながら、顔をしかめる。

「シュツルムガルスよ」

 

「どうしてスラスターを噴かしてないのに、ゲージが0になっているんです……?」

 

「シュツルムガルスだからよ」

 

シュツルムガルス

宇宙用、近接特化、にも関わらずスラスター等を一切積まず、搭載されたワイヤーで移動するというぶっ飛んだコンセプトのモビルスーツ。

 

「今日はそれで私とタイマンね、三分間凌ぎ切れたら合格よ」

「……」

 

3日目

 

 

「今日はガンプラ使わないってどういうことです?」

「今日は生身で宇宙水泳よ」

 

「生身で?!」

 

「エクシアで攻撃するから避けてね」

 

「エクシアで?!!?」

 

「大丈夫!ビームの出力は最小限にするから!」

「そう言う問題じゃ……うわぁ!」

 

頬にエクシアの放つビームが掠める。いくらSDだからといって、生身で相対すれば、巨人であることには変わりない。

そんな修行を一週間と少しした後

 

「これで……お終い!」

 

AGE 1が百錬のフレームをビームサーベルで切り伏せた後、コックピットに向けて拳を叩き込む。

戦闘不能となった百錬が光の粒子となって消滅し、コンソールにmission completeの文字が浮かぶ。

 

「やっ…やったぁー!」

 

修行のお陰で、ケンは完全に宇宙空間に適応することができた。なお、ラナに対する印象が180°変わってしまったのはいうまでもない。

……そして、イベント前日の夜。

 

「ケンの修行も順調そうだし……依頼は果たせそうだな」

 

誰もいない工作室で1人呟くハルマ。机には、姿を変えたバルバトス•ラグナが置かれている。

そろそろ閉店時間なので、修行中の2人に声をかけようと、ダイバーギアを握ろうと手を伸ばすと、メッセージが届く。

 

「ん?なんだ?」

 

明日開催、対艦戦イベントのお知らせ

 

フォースGRFの皆さま、イベントへの参加ありがとうございます。今回のイベントの申し込みが想定よりも少なかった為、人数調整と以下のルールに変更させて頂きます。

バトル参加可能人数

90→60

艦船数

3→1

フィールドの縮小

 

今後ともGBNをよろしくお願いします。

 

「珍しいな…そんな不人気だったのか?」

 

水を差された気分になったが、どちらにせよ、最善を尽くすだけだ。気合いを入れ直し、ハルマはダイバールームへと向かった。

 

イベント当日、3人はフォースネストで開始の時間を待つ。

 

「じゃ、2人は先行、俺は旗艦の護衛ってことで」

 

作戦を振り返りイベントの開始を待つ。

 

「それにしても、前日にイベントの仕様が変わるなんて…長いことGBNをやってきたけれどこんなの初めてだわ」

 

「今回のイベントって90対90でしたよね?180人も集まらなかったんですか?」

 

「いや、今回の場合数千人を分ける予定だったけど、それが思ったより集まらなくて、直前で人数調整した感じだろうな、中には90対90の人もいるみたいだし……」

 

そんな話をしているうちに開始5分前になる。

フィールドと、護衛対象の艦の情報が送られてきた。

 

「俺たちのフラッグシップはディーヴァに…相手のは…漁火か」

 

どうやら艦船一つ一つにステータスがあるらしく、漁火の防御力の数値がとんでもないことになっている。

 

「ちょっと不利すぎない?これ」

 

「でも見てみ、俺たちはフォトンリングレイ使えるってよ」

 

発射間隔が15分に設定されているけど、と付け足し、体を伸ばす。

 

「まぁやれるだけやるさ、な?ケント」

 

「はいっ!修行の成果を見せてやりますよ!」

 

「いい心意気ね、教えた甲斐があったわ」

 

時計の針が五を指す。イベントの開始時間だ。

 

「さぁーて時間だ!行くぞ!」

 

宇宙ディメンションにひとつ、また一つとガンプラが現れる。十人十色のガンプラを観れるのはこういったイベントの醍醐味だ。

アナウンスと共に戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「ラナ!ケン!頑張れよ!」

 

2人を見送り、自分も突撃したい気持ちを抑え、ディーヴァに張り付く。

気のいいダイバー達の挨拶を返しながら、自分の機体のステータスを確認する。

今回、ハルマは防衛用にバルバトスをフルアーマーとして仕上げてきた。名付けてガンダムバルバトスラグナ•サード。

 

「気合いを入れて作ったものの…最終防衛ラインだから活躍しない方が対戦としては望ましいんだよなぁ……」

 

ジレンマに苛まれながら、粒となったラナとケンに改めてエールを送る。

一方その頃、当人たちは、数十人のダイバーと共に前線へ向かっていた。

先頭を行くジェガンD型に乗ったダイバーが指揮を取る。

 

「各機散会!乱戦に持ち込んで、隙があったら漁火を攻撃するんだ!」

 

うぉぉぉ!と気合いの入った雄叫びが各ダイバーから発せられる。

 

「フィールドが変更されたおかげで、デブリが少ない…修行、無駄になっちゃたわね」

 

「そんなことないですよ!ラナさんのおかげで宇宙戦闘はバッチリです!」

 

caution!caution!

レーダに敵機が移り始めビームの火線が視界に入る。どうやら本格的に戦闘に入ったようだ。

 

「始まったわね……修行の成果見せてもらうわよ!」

 

ルナエクシアが加速し、戦闘態勢に入る。

 

「言われなくても!」

 

負けじとAGE1ヒバナも加速。戦闘宙域に突入する。乱戦状態になっている為、360°ありとあらゆるところから、ビームやバズーカ弾が飛んでくるが、AMBACを用いて最小限かつ最適な動きで回避する。

 

「見えた!あれが相手のフラッグシップ!」

 

乱戦に持ち込んだのが功を奏し、ケンはノーマークで漁火に接近することができた。しかし、

 

「ここから先は通さんぞ、若造!」

 

専用カラーに塗り替えられたゲルググが行手を阻む。ガンプラの完成度を見るに、相当の実力者だ。

二度三度、ビームサーベルとビームナギナタで斬り合い、鍔迫り合いになる。実力は互角……ではなく、ゲルググの出力に押し負けてしまう。

 

「あとちょっとだったのに……!!」

 

段々と漁火から引き離されてしまい、思わず歯軋りしてしまうケン。

 

「チクショぉ……!」

 

気がつくと周りには、乱戦の後であろうガンプラのスクラップが宙を漂っていた。

(そうか!コレを使えば!)

 

「しぶとい!!だが!!」

 

ゲルググが左腕のグレネードを構える。…が、

 

「?!奴はどこにいった!?」

 

つい先程までそこにいたAGE1が消えている。

モノアイを動かし、周囲を確認すると、

視界の隅にAGE1を捉えられた。先程まで出力負けしていたとは思えない加速力でゲルググを取り囲む。

 

「コッ…コイツ!まさか!!スクラップを使ってシャアの五艘飛びを?!」

「正解!」

 

「クソッタレがぁ!」

 

AGE1のスピードに翻弄されたゲルググは、背後からのビームサーベルに反応できずに撃墜された。

 

「はぁ…ふぅ、なんとか勝てーー」

 

caution!caution!

 

「なっ……もう一機?!」

 

凄まじいスピードでレーダに映る点が一つ。間違いなく警告音の正体だ。

敵機の方向にビームサーベルを構える。

 

「くっ、来る!」

 

しかし、警告音の正体はAGE1に見向きもせず脇を通り過ぎてしまった。真っ赤な残像だけがケンの目に映る。

 

「??」

 

困惑を頭の隅に押しやり、漁火の方へ向かう。

数秒後、味方の数が十機を下回ったとアナウンスが鳴った。

ーーーーー

 

「全く……君はどうしてそんなにせっかちなんだい?」

 

「すいませんボス、……どうしても、奴を見極めておきたくて」

 

会話の片手間に敵機を撃墜しながら、赤い残像……ディランザR9はディーヴァへと向かう。

 

「まぁいい……仇の前だからといって、冷静さを失うなよ」

 

通信が切断され、コックピットに静寂が訪れる。

 

 

一方その頃、ハルマは防衛線を突破してきた敵機からディーヴァを死守していた。

最初は数十機いた敵も、一対多数を想定したラグナサードが猛威をふるい、着実に数を減らしていった。

 

(そろそろケンたちも漁火にたどり着いたか?)

 

ケンもラナも撃墜されたと通知されない為、何処かで奮闘しているのだろう。自分も負けてられないなと気合いを入れ直す。

 

「そいつでしまいだ!やっちまえ!」

 

「おう!」

 

最後の敵であるギラズールに向けて肩部キャノン砲を放つ。コンマ数秒後、巨大な爆発が巻き起こる。

 

「なんとかなったな!」

 

気のいいダイバーが健闘を讃えようと、ハルマに声をかける。次の瞬間、一つの火線がそのダイバーを貫いた。

 

「おいおい、嘘だろ……?」

 

爆発の中から、満身創痍のギラズールをかばうかのように赤いディランザが現れる。キャノン砲が着弾する前にビームライフルで撃ち落としていたのだろう。

ダメージが入っているようには見えない。

 

「援軍か……!助かった!」

 

「その損傷では何もできないだろう、巻き込まれるなよ」

 

相対する蒼のバルバトスと紅のディランザ、先に仕掛けたのはディランザの方だった。

(はっ、速い!)

想像以上のスピードに反応が遅れる。

 

次の瞬間には渾身の蹴りを喰らっていた。

 

(サードのままじゃ部が悪りぃ!)

 

コンソールを操作しラグナサード用の装甲をパージするなと同時に、待機させておいたⅡファイザーを呼び出す。

 

「よっし、これで互角ーーー」

「抜かせぇ!!」

 

改造ビームトーチとビームライフルのビームブレードを使った擬似二刀流による連撃が、バルバトスの装甲を少しずつ削っていく。隙を見てドッキングしようと思っていたが、それを許してくれそうにない。

 

「……なら!」

 

Ⅱフェイザーをディランザの背後に動かし、特攻させる。あまり褒められた戦法ではないが、背に腹はかえられない。

 

「甘いわ!!」

 

ディランザの背後に追突させる直前で、Ⅱファイザーが謎の大破。

 

「くっそ!ただのディランザじゃなくてソルベースかよ!」

 

ディランザ•ソル

ジェタークヘビーマシーナリーが開発した重装甲MS。

一般的に「ディランザ」として扱われる学園用の物とは違い、実戦用として開発されたディランザソルはバックパックに自動追尾タイプのクラスターミサイルを射出するHCミサイルランチャーを装備している。それを使って、Ⅱフェイザーを撃墜したのだ。

 

 

(捌くので精一杯だ!何か…何かないか?)

 

「どこを見ている!!」

 

連撃の合間に、改造したビームトーチをバルバトスに突きつける。本来、ライフルにつけるはずのパーツを改造によってビームトーチに取り付けて、銃剣として使用。放たれた銃弾がバルバトスの体勢を崩し、その隙をついて、バルバトスをディーヴァの艦橋に叩きつける。

 

「しまった!」

 

咄嗟に回避するがディランザは依然、ディーヴァに張り付いたままだ。

このままではディーヴァが撃墜され敗北してしまう。

だが、ディランザはディーヴァに目もくれず、バルバトスの方へ迫る。

 

「なんだと?!」

 

勝ちを狙うならば有り得ない行動に不意をつかれる。ディーヴァが落とされなかったのは嬉しい誤算だか、このままでは遅かれ早かれ敗北は確実。

 

もう一度、祈るように周囲を見渡す。

だが、周囲を見渡したところであるものは護衛対象であるディーヴァだけ……いや違う。ディーヴァだけなのは変わりないが、そのディーヴァの全面に何か輪っか状のものが……

ここまで考えた後、数十分前の自分の発言を思い出す。

 

ーーよく見てみ、俺たちはフォトンリングレイ使えるってよーー

 

 

「やっべ!」

 

ハルマの叫びでディランザも状況を把握。

 

「チッ!」

 

両者戦闘をやめ、バルバトスは上へ、ディランザは下へ緊急離脱する。

次の瞬間、ディーヴァからフォトンブラスターが発射される。その巨大なエネルギーはフォトンリングレイによって増大し、射線状を薙ぎ払った。

 

「助かったけど、状況は変わらなーーー」

 

battle ended!!

「へ?」

コンソールにyour team win!!と表示される。

 

「かっ、勝った?」

 

照射中だったフォトンリングレイが中途半端に消滅し、バトルの終了がアナウンスされる。

先程までディランザがいた方向に目を向け、

一抹の不安を残しつつ、仲間を労う為、ハルマは前線へ向かった。

 

ーーー

 

「で?感想は?」

 

仮面の男はイベント用のロビーで通話をしていた。

 

「……お世辞にも、強敵とは言えませんでした、ボスがなぜ、奴に警戒するのか全く理解できません。」

 

通話の先からため息が聞こえる。

 

「私が警戒するのは奴の戦闘力だけではないよ、彼に計画が知られれば、一瞬で今までの苦労が水の泡になる……仇を打ちたい君の気持ちはわかるが、データは十分取れたし、しばらく彼との接触は控えよう」

 

「…わかりました」

 

通話を切ると背後に1人、ダイバーが立ちすくんでいた。

 

「……何か用か?」

 

「あぁいや、さっき助けてもらったお礼をしようと思って……」

 

先程助けたギラズールのダイバーだろう。

しかし、お礼という割にはどこかよそよそしい。

 

「お礼など…今回のイベントは協力前提だからな、当然のことをしたまでのこと……で、本題はなんだ?」

 

ギラズールのダイバーは少し驚いた表情を見せた後、やれやれといったふうに首を振る。

 

「なんでもお見通しってわけか……なら、正直に言おう。俺たちのフォースに入ってくれないか?見たところ、1人のようだし……」

 

「悪いが、私はもうフォースに所属している」

 

コンソールを開き、プロフィールを見せる。

 

「……!そっか、余計なお世話だったな」

「では失礼する」

 

仮面の男がログアウトして、光となって消える。

 

「おーい、勧誘できたかー?」

 

ギラズールのダイバーと同じフォースの男が手を振りながら歩いてくる。

 

「ダメだったわ、なんとなくそんな気がしてたけどよー」

 

肩をすくめながら返事をする。

「でもやっぱ凄えな、あの仮面の人のフォース、数千人規模だったぜ、納得の実力だわ」

 

「まじかよ!俺たちが知らないだけで有名人なんじゃね?!」

 

「なんかすげー盛り上がってんな……」

 

男たちがはしゃぐのを遠目から見つめるハルマ。2人と合流した後、ロビーのベンチで駄弁っていた。

 

「それでー、聞いてます?ハルマさん?」

 

「あ、あぁ、聞いてるよ、最後、漁火を撃墜したんだろ?やるじゃんか」

 

照れながら「いやぁーそれほどでもー」と頭を掻くケン。

 

「じゃ、そろそろログアウトしましょうか」

 

「待ってくれ、今依頼主が向かってるから……」

「いやーお疲れ様!報酬受け取りに来たぞ〜」

 

ルイが現れると。ケンとラナは2人して睨む。

 

「あれ?嫌われてる?」

「初対面で人質に取ろうとした奴ならそりゃぁ……」

「まぁいい、これが報酬のBCだ」

 

提示された金額に3人は目を丸くさせる。

 

「こんなに!?いいのか?」

 

「あぁ、俺にとっては無用の長物だからな、パーツデータがもらえるなら構わないさ」

 

「「「ありがとうございます!!」」」

3人は声を揃えルイに感謝を伝えた。

 

3人揃ってログアウトし、ダイブルームを出る。

店長がそれに気づき、すかさず話しかける。

 

「お疲れ様〜どうだった、イベントは?」

 

「もちろん楽勝っすよ」

 

「あれ?3人の中で一番ボロボロだったのは誰だっけ?」

 

ラナがハルマの肩になりながらわざとらしく煽る。

 

「あーぁせっかく今日の報酬分配しようと思ってたのになぁー!」

 

「ちょっと!それは違うでしょ!」

大人気なくぎゃあぎゃあ騒ぐ2人。

 

「ケンイチくん……あんな大人になっちゃダメだよ……」

 

「肝に命じておきます……」

 

「大体アンタねぇ!この前のケーキの約束もほっぽり出して……」

 

「だからそれはアレでプラマイゼロにしたろ!」

 

2人の言い合いはその後も続いた……

 

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