ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第4話傷だらけの相棒

 

「暇だなぁ…」

 

荒れた空を眺めながら、誰に言うわけでもなく呟く。

 

「せっかく塗装道具持ってきたってのに……」

 

傍に置いたスーツケースを撫でながら、肩をすくめた。

 

「店長たち……うまくやってっかな……」

 

 

数日前……

ある平日の午後、ウミモト模型の電話が鳴った。ちょうど店番をしていたハルマが電話を取る。

 

「はい、ウミモト模型……ってオヤジか、店に電話すんなって……」

 

「何?お父さん?」

 

お金の計算をしていた店長が手を止め、話しかけてきたので、受話器を抑えながら返事をする。

 

「はい……なんか怪我したらしくって……」

 

「え?!大丈夫なの?!」

 

再び受話器に耳を当てる。

「うん、うん、はあ……いい年して何してんの?

いやいや、無理だって、仕事あるの知ってんだろ?」

 

(なんか長くなりそう)

長話の気配を察した店長は、静かにその場を離れた。

30分後……

 

「で?何の話だったの?」

 

「えーっと……身内の痴態を晒すようで嫌なんですけど……」

 

ハルマの父親は腕を骨折してしまったらしい。

母親がいるため、日常生活に支障はないものの、不運にも、地域のガンプラ教室の講師ボランティアを週末に予定しており……その代役をハルマに頼みたいとのことだった。

 

「あれ?でもハルマの実家って……」

 

「はい、ここからだと新幹線を使っても、4時間はかかります、それに今週末には……」

 

「あっ、そっか、さすがに僕とラナ君だけじゃ厳しいね……でも、アオツキさんにはかなりお世話になったからなぁ……何とかして助けてあげたいけど……」

 

「皆さん?深刻そうな顔してどうしたんですか?」

 

背後からの声に二人が振り向くと、そこには学校帰りのケンイチが、不思議そうな顔をしていた。

 

「あぁ、いや大丈夫だ。ケンイチにはーーーーー」

 

「閃いた!!!!」

 

パチンと指を鳴らし、店長が叫ぶ。

 

「ケンイチ君に手伝ってもらおう!!!」

 

_______

 

「なるほど、人手が足りないから僕を臨時のバイトとして雇いたい……であってます?」

 

「そうそう、今週末なんだけど……大丈夫?」

 

「はい大丈夫です……けど、イベントって何するんです?」

 

おもちゃ屋が開催するイベント……といっても想像ができない。プラモデルと言うとまず展示会が頭に浮かぶが……

 

「そうだね、見てもらった方が早いかな」

 

店長が立ちあがり、工作室を出た後、バックヤードへの扉を開ける。バックヤードには商品が入ったダンボール箱が積まれていた。

 

「ここに何かあるんですか?」

 

店長がバックヤードの電気をつけると、布を被った大きな物体が姿を表す。

 

「こいつが今回のイベントの主役!GPデュエルだよ!」

 

勢いよく店長が布を引く。大きな物体の正体はGPデュエル用の装置だった。壁に取り付けられたレバーを下すと、光のドームが現れる。本体には小さな傷や汚れが付いており、年季を感じさせる佇まいではあるが、動作には支障がないようだ。

 

「凄い綺麗ですけど……これは…?」

 

「これはねGPD……リアル用のガンプラバトル装置さ」

 

「リアル用のガンプラバトル装置……?」

 

「まぁ、見ててよ」

 

コンソールの前に店長が立ち、レバーを握る。目の前の発進台にガンプラを置くと……

 

「出撃だ、クロスボーン」

 

店長の言葉に呼応するかのように、クロスボーンがツインアイを光らせ、宙に浮く。

 

「ガンプラが動いた?!?」

 

データではない、本物のガンプラが、命を吹き込まれたかのように目の前で動いている。

 

「まぁ、こんな風にリアルでガンプラを動かして戦うのがGPデュエル、今週末にコレを使って小さな大会を開こうと思ってるんだけど……」

 

「ハルマさんが帰省すると人手が足りない……ですよね」

 

察しのいいケンイチの発言に店長が頷きながら返事をする。

 

「そう、小さな大会とはいえ、前々から準備していたし、常連さんの中にはこの日のためだけに休みを取る人もいるくらいで……中止も延期もしたくないんだ」

 

「わかりました!僕に出来ることがあれば、喜んで協力させてもらいます!」

 

「おっ、話、まとまったか?」

 

レジ打ちをしていたハルマが扉からひょっこりと顔を出す。

「うん、ケンイチくんが週末手伝ってくれるって」

 

「ホントか?!めっちゃくちゃ助かるよ、ありがとな!!」

 

「こう言う時はお互い様です、僕も2人にはお世話になってますから」

 

((なんていい子なんだ……!!))

(給料、少し弾んであげよう)

(お土産考えとかないとな)

 

未成年の綺麗な心に感涙してしまう成人2人。

 

「それで……その、僕もやってみていいですか?」

「「え?」」

 

「GPデュエルです、その、リアルでガンプラ動かせるのに少し興味があると言いますか……いや、無理ならいいんですけど」

 

店長とハルマが顔を見合わせ、眉をひそめる。何かまずいこと言っちゃったかなと不安になるケンイチ。

 

「うーんとね、GPデュエルはね、リアルで戦うんだ」

「?」

 

言葉不足の店長の言葉をハルマが付け足す。

 

「ケンイチ……GPデュエルはな、壊れるんだよ」

 

「壊れる?」

 

「そう、ガンプラが、戦いの衝撃で、壊れる。それも結構派手に」

 

「えっ!?壊れちゃうんですか?」

 

丹精を込めて作ったガンプラが壊れる。モデラーならこれほど辛いことはないだろう。だが、GPデュエルは壊れることが前提のシステムだという。戦いの代償……として差し出すには重すぎる対価だとケンイチは感じた。

 

「ちょっと待ってください、そんな仕様でどうやって大会なんてするんですか?!」

 

バトル毎に壊れるという仕様ならば1日でできるバトルなど高が知れているだろう。だが店長の回答はケンイチの斜め上を行く。

 

「どうするって……頑張って直すしか」

 

「へぇ!?」

 

「ケンイチ……気持ちはわかるぜ、だけどよ、GBN以前のガンプラバトルはそういうもんだったんだ」

 

しみじみとした表情で腕を組みながらハルマがいう。

 

「店長、関節が、バトルで壊れたらどうします?」

「予備関節と交換」

「塗装が剥がれたら?」

「ヤスって、サフ塗って、乾燥機、本塗装、デカール貼り直して、艶消ししたらまた乾燥」

「パーツがえぐれたら?」

「パテ」

 

な?と言った表情でケンイチを見つめるハルマ。冗談でなく、本気でバトル毎に修理するつもりらしい。

 

「昔のガンプラバトルってシビアだったんでね……」

 

「僕はGBNも好きだけどね〜バトルのたびに直さなくていいから楽だし」

 

今の工程を苦ではなく、面倒として扱う店長に、尊敬と恐怖の感情が入り乱れるケンイチなのであった。

 

 

「と、言うわけで!遂に!!明日!!!開催なわけです

が!!!!」

 

イベント前日の金曜日、妙にテンションの高い店長と打ち合わせをするラナとケンイチ。ケンイチはいつもと違い、ウミモト模型のバイトとして学生服の上からハルマのエプロンをかけている。

 

「当日、僕は選手として出るから運営はラナ君、そしてアシスタントにケンイチ君の布陣で行く!!」

 

「そう言うわけだから、よろしくねケンイチ」

(本当に僕たち2人で回せるのか……?)

 

つい先程まで、てっきり店長がイベント運営をするのかと思っていたので、予想外の展開に内心冷や汗をかく。だが、つい先程ハルマはキャリーケースを持って旅立ってしまったので今更できませんとは言えない。

 

「まぁ、今回で20回目ぐらいだし、メンツは大体固定だしで運営の仕事は片付け程度でパターン化されてるから、心配しなくていいわよ」

 

「よかった……」

 

それを聞いてほっとする。メンツが同じと言うことは、参加者側もある程度、イベントの進行に対して理解があると言うことだろう。それならば運営自体もそんなに難しくないはずだ。

 

「って言うか20回もやってるんですか?」

 

「うん、不定期開催だけどね、大体三ヶ月に1回ぐらいかな?基本、僕がやりたくなったらやってるから頻度は適当だけど」

 

(……もしかして店長が一番楽しみにしているのでは?)

小さな声でラナに呟く。

(そうね、主催者のくせに毎回毎回、優勝狙いにいってるし)

(優勝景品、この店の3000円offクーポンなのに?!)

(店長が優勝して、参加者にそのクーポンで塗料をプレゼントするのがお決まりのパターンよ)

 

「さて、少し早いけど、準備しちゃおうか」

 

店長の指示で工作室の机を動かしたり、装置のあるバックヤードを掃除して、椅子を設置し観戦用のスペースを作ったりなどなど、準備を進める。機材の配置や装飾など、的確な指示のおかげで、準備は想像以上に早く終わった。その分、労働量も想像以上だったが。

酷使した腰をさすりながら、ひとまずの完成を3人で祝う。

 

「じゃあ、最終確認をしよう!」

 

「えーと、大会受付は10時から、僕たちは一時間前の9時に集合。参加人数は店長含めて12人。当日参加はなし、トーナメント戦、試合時間は15分。インターバルは一時間。もし普通のお客さんがきたら、僕が対応。こんくらいですかね?」

 

「うんバッチリ!明日もよろしくね!」

 

店長がにこやかに笑う。それを見てケンイチは頑張ろうと、再度決心した。

ーーーー

 

イベント当日の10時、ポツポツと参加者らしき人が入店してくる。年齢は20代以上の人がほとんどで、中には還暦を迎えているだろうご老人もいた。皆、店長と仲良く雑談している。

 

「はい、参加者の鯖根さんですね、こちら参加賞のパテになります。次の方、どうぞー」

 

ラナの教え通りにイベント運営として働くケンイチ。

 

「大丈夫そうね」

 

「えぇ、参加者の皆さんも自主的に動いてくれますし」

 

ひとまず、今いる全員に参加登録をしてもらったので、店長たちの会話に耳を傾ける。

 

「いや〜マサル君もすっかり大人だねぇ」

 

「今更っすか?!もう20代も折り返しですよ?!」

 

「いやね?どうしても高校生ぐらいの印象が強くって…」

 

「あん時のオマエは酷かったなぁー、先代の爺さんをクソジジイ呼ばわりで……」

 

「ちょっと!!恥ずかしいからやめて!!」

 

旧友とともにはしゃぐ店長の姿はケンイチにとって新鮮だった。そのやりとりを眺めていると、最後の参加者が到着したので参加登録を済ませてから大会を開催する。

 

「では、これより第20回目ぐらいの『GPデュエルウミモト杯』を開催します!!」

「「「「「イェーイ!!!、」」」」」

 

盛り上がる会場(バックヤード)の手前で、運営二人組は裏方としての作業を始める。

「塗料やパテは参加者持参だから、機材の状態の最終チェック急いで!!」

 

「はい!エアブラシOK、筆OK、ヤスリ、デザインナイフOKです!」

 

「乾燥機は!」

「バッチシです!」

 

「排気ブースはーーー」

 

 

一つ一つ機材の最終動作確認を終えると、背後で歓声が起こる。

 

「よっしゃ、勝った!!」

 

ガッツポーズをしながら店長がバックヤードから姿を現す。

 

「お疲れさーーー」

「ごめんどいて!」

 

早歩きで工作室に入ると、すぐさま席につき、ガンプラの修理を始める店長。道具入れから、大量の同形状のパーツを取り出し、凄まじい速度で手を動かす。

 

「なんて気迫だ……」

 

「いやー負けた!負けた!一回戦でマサル君に当たるとは!我ながら運が無いね!!」

 

先程店長と団欒していたご老人がバックヤードから出てくる。手元にはボロボロに破壊されたガンプラが握られていた。

(こんなになるまで……)

 

「お?君がマサル君が言ってた期待の新人くんかい?」

 

数秒、自分のことだと理解できなかったケンイチは慌てて返事をする。

 

「き、期待されてるかはわからないですけど……多分、そうです」

 

「やっぱりそうか!!君は大会出ないのかい?」

 

「今日は運営としてきたので……それにいつもはGBNでガンプラバトルをしているので……」

 

「GBN……そうか、残念だ…」

 

心の底から漏れ出るかのように言葉を発するご老人にケンイチはつい、質問してしまう。

 

「あの……すごく失礼かもしれない質問なんですけど…」

 

「君の言いたいことはわかるよ、何故そこまでしてリアルで戦うのか、だろう?」

 

考えを覗かれたかのような、完璧な先読みに面食らってしまう。

 

「はい…」

 

「やっぱりね、自分でも、分かってはいるんだよ、ガンプラを傷つけずにバトルする方法があるのに、何故こんなにリアルにこだわるのか…ってね」

 

ご老人が目を細めながら手元のガンプラを見つめる。

 

「GBNが生まれた時、GPDは散々な言われようだった、時代遅れだの、下位互換だの、中にはGPDはガンプラをイタズラに傷つける、野蛮な遊びだとか、心のない言葉を色々浴びせられたよ……GBNを恨んだ時期もあった……」

 

ご老人が言葉を続ける。

 

「それでも、僕は自分のガンプラを自分の手で初めて動かした、あの感動を忘れられなかった。当時でも40を超えていたけれど、年甲斐にもなく涙したことも鮮明に覚えている」

 

ケンイチにも覚えがある。GBNに初めてダイブしたあの時のワクワク感、作ったガンプラを動かすあの快感。

 

「まぁ、その……好きなんだよ、自分じゃどうしようもないくらい。GPDも、ガンプラも、それに集まってきてくる人も、大好きだ。たとえそれが時代遅れの、廃れたものだとしても、好きなことを好きなだけ続けてるだけ……っと、これで答えになっているかな?」

 

「はい、なんとなくですけど、わかりました、皆んながこだわる理由」

 

好きだから、それだけでいいのだ。趣味を続ける理由など、それだけで十分だ。楽しいだけでは、大好きな何かに向き合えないかもしれない。時には辛く、苦しい思いもするだろう。だが、それでも尚、ガンプラが、GPDが好きだと、心の底から言えるのなら、それを人は愛と呼ぶのではないか。

 

「それに……廃れた物からでも受け継がれる者はあるからね」

 

ご老人が机の上で片付けるラナを見つめながら小さく呟く。

 

「?それはどう言うーーー」

 

「よっし、修理完了!ケンイチ君、片付けといて!」

 

「あっ、はい!了解です!お爺さんもありがとうございました!」

 

「あぁ、運営頑張って」

 

ご老人が不意に振り返る。そこにはレンタルガンプラと一緒に飾られているトロフィーがあった。

 

(ウミモトさん……見ていますか?彼らの嬉しそうな顔。あなたの意思は、確かに受け継がれていますよ……)

 

そこにいないはずの人物に、ご老人は天を見上げ、語りかけた。

 

 

「さぁて!準決勝もいよいよ大詰め!!試合終了まで後1分を切ったぁ!」

 

すでに決勝の切符を手に入れた店長が、選手にも関わらず実況も兼任している。

 

「ようやく手が空いてきたわね」

 

「そうですね〜でも、もっと皆さんの試合、見たかったです」

 

運営として駆け回っていたケンイチは、ほとんどの時間を工作室での片付けに当てていた。だが、大会が進むにつれ、工作室を使う人数は減っていく。

それによってできた時間で口におにぎりを詰まるケンイチ。

 

(そう言えば誰もお昼食べてないな……)

 

店長に昼休憩を取らずに大丈夫かと、尋ねようかと立ち上がるが、彼なら「時間がもったいない!」とか「手に油分が着いちゃうから…」と言いそうだと思い

すぐ椅子に座り直す。

そんな時、チリーンと鈴の音が店内に響く。入店音だ。

「いらっしゃいませ〜」

 

「ウミモトマサルはどこだ」

 

工作室から顔を出すケンイチとラナ。ドアの前には大柄でガラの悪い男が立っていた。どう見ても、ただの一般客には見えない。

 

「すいませんお客様、当店は今大会中でして……」

 

とりあえずマニュアル通りに対応するケンイチ。

耳元でラナがボソボソと呟く。

 

(あの客は……)

(知ってるんですか、ラナさん?

(えぇ、前回の大会で飛び入り参加してきて、あまりにも態度が粗暴だったから、失格にしたんだけど……今回から当日参加なしでエントリーもなかったから、油断してたわ)

 

「ウミモトマサルはどこだと聞いている」

 

「……少々お待ちください」

 

ケンイチがバックヤードへ駆け出す。

ちょうど準決勝の勝敗が決まり、歓声が上がっていた。

 

「店長!!大変よ!前回の大男が!」

 

ラナの叫び声にそこにいた全ての人間が振り向く。

準決勝の興奮が嘘のように消え、人々の顔が暗くなる。

 

「わかったよ…すぐに行く」

 

ーーーー

「えーそれではこれより、決勝戦前、エキシビションマッチを開催します」

 

店長が説得しようとするも、大男は微動だにせず、

「前回の屈辱を晴らす、お前と戦わせろ」

 

の一点張りで話が進まなかったので急遽、決勝戦前のエキシビションマッチとして処理することになった。

 

「クロスボーンガンダムXフォーミュラ、出撃だ」

 

「ノイエ•ジール、出る」

 

フィールドは宇宙、コロニー周辺宙域。コロニーを挟んで、両者がフィールドにエントリーする。

 

「面倒なことになったねぇ」

 

隣り合いながら試合を観戦するラナ、ケンイチ、ご老人。

 

「あのノイエ•ジール、かなりの作り込みだ。出すとこに出せば、賞をもらえるほどの……」

 

「前回は素組みのガンプラで、店長にボコボコにされていたのに何があったのかしら?」

 

大男の変化にギャラリーからも驚きの声が上がる。

 

「前回はどんな感じだったんですか?」

 

状況をいまいち呑み込めていないケンイチが2人に尋ねる。

 

「前回の彼は……素組みのガンプラで飛び込み参加をしてきた。最初は皆初心者だと思っていたんだけど……彼のマニューバを見てすぐ考えを改めたよ。彼の操縦は態度の荒々しさとは真逆の繊細さで、準決勝まで勝ち進んだ。結局はマサル君に負けて、喧嘩寸前になって飛び出てしまったけれど…」

 

「そんな素組みでも強い人があんな強そうなガンプラを使ったら…!」

 

「……それはどうだろうね」

 

「あっ、見て!」

 

ラナがバトル装置の上に設置されている、モニターを指さす。画面にはノイエ•ジールとクロスボーンが接敵する瞬間が映されていた。

 

「さっさと…落ちろよォ!」

 

MA特有の高機動を生かしながら、ミサイルを乱射するノイエジール。

 

「さて、どうしたもんか……」

 

ミサイルの弾幕を冷静に躱しながら、コロニーの外縁をなぞる。

お返しとばかりにザンバスターを放つが、Iフィールドに阻まれ、無効化されてしまう。

 

「やっぱり」

 

「逃がすかぁ!!」

 

流石のクロスボーンの機動力を持ってしても、ノイエジールの推力には敵わず、瞬時にクロスボーンの背後に陣取り、ビームサーベルを振り下ろす。

 

「おっとっと…」

 

背のスラスターを全開にし、横へ急制動。振り下ろされたビームサーベルはクロスボーンの傍を掠め、コロニーの外縁を切り裂く。

すると巨大な穴がコロニーに開き、空気のエフェクトが発生した。

ビームサーベルをいなしながら、コロニーに侵入するクロスボーン。

大男の額に青筋が浮かぶ。

 

(高ぇ金払って買った癖に、ポンコツじゃねぇのかコイツ!!)

 

「散々逃げやがって!!俺をおちょくってんのか!」

 

怒りにまかせ有線式クローアームをコロニーに叩き込むと、

コロニーの破片が宙に舞う。その破片に紛れながらクロスボーンが飛び出した。

 

「グレネードなら」

 

先込め式のグレネードをノイエジールに向けて発射。

狙いは肩部のIフィールドジェネレーター。

 

「効くかよ!そんな豆鉄砲!」

 

放たれたグレネードは正確にIフィールドに着弾するが、精巧な作りによって防御力が補正されたそれには大したダメージは与えられなかった。

 

「そんな!ビームでも、実弾でもダメなんて!」

 

観客席からケンイチが叫ぶ。このままでは、と頭によぎった時、

 

「いや、まだだ」

 

おもむろにご老人が口を開く。

 

「攻撃が効かないのにどうやって?!」

 

「見ていたらわかるさ」

 

「ちょこまかと……うざってぇんだよ!」

 

コロニーの破片をうまく使いながら、メガ粒子砲とミサイルの同時攻撃を躱し続けるクロスボーン。だが、ミサイルの一つに被弾してしまい、体制の崩れた所をメガ粒子砲が捉える。

 

「…チッ!」

 

しかしクロスボーンは間一髪のところで両腕部のビームシールドを起動状態のまま分離させつつ、二振りのビームサーベルを正面に構え、相殺しようとする。が

メガ粒子砲は二基のビームシールドを容易く貫きクロスボーンに迫る。

 

「ここだ!!」

 

メガ粒子砲が着弾する寸前で、クロスボーンがサイドアーマーにマウントされたヴェスパーを放つ。

限界まで威力を削られたメガ粒子砲であったが、それでも威力は凄まじく、ビームサーベルを弾きながらクロスボーンをノックバックさせた。

サーベルを上手く当てていなければ勝敗は決まっていただろう。だが絶体絶命なことには変わりない。

ノックバックしたクロスボーンはコロニーに叩きつけられる。

 

「ハッ!無様だな!ウミモトマサル!」

 

余裕綽々といった様子で勝ちを確信する大男。

クロスボーンがよろめきながら立ち上がる。

機体の各所からはスパークのエフェクトが生じており、ダメージの深さが手に取るように分かる。だがそれでもクロスボーンはザンバスターをノイエジールに向ける。

先端にはグレネードがついていた。

 

「終わりだ!!」

 

再度メガ粒子砲をチャージするノイエジール。

苦し紛れにグレネードを発射するクロスボーン。発射された弾頭はノイエジールの頭部に着弾すると……

 

「なっ、なんだ!!!これは!!」

 

グレネードから先ほどとは比較にならないほどの光が溢れ、ノイエジールを包む。

 

「それはグレネードじゃない、僕が一ヶ月かけて作った、フルスクラッチの小型核弾頭さ。本当は決勝戦でお披露目するつもりだったんだけど……ま、ノイエジールに使うのも趣があっていいかな」

 

「きっ、貴様ぁぁぁ!」

 

焼け爛れ、半壊したノイエジールがクロスボーンに迫る。

 

「遅いよ」

 

フェイスオープンしたクロスボーンはビームザンバーをふるい、ノイエジールを切り刻む。

一瞬にして粉々にされたノイエジールはコロニーに衝突し、盛大な爆発と共に生き絶えた。

ーーーーー

 

「いやー、楽しかったね!!」

 

「あんなことがあって、よくそんなことが言えるわね……」

 

大会の片付けをしながら、雑談する3人。

あの後、大男は「覚えてろよ!!」とお手本のような捨て台詞をはき、壊れたノイエジールの回収もせずに去っていった。

その後行われた決勝戦では、修理時間を十分に取れなかった店長の敗北と言う結果で終わってしまったが、最終的には皆、笑顔でイベントを会えることができた。

 

「ありがとね、2人のおかげで大会を成功させることができたよ!はい、ケンイチ君、今日のバイト代!」

 

「わぁこんなに?!いいんですか?」

 

「ちょっと!私には!?」

 

「ラナ君には衣食住を提供してるだろ?!……まぁ、今度どっか連れてってあげるよ」

 

「言質は取ったからね!」

 

なんて現金な子……と呟きながら肩をすくめる店長。

 

「たっだいまー」

 

入店音の鈴が鳴り、ハルマがドアをくぐる。右手にはキャリーケース、左手にはお土産であろう袋が握られていた。

 

「あっ、ハルマさん!」

 

「お疲れさんケンイチ、ほら、これお土産のバター餅」

 

「ありがとうございます!」

 

「私には?!」

 

「その体じゃ食べられねぇだろ!また今度、GBNでな!」

 

「ははは……」

 

少女のがめつさに苦笑いするケンイチ。

ハルマが加わったことで、片付けはあっという間に終わった。

工作室の片付けを終え、バックヤードに入りGPDの装置を慈しむかのように眺める店長。名残惜しそうに電源であるレバーに手を伸ばす。

 

「店長は……GPDが好きですか?」

 

「そりゃもちろん、僕の青春だからね……あっ、もちろんGBNも好きだよ!今日みたいにフルスクラッチのパーツを消費しなくて済むし!」

 

「大丈夫です、分かってますよ、どっちにも良いところがありますから」

 

でも、だからこそ。

 

「店長、改めてお願いです。僕とガンプラバトルを[[rb:GPD > ・・・]]でしてくれませんか?」

 

知っておきたいと思った。ガンプラバトルのルーツ、そこに込められた人達の思いを。

 

「……本当にいいのかい?もし、ガンプラが修理不可能なほど壊れてしまったら?」

 

「頑張って直します」

 

真剣な目つきのケン。

 

「そっか……そうだね、はは、こんなご時世でご新規さんが現れるなんて……なんだか嬉しいね」

 

涙目にならながら、レバーから手を放す。

 

「ちょっと待ったぁ!そのバトル、俺も参加させてもらう!」

 

腰のホルダーからバルバトスを取り出し、キメ顔で構えるハルマ。

 

「……少しは空気を読みな、さいっ!」

 

「痛ででで!髪、髪はやめて!」

 

「全く……うちの店員共は個性的で困るね」

 

目を擦りながら話しを続ける。

 

「そうだね……もう日も落ち始めてるし、アンテナを壊した方が勝ちの決闘ルールで総当たり戦!これでいいかい?」

「賛成です!」

「臨むところ!」

「それじゃ、私が審判ね!一回戦はケンVS店長!」

 

2人が向かい合わせになりコンソールの前に立つ。

 

「「バトル、スタート!!」」

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