ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第5話残光

幅の広い静かな廊下に靴の音が響く。上位フォースの特権とも言える、とてつもない規模の限定フォースネストだ。何気ない装飾の一つ一つが輝いており、オーラのようなにかを感じる。だが彼……ハルマはそこに懐かしさを感じていた。

 

(えーと確か……そうそう、ここだ。)

 

目的の部屋は荘厳な扉で閉ざされていた。ふっーと息を吐き呼吸を整える。

 

(久しぶりだな……この部屋に入るのも…毎回緊張してたのが懐かしい……職員室に呼び出された時みたいで……いや、今も緊張してるんだけどさ)

 

脳内の会話を打ち切り、意を決して扉をノックすると中から返事が返ってくる。失礼しますと前置きをしながら入室した。重い扉がギギッと音を立てながら開く。

 

「ご無沙汰しています、大佐」

 

「やぁ、久しぶりだねハルマ。急な呼び出しに応じてくれて嬉しいよ」

 

司令室のように作られた一室で待っていたのはGBN屈指の実力者、第七機甲師団、フォースリーダーのロンメル。可愛らしい獣タイプのダイバールックとは正反対の凄まじいプレッシャーに思わず息を飲んでしまうハルマ。

 

「遠慮せずに座ってくれたまえ、先日、いい茶葉を見つけてね、どうだい?」

 

緊張が伝わってしまったのか、リラックスするように促される。高級そうなソファーに恐る恐る座り、これまた高そうなティーカップに入った、これもまた高そうな紅茶を見つめる。脳内で紅茶を飲む作法を駆け巡らせ……一口。程よい酸味と心地の良い風味が口を満たす。緊張が解けていくのを感じる。

 

「美味しい…」

 

「気に入ってくれたかな?少しリラックスできたところで……早速本題に入ろうか」

 

向かい合わせに腰掛けるロンメル。このアバターでこうも大人のかっこよさが出せるとは。緊張をぶり返しながらも本題に入る。

 

「はっ、はい、こちらが例のデータ……フォースGRF5名、数ヶ月分のバトルログです。」

 

ウィンドウを操作し、バトルデータの入ったファイルを指先でクリック。画面を反転させ向かい合わせのロンメルに見せる。

 

「5名?以前より1人増えているね。」

 

「ええ、リアルで偶然知り合った新人のスカウトに成功しまして……初心者ですけど、なかなかやりますよ」

 

「初心者、なるほど……」

 

ケンのバトルを品定めするかのようにじっくりと見つめるロンメル。真剣な目つきだがどこか嬉しそうにも感じる。

 

「ふむ……彼は今日、ログインするのかい?」

 

「えーと、そうですね、いつもなら、一時間後ぐらいにログインしますけど……」

 

「そうか……ならば、少し待つとしようか」

 

「へ?それは何故…?」

 

「もしかしたら、彼が私の探し人かもしれない。それまでは……そうだな、この一杯で、昔話に花を咲かせるとしよう」

 

 

数時間前

 

ウミモト模型の工作室では、ケンイチが修理中のAGE 1ヒバナと向かい合い腕を組みながら、うんうん唸っていた。

机の上ではラナが、ルナエクシアの埃を落としたらなどの整備をしている。

 

「やっぱり、足りないのは決定力よ。前のGPDの時もここぞってところで決めきれなかったじゃない」

 

「そうですよね〜〜〜決定力、決定力か……」

 

工作室の天井を見上げながら、頭の中で「決定力」という単語を復唱する。数日前、初めてGPDにふれたケンイチのAGE1ヒバナは、経験者2人に善戦したものの、結局は火力の不足が仇となり辛酸を舐めた。その結果アンテナとバックパックが犠牲となり、その修理のついでにヒバナ自体のバージョンアップをしようとした……のだが、中々アイディアが浮かんでこない。

現状、ヒバナの性能はオーソドックスにまとまっている。シンプルな武装構成はあらゆる場面において対応することが可能だ。

しかしそれは器用貧乏とも言えるだろう。

やはりここは必殺技とも呼べるような、高火力の武装を取り入れるべき……とは分かってはいるものの具体的な案が出てこない。

 

「決定力、決定力……ケッテイリョク……」

 

ぶつぶつと呟きながら工作室を後にし、ガンプラコーナーの目の前に立つ。欠点があるからといって、中途半端な改造で今のヒバナのバランスは崩したくはない。簡素な改造でかつ、決定力を上げる方法はないだろうか……

「ハイメガは、いやアンテナとの干渉が……ハルマさんみたいに大剣を振り回して……あっ、関節が持たないかも…サテライトキャノン……いやヒバナのジョイントに合わせるのは面倒だし……」

一つのアイデアが浮かぶ度、即座に自身で否定してしまう。首を傾げながら、棚に並ぶガンプラたちと睨めっこしていると、ふた視界の隅で何かがキラッと光った……気がした。視線がそこへ吸い込まれる。そこにあったのはSEED系列のガンプラが並ぶコーナーだった。

 

「そうか!この、手があった!」

 

頭の中のモヤが晴れ、早速工作室に戻る。確かジャンクパーツのアレとアレを合わせればあの機体と同じことができるはずだ。こうも条件に合う画期的なアイディアが浮かぶとは。ほんの一瞬、自分が天才なんじゃないかと有頂天になる。

 

「あら、何か掴んだ?」

 

「ええ!とびっきりのやつが!!」

 

ジャンクパーツの入った箱を漁り、お目当てのパーツを探す。それは1センチほどの小さなパーツなので、探すついでに破損したバックパックとアンテナの改造素材にも目星をつけておく。

30分ほど漁り続け、お目当てのパーツが揃った。このパーツたちを切って、貼って、塗ってーーーー!!

 

 

「で、こうなったと」

 

「はい!ガンダムAGE1ヒバナ"改"です!」

 

フォースネストの地下格納庫には完成したヒバナ改が鎮座していた。改修前とはアンテナの形状が異なっており、以前よりも鋭さがましている。バックパックにはプロペラントタンクが追加されており、戦闘継続時間が大幅に増加。順当な強化に成功した。しかし、武装などは変更されておらず、ぱっと見、内蔵火器も見当たらない。

 

「……それで決定力は?」

 

「ふふふ……それはですね…!!」

 

自信満々に改造した部分を指さそうとしたその時、

 

「たのもーう!!」

 

突如として現れた第三者の声に驚く2人。格納庫の大型モニターに来客が映し出される。フォースネスト領外ギリギリの平原に立つその人物の横には、大型MS…グレイズアインが。

 

「また……なんて間の悪い……」

 

「また?ルイさんですよね、アレ」

 

「ええ、最近よく来るんだけど……ハルマが留守の時ばっかりなのよね……」

 

そういえば、彼は初対面の時に、リベンジを宣言していたなと思い出す。その横でラナがため息をつきながら、オープン回線を開いた。

 

「ハーイ、ルイ聞こえる?残念だけど今日もいないわ」

 

モニターに映るルイが膝から崩れ落ちる。口をぱくぱくさせ、叫んでいるように見えるが、ノイズキャンセラーが仕事をしたのか何も聞こえず、ただただ、情け無い奴の痴態が晒されている。

 

「見てて面白いですね、あの人」

 

「そうね、とりあえず迎えに行きましょ」

 

ーーーーーー

 

「何度も訪ねてしまってすまない……」

 

膝をつき、叫んでいたルイをなだめ、客間に案内する2人。

 

「その……ハルマさんとフレンド登録してるんですよね?メッセージとかで連絡すればいいのでは?」

 

当然の疑問。

 

「それはダメだ!!なんか……こう……道場破り的なテンションで戦いたいのだ!!」

 

(面倒くさいな……)

(面倒くさいわね……)

 

身を乗り出して強く否定するルイに対して、目を細めるラナとケン。初対面の時の威圧感はもう感じられない。

 

「ま、ハルマ今日は一応ログインしているから…一時間もすれば戻ってくるわよ」

 

「一時間か……待つには少し長いな、ここはまた別日に……」

 

立ち上がって帰ろうとするルイをラナが抑える。

 

「アンタ前もそう言ってたじゃない!!」

 

「ぐぬぬ、しかしただ待つというのは……」

 

引っ張り合う2人を見ながら解決策を思いつくケン。

 

「なら僕と模擬戦しませんか?」

 

ケンの突然の提案に振り向くルイ。

 

「なるほど模擬戦か……いい考えだが……いいのか?自分で言うのもなんだが、今の俺は強いぞ?」

 

決して強がりや慢心ではないだろう。実際、彼のグレイズアインは高い完成度そのままに、彼なりの強化がなされていた。

 

「僕だって、以前の人質に取られるだけの足手纏いではありませんよ」

 

挑発とも取れる発言に対して凛とした表情で返答するケン。こちらだって、出来立てほやほやの新型機だ。

負ける道理はない。

 

「フッ……面白い!!いいだろう、では10分後、隣の平原にて決闘だ!」

 

高笑いをしながら背を向け、フォースネストから出るルイを見送る。何故あの人はあんなにテンションの落差が激しいのか……

 

「大丈夫?彼、かなり成長しているわ。初めて会った時よりも……」

 

「大丈夫です!僕だって成長してますから!」

 

再び地下格納庫に走るケン。その後をラナが歩く。

 

 

一方その頃、ハルマとロンメルはバギーに乗り、GRFのフォースネストへと向かっていた。

 

「GMトレーナーズカップ、覚えているかい?」

 

「そりゃあもちろん、アレに優勝したおかげで隊長に拾ってもらいましたから」

 

運転をしながらハルマが答える。

脳内では話に出た大会の優勝の瞬間を思い出していた。

ーーーー

「記念すべき第一回!GMトレーナーズカップ初代優勝者の栄光を掴んだのはっっ!!ハルマ選手だぁーー!!!」

歓声と拍手の嵐が巻き起こる。人生最高の瞬間と言っても過言ではないその記憶は、ハルマの脳に深く焼きついている。

 

「懐かしいな……もうあれから5年も経つのかぁ……」

 

「うむ、そのGMトレーナーズカップが来月、再度開かれるのだが……」

 

「そういえば告知がありましたね、と言っても初心者限定の大会ですから…あ、もしかしてまたスカウトの予定でもお有りで?」

 

「そう簡単な話ならよかったんだがね……」

 

「?」

 

歯切れの悪い返答に疑問符を浮かべるハルマ。

 

「その話はフォースネストについてからにしよう、皆がいる時に話した方が一度で済むからね」

 

先ほどのケンへの発言といい、何か考えあるのだろうか、ハルマはそんなことを考えながら目的地へとバギーを走らせる。

 

「そろそろか……」

腕組みをしながらコックピットで佇むルイ。機体のモノアイが空から迫る影を視認し、アラートを鳴らす。

 

「お待たせしました!」

 

AGE1が着地し、グレイズアインと睨み合う。

ケンはコンソールを開きデュエルの申請を選択。

1on1のモードを選び、ルイへと送る。

 

「それじゃあ私が発砲したら開始ね!!」

 

ラナが腰のホルダーから拳銃を取り出し、空へと向ける。向かい合った両者がそれを了承し、開戦に向け、構える。

 

「ルイ、グレイズ•ツヴァイ!!」

 

「ケン、ガンダムAGE1ヒバナ改!!」

 

両者が名乗りを上げると、拳銃の銃声が空に響く。

先に仕掛けたのはグレイズツヴァイ。体躯に見合った大型ライフルをAGE1に向ける。これは先日の対艦戦イベントの報酬を改造したものだろう。本来なら、この大きさのライフルは手持ちする用ではなく、バックパックなどに接続するのが一般的な使用方法だ。しかしながら、ルイはその大きさに目をつけグレイズアインの手持ち武装としての改造を施した。

 

「喰らえ!」

 

一発、二発、三発と弾丸を放つ。その銃声は先程のラナの拳銃の数十倍であり、音だけで威力の絶大さが感じられる。咄嗟に空へ回避するAGE1。放たれた銃弾の一つが地面に着弾すると、巨大な爆発が発生し、地面を抉る。

 

「なんて威力!ハルマさんのレールガン以上か!?」

 

「逃すかぁ!!」

 

 

前々回の対艦戦イベントの報酬であるそれは入手難易度に見合う火力でAGE1を追い詰める。

空中軌道で銃弾をを躱わすAGE1。このままでは銃弾の無駄遣いだと判断したルイは即座に肩部ライフルを展開し弾幕を形成する。

 

「嫌なことしてくるなぁ!!」

 

「戦いとはそういうものさ!!」

 

こうなってしまったら多少の被弾は覚悟で接近するしかない。ビームシールドを前に構えながらスラスターの出力をあげ、接近する。

 

「甘いわ!!」

 

だが、グレイズアインの真骨頂は化け物じみた動きから繰り出される近接格闘にある。それは遠距離砲撃を手に入れたグレイズツヴァイも同様だった。ライフルを腰にマウントし、背から二振りのバトルアックスを取り出す。

 

「ヤバっ!」

 

グレイズツヴァイのリーチに入る寸前で、そのことを思い出したケンはAGE1の軌道を逸らし、斬り合うことなくグレイズツヴァイの傍を全速力で通り抜ける。

接近した手間の割に、ダメージは与えられなかったが、こちらもダメージは0。無理に押し切るよりはいいだろう。

 

「背中を向けるなら!」

 

再びライフルを取り出しAGE1へと向けるグレイズツヴァイ。今度は肩部ライフルも同時に放つ。夥しい数の弾幕の中に一撃必殺、即死の弾丸が混ざる。

 

「うわっわっと!!」

 

負けじと腰部グレネードを使いながら弾幕を潜り抜けるケン。

 

(このままじゃジリ貧だ!)

 

現状、遠距離での勝ち目は薄い。ビームライフルはナノラミネートアーマーの都合上、弾幕を払うのにしか使えず、装甲に有効な腰部グレネードも先ほどのような使い方をしていれば、大破させられるほどの弾数は残らないだろう。かと言って近接でなら、というわけにもいかない。あんなバケモノの一撃必殺の斬撃をかわしながら、チマチマと装甲を削ることなど、想像しただけでも神経をすり減らされる。かくなる上は……

 

(やっぱり……アレを決めるしかない!)

 

拳を握りしめ、覚悟を決める。

 

「不味いわね……」

 

遠目から望遠鏡を片手に観戦していたラナが思わず呟く。無理もない。目の前ではMSとMAのリソースの差

をまじまじと見せつけるかのような戦闘が繰り広げられているのだ。弾丸をスレスレで躱わすAGE1にヒヤヒヤしながら心の中で応援をしていると、コール音が鳴った。コンソールにはハルマの名前が浮かぶ。

 

「もしもーし、ラナ?今フォースネスト向かってんだけどさ、なんか近くで戦闘してない?すごい銃声してるんだけど」

 

「察しがいいわね、隣の平原でケンとルイが戦闘してる」

 

「ケンと……ルイ?どうして2人が……」

 

「来たら分かるわ、なるべく急いでね」

 

通話を切り目の前の戦闘に目を向け直すラナ。

 

「……一体どうなってんだ?」

 

「フォースリーダーが居なくとも、自ら演習を始めるとは……余程、技量を高めるのに余念がないと見える」

 

「そんな大層なもんじゃないと思いますけど……」

 

そんな会話をしていると、ちょうどバギーが平原に差し掛かる。標高が少し高くなっていたその場所では、辺り一体が見渡せた。爆発のエフェクトやビームライフルであろう火線が目に入る。

 

「おーう、派手にやってんな……どうしますか大佐?このまま突っ切っちゃいますか?」

 

「いや、2人のバトルの邪魔をしてしまってはいけないだろう……我々はここらで観戦するとしよう」

 

ハルマが見晴らしのいい丘でバギーを止めると、ロンメルはおもむろに懐から望遠鏡を取り出す。

 

(さぁ、見せてもらおうか。その力が私の理想に届くかどうかを……!!)

 

「どうした!どうしたぁ!!逃げてるだけじゃあ勝てないぞ!!」

 

「そんなこと……わかってるよ!!」

 

防戦一方のケンに対して弾幕を張り続けるルイ。

状況は圧倒的だ。もちろん、ルイにも弾切れのリスクはある。だが以前、ハルマとの戦闘で機関銃の欠点を指摘されたルイは、肩部機関銃の威力を絞る代わりにオーバーヒートを抑えながら装弾数を上げるライフルに取り替える改造を施した。

用途を弾幕を張る為のみに制限しつつ、明確な役割を与えることで武装を最大限有効活用している。

万一の負け筋も潰されたケンは見た目以上に窮地に立たされた。

 

「なんて装弾量!弾切れを狙うのは悪手だったか…でも意外と回避できーーー」

 

「そこだ!!」

 

「しまった!!」

 

一瞬の油断が命取りとなり、

巨大な弾丸がAGE1の左上半身を撃ち抜いた。

ルイはケンの回避パターンを弾幕によって把握していたのだ。それでも一撃でバトルアウトにならなかったのはケンの動体反射が優れていたと言っていいだろう。だが撃ち抜かれたAGE1はバランスを崩し、煙を吐きながら真っ逆さまに落下していく。

 

(損傷率っ……28%!!まだまだいける!!)

 

「そう何度も……墜落してたまるかぁ!!」

 

墜落直前でスラスターを全力で噴かしなんとか着陸。

しかし間髪入れずにまたライフルによる狙撃が開始される。

 

「こうなったら!!」

 

ケンは手元の操縦桿を巧みに動かし、とあるコマンドを選択する。そのコマンド名は……ボルトアウト。

入力されたその瞬間、バックパックから一基のプロペラントタンクがこぼれ落ちる。

そのプロペラントタンクはAGE1から見て左側。実は先ほどの直撃で深刻なダメージを負い、スパークが走っていたのだ。つまりほんの少しの衝撃で爆発する危険があるということーーーー!!

 

「いっっっけぇぇええええ!!」

 

プロペラントタンクが地面に落ちるその刹那、AGE1はスラスターを噴かしながら、思いっきりソレをけとばした。スラスター×爆発の衝撃で本来ならありえない加速を生み出す。

 

「なんだと?!」

 

勝ちを確信していたルイは突然のケンの奇行に驚きの声を漏らす。

 

(だが、いくら接近できたとて、グレイズ•ツヴァイの格闘能力なら……!!)

 

「もう、いっぱぁぁああつ!!」

 

AGE1が加速をしながら体を捻り、もう一つのプロペラントをパージ。そのままサッカーのボレーシュートのような体勢でプロペラントを蹴り出す。それにより勢いの増したプロペラントはグレイズツヴァイの正面に。通常では考えられない速度でグレイズツヴァイにぶつかったプロペラントはくるくると回転しながら跳ね返される。

 

「今だ!!」

 

「ぐぉっ!! 」

 

残弾の少ない腰部グレネードを放つ。狙いはもちろん跳ね返ったプロペラント。当然、燃料に引火し、爆発が起こる。

その爆発による閃光と煙で目眩しされてしまうルイ。咄嗟に煙を手で払い状況判断を急ぐ。だが、

 

「やっと……近づけた」

 

左腕を撃ち落とされ、右脚を自身で起こした爆発で失ったAGE1だったが、爆発と煙に紛れ、グレイズツヴァイの背後をとることに成功した。

 

「クソっ!いつの間に!!」

 

「この一撃で決める……!!」

 

手刀を構え、左足で地を蹴り、各部の出力を全回にした突撃を行う。ほんの数メートルほどの距離をコンマ数秒で駆け抜ける。もうだしおしめもう出し惜しみは無しだ。

 

「させるか!!」

 

だがルイの方が一枚上手だった。

コックピットを捉えた手刀は後一歩のところでグレイズツヴァイの左手に掴まれてしまう。

 

「……残念だったな、この右手を潰せば俺のかーーー」

 

「いいや、勝つのは僕だ……!」

 

不的な笑みを浮かべるケン。ルイの背中に悪寒が走る。

 

(この感覚は……!!俺と奴が初めて会った時の…!)

 

そう。素組みのAGE1から降りてきたハルマを叩き潰そうとした時のあの感覚。敗北ではなく勝利を信じたあの目。早急に決着をつけなければと脳が命令するあの感覚っ……!!

瞬間。AGE1が手刀を解きながら、手を開き、グレイズツヴァイの胸部装甲を掴む。手のひらにはビームの発射口のようなものが取り付けられていた。

 

「パルマ、フィオ、キィイナァァアア!!」

 

AGE1の拳が蒼に染まる。叫びとともに右手が煌めく。

ビームの収束によって高度に熱せられたグレイズツヴァイの装甲が段々と焼け爛れる。次の瞬間、大きな爆発が巻き起こり、砂埃が2機を包んだ。

 

「右手にパルマを仕込んでたのね……!確かに決定力が改善されてるわ……!」

 

砂埃を堪えながらラナが呟く。

 

congratulations!!

 

「!」

 

感情のこもったシステム音がラナの耳に入る。勝敗が決まった証拠だ。爆発と砂埃のせいで見れなかった勝負の結果が下されようとしていた。

 

winner!! Rui !!

 

「あっ……!」

 

システムが下した勝者はルイ。砂埃が落ち着いて二機の姿が現れる。

 

「ちくしょう……!!」

 

AGE1ヒバナの擬似パルマフィオキィーナは確かに、グレイズツヴァイのコックピットを貫いた。しかし、グレイズツヴァイの剛腕によって狙いが僅かに逸らされ、撃墜判定にならないギリギリのラインで、だが。

その一方、AGE1は酷使した機体が限界を迎え、後一歩のところで機能停止してしまった。左半身と右脚を失いながら、渾身の一撃を放ったのだ。歯痒い結果となったが妥当だとも言える。

破損したコックピットからはルイの半身が覗いていた。その表情は勝者にしては暗く、ぎこちない。

 

「偶然だ……圧倒的に有利な状況で、俺はまた敗北するところだった……」

 

「それでも……勝ちは勝ち、結果が全てですっ……!!」

 

ケンの声色から、強い落胆と悔しさが伝わってくる。たかが模擬戦とはいえ、そこにかけた思いと勝利への執念は本物だった。だからこそ、ルイも心の底からの感謝を伝える。

 

「対戦、ありがとう暇つぶしには勿体無いくらいの素晴らしい戦いだった。」

 

「こちらこそ……ありがとうございました。」

 

グレイズツヴァイの上半身がグラッと崩れ始める。

 

「すまんな……勝利したとはいえ、この損害ではHPの自然減少でバトルアウトになるだろう……奴に……ハルマによろしく伝えておいてくれ」

 

グレイズツヴァイが光に包まれ、それとともにルイも姿を消す。

荒れ果てた平原には、大破したAGE1が残された。

[newpage]

 

「いやはや、ナイスファイトだったよケン君」

 

「は、はぁ、ありがとうございます…」

 

戦いが終わったのとほぼ同時にフォースネストに到着した2人。

話を聞けばハルマが連れてきたのはGBN No2フォースの首領、ロンメルだというではないか。いっときは悔し涙が溢れそうなケンだったが、あまりの衝撃にその涙は流れることなく引っ込んでしまった。

 

「あのー、大佐?そろそろ教えてくれませんか?

俺たちのバトルログを求めた理由と、ケンになんでそんな注目してるのか」

 

ハルマ、ラナ、ケン、3人の視線がロンメルに集まる。

 

「そうだね……単刀直入に言おうか」

 

ロンメルが立ち上がり、ケンに向け手を差し出す。

 

「ケン君、君には来月行われる大会、GMトレーナーズカップに出場し優勝して欲しい」

 

 

ーーーーー

 

「ー♪ーー♪ーーーー♪〜〜〜♪♪」

 

「ご機嫌ですねボス。鼻歌とは珍しい……」

 

「あぁ、居たのか、そうだね、こうも思い通りに計画が進めば鼻歌の一つでも歌いたくなるさ」

 

空に浮かぶ資源衛星に偽装されたアジトの中、ボスと呼ばれた男は嬉しそうに空の星を眺めている。

 

「君だって嬉しいだろう?念願叶って愛する家族と再開できるなら、ね」

 

「私の場合は復讐を果たすまでが計画です」

 

仮面の男はそう返答するが、ボスと呼ばれた男は既に彼の言葉など耳に入ってはいなかった。

 

「後少し……後少しなんだ……ようやく、取り戻せる……」

 

戯言のように呟く彼の顔はにこやかな笑顔だったが、その目には生気が感じられない。

 

「……またか、全く困ったものだ。」

 

傍に抱えていた報告書を机に投げ捨て、部屋から出る。

 

無機質な廊下を進みカタパルトに置かれた愛機、ディランザR9に搭乗。

 

オカエリナサイマセ、コウサマ。キョウハドウイタシマスカ?

 

無機質な機械音と共に現れた禍々しいコンソールを叩く。

 

「レベル8のアーティファクトを三体、カタパルトから打ち出せ。搭乗機は……バルバトス、クロスボーン、それと……AGE1だ。データの記録も忘れるなよ」

 

リョウカイイタシマシタ、ゴブウンヲイノリマス

 

「……ふん、設定通りの世辞を言われて嬉しい人間などいるものか」

 

偽装されたカタパルト口から三つの光を確認し、ディランザを発進体制に移行させる。

 

「コウ、ディランザR9、これよりテストを開始する」

 

 

デブリ舞う宇宙に赤い軌跡が刻まれた。

 

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