ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第6話燃え上がる闘志

「ハイハイ!おしまいおしまい!」

 

バルバトスが刀を納め、肩をすくめながらグレイズツヴァイに背を向ける。

 

「そんな!あとちょっとでパターンを掴めそうなんだ!!あと一回!あと一回だけでいいから頼む!!」

 

懇願するルイを見て溜め息をつきながらハルマが口を開く。

 

「わかったよ……もう30回も決闘してるからな?本当にあと一回だぞ?」

 

(まったく……なんて忙しい1日だ……)

 

空を見上げながらハルマはロンメルとの会話を思い出す。

 

 

 

「僕が……大会に出て優勝…?ど、どういう意味ですか?」

 

「それを説明するには今のGBNの現状を理解しなければならない。ハルマ、ケン君と出会ってから何回MAクラスと戦った?」

 

突然話を振られたハルマ。困惑しながらここ最近の記憶を洗い出す。

 

「お、俺ですか?えっーと、ケンと出会ったその日にルイのグレイズアインと戦って……」

 

ケンがひょんなことからGBNを始めたあの日、

戦闘に巻き込まれたハルマ達はルイの操るグレイズアインと戦った。

 

「僕がヒバナを完成させた日にも戦いましたよね」

 

ヒバナを完成させ、ハルマに次こそは勝つと意気込んでいたあの日、突然の轟音と共に現れたムラサメと戦った。ケンはあの後、そのムラサメに襲われていたダイバー、ハジメとフレンド登録しており、時たまに改造の相談等をしたりしていたが、最近はどうやら忙しいようであまり連絡が取れていない……

 

「あっ!そういえばウチの店の大会にも!」

 

ラナが口に手を当て叫んだ。

彼女が思い出したのは大会中に乱入してきたあの大男のことだろう。GBNの外の話とはいえ、MAと戦ったのに違いはない。最も、その男の操るノイエジールと戦ったのは店長であり、この場にはいないが。

 

「そう……ケン君がGBNを始めて数ヶ月にも関わらず、MAクラスのガンプラと"何度も"出会っている。」

 

ロンメルの声色が低くなり、表情に影がかかる。だが、ハルマ含め、三人は何が深刻なのかわからない。確かに最近、MAが多いのはハルマもラナも認識していた。ケンが本気でGBNにのめり込むまでは、このMA環境に嫌気が差して辞めてしまうのではないか……そう心配していた時期もあった。だが、結果的にケンはGBNを続けており、2人の心配は杞憂に終わったとそう思っていた。

 

「ですが大佐、いくらMAクラスが多いからといって、それが何か重大な問題に繋がるとは思えないんですけど……」

 

恐る恐る口を開くハルマ。

ラナもケンもその発言に頷く。

 

「私も最初は単なる流行だと判断していた……このデータを見るまではね」

 

ロンメルがメッセージウィンドウを開き、ある一通のメールを開く。その中には円グラフが一つ、添付されていた。三人が詰め寄り、そのグラフをじっと見つめる。最初に驚きの声をあげたのはハルマ。

 

「なっ……!!なんだよこのデータは!!」

 

あまりの衝撃に敬語が消える。

その円グラフの内容は……大まかに分けられたGBNに登録されたガンプラの割合だった。

 

HGクラス:47%

 

MAクラス:30%

 

SDクラス20%

 

etc……3%

 

※HGクラスは一部の大型ガンプラを除いたモビルスーツ

 

etcはそれ以外……艦艇や輸送機のEXモデルなどの特殊キット

 

尚、MG以上のサイズの機体は元々、サーバーが分けられているため、このグラフには含まれない。

 

 

「えっと……これの何がおかしーー」

 

「おかしいってレベルじゃない!!MAが多すぎる!!」

 

現在、GBNの総プレイヤー数は2000万人程だ。

MGサーバーなどの一部の例外を考えずに単純な計算をすると……30%、その数は約60万人程になってしまう。ただの流行と判断するにはいささか数が多すぎる。

 

「それだけではないんだ。ここ数ヶ月にGBNを始めたダイバーの半数以上がMAを乗機にしているというデータもある。それに、MAを格安でレンタルするサイトの報告も上がっている。運営もこの事態を重く見て新たな専用サーバーを作っているようだが……」

 

「対策としては時間がかかりすぎる。そうですよね?」

 

「ああ、こんな環境で初心者限定大会をしたところで結果は目に見えている。」

 

MAクラスがひしめく大会。技量ではなく性能でゴリ押す試合の数々。 慣れたダイバーからしたらあまり面白くなるとは思えないが、それでもインパクトは絶大だろう。それを見たダイバーがMAに乗り換え……その数が増えていく。MAを否定するわけではないが、純粋にGBNでガンプラバトルをしたい者にとっては迷惑でしかない。初心者がMA以外を使うのは論外!!なんて風潮ができてしまったら目も当てられない。

 

「まさか大佐、ケンを優勝させてこの環境を変えるつもりでは……?」

 

「そのまさかだよ、ハルマ。この運営の対策が後手に回っている現状、この環境を変えられるのは初心者ダイバー、それもMSに乗った実力のある者だけだ。先ほどの戦闘を見て確信したよ。」

 

背後に組んでいた手をケンに向けるロンメル。

 

「ケン君なら、十分に優勝の可能性はある。大会の申請は5日後までだ。……改めてお願いだ。GMトレーナーズカップ、この大会に出て優勝してほしい。」

ーーーーー

 

「そんな大役、僕に務まりますかね……」

 

ハルマよりも一足先にログアウトしたケンイチは工作室の机に突っ伏して項垂れていた。

店のカウンターではラナが店長にことの経緯を説明している。

 

「なるほどねー今のGBNってそんなにMAが多いんだね〜面白そう」

 

「呑気なこと言わないでよ店長、ケンイチはそんな中で大会優勝を目指すのよ」

 

「そうだね、そんなMAばっかの大会にもしケンイチ君が出て優勝を狙うのだとしたら……もっと強くならないと」

 

ケンイチとしては大会に出ることについて、忌避感はない。GBNトップクラスのダイバーに、優勝の可能性があると断言されたのだ。何もない普通の大会ならこんなに嬉しいことはない……喜んで大会にエントリーするだろう。そう、何もない普通の大会なら。その上、ケンイチはつい先刻そのMAクラスの機体である、ルイのグレイズツヴァイに後一歩及ばなかったのだ。褒められた事実と敗北した結果が頭の中で絡まって自信があるのか、ないのか、実力があるのか、無いのか、自分でもわからなくなってきた。

 

「そうだ!!僕が作った、とっておきの武器を貸してあげよう!ちょっと待ってね!! 今、持ってくるから!」

 

そんなケンイチの苦労は露知らず、バックヤードへと走り去る店長。その後をラナが追う。

 

「ちょ、ちょっと!そんなこと言って本当は自慢したいだけでけでしょ!!」

 

ポツンと残されたケンイチ。

机の上に置いたAGE1ヒバナ改を見つめる。

 

(僕に足りないのは……)

 

チリーン

 

「あ、いらっしゃいませー」

 

つい癖でいらっしゃいませと言ってしまうケンイチ。依然の臨時バイトの時から、入店音が聞こえるとつい口走ってしまう癖がついてしまった。いつもならハルマや店長が笑い飛ばしてくれるが、今、店内には誰もいない。入店したお客さんに勘違いさせてしまったかと思い工作室からちらっと顔を出す。

 

「……誰だ?新しいバイトか?」

 

顔を出すと、170を優に超える身長のお客さん(?)がいた。身長もそうだが、まず目に入るのはその格好。梅雨が明け、初夏の兆しが見え始めたこの気温でなぜ、そんな砂漠の放浪民のようなフード付きのマントを羽織っているのか……いや、よく見たら服装の所々が砂っぽい。まさか本当に砂漠の国の人なのか……?

想像の斜め上のお客さんに口ごもってしまうケンイチ。失礼のないように何か言葉を発さなければ……!!

 

「あっー!つっかれたぁ!」

 

静寂の中、ダイブルームからログアウトしたハルマが出てくる。瞬間、謎のお客さんとハルマの目が合う。

 

「丁度いいところに、久しぶりだなぁ、ハ、ル、マ?」

 

わざとらしく発言を区切りながらハルマに近づくお客さん。フードで顔が見えないにも関わらず、何故か邪悪な笑顔だと本能的に認識出来る。

 

「#〆〜!%△#?%◎&@□!!!」

 

言葉にならない叫び声をあげながらハルマはダイブルームに戻ろうとする。相当な慌て具合だ。

 

「どうした?そんなに師匠との再会が嬉しいか」

 

逃げるハルマに瞬時に近づき、彼の頭を鷲掴みにして……持ち上げた?!片手で?!ジタバタと足をバタつかせ、必死に逃れようとしているハルマ。だが、びくともしないお客さん。

 

(ど、どうしよう?!店長を呼びに……)

 

「何、さっきのバケモノの咆哮みたいなの……」

 

ちょうどよく店長が戻ってきてくれた。これで状況が良くなれば……

 

「あっ、ただいまマサ」

 

「テルミさん?!帰ってくるなら言ってくればよかったのに……おかえりなさい」

 

声のトーンが2段階ほど高くなったお客さん……テルミさんは店長の知り合いのようだ。

 

「ハナシテ……ハナシテ……」

 

ハルマが弱々しく抵抗するのを他所に2人は仲良く再会を喜んだ。

 

 

 

 

 

 

「先ほどは失礼しましたケンイチ君。ウミモト テルミです。いつも夫がお世話になっております。」

 

「ご丁寧にどうも……」

 

服を着替え、店用のエプロンを着たお客さん……もとい、テルミさんは最悪のファーストインプレッションを覆すほどの美人だった。服の上からでもわかる筋肉の盛り上がりが、成人男性1人をを持ち上げた説得力を持たせている。

その持ち上げられた当人であるハルマはケンイチの横でガクブルと震え、青ざめている。

 

「そういえば店長、ラナさんは?」

 

「充電中、なんか調子悪いんだって」

 

「あのヤロウ……逃げやがった……」

 

舌打ちをするハルマ。それに気づいたテルミが首を傾げながら問いかける。

 

「どうした?ハルマ?何かいったか?」

 

「イエ、ナニモイッテナイデス……」

 

一体この模型店の人間関係はどうなっているのだろうか?

 

「それにしても帰ってくるの早かったね、いい写真は撮れた?」

 

店長が話題をさりげなく変え、テルミに問いかける。

 

「あぁ、おかげさまで」

 

著名な風景カメラマンであるテルミはこのように、不定期に店を開け、旅に出るらしい。

 

「ところで……ここにあるAGE1はケンイチ君の?」

 

テルミが指差す先にはケンイチのAGE1ヒバナ改が。

えぇ、とうなづき、手元へ引き寄せる。衝撃の連続ですっかり忘れていたが、数分前まではこの机に突っ伏して自分の実力に疑心暗鬼になっていた。

 

「数ヶ月前に始めたばっかなんだよね〜」

 

「なるほど……その割にはなかなかヤれそう……」

 

整った顔から放たれる邪悪な笑み。明らかに捕食者の目をしている。ハルマが怯える理由が少しわかった気がした。

 

「し、師匠!!いくらなんでもケンイチと闘うのは……」

 

「じゃあお前が相手してくれるか、ハルマ?仕事が忙しくて、なかなかガンプラバトルやれてなかったからな」

 

「ヒッ……!いや、うん、ケンイチもなんか伸び悩んでるらしいし一度戦ってみたらどうだ?」

 

お手本のような手のひら返しを見た気がする。だがケンイチはあることに気づく。

 

「そういえば師匠って?」

 

「あぁ、僕たち意外と長い付き合いで……GPD時代からかな?その時からハルマはテルミさんにやられっぱなしなんだ」

 

店長が言うには今年で8年ほどになる付き合いの三人は、GPDの時代からガンプラバトルにのめり込んでいたらしい。その中でもテルミさんは三人の中でも一番の実力者だそうだ。なんでも、GBNの適合率が異常に高いらしい。初めてログインした時から、

 

「そうだケンイチ君!!テルミさんに修行つけてもらったら?」

 

店長の提案を聞き、ケンイチはテルミにことの事情を説明した。MA云々も含め、大会に勝ちたいが自信がないと言う体で。

 

「なるほど…そういうことなら、私にできることならなんでもしよう」

 

「ありがとうございます!!」

 

正直、悪い人ではないだろうがハルマがこんなになるほどの人に修行をつけてもらうのは……期待よりも不安が勝ってしまう。とりあえず、テルミさんとフレンド登録をして、明日、ログインする時間を決め家に帰る。

ーーーーー

 

翌日

 

GRFフォースネスト内、客間

 

 

「では、早速始めるとしよう」

 

「よろしくお願いします!!!」

 

元気よく返事をするケン。

 

「昨日の戦いは見せてもらった。それを踏まえて修行の方針を決めよう。」

 

「っ……はい!」

 

思ったよりも本格的だ、どんな厳しい修行が待っているのだろうかと固唾を飲む。

 

「と、言いたいところだが……君の直す場所は特に無いな、うん。」

 

「へ?」

 

「君の動きはかなり理想的だった。つまり直すところはない。だから……必殺技の習得に時間をかけるべきだな」

 

「必殺技……?」

 

「なんだ?知らないのか?」

 

ケンは知らなかったが、GBNではCランク以上になると必殺技が使えるようになる。現在ケンはDランク。あと少しで習得可能だ。

 

「そんなものがあるんですか…知らなかった」

 

「さて、方針が決まったところで……そうだな、ケン君、私と一戦やろうか」

 

 

ーーーーー

 

「よし、始めようか」

 

平原で相対する二機。片方はAGE 1ヒバナ改、もう片方は鮮やかな橙色で塗られたレギンレイズアクセルヒート。もちろんテルミの乗機だ。

 

(相手はレギンレイズ……両腕には一丁ずつのライフル、肩にはミサイルポッドか。機動力で引き撃ちする機体と見た。距離を詰めて格闘戦に持ち込めばいいだろう。)

 

battle start!!

 

システム音声が両者のコックピットに流れたその瞬間、レギンレイズが……ライフルを捨てた。

そのライフルが地面に落ちる前にレギンレイズが爆発的な加速を始め、マニュピュレーターを回転させながらAGE1へと迫る。

 

「は?」

 

battle ended!!

 

「え?」

 

そこには、コックピットが抉り取られたかのように消滅したAGE1と煙を拭きながら拳を収めるレギンレイズが。

一瞬で撃墜されたケンがフォースネストにリスポーン。何が起こったのか全くわからず、リスポーンしたことに気づくのに数秒かかった。自分が負けたのだと理解し慌てて平原に戻る。

 

「さて、戻ってきたところで説明をしようか、今のが私の必殺技だ。」

 

「一体何が……?」

 

「簡単さ、とてつもない速度をつけて、拳を回転させながら殴った。単純だが、必殺技補正によって威力は上昇、結果は見ての通りだ。」

 

「これが……必殺技」

 

予想していたいかにも熱血主人公が叫ぶような派手なエフェクトはなかったが、それでも初めてまたケンは心が躍った。自分もあんな必殺技が使えるだろうかと。

 

「あぁ、大会の参加登録は……4日後だったな、なら今日含め4日で必殺技をモノにしろ。」

 

「は、ハイ!!」

 

「では具体的な修行メニューだが……」

 

ケンは指定された効率のいいミッションをこなしランクを上げ、それをテルミが見守る。

効率のいいミッションといってもvsデストロイ、vsラフレシアなどなど、ほとんどが対MAの大会に向けたミッションであり、一つのミッションをこなすのにかなり時間がかかってしまった。

ちょうどCランクになったところで気づいたがミッションにテルミが参加することでマルチプレイ用に敵機の体力が調整されていた。道理で時間がかかる訳だ。

キリの良いところで、テルミから今日はもう遅いから本格的な修行は明日からと伝えられる。時刻を見ると19時を回っていた。急いでログアウトし、ハルマたちに別れを告げ、帰路に立つ。

 

翌日、

 

「では今日も張り切って行こう」

 

「よろしくお願いします」

 

「肝心の必殺技だが……その習得にはキッカケが必要だ」

 

「そうなんですか?」

 

ダイバーの危機的状況や高精度の改造によって使用可能になる必殺技。ガンプラのベース機の原作から閃いたり、全くのオリジナル技だったり……ダイバーの経験と閃きが必殺技習得の肝である、とテルミは考えているらしい。本当かどうかは定かではないが、そんな仕様の必殺技を身につけるには……

 

「実戦の経験を積むのが一番手っ取り早い」

 

拳を前に出し、構えるレギンレイズ。やる気満々だ。

 

「結局そうなるんですね……」

 

「というわけで今日からひたすら私とタイマンだ、キッカケを掴めるまでとことんやろう」

 

昨日と同じく、向かい合う二機。瞬殺のトラウマが甦るケン。だが、

 

(昨日、徹夜して右腕のパルマの飛距離を伸ばす改造をしてきた。バトルスタートの瞬間に発射して瞬殺の仕返しをしてやる!!)

 

邪な考えを抱きながら手元のスロットを切り替え、武装を選択。実は昨日の瞬殺がかなりショックだったケンは、密かにやり返しの機会を伺っていた。こうも早く実現するとは思わなかったが、これはチャンスだ。目にものを見せてやろう。

 

battle start!!

 

「喰らえ!パルマーーーー」

 

「なっ!」

 

戦闘開始の瞬間、AGE1が右手を突き出し、手のひらが光に包まれ、高出力のビームが……放たれなかった。

 

「アレ?どうして?」

 

AGE1が手のひらを上へ向けるとビームではなく、手のひらのビーム砲からは、炎のエフェクトがメラメラと音を立てていた。

 

どうやら手のひらを改造したことでシステムが勘違いをし、手のひらのビーム砲を火炎放射器だと判定してしまったようだ。手から炎をだし、あまりにも間抜けな絵面で立ち尽くすAGE1。

それを見たレギンレイズがライフルを収め、AGE1に近づく。

 

「ケン君……」

 

「ち、違うんです!これはーーー」

 

怒られる。そう思ったケンは即座に頭の中をフル回転させ、必死に言い訳を考える。こんな質の悪い手品みたいな行為は明らかにふざけているとしか思えない。何かいい言い訳はないだろうかと口を開こうとすると……。

 

「もう既に必殺技のきっかけを掴んでいたとはは……今日で修行は終わりだ」

 

「え?」

 

「ん?」

 

お互い予想外の反応。全く話の噛み合っていない2人。彼らが状況を理解するのには数十分の時間がかかった。

 

翌日

 

「修行、終わったんだって?」

 

修行の成果を見せたいとのことでケンに誘われ、ログインしたハルマ。

 

「ええ!必殺技も完成したし、ハルマさんに試し撃ちしたくって!」

 

「言うようになったなぁ、ケン!そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか!」

 

挑発的な発言をするハルマ。だが彼は内心、かなり動揺していた。

 

(師匠の修行がこんなに早く終わるだと?!あり得ない……でもあの人は自分にも他人にも妥協を許さない人だ……信じられないけど本当に必殺技をものにしたのか?)

 

「行きますよー!!」

 

無邪気に笑いながらケンが1on1のコマンドを打つ。

 

battle start!!

 

先制攻撃を仕掛けたのはケン。距離を縮めながら、左腕からビーム砲を放つ。

 

「パルマか!ちょっと見ない間に大分様変わりしたな!」

 

予想外の不意打ちだったが余裕で回避するハルマ。

負けじと狙いをつけライフルを放つ。

 

「こんなんで驚いていたら、負けちゃいますよ!」

 

ハルマのバルバトスもケンのAGE1も両者共に近接寄りのオールラウンダー機体だ。試合が進むにつれ、必然的にショートレンジの格闘戦になる。刀とビームサーベルの鍔迫り合いが数度起こった後、

 

 

「もらった!」

 

「うわっ!」

 

剣戟の隙をつき、AGE1のビームサーベルを刀で

押し返すバルバトス。ビームサーベルがAGE1の手元から離れ、遥か後方に飛ばされる。今までならこれで決着がついていた。

 

(だが今のAGE1にはパルマがある!)

 

ハルマの予想通り、ビームサーベルを失ったことに構いもせず、右の手のひらに力を込める構えを取るAGE1、

 

「バレバレだぜ!!ケン!」

 

バックステップで距離を取るハルマ。ラグナセカンドの機動力は凄まじく、一瞬で間合いが遠のく。近接ならまだしも、距離さえとればナノラミネートアーマーの仕様で十分に耐えれるとの考えだ。

 

しかしそのセリフを聞いたケンはコックピットでニヤリと笑う。コンソールには[[rb:必殺技 > finishmove]]の文字が浮かんでいた。

 

「これが僕の必殺技だ!」

 

必殺、『パルマフィオバーナー!!!』

 

「いっけえええッ!!」

 

手のひらから放たれた高出力の熱線の塊が地面を焼き尽くしながらバルバトスに迫る。

「ま、マジかよ!!」

ーーーー

「右腕から火炎放射を出す。これをケン君の必殺技のベースとしよう」

テルミがそういった時、ケンは正気かと思った。

こんな弱々しい炎で必殺など言い張れることができるのかと。

「それは使い方次第だ。調整のついでに左腕にもパルマを内蔵するんだ。そうすれば〔こいつはパルマを撃つ〕左のパルマでそう印象つけた後に右腕で必殺の火炎放射!!相手は死ぬ!……もちろんそうするには右手の威力を底上げしなければならないが……そこはなんとかしよう、先ずはメタルパーツを使ってだなーーー」

ーーーーー

(テルミさんの言う通りだった!あとでお礼しなくちゃ!!)

 

瞬間、迫る熱線がバルバトスを捉え、そのままの勢いで数キロ先の岩肌まで押し倒す。その爆風で地面から百メートル程の土煙が舞う。

 

「やっ、やったか?!」

 

ケンのコックピットには抉り取られた地面だけが映し出されていた。勝負あったかと思ったその時。

 

「あっぶねぇーー!!」

 

回線からハルマの声が聞こえてくる。システムもまだ勝敗を下していないと言うことは仕留めきれなかったと言うことだ。

 

「ッ……!!一体どこに……」

 

「あー上だよ上」

 

ケンが見上げるとそこには赤い戦闘機が。

ハルマがパルマフィオバーナーに焼かれるその刹那、間一髪でバックパックであるⅡフェイザーを切り離し、メイン機体をそのまま移行。バルバトスは跡形もなく消し飛んだが、ギリギリのところで敗北を回避した。

 

「まさか……アレを耐えるなんて」

 

「いやーでもこれじゃあ試合になんねぇよ、ギブだギブ」

 

ハルマが降参し、バトル終了のシステム音声が流れる。勝者はケン。ハルマに対して初めての勝利だった。ケンとしては物足りないがハルマはどこか満足そうな顔をしていた。

 

「これで大会はバッチリだな、ケン」

 

「はい!」

 

「ところで……申請はもうしたのか?」

 

「あっ……」

 

「おいおい!?あと30分で終わっちまうぞ?!」

 

大慌てでロビーへと向かう2人。

切れないはずの息を切らしながらギリギリのところで大会の申請を完了させた。

 

「せっかく修行したのに、申請忘れてましたなんて……シャレにならんよ……」

 

「いや本当に……すいません……」

 

ロビー前で倒れ込む2人。申請を終えたいまでも心臓が爆発しそうなほど動いている。本当に紙一重だった……

 

「あのー大丈夫ですか?そんなに息を切らして……」

 

「あーご親切にどうも……」

 

「ってその声は……ハジメ君?!」

 

2人が顔を上げるとそこには以前、救難信号を受け助けたハジメが。

 

「ハルマにケン?!その節はどうも……で、そんなに息を切らして……一体何が?」

 

「実はかくかくしかじかで……」

 

ことの顛末を話すハルマ。ケンは自分の失敗を話され、頭を掻きながら照れ隠しする。2人とも笑い話として話したつもりだった。しかし、ハジメの顔は笑みを浮かべるどころか深刻な表情になる。

 

「そうか……ケン、君もGMトレーナーズカップに出場するんだな」

 

「君……も?と言うことは……」

 

「あぁ、俺も出場するんだ、と言うことは俺たちはライバルということになる」

 

「で、でも今回の大会は……」

 

「知ってるよ、MAが多いんだろ?ここ数ヶ月、嫌というほど思い知らされたよ、初心者が勝つにはMAに頼るのが楽だって」

 

そう言い放つハジメの声は震えていた。嫌というほど、と言う言葉の重みが増す。

 

「だけど、俺は自分で作った自分が好きなガンプラで戦いたい、アンタらに助けられてからその思いは一層増していった、憧れたんだよ」

 

ハジメはそう言うと手をケンに向け、差し出した。

 

「健闘を祈る、できることなら決勝で会おう、ケン」

 

「……もちろんだよ、ハジメ」

 

握手する2人、どちらの目も闘志に満ち溢れていた。

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