ガンダムビルドダイバーズ LINK carnation   作:Haturu

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第7話勝利への執念

『さぁGMトレーナーズカップ、予戦も佳境を迎え、今、最後の本戦出場者が決まろうとしています!!』

 

マイクを握った、いかにもな服装の司会者が指すモニターに映し出されたのは、荒野で戦う二機のガンプラ。

 

「クッソタレがぁ!!なんで……」

 

「なんでMSに火力で負けるんだよぉおおお!!」

 

情けない断末魔を発し、戦闘をしていた片方のガンプラ、ハシュマルは、その巨大な体躯を易々と飲み込むほどの巨大な熱線に、自身の放ったビームごと飲み込まれ、戦線離脱、バトルアウトした。

 

『決着ーーー!!!数多の巨人を打ち倒し、Gブロックの頂点に立ったのは!!焔の勇者、ケン選手だーーー!!!』

 

ピッ

空に映し出されたモニターの停止ボタンを押し、録画されていた映像が停止する。

 

「えーではでは!我らが同志、ケン君の本戦出場を祝ってーーー!」

 

「「「乾杯ーーー!!」」」

 

フォースネスト内で小さな祝勝会を開いているのは、今回の主役であるケン。そしてハルマ、ラナ。2日に及ぶ激闘を制し、見事勝ち抜いたケンの本戦出場を祝うため、本戦出場を決めたその日のうちに行われたこの会は、店長やテルミを始め、多くの人を招待したのだが、かなり突発的な思いつきだったこともあり、結局はいつもの三人になってしまった。それでも祝われている当人はいつも以上に、にこやかである。

 

「大会の途中ではあるけれど、それでも嬉しいですね、やっぱり!」

 

ジュースの入ったコップを大事そうに抱えながら、ケンが言う。

 

「MA全盛の環境でよく戦ったわねケン、分かってはいたけれど、全部の試合がMAと、だなんて大変だったでしょ?」

 

カーネーションの髪飾りをいじりながら、言葉を発するラナ。観戦していて気が気じゃなかった、と付け足す。

 

「そりゃあもう!!まぁ、何回かは相手の自滅がありしたけど……でもなんとかなりました!」

 

今回のような1on1のみの大会では、一度登録した機体の変更は原則認められていないことが多い。にも関わらず地上適正、宇宙適正のない機体で登録するツワモノ……いや負けているのだからバカモノか。そういった人種がある程度現れる。

今回も例に漏れず、世にも珍しい宇宙で泳ぐゾック(TB)だったり、地上で情けなく這い回るビグロを見ることができた。

そもそも、MAとはMSの汎用性を殴り捨てることで、高い性能を約束されている節がある。多くのフィールドで戦闘を繰り返す大会で使うのなら、それ相応の実力が備わっていなければならない。

そういったMAの弱さを周知させるのが今回の目的なので、そういったバカモノにも、ある意味感謝をしなければならないかもしれないが……

 

ピロン♪

突如、メッセージの着信を知らせるSEが三人の耳に入る。ケンがメッセージウィンドウを開くと一通のメールが運営から届いていた。

 

「おっ、本戦出場者のリストか」

 

「そう見たいです……あっ、」

 

流し見していた出場者のダイバーネームに見覚えのあるものが一つ………ハジメだ。添付された機体データには依然より凶悪な姿となったシビリアンアストレイが。

 

「おー、ハジメも勝ち進んでたか、しかもトーナメント的に対戦するとしたら決勝じゃないか?」

 

メールの最後に添付されていたトーナメントには右端にハジメ、左端にケンと記入されていた。

 

「……!!」

 

ーーーーー

「健闘を祈る、できることなら決勝で会おう、ケン」

 

「……もちろんだよ、ハジメ」

ーーーーー

 

「そうか……会えるのか……!!」

 

大会前の記憶が微かに頭をよぎり、お祝いムードであったケンの目に、闘志がたぎる。

 

「……ラナさん、今回の大会の録画ってどれくらいありますか?」

 

「一応、本戦に出そうな奴は片っ端から録画しといたよ」

 

「じゃあ……見せてもらえますか?対策、しておきたいです」

 

「ええ、もちろん!」

 

「俺も手伝うよ、初代王者のアドバイス、必要だろ?」

 

「ありがとうございます……!!じゃあ早速、ハジメのシビリアンアストレイの分析から……」

 

数分で終わった祝勝会の片付けをしながら、録画した戦闘を再生する。先ほどと同じ司会者の声から録画が始まった。

 

『ではEブロック決勝!!ガンプラバトル、レディーー!ゴー!!』

 

最初に再生されたのはハジメのシビリアンアストレイVSaアジール。戦闘フィールドは偶然にもアクシズ周辺。背景として、ロンドベルとネオジオンの艦隊や、ジェガンとギラドーガが戦闘を繰り広げている。

 

「シビリアンアストレイ、大分改造されているな」

 

初対面の時の無改造で、部分塗装もされてなかった初々しいガンプラが今は見る影もない。

ベース機の背部にあった特徴的なバックパックは、二基のブースターと一基のテイルスタビライザーに変更され、肩にはグレネードのようなものが装備されている。

武装はシグーのライフルを改造したものを右腕に、左腕にはベース機からシールドが装備されている。

一見無改造に見えるシールドもよく見ると謎のユニットが接続されていた。

 

『さぁ、aアジールが仕掛ける!!』

 

膨大な推力をふんだんに使いながら、ファンネルの波状攻撃を仕掛ける。網目のように展開されたビームがシビリアンアストレイを囲む。

 

「さぁどうする……?!」

 

360°、あらゆる角度から繰り出されるビームを

シビリアンアストレイは針の穴に糸を通すかのような繊細な動きで躱していく。

ファンネルがエネルギーの再充電のために本体へ戻るのを見計らい、ライフルで牽制射撃。

大量の薬莢が無重量下で撒き散らされる。

 

「なんか弾多くね……?」

 

「おかしいですよね……やっぱり」

 

シグーのライフルというぱっと見でもわかるレベルの、簡素な改造ライフルがガトリングと見間違うほどの弾をばら撒き、弾幕を形成。aアジールの装甲をほんの僅かに、だが確実にじわじわと削っていく。

この弾幕の中、ファンネルを出すのはリスキーだと考えたのだろうか。aアジールは31個のアポジモーターをフル稼働させアストレイの前を横切ろうと、逃走を図る。距離をとってから再度ファンネルを使用するのだろう。

だが、ハジメはそれを許さなかった。αアジールがトップスピードに達する前に肩に搭載されたスモークグレネードを放つ。

視界が塞がれたαアジールはあからさまな動揺を見せ、搭載された武装を片っ端から撃ち尽くさんとしていた。

 

「悪いな、俺の勝ちだ」

 

煙の中から一筋の光が発せられた次の瞬間、内側からの爆発がスモークを打ち消した。

中から出てきたのは、シビリアンアストレイただ一機。

周辺には先ほどまで形をなしていただろうaアジールの破片が漂っていた。

 

ーーーー

 

 

 

「……あらかた見終わったか?」

 

「そうね、録画した本戦出場者のバトルはこれで全部よ」

 

録画を見始めてから数時間後、ケンを除いた出場者のバトルの分析が終わった。

 

「ううむ……なかなかに強敵揃いだな……」

 

「分かってはいたけれど、ケンとハジメ以外はMAね」

 

「え?この人違うじゃないですか」

 

ケンがトーナメント表を見ながら名前をつついたのはケンの次の対戦相手であるダイバー。

乗機は……ティターンズカラーに塗られたアッシマーだ。

 

「あー……いやまぁ、コイツもMS扱いでいいんじゃないか?」

 

「確かにここで設定に忠実になるのはよくないわね……」

 

微妙な笑みを浮かべながら、ハルマとラナが見合う。訳の分からないケンはただ首を傾げることしかできなかった。

 

「とにかく、そのアッシマー使いが第一の壁であることには変わりねぇんだ!負けんなよケン!!」

 

「は、はい!!」

 

 

一週間後、本戦が始まるーーー!!!

 

「……よし!!」

 

控え室でのガンプラの最終確認を終え、気合を入れ直す。

試合が終わったのだろう。部屋の外から歓声が上がった。

自動ドアをくぐり通路に出る。

狭い通路をまっすぐ進むと格納庫に繋がっていた。当然、AGE1ヒバナがそこに立つ。

 

「頑張ろうな!!ヒバナ!!」

 

格納庫にエマージェンシーが鳴る。試合開始数分前の合図だ。ヒバナに搭乗し出撃を待つ。

 

 

 

『ガンプラバトル!!レディー!!goーー!!』

 

お決まりの合図で戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「フィールドは荒野か……」

 

中央に横幅数十メートルの峡谷がある以外、フィールドの90%が荒れ果てた土肌であるこのフィールドは、不意打ちなどを考慮しなくていいのがいいところだ。相手がステルス機なら話が別だが、その心配はない。

バトルの仕様で開始時は数キロ離れているため、いきなりの攻撃はないが……問題は相手が可変機ということだ。すぐにでも距離を詰めてくるだろう。

ちょうど良い大きさの岩に体を預け、索敵を続ける。目の前には遮蔽物のない地平線のみ。

レーダーを使わなくても敵が現れたらすぐに分かる。

 

途端、DNAのように唸ったビームが視界に入る。1on1の仕様の大会、十中八九、対戦相手であるアッシマーのものだろう。だが理解不能なのはそのビームの狙いが上空に向いていたことだ。いや、それだけではない。一定の間隔で連射されているあのビームの意図は……

 

「モールス信号……?」

 

観客席にいたラナが呟く。

隣で観戦していたハルマもそれに同意しうなづく。

 

「あぁ、あれはモールス信号だな」

 

「ハルマ、モールス信号、分かる?」

 

「いや?分からん、まぁ、何かを伝えようとしているのは確かでしょ」

 

 

岩の影から慎重に状況をうかがうケン。

 

(うーん、コッチヘコイ?怪しいにも程があるよ……)

 

だがビームの火線は1ミリほどもずれることなく、一定間隔で発射され続けている。このままでは埒が開かない。恐る恐る、岩から身体を出して一歩ずつゆっくりと近づく。

数歩歩くと、コンソールにロックオンカーソルが現れ、射程距離内に入ったことを知らせた。相手もそれは同じだろうが、ビームは相変わらず上空の雲を撃ち抜いていた。不埒な思惑はないと判断しそのまま歩みを続ける。

 

「お望み通り、近づきましたよ」

 

アッシマーとの距離50メートルほどまで近づき、オープン回線を開く。今までの奇妙な行動が不意打ち目的ではない限り、何らかのアクションが起こるはずだ。

AGE1をいつでも動かせるように操縦桿を握り直し、相手の返答を待つ。

 

「………」

 

アッシマーがライフルを地面に叩きつけ、足で粉砕した。そのままの流れで拳を構え、半身になる。

 

「……あぁ、そういうこと」

 

AGE1もまた、ライフルを後方へ放り投げ、腰部グレネードを全て使いライフルを破壊する。爆発に背に、こちらも拳を構える。

 

「感謝する」

 

たった一言、聞き間違いかとも思えるほどの掠れた声がオープン回線から聞こえたと思うと……アッシマーはライフルの破片から円形の物体を取り出し、指で弾いた。

もう言葉は不要だろう。両機とも、その破片が地面に落ちるその瞬間を待つ。

 

ドスッ

 

想像よりも鈍い音がコックピットに鳴る。

その瞬間、AGE1とアッシマーがほぼ同時に駆け出す。

拳同士がぶつかるが競り合いになることもなくAGE1が吹き飛ばされる。

 

 

ーーーー

 

「ああ、クソっ!頑張れケン!」

 

立ち上がってしまうほど動揺するハルマに対して、ラナは冷静に状況を分析していた。

 

「当然よ……アッシマーの体格ならああなるに決まってるわ、リアルの格闘技だって体重で別れているのと同じ理屈よ」

 

「そんな冷静に分析して……」

 

非情とも取れるラナの反応に言い返したくなるハルマだったが、頭の中では理解していた。AGE1が18メートルほどの標準サイズであるのに対し、アッシマーは全高23メートル。約5メートルの差がある。比較として、頭頂高ではあるが23メートルのMSにはサザビーが挙げられる。第四世代のMSに匹敵する体躯、流石はMAとして扱われているだけはある。

 

「ぐっ、うう…」

 

吹き飛ばされたAGE1がフラフラと立ち上がるが、足元のおぼつかないAGE1をアッシマーが追い詰める。

ホバー移動によって勢いを増した蹴りがAGE1を襲う。

咄嗟に両腕で防御姿勢をとるが、なす術なく上空に打ち上げられる。

 

「クソっ!」

 

回転する機体をなだめ、バックブーストを噴かし、後方へ落下しながら距離を取る。無事、着地を成功させたものの、関節がスパークを発し膝をついてしまう。

 

 

「まずい……」

 

不穏な声を発するラナをハルマは首を振りながら否定する。

 

「いやいや、ケンには必殺技が……」

 

「バカ!今回の目的はMAの弱みを露呈させて、MSの有用性を示すことでしょう?そんな状況で必殺技で決着させてみなさいよ、仮にそれでケンが優勝したとしても効果は薄れる、あの子もそれが分かっているはず……!!」

 

「あー……そうだった!!で、でも、このまま負けたらもっと意味がないだろ?!」

 

「要は必殺技で決着しなければいいのよ、それをケンが気づくかだけど……」

 

 

 

 

「わぁっ、と!!」

 

右ストレート、エルボー、ジャブ……多彩な格闘攻撃でじわじわと削られていくAGE1。

間一髪で攻撃をかわしながら逃げ続ける。

 

(パルマフィオバーナーは使えない……!!)

 

攻撃を避け続けるが、ダメージが蓄積した足の反応が、ほんの一瞬遅れてしまい、アッシマーのタックルをもろにくらってしまう。

 

「っっ……!!」

 

イエローゲージだったコックピットがついにレッドゲージに突入し、アラートがコンソールを埋め尽くす。もうダメージは喰らえない……!!

ノックバックしたAGE1は何かにぶつかった。物体の正体、それは試合序盤で身を隠していた岩。

 

(こうなったら一か八かだ…!)

 

足をひきづりながら岩の背面に隠れ、起死回生の賭けに出る。

 

 

 

(結局、こうなってしまうのか)

 

ため息をつきながら、アッシマーを操縦するダイバーは心の中でつぶやく。勝利が目の前にあるというのに男は酷く狼狽していた。

AGE1の隠れた岩場に近寄りながら今までの自身の行いを振り返る。

 

初めはただ、自分の作ったガンプラを動かすだけで楽しかった。だが、いつからだろうか。純粋にGBNを楽しめなくなったのは。

MAが流行し、蹂躙され、大破した自身のガンプラを見た時か、いや、勝ちにこだわり、好きなガンプラから強いガンプラに乗り換えた時か。

中途半端な大きさのアッシマーは男の最後のプライドであると共に、MAには勝てないという諦めの証明だった。

そんなMA環境の中、たった18メートルのガンプラがこの大会の本戦に出場したと聞いた時は耳を疑った。

試合が始まり、そのガンプラが目の前に現れるまで心の底から信じることができなかったほどだ。

あの赤いガンプラを見ると、昔の自分を見たいるような気分になる。泥臭く、それでいてなお、目を輝かせていたあの頃の自分を。

だから、あんな無茶な拳での勝負の申し出をしたのかもしれない。

体格差があっても、好きなガンプラでも、

 

勝てる。

 

その証明が欲しかったのだ。だが、結果は見ての通り圧勝。

男は今になって、自身が自分を痛ぶった人間と同じことをしていると気づいた。体格差と有利な状況を作り出し、弱きものをなじる者たちと。

 

(この大会が終わったら、少しGBNから離れよう)

 

そんなことを考えながら岩に触れようとしたその時。

突如として岩が粉々に砕け一瞬の光の後、アッシマーに襲いかかる。

 

「なっ!」

 

パルマか!やられた!

 

散弾のように撒き散らされた岩がアッシマー各部に直撃。頭部のモノアイが割れ、コックピットな映像にノイズが走る。

砕けた岩の後ろからAGE1が姿を表す。拳に力を込めるあの体勢は…!!

 

「ケン!!ダメだ!」

 

パルマフィオバーナーは使えない。

 

それは先ほどまでの理由とは違う。高威力、高反動の必殺技は前方へのエネルギーと釣り合うように背面にも同等に近い推力が必要だ。そうしなければ、自分で打ち出した熱線の反動で吹き飛ばされ、命中させることが困難になる。

今の大破寸前のAGE1ヒバナでは、反動に耐えられるような推力は出せず、自壊する恐れがある。最悪の場合、そのまま試合終了してしまうかとしれない。

それはケンも重々承知しているはずだ。にも関わらずケンはパルマフィオバーナーを使おうとしている。後先を考えず一か八かに賭けるのか?

 

「必殺……パルマ、フィオ」

 

機体が必殺技の音声認証を完了させ、右手が発熱し始める。もう後戻りはできない。

だが、ケンはその右手を背面に向け、こう言い放つ。

 

「アフタァー!!!バーナァーー!!」

 

叫びと共に右手から熱線が照射され、本来の反動はそのまま膨大な推進力として発揮されるとAGE1が光と同化する。

 

「しまっーー」

 

「いっっけええええ!!!」

 

流星のように加速したAGE1はそのままの勢いでアッシマーにタックルを仕掛ける。1回、2回、3回と衝突とノックバックを繰り返すアッシマー。その間隔が段々と短くなっていくにつれ、アッシマーの装甲から破片がこぼれ落ちる。それでも突進をやめないAGE1。赤い流星となったAGE1は放物線を描くように、空へと昇る。

 

(やられた……!!あの状況からここまで逆転されるとは……!!)

 

推進力である右手が明滅し始め、遂には熱線の照射が止まる。フィールド制限ギリギリまで上昇した二機のガンプラはその支えを失い落下し始めた。

 

「僕の、勝ちです………!!」

 

アームハンマーの体勢をとったAGE1がそのまま両腕を振り落とす。

 

(負け、か……いや、違う!!)

 

崩壊寸前のフレームを無理矢理動かし変形するアッシマー。急に体型が変わったことでAGE1の渾身の一撃は外れてしまった。変形したアッシマーはそのままAGE1の背後に周る。

 

「諦めて……たまるか!!」

 

変形を解除し、最後の力を振り絞り拳を振り上げる……が、二度の変形によって酷使されたフレームが限界を迎え、振り上げた拳から段々と崩壊していく。

 

ケンはその隙を見逃さなかった。

スラスターによって体勢を瞬時に変え、踵落としをくらわせる。

 

(届かなかったか……!!)

 

そのまま地面に叩きつけられたアッシマーは、機体の各部からスパークを発し、モノアイの光が消えた。

 

 

『決着ーーー!!激闘を制し、熱い逆転を見せてくれたのは、ケン選手のガンダムAGE1ヒバナだぁーーー!!!』

 

「結局、必殺技で決めちまったな」

 

歓声の響くスタンドで胸を撫で下ろすハルマ。言葉とは裏腹にケンの勝利に人一倍喜んでいるのが表情からわかる。

 

「そうね、でもこんなに歓声が上がっているのだから、無用な心配だったかも」

 

「ま、MA云々は俺たちの都合だしな、ケンも周りも楽しんでくれているのならそれが一番かね」

 

 

「はぁ、はぁ、危なかった……」

 

(もし仮に、あそこでアッシマーが崩壊しなければ……いや、それ以前に拳での勝負ではなかったら……!!ライフルのトリガーを引いただけで、僕は負けていた……!!)

 

息を切らしながらうなだれるケン。本来、GBNでは息など切れるはずのないものだが、限界ギリギリの状況による精神的な疲れを脳が誤認識し、無意識に呼吸の動作をとっていた。

 

「対戦ありがとう」

 

突如としてオープン回線が開き、聞き慣れない声がコックピットに流れる。口ぶりから対戦相手の男だろう。先ほどの掠れた声とは違った透き通った声だったのでほんの一瞬、誰なのか全くわからなかった。

 

「こ、こちらこそありがとうございました。」

 

「それと……君には謝罪をしなければならない……俺の無茶な頼みを聞いて、拳のみで戦ってくれたから」

 

「そんな……謝罪だなんて……楽しかったですよ、とても」

 

「ありがとう……本当に……わたしの分も頑張って」

 

「……はい!!」

 

 

一週間後。

 

Hajime やぁ、決勝進出おめでとう。結局、接戦だったのはあのアッシマーの時だけだったね。

 

Ken ありがとうハジメ。来週はついに決勝戦だね。

悔いの残らない最高のバトルをしよう!!

 

Hajime 望むところ!!

 

 

「僕が決勝かぁ……」

 

メッセージのウィンドウを閉じ、ベットに飛び乗るケン。

あの後、アッシマー以上のたいした強敵は現れず、難なく決勝に進出したケン。ハジメもまた、スモークを使用し、煙の中でMAを屠り続けた。そのせいで碌な対策もとれず、困っているのだが、本人に聞くわけにもいかないので戦いの中で突破口を見つけるしかない。

 

(でも、よくよく考えたら、もう目的は果たしているんだよな)

 

そもそもは、MAが流行しすぎているので、それを抑えるためにMSで大会に優勝する、という目的だった。

だが、決勝に進出したのはケンとハジメ。両者ともMS使いだ。ケンが優勝しようが、ハジメが優勝しようがMSの有用性は示すことができる。

その上、本戦での試合が見どころの少ないものばかりで(半分以上は煙ばっか使って肝心の戦闘を見せないハジメのせいなのだが。)話題になったのは、ケンが戦ったあのアッシマーとの試合だけだ。そのおかげもあって、掲示板ではMAよりもMSの方がやれることが多いのでは?という結論が出始めている。もしかしたら、既に目的は達成できているのかもしれない。

 

(確かに最初は頼まれたから大会に出た。でも、今は違う……僕は、勝ちたい……!!)

 

手のひらを広げ、照明にかざす。拳を握り締めると眠気がどっと押し寄せてきた。そのまま瞼を閉じると数を数える暇もなく眠りについてしまった。

 

「クッソタレがぁ!!なんで……」

 

「なんでMSに火力で負けるんだよぉおおお!!」

 

『決着ーーー!!!数多の巨人を打ち倒し、Gブロックの頂点に立ったのは!!焔の勇者、ケン選手だーーー!!!』

 

 

「全く……こうも掻き乱されるとは……」

 

宇宙に浮かぶ資源衛生の中、巨大なモニターに映し出された多数の映像。

足を組みながら頭を悩ませているのはボスと呼ばれる男。その後ろに仮面の男が浮遊しながら会話を続ける。

 

「……どうしますかボス、何か対策でも……」

 

「いやぁ、もう手遅れだよ、これは」

 

「アカバネ……彼が手を抜いた可能性は」

 

「取引相手を疑うもんじゃない……よりによってあのガンプラバカを……むしろ自分が作ったガンプラが惨敗する姿を見て憤慨してる姿の方が目に浮かぶよ」

 

ボスと呼ばれた男は録画を止め、おもむろに立ち上がる。首をパキポキと鳴らしながら、言葉を発す。

 

「けどまぁ……落とし前はつけてもらうさ……ビジネスごっこは楽しかったけど、これ以上MAを増やす必要はないし、アカバネ君に連絡しといてくれ、例のものを最後にもう取引は終わりだ、と」

 

「承知しました……では失礼します」

 

画面の男はログアウトを実行。部屋の中から消滅した。

 

(そうさ、僕の計画に支障はない……ウィルスの開発は順調、運営も思い通りに動いた。あとはアーティファクトを……彼女をどうにかしなければ……)

 

ーーーーー

 

「クソ、クソっ!!クソっ!!!取引は終わりだと……!!!俺の、このアカバネカイの作品はもう必要ないだと……!!!」

 

真っ暗闇の部屋の中、パソコンの前で物に当たり散らす男が1人。ひどく散らかった部屋がさらに荒れる。

その中で唯一、埃一つないほどに手入れされた棚に鎮座する無数のガンプラ。グレードを問わず、多種多様の芸術品とも言えるほどに作り込まれたガンプラ。激情しながら、その中の一つを丁寧に取り出し、手に取る。

 

「理由は分かってる……あの大会だ、忌々しい……!!楽に勝つことだけしか考えられない初心者に、やはり私の作品は手に負えなかった……!!!私は反対したというのに……それをビジネスだのなんだのと、のらりくらりとかわしたくせに、奴らは私を見限った……!!」

 

制作道具や模型雑誌でいっぱいになった机の上を腕で無理やり傍に押しのけスペースを作ったアカバネは手に取ったOOベースのガンプラをそっと置き、しっかりとポージングを取らせた後、頭を掻きむしりながら叫んだ。

 

「もはや取引など、どうでもいい……!!証明してやる!!私のガンプラが優れているということを……!!私自身の手で!!」

 

 

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