とりあえず術式で何とかしようとする宿儺モドキ 作:This メェン!
続かないので初投稿です。
誰かダンダダンの二次創作書こう!
2万と少し。
福沢諭吉が2人と小銭が少々の金額が、今の宿儺の経済事情を端的に表していた。まさか呪いの王であり、史上最強である宿儺が金欠に苦しむことになるとは一体誰が予想できたことだろうか。
少なくともこの事実を他称バカ目隠しが知ってしまった場合、次元と時間を茈にて吹き飛ばし、特級呪術師としての
宿儺は適当に美味そうな飯を提供する店にふらりと立ち寄り、そして豪遊。イカ墨パスタなど生前の宿儺には間違いなく縁がなかったであろう料理などを楽しみ、4人の諭吉は天国へと旅立った。
「……戸籍もなければ家もなし、か。くく、中々どうして悪くない」
現代社会において金銭の有る無しは生死に関わりかねない。が、しかし。
金なら有象無象共から巻きあげればいい。そも俺には反転術式もある。家などなくとも問題はない。
問題はないが、それはそれで腹が立つというもの。
傍若無人にして唯我独尊、己の快不快が行動指針の宿儺にとって、己の不快の解消は何事にも優先される。
何より小僧がせこせこチンピラから金を巻き上げる俺を憐れむ顔が脳裏にチラついて仕方がない。脳内で宿儺は何百何千と小僧を千枚卸しにしていた。
色々思案しながら歩く宿儺の目の前に、とある老婆が杖をついていた。弱々しく、一歩ずつ確かめるように歩く老婆。明らかに夜中に出掛けるべきではないが、宿儺にとってそれは心底どうでもいいことだった。
故に宿儺は無視し、道を逸れて進もうとして、
「おい小僧、足はいらんか?」
老婆に問いかけられた。気付けば周りには誰も居ない。不気味に、オレンジ色に近い黄金の月は微笑んでいるようにすら思える。
「……」
奇妙な現象。あっち側では生得領域や縛りに類似する現象のはずだが、少なくとも呪術の頂きに君臨する宿儺ですらその始まりを認知することはできなかった。
何より__
「黙りはよぅ、つまらねぇよなぁ。聞いてんのか? 足はいらんけぇ? なぁ」
全く呪力を感じない。
大きな風呂敷包みを背に抱えて、老婆はシワシワの顔を歪ませた。鬼面と表現してもよいそのあまりな形相に、
宿儺は愉快そうに頬を吊り上げた。
「……小僧の見たオカルトとやらにあったな。確か脚売りババア、と言ったか?」
「…………キヒッ」
老婆の歪んだ口が裂けた。風呂敷包みの中から大量の人間の足がぼとぼとと落ちていき、それら単体が元気に跳ね回る。ひび割れ、血が滲んだ爪を持つ足。
足の軍勢が怪異の夜を踏み鳴らす。
「なんだよぉ、知ってんのかよ。知ってんならよぉ、あたしゃてめぇが余計なこと喋くる前に、足ばぶっちぎるしかねぇよなぁァァ!!!」
呪いが沸き立ち、足が宿儺に襲いかかった。
近代の都市伝説、脚売りババア。足売りばあさんとも呼ばれ、多くは学校の怪談話としても語られている。足はいるか。という質問に対して要ると答えれば3本目の足を生やされ、要らないと言えば足を引きちぎられる。
唯一の対抗策は自分は要らないが、○○は欲しい。と誰かを生贄にする方法である。
迫る足の軍勢。よくよく見ればその足の裏、土踏まずには喰い物を求めるように尖った口が生えている。
常人ならひとつの足に襲われただけで死の危険がある。それが数百。
だが、まぁ、しかし。
「解」
「は、ぁ__?」
脚売りババアの顔が歪む。冷や汗が流れ出し、その黄色く濁った瞳は焦ったように周囲を見回した。空間そのものが切り裂かれたような錯覚すら覚えて、
赤。
100は優に越していたはずの動く足たちは、その全てが足首より上をなくして、びくびくと倒れ伏していた。斬撃の余波で道路の歩道橋や街灯がズレ落ちる。
轟音と共に崩れた建物。ガラスの割れる音が辺りに響き渡り、破片に写った両者の顔。
嗤う宿儺。引き攣った笑いが零れる老婆。
脚売りババアは喧嘩を売る相手を完全に間違えた。異世とはいえ、一介の呪い風情が呪いの王に手を出したツケ。
そのツケは、案外早く払うことになりそうである。
「足は要るかと聞いたな?
ニヤニヤと嗤う宿儺。根本的に、多少善人寄りの思考になれど、宿儺は性格が悪かった。
ブチィ……ッ!
静けさに、その音が響いた気がした。
「……あほんだらぁ。てんめぇ、あたしをナメすぎだぜ。てめぇの足を、寄越しなぁっ!!!!」
何らかの条件を持つ怪異はその物語性をなぞることによって、本来の力が解放されるケースも少なくない。脚売りババアは、宿儺の足をもぎ取ることに多大なる補正を得た。
薄汚れた白髪を振り回し、赤黒い呪いのオーラを撒き散らして宿儺を全力で蹴り飛ばす脚売りババア。
「……ケヒッ。中々どうして面白い」
宿儺は高速で弾き飛ばされ、市民会館の壁をぶち破り中で体勢を立て直した。
痺れる手を眺め、笑う。
小僧レベルとまではいかないが、それに二歩劣ったくらいの打撃の威力。並の特級であれば一撃で葬っていてもおかしくない馬鹿げた力だ。
ザシュ。
宿儺は驕っていた。弱すぎる宇宙人、呪力の呪の字も感じない、解のひとつで壊滅する程度の怪異の群れ。
「捕まえたぜェ、クソだらぁ! お前は既にあたしの呪いに掛かってんだよぉ」
宿儺の影から生えた包丁。それは宿儺の左足を完全に貫通し、縫い止めていた。
「……焼きが回ったか」
脚売りババアは宿儺の左足を貫いている包丁の持ち手からとぐろを巻いて飛び出した。黄ばんだ目がギラつき、最高の獲物に王手を掛けようと手を包丁に伸ばし__
「足ぃ、よこし「領域展開」__ぁ、?」
「伏魔御廚子」
象るは閻魔天印。宿儺の持ち得る生得領域を具現化し、術式による効果を最大限引き出す呪術の究極。
この世に顕現した斬撃の頂きは、瞬く間もなく脚売りババアを塵へと変貌させた。
「……お前の魂が生きているのはわかっている」
ついでに市民会館も塵にした。
「暇潰しに遊んでやる。次があることを愉しみにしているぞ? 足売り」
脚売りババアの赤黒い塵が風も吹いていないのに飛んでいく。宿儺は穴の空いたズボンに何の傷もない左足を覗かせて、悠々とまた歩き始めた。
先程よりもその足取りは軽かった。
「……てめぇ。
白髪が爆発したような頭をした女が、バットを持って宿儺を待ち構えていた。
鼻に届く鼻持ちならぬ香り__
どこぞの神の巫女か。
何にせよ、宿儺はもう食傷気味だった。
ちなみに今作の脚売りババアは下半身不随になった人の元に回ったり、事故で無くした人に足を配ったりしている。まぁ配る足は奪ったものなんですけどね!
まーた余裕ぶっこいて痛手食らってるよこの呪いの王。
でも勝つのが宿儺クオリティ。いいですね。
続きません。