白銀の世界に続く、緋に染められし
倒れ込んだ狩人は、吐血し、
だが、その声は、荒れ狂う吹雪に掻き消されてしまう。
狩人の背後に浮かぶ、緋に染まった二つの眼球。
刹那、緋玉の所有者は、
突撃を防御すべく、狩人は柄に手を掛け、武器を引き抜く。
しかし、一抹の抵抗も
鮮血が
雪面が再び真紅に染まったとき、怪物の姿は純白の中に消えた。
*
ポッケ村。
大陸の北、フラヒヤ山脈の高地にある村である。
その村の入り口に、少年と少女、アイルーが辿りついた。
「着いたぁ~っ!」
毛皮のコートを着た銀髪の少女、ミラは両腕を万歳するように上げた。
「はぁ……、やっと着いたな」
彼女と同じ格好、髪の色をした少年、レグルスは小さな声でそう呟くと、背負っていた大量の荷物を地面に置いた。ふうっ、と吐いた白い息が、たちまち空気に溶け込む。
時期は冬。雪は降っていないが、ポッケ村には大量の雪が積もっており、遠くに連なる雪山は吹雪で真っ白になっている。極寒の地では無いものの、防寒具が無ければ寒くて凍えそうなほどだ。
「疲れたニャ……」
二人の横で、アイルーのチェルシーがへたり込む。
「オレが一番疲れてるよ」レグルスは肩をぐるぐると回した。「……さて、村に到着したことだし、あの人のこと、村の人に訊いてみるか?」
「あとでいいんじゃない?」ミラは腰を下ろす。「私も疲れちゃったし。レグルス、泊まれる宿を探してきてよ」
「はぁ? なんで」
「だって、この中でいっちばん体力があるじゃん」
「体力があっても、オレが一番重い荷物を運んできたじゃんか……。ここは、オレよりも疲れていないミラかチェルシーが行くべきじゃないのか?」
「いや」チェルシーが口を開く。「ミラの言う通りニャ。レグルスはまだ元気そうニャ」
「チェルシーもミラの味方なのかよ!」レグルスは思わず叫んだ。
「ほら、まだまだ元気じゃん。レグルスは、か弱い乙女を守るために走らないと」
「誰がか弱い乙女だよ……。仕方ねぇな……」
レグルスは元気の無い声で言うと、渋々といったように村の中へ進んでいく。
「良い宿を探してきてねー!」ミラは、陽気な笑顔で彼に手を振った。
「……妹だというのに、相変わらず兄の扱いが酷いニャ」チェルシーはヒゲを撫でた。
「別にいいじゃん、歳が離れてるわけじゃないしさ」
レグルスとミラは、双子の兄妹。双子といっても、見分けがつかないほど似ているわけではない。そして、双方ともハンターである。
「それに、チェルシーは人のこと言えなくない?」
「う……、ま、終わったことニャ。別にいいじゃないかニャ」
「まぁ……、そうだねぇ」
冷たい風が吹いた。ミラの左目を覆っている前髪が揺れる。
「うぅ……さむ……」
「ニャ……」
昼だというのに、この寒さ。朝晩はとても冷え込むだろう。
「でも、チェルシーはいいよね。毛で覆われてるし」
「んニャ? まぁ、そこまで寒くないけどニャ……。ボクらだって、寒いときは寒いニャ。アイルーは暖炉の前で丸くなる、って言うじゃないかニャ」
「……毛皮、
ミラは、大きめのポーチの中をごそごそと探っている。
「まぁ、ニャ」
「じゃあ……」ミラは、ポーチから刃物を取り出す。「毛皮、私にちょうだい?」
「ちょっ、ま、待つニャ!」チェルシーは慌てて
「えー。そんなこと言わないでさぁ。ちょうだいよ」
「め、目が……人間の目じゃないニャァッ!!」
「ふふふ……」
「ニャァァァァァァァァッ!!!!」
「……なんてね。冗談に決まってるじゃーん!」あははは、とミラは高らかに笑う。「でも、ちょっと動いて暖まったんじゃない?」
「いやむしろ恐怖で全身が凍りつきましたニャ」
「うーん、それじゃあ凍りついた毛皮なんて要らない」
「さっきのは冗談だったのかニャ……?」
チェルシーは、ミラの方がどんなモンスターよりも怖い、と感じていた。
十数分ほどして、レグルスが二人の元へ戻ってきた。
「レグルス、遅すぎ」ミラは怒った口調で言う。「凍え死ぬとこだったじゃんか!」
「仕方ないだろ。疲れてる人間にそんなことを押し付けるから悪いんだよ。それに、皆で動けば多少は
「……早く宿まで案内してよ」
「へいへい……」
荷車でもあれば、ちょっとは楽になったんだろうな、と思いつつ、レグルスは荷物を背負った。大半が防具だったり武器だったりするので、かなりの重量がある。
「それじゃ、こっちだ」
レグルスの誘導に従って、彼らは宿へ向かった。
――彼らがこの村を訪れた理由、それは、彼らにとって大切な人に再会するためだった――
「はぁ~っ!」ミラは、宿のベッドに倒れ込む。「久々にふかふかのベッドで眠れるっ!」
レグルスは、深い溜め息をつきながら、ベッドに腰掛けた。
「ねぇ、レグルス」
「何?」
「ご飯作ってよ」
レグルスは無言で、ポーチからカチンコチンの冷凍生肉を取り出すと、ミラに投げた。
「……このまま食べろって?」
「いや、焼くだろ」
「……だるい。そうだ、チェルシー、この肉焼いてよ」
「ニャ……ボクも疲れてるのニャ……」チェルシーはベッドの上で伸びをする。「自分でやってニャ――」
「毛皮、
「は、はいいいいっ! やりますニャ!」
チェルシーは飛び起きて、ミラから肉を受け取ると、暖炉の前へ向かい、肉を焼き始めた。
「ミラ、お前チェルシー使いすぎだろ。召使いじゃないんだからさ」
「いいじゃん。料理担当はチェルシーなんだし」
「そんな面倒くさがるから太るんだよ……」
「ん? 何か言った?」
「いや……、別に」
「言っとくけど、私そんなに太ってないからね」
「はいはい……」
「次にそんなこと言ったら、チェルシーをこんがり肉にしちゃから」
「なんでレグルスじゃなくてボクなのニャッ!?」
「んー、なんとなく?」
「チェルシー、うっかり口が滑ったらごめんな」
「うぅ……、ひどいニャ」
涙目になりながらも、チェルシーは肉を焼き続けた。
数分して、香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がった。こんがり肉の完成は間近である。
「んー、美味しそうな匂い!」ミラは香りを吸い込む。「……んで、あの人、ホントにここにいるの?」
「それは、ここの人に訊けば分かるだろ。それに、もしここにいなくても、どこに行ったかの情報は掴めるかもしれないし」
「できればこの村にいてほしいけどね」
「もちろん、それがベスト」
「……あ、そうだ。私とレグルス、どっちが先にあの人まで辿りつけるか勝負しない?」
「お……、おう」レグルスは意表を突かれたような表情で応じた。
「ま、私の勝ちで決まりだろうけど」ミラは得意げに言う。「私が勝ったら、美味しいものを奢ってよね」
「わかったよ」
そのとき、ちょうどチェルシーが、こんがり焼き上がった肉を二人に差し出した。
「お待たせしたニャ」
二人は肉を受け取るやいなや、肉に
*
レグルスは、村人に声を掛けた。
「あの、すみません。この人を探してるんですけど、ご存知ないですか?」
捜している人物の写真を見せると、村人は写真に顔を近づける。
「ん?……あ、あぁ、その人なら見たことあるねぇ。まだこの村におると思うけんどなぁ……」
「ありがとうございます」礼を言い、レグルスは躰の向きを変えた。そのとき、村人が口を開いた。
「そういうことは、オババ様に訊いてみるんがええよ」
「オババ様……ですか?」
「この村の村長。あの人なら、何でも知っとると思うけん。いつも焚き火の側に立っとるでぇ」
「あ……親切にありがとうございます」レグルスは深く頭を下げると、村長を目指し、歩き出した。
村長(と思われしき人物)は、集会所の近くの、焚き火の側にいた。背丈は、レグルスの腰の辺りまでしかない。
レグルスは、こんにちは、と声をかける。だが、眠っているのか反応がない。
さっきよりも大きい声で言うと、村長は目を醒ましたらしく、レグルスの方を向いた。
「む、何か用かの?」
「あの、村長さん、ですよね……?」
「いかにも。皆はオババ様と呼ぶがの。して、何か用かの?」
「オレ……、人を捜してるんです。この人なんですけど」レグルスは写真を村長に見せた。
写真を見せたとき、村長の表情に微かな変化があったが、レグルスは気付けなかった。
「ヌシとはどういう関係かの?」村長が顔を上げた。
「その人、オレの師匠なんです。狩りについて、いろいろ教わって……」
「ふむ……そうかの。ふむ…………」村長が動かなくなった。
「どうかしました?」レグルスが訊くが、反応がない。どうやら、また眠ってしまったようだ。
「寝ないでください!!」村長はハッと目を覚ました。
「はっ。……ふむ。すまんの。……ヌシの捜している人物とやらは、確かにこの村にはおったが……今は所用でおらん」
「じゃ、どこに行ったか分かりますか?」
「むむ……それは言えん。すまんの」
レグルスは肩を落とした。会えると思っていたのに。
「そうですか……。ありがとうございました。あの、まだちょっといいですか?」
「なんでも訊きなさい」
「ありがとうございます。では――」
*
ミラは、チェルシーと共にポッケ農場にいた。
ポッケ農場は、畑での作物の栽培や、茂みでの虫取り、鉱石の採掘、魚釣りができる、広大な場所である。
「すごくひろーい!!」ミラは、観光にでも来たかのようにはしゃぎ回っている。
チェルシーはというと……、疲れたのか、眠そうにしていた。
ミラは、農場にいるアイルーに話しかけ、情報を集める。だが、思うような情報は引き出せなかった。
「ねぇねぇ、そこのアイルーさん」
ミラは、農場の洞穴の前にいるアイルーに話しかけた。
「ニャ?」
「こういう人知らない?」探している人物の写真を見せる。
「……ニャ。見覚えあるニャ。でも、最近見ないニャ」
「そっかー……。ところでさ、この洞穴は何なの?」ミラは洞穴を指差した。
「ニャニャッ!! よくぞ聞いてくれましたニャ。この洞穴では、鉱石を採取することができるのニャ!!」
「鉱石、かぁ」
「それも、ただピッケルを使って採掘するんじゃなくて……なんと、爆弾を使うのニャ!! ボクに爆弾を渡してくれたら、穴の中に突っ込んでいくニャ!! 爆弾が爆発したら、鉱石がイッパイ取れるニャ!!」
「爆弾、ねぇ……」
ミラは不敵な笑みを浮かべながら、チェルシーを見た。チェルシーは一瞬、どきっとする。
「ねぇ、チェルシー」
「……な、何でしょうかニャ」チェルシーは冷や汗をかいている。
「爆弾採掘、体験してみない?」
その言葉は、容易に予想できた。
「……え、遠慮しときますニャ……」
「でもさ、こんなこと、なかなかできないよ?」
「いや、それでも遠慮しときますニャ」チェルシーの声は震えている。
「……仕方ないなぁ」冷たい刃が心臓に刺さるかような、冷酷な声だった。
「…………」チェルシーの躰は固まっている。
ミラは、隣に置いてあった大タルに火薬やカクサンデメキンを入れ、慣れた手つきで大タル爆弾Gを作った。そして、目にも留まらぬ速さで、ロープを使ってチェルシーを爆弾に括りつける。
「ちょ、ちょっと!? だ、誰か助けてニャッ!? そ、そこのアイルーさぁん!?」
採掘アイルーは親指を立てて、「行ってこい」と言わんばかりの視線を送っている。
「そ、そんニャあ!?」
「それじゃ……」
ミラは爆弾を抱え、
「いっけ――――――――――っ!」
チェルシーを括りつけた大タル爆弾Gを、洞穴に投げ入れた。
「ニ゛ャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
数秒後、凄まじい閃光と爆音が、辺り一帯を支配した。
*
数十分後、宿の部屋。
「何でチェルシーが黒焦げなんだよ」
炭化した、チェルシーなのかどうかすらも分からない物体を、レグルスは指差した。
「爆弾採掘ってのをやって……」ミラが答える。「焦げ肉になっちゃった」
「生きてるのが奇跡みたいだな……」
「でも、楽しかったよね、チェルシー?」
「ニャ!!」炭は声を張り上げた。「ミラ様の愛の
「それで、何か情報は得られたのか?」レグルスは、半ば投げやりな口調で言った。
「うん……とりあえず、何人かに聞き込みはしたけど、何もなかった。レグルスは?」
「オレもだ」
「そっか……」ミラは、ベッドに腰を下ろす。「じゃ、勝負は引き分けだね」
「でも、一つだけ興味深い情報を手に入れたよ」
「何?」
「雪山についてなんだけど」
雪山というのは、ポッケ村から近い狩り場のことだ。
「そこには今、狩りにいけないんだってさ」
「え? なんでさ」ミラは
「村長によれば、吹雪が強くて危ないらしい」
「へー……」
「……絶対行くな、ってさ」
その瞬間、ミラの瞳が光った。何か悪いことを企む人間のする目だ。
「そう言われると、行きたくなっちゃうねぇ」
「え、行くのか?」
「あったりまえじゃーん!! 吹雪で危ないなんて、表向きの言い訳だよ。裏には絶対何かある」
「でも、村長は厳しい口調で、『絶対に行ってはならん』って言ってたんだぜ? 行かない方がいいよ」
「でも、もしかしたら、あの人は雪山にいるかもしれないじゃん」
「どうしてそう思うんだ?」
「なんとなく、かな。それより、今日はもうこれから暗くなるし、明日の朝、こっそり行ってみようよ」
「いや、やめておこう。何が起こるか分からないからな。冬の雪山は、とくに」
「私たちは寒いとこの出身だし、大丈夫だよ」
「そういう問題じゃなくて――」
「んじゃ、お腹空いたし何か買ってくる」
そう言い残すと、ミラは部屋から出て行ってしまった。
(まったく、ああなるともう何も聞き入れないんだよな……)
レグルスはベッドに倒れ込んだ。
(でも、ミラを危険な目に合わせることだけは防がないと。不本意だけど、行くしかないな……)
まったく、オレはミラに振り回されてばっかだ。
レグルスは溜め息をついて、
宿を飛び出したミラは、雑貨屋の前に立っていた。。
「おばさん、何かおいしいもの売ってない?」彼女は、中年の女性店員に話しかける。「お腹空いちゃって」
「そうねぇ。ドドブラリンゴとか、ラオシャンメロン、バサルモモは貴重でおいしいけど、残念ながら取り扱ってないわね」店員は、残念そうな顔をした。
「ほかには?」
「えぇと、ポッケ村周辺で採れる果物ならたくさんあるわよ~」
店員はたくさんの果物が入った
「おぉ、どれもおいしそ~。それじゃ、オススメください」
「はいよ。良いものあげないとね」
「ありがとうございます!」
気前の良い店員さんだな、とミラは思った。
「これは大きくていいわね。これは……ちょっと小さいわね」店員はぶつぶつ言いながら、袋に詰める果物を選別している。「あら、これは……傷がついているわ。売り物にならないから、捨てておきましょ」
「――傷?」
ミラの表情が固まる。同時に、彼女は前髪で隠れている左目を触った。
「お嬢ちゃん、どうしたの?」異変に気付いたのか、店員は眉を
「……あぁ、ううん、なんでもないです。ちょっと、髪の毛が気になっちゃって。えへへ……」ミラは
「そうかい」店員は温厚な表情に戻ると、果物を詰め込んだ袋をミラへ差し出した。「ほら、おいしそうなものだけ集めたよ」
「……代金はいくらですか?」
「ちょいとオマケして、500
「……はい。ちょうど」ミラはお金を渡す。「ありがと、おばさん」
「こちらこそ。毎度あり」店員は微笑んだ。
ミラは踵を返すと、足早に宿へ帰った。
宿の部屋に着くなり、ミラは果物詰めの袋を机に置いた。そして、コートを脱ぐと、ベッドに身を投げた。
「ニャ。おいしそうな果物が袋にいっぱいニャね」
炭からアイルーに還元されたチェルシーが、袋を覗き込む。
「……珍しいな。ミラが果物にがっついてないなんて」レグルスは驚いた表情でチェルシーの方へ近寄った。「食べないのか? 美味しそうなのに」
「…………」
ミラは
「何か言った?」
ミラは顔を少しだけ上げると、「……レグルスの……バカ…………」と言い放ち、再びベッドに顔をうずめた。
(何かしたのかニャ?)チェルシーが小声で
(いや、別に何もしてないけど……。今はそっとしておいてあげよう)
二人は顔を見合わせて頷くと、静かに部屋から出て行った。
*
「……ミラはなんであんなこと言ったのかニャ。今までにあんなことってあったかニャ?」
夕陽に赤く染まった村を、レグルスとチェルシーは歩いていた。
「うん……、そういうことはあまりなかったとは思うけど」
「何か思い出したくないことでもあったんじゃないのかニャ?」
チェルシーの言葉に、レグルスはハッとした。
「あのことか……? いや、でも……」
「ニャ? 何か思い当たる節があるのかニャ?」
「うん……多分な。でも、最近はそんなこと、気にも留めていなかったようだし……」
「気になるニャあ。教えてニャ」
チェルシーが言うと、レグルスは黙り込んだ。
「訊いちゃまずかったかニャ……? ごめんなさいニャ」
「いや、別に気にすることないよ。もしかしたら、いずれ話すかもしれない……」
レグルスとチェルシーは、いつの間にかポッケ農場に来ていた。
「蘇る爆弾採掘の記憶……。あれはホントに怖かったニャ……」チェルシーはレグルスの隣でブルブル震えている。
「……なんなら、もう一回やるか?」
「ミラが鬼なら、レグルスは悪魔か何かかニャ?」
「アハハ、冗談冗談。オレはそんなことしないよ」
「キツイ冗談ニャ……」チェルシーは安堵の表情を浮かべる。
彼らは川のほとりに座った。奥に見える連なった山々は、
「あの人はどこにいるんだろうな……」
レグルスは空を見上げる。灰色の雲が出てきていた。
「レグルスたちが探してる人って、そんなに思い出深い人なのかニャ?」
「そうか、チェルシーはオレたちが村を出る前に雇ったオトモだから、知らないんだな」
レグルスは、背中から地面にどさっと倒れた。
「オレたちが15歳になった頃だ。あの人がオレたちのところへ来てさ、ハンターをやってみないかって言ったんだ」
「勧誘されたんニャね」
「あぁ。ちょうどハンターっていう仕事に興味あったしさ、オレは誘いに乗ったんだよ」
「レグルス
「その頃は、あまり乗り気じゃなかったんだと思うな。あとでミラに訊いたら、オレがいろいろやってるの楽しそうで、あいつもハンターをやってみたいと思ったらしい」
「ふむふむ……」
「それからオレたち二人は、あの人と一緒に、ハンターの仕事をしてたんだ。半年くらい」
「半年経って、どうなったのかニャ?」
「うん、あの人は、仕事があるといって、どこかへ行ってしまった。そのあとは、オレとミラで、ハンターの仕事をやってたんだ。あの一件があったのは、あれから少ししてからだったかな……」
「あの一件……?」
チェルシーがレグルスを見る。そのとき、冷たく強い風が、彼らを
「……風が強くなってきたな。雪も降り始めた」
「あ、そうニャね。……帰るかニャ?」
「あぁ、そうしよう」
レグルスは躰を起こして立ち上がる。彼の顔に、雪が当たった。
「うぅ……冷え込んできたニャぁ……。早く暖炉で暖まりたいニャあ……」
「そうだな。早く帰ろう」
彼らは、徐々に強くなる雪の中を走った。
宿に戻ると、二人は全身についた雪を払った。
ミラは、二人に背を向けた状態でベッドに横たわっている。レグルスは彼女に近寄り、顔を覗き込んだ。
ミラは寝息を立てて眠っている。右目の瞼が赤い。泣いていたのか――。
「……寝てるのか。ったく、こんな格好じゃ風邪引くぞ……」
レグルスは、ミラの躰に毛布を掛けてやる。
「お腹空いたニャ」チェルシーは、床にぽすっと座り込んだ。
「そうだな。腹減ったな……」
机の上に、果物が入った袋が乗っている。部屋を出たときの状態と同じだった。
「……これ、食うか」レグルスは袋の中の、赤い果物、
「ニャ。食べないと勿体無いのニャ」
レグルスは、袋の中からもう一つリンゴを取り出すと、チェルシーに手渡した。
二人がリンゴを