Monster Hunter ~白銀の絆~   作:鷹幸

2 / 6
第2話 雪山

 窓がガタガタと揺れる音で、ミラは目を覚ました。

 

「う……ん……」

 

 彼女は上体を起こすと、髪の毛を掻きながら大欠伸(あくび)をする。

 

(私、いつの間にか眠っちゃってたんだ……)

 

 目を擦って、ミラは部屋を見回す。部屋にもう一つあるベッドの上でレグルスが、床ではチェルシーが眠っていた。

 

「……あ。そういえば、雪山に行くんだった」

 

 彼女はベッドから降りて、窓から外を見た。外は吹雪いていて、真っ白だ。

 

「この吹雪なら、堂々と出て行ってもバレなさそうだなぁ……」

 

 彼女は、防具が入っている防具袋の側まで、音を立てないようそっと移動した。

 

(レグルスとか、起きないよね)

 

 レグルスを一瞥(いちべつ)してから、彼女は着ていた服を脱いで、下着だけになる。そして、袋から防具を取り出した。

 そのとき、ミラの背後で「んん……」という声がした。ミラがハッと振り返ると、レグルスが躰を起こして、こちらを見ていた。

 不意に目が合う。

 

「……あ、ごめん。着替えてたのか」

「~~~~~~っ!!」

 

 刹那(せつな)、鈍重な音が部屋に響き渡る。

 

「ごへぁっ!?」

 

 ミラの強烈な一蹴りに襲われたレグルスは、一瞬で意識を刈り取られてしまった。

 

「……ばーか」

 

 言葉でもそう一蹴すると、ミラは元の場所へ戻る。

 

(よりによって着替えるタイミングで目を覚ますなんて……)

 

 とんでもない変態兄貴だ、と怒りを覚えながら、彼女は防具を着け始める。

 ロアルドロス亜種の素材から作られる、紫を基調とした【ルドロスU】の防具を身に纏い、弓の【アミルバハル】を装備した彼女は、必要なものをポーチに詰め込んだ。そのあと、ベッドで伸びているレグルスの元まで行くと、彼の青白い顔を掌でパチパチ叩いた。

 

「起きろー!!」

 

 しかし、レグルスは目を覚まさない。

 仕方ないなぁ、と思いながら、ミラはレグルスの上に馬乗りになると、拳を振り上げ、腹部に鉄槌を落とした。

 

「――ぐふっ!!」

 

 (よだれ)を飛び散らせて、レグルスは目を見開いた。

 

「ってぇ……」

 

「ふぅ、やっと起きた。早く防具着けて、行くよ」顔を近づけて、ミラが言った。

 

 腰の辺りにあった重量感が消えたので、レグルスは躰を起こす。

 

「行くって……どこに?」

 

「もちろん、雪山に決まってるじゃん」

 

 レグルスはチラリと窓を見る。吹雪は、昨晩よりも強くなっている。

 

「マジで……?」

 

 ミラは鋭い目をレグルスに向け、頷く。「マジで」

 

「危ないぞ……?」

 

「危ない目には、今まで何回も遭ってるよ」

 

「いや、やめとけって」

 

 レグルスが引き留めようとするが、ミラは、ぷいとそっぽを向いて、部屋の外へ出て行ってしまった。

 

「お、おい!! 待てよ!!……ったくぅ」

 

 レグルスは、急いで【ルドロスS】シリーズ(ロアルドロスの素材から作られる、黄を基調とした防具)とハンマーの【水鎚(すいつい)ヴォジャノーイ】を装備して、チェルシーを叩き起こした。

 

「……むニャ?」チェルシーは目を擦った。「何事ニャ?」

 

「ミラが雪山に行くらしいんだ」

 

「ニャ……?」チェルシーは、ぱっちり目を開ける。「こ、この寒い中ニャ?」

 

「あぁ」レグルスは頷いた。「オレもこの吹雪の中で行くなんて、寒いし危険だし嫌だよ。でも、あいつを一人にはしておけないし……」

 

「……仕方がない子ニャね」

 

 チェルシーは渋々といった顔で、【ルドロスネコヘルム】と【ルドロスネコメイル】、【ルドロスネコネイル】を装備する。チェルシーが準備をしている間、レグルスはポーチにアイテムを詰め込んでいた。

 

「急がせてすまないな」

 

「毎度のことニャ。振り回されるのには慣れてるニャ」

 

「そうか」

 

 二人はすぐに支度を済ませた。

 

「……じゃ、後を追っかけよう」

 

「了解ニャ」

 

 

 

 

 

 

 雪山へと続く道の始点に、ミラはふて腐れた顔で立っていた。

 

「お、遅れてごめん」

 

「ごめんニャ」

 

「別に謝らなくていい」とミラは言ったが、吹雪に声が掻き消されてしまい、二人には聞こえなかった。そして、彼女は無言のまま、行くよ、と顎で合図する。

 

 二人と一匹は、雪山へと続く道に踏み出した。ミラが先頭を歩き、そのあとにレグルスとチェルシーが付いて行く。

 

「何かあったのかニャ? 何も言わニャいなんて」

 

「んー……。さっきの一件がまずかったのか、昨日の一件を引き()ってるのか……」

 

 ミラと一定の距離を保ちながら、レグルスとチェルシーは会話をしていた。

 

「さっきの一件? なんかあったのかニャ?」

 

「……ミ、ミラの着替えを……目撃しちまったんだよ」

 

「マジかニャ……。そりゃ怒るニャ」

 

「ふん……ま、そういう年頃だよな……。昔は一緒に風呂とか入ってたのに」レグルスは溜め息をついた。「でも、オレは悪くないぜ? 目覚めたら、たまたま下着姿の妹が目に入っただけなんだ。それで思いっきり蹴られて殴られるとか。理不尽すぎるだろ……」

 

「よっぽど怒ってたんニャね……。でも、ボクも見たかったニャ、ミラの着替え」

 

「おい」

 

「年頃の娘の着替えを見られる機会なんて、そうそう無いニャ!? それに、一緒に風呂に入ってたニャんて、羨ましい限りニャ。ボクもミラと一緒にお風呂に入りたいニャ」

 

「この、変態猫め……」

 

「ニャハハ、照れますニャ」

 

「褒めてねぇよ。さっき喋ったこと、全部ミラに言いつけるぞ?」

 

「ニャニャッ!! それはやめてくださいまし!! 毛皮を剥ぎ取られるだけじゃなくて、臓腑(ぞうふ)まで(えぐ)られてしまうニャ!! それに、冗談に決まってるじゃニャいですかー」

 

「ま、風呂くらいなら入ってくれるかもしれないけど、チェルシーは鼻血垂らしてぶっ飛ばされて終わりだな」

 

「何ニャと!? ボクはそんな変態じゃないニャ!! 胸に顔をうずめても鼻血を出さない自信があるニャ!!」

 

「……お前、とんでもない変態だったんだな……」

 

 溜め息とともに、吹雪がいっそう強くなった。

 

 

 

          *

 

 

 

「あの子たち、雪山の方へ向かっていってるわよ~。止めなくて大丈夫なの~?」

 

 集会所の中から外を窺うギルドマネージャーが言った。

 

「………………」

 

「ギルドでは進入禁止にしているのにぃ。ねぇ……」

 

「………………」

 

「オババ様、起きて~」

 

「はっ!!……ふむ、すまぬ」

 

「あの子たち、どんどん進んで行っちゃうわよ~」

 

「心配は要らんよ。あの子たちは、なかなかの実力を持っておるからの」

 

「そういうことじゃなくてぇ。なんであの子たちを引き止めないの~?」

 

「それは、直に分かる――かもしれぬ。今は、あの子たちが無事に帰ってくることだけを祈るのじゃ……」

 

 村長は瞼を下ろして、再び眠り始めた。

 

 

 

          *

 

 

 

 雪山。

 ポッケ村から最も近い場所にある狩り場(フィールド)で、フラヒヤ山脈に属する雪山の一つである。(ふもと)には草原が広がっており、雪山の内部には洞窟がある。この洞窟を抜けると、頂上付近の雪原へ向かうことができる。

 

 雪山、ベースキャンプ。

 ベースキャンプは、基本的に、モンスターが入って来ることが無く、生命を脅かす環境でない、安全な場所に設置される。しかし今は、ベースキャンプでもかなり吹雪が強くなっており、気温も低くなっていた。長時間留まっているだけで、凍死してしまいそうなほどだ。

 

「なぁ、引き返そうぜ。……おい聞いてるのか?」

 

 レグルスの言葉に、ミラは反応しない。彼女はすたすたと歩いていく。

 

「……おい、待てよ。何か言えよ!!」レグルスは思わず声を張り上げた。

 

 しかし、ミラは振り返りもせず、力強い(怒っているだけかもしれないが)足取りで進んでいく。

 

「レグルス、地図があったニャ」

 

 チェルシーは、青色の支給品ボックスの中から顔を覗かせ、レグルスに地図を渡した。

 

「これがなきゃ遭難しちまうな」

 

()()()()ですニャ」

 

「……くだらないネタはいいから、追いかけるぞ」

 

「ニャ」

 

 

 

 

 

 

 エリア1。

 麓の草原のエリア。だが、今は降りしきる雪の影響で、一面が雪景色である。

 ミラは、段差になっている丘の上に立って、レグルスたちを見下ろしていた。

 

「あいつ、もうあんなトコに……」

 

 吹雪で、姿すらも(かす)んでいる。

 

 そのとき、

 

「レグルス――――ッ!! 小型モンスターを何匹狩れるか……勝負だ―――――っ!!」

 

 と叫ぶ声が聞こえた。

 

「えっ!? 何!?」レグルスは駆けていく。「どうしたんだよ、いきなり!?」段差の下からミラを見上げながら、レグルスが訊いた。

 

「だから、勝負だ、って言ってるじゃん!」

 

「正規の依頼を受けてるわけでもねぇのに、勝手に狩っていいわけねぇだろ!! ギルドから懲戒処分を受ける羽目(はめ)になるぞ!!」

 

 実際、立ち入り禁止区域に侵入しただけでも、ハンターの資格が剥奪される可能性があるのだが。

 

「うぅ……。じゃ、先に3体狩った方の勝ち!?」

 

「そ、それくらいなら、まぁ……」

 

「よしっ!! じゃ、私が勝ったら美味しいもの奢ってね~!」

 

「あ、あぁ……」それしか返答はできなかった。

 

「じゃお先に~!」ミラは振り向き、奥へ進もうとする。

 

「おい! 地図は要らねぇのか!?」

 

 レグルスの忠告に、ミラの動きがピタリと止まる。

 

「い、要るに決まってるでしょ!! そういうことは早く言って!!」

 

「チェルシー、地図、もう1枚あるか?」

 

「抜かりはないニャ」チェルシーの瞳がキラリと光る。「こういうこともあろうかと、2枚頂戴してきたのニャ」

 

「じゃ、1枚ミラに渡してやってくれ」

 

「了解ニャ」

 

 チェルシーはぴょんぴょんと跳ねながら段差を上がり、ミラに地図を渡した。

 

「んじゃ、今度こそお先に~! あ、ここからは単独行動ね! レグルスは、チェルシーといても大丈夫だけど!」そう言い残し、ミラは奥の洞窟へと進んでしまった。

 

「……オレたちどうする?」

 

 段差を降りてきたチェルシーに、レグルスは訊いた。

 

「ニャ。どうするかニャ」

 

「うーん……。とりあえず、あっちに行ってみるか」

 

 レグルスは、どこかにに繋がっているであろう道を指差した。地図で確認すると、その先はエリア2らしい。

 彼らは、少し積もった雪を踏みしめエリア2へ向かった。

 

 

 

 

 

 エリア2。

 

「……モンスター、いねぇな」

 

 見渡す限り一面が雪で覆われているだけのエリアを見回し、レグルスが呟く。普段ならば草原が広がり、ガウシカというモンスターがいるのだが、その影すら見当たらない。

 そういえば、エリア1にもモンスターの姿が無かったな、とレグルスは思った。

 

「モンスターの匂いもしないニャ」チェルシーは鼻をヒクヒクさせる。

 

「……にしても、さっきのミラの態度の変わりようは何だったんだろう……」

 

「ホントは何も気にしてなかった、ってことなのかニャ?」

 

「そんなことはねぇだろうけどなぁ……」レグルスは灰色の空を仰いだ。「あいつ、なんか性格変わっちまったな……」

 

「……そうなのかニャ?」

 

「うん、そんな気がする」

 

「前はどんな性格だったのかニャ?」

 

「もっと素直で、おとなしかったような……。あと、オレに『バカ』なんて言うような奴じゃなかった。あとは……うん、勝負事が好きなのは、変わってないかな」

 

「ニャ……」

 

「……とりあえず、別のエリアに移るか……」

 

 向かって右側にある崖の方を見ると、登れそうな段差があり、その先にはツタが張っている。

 

「あそこ、登れそうだな」

 

「吹雪で先が見えないし、高そうニャ……」

 

「ま、行ってみようぜ」

 

 レグルスが歩くと、チェルシーは黙ったまま彼の後を追った。

 

 

 

 

 

 エリア4。

 雪山、内部の洞窟のエリア。

 

「さむ……」

 

 外もそうだが、内部はもっと寒かった。

 ミラはポーチから〝ホットドリンク〟が入った瓶を取り出し、一気に飲んだ。ホットドリンクは、保温作用を高めて体温の低下を防ぐドリンクである。雪山などの寒冷なフィールドでの必需品だ。

 

(……これで寒くはなくなるかな)

 

 即効性があるため、すぐに躰が熱くなってきた。しかし、効果はあまり持続しないので、適宜(てきぎ)ホットドリンクを飲まないと凍傷になってしまうことが多い。

 

 ミラの視線の先に、巨大な氷柱(つらら)があった。

 あんなに大きい氷柱を見るのは初めてのことで、彼女は思わず見入っていた。

 しかし、巨大な氷柱のほかには、特に目立ったものもなく、彼女のお目当てである小型モンスターもいなかったため、彼女はエリアを移動することにした。

 

 

 

 

 

 エリア2、崖の頂上。

 

「ハァ……ハァ……、やっと登りきれたぜ」頑丈なツタのハシゴを登り切ったレグルスが振り返る。「……おい、チェルシー」

 

 だが、チェルシーの姿は見当たらない。

 

「あれ……?」

 

 どうしたのかと思い、崖の縁から下を覗くと、チェルシーは一つ下の足場で震えていた。

 

「おーい!! どうしたー!?」

 

「こ、こんなトコ……、た、高すぎて登れないニャ……高いトコ苦手ニャ……」

 

「……じゃ、どうするんだ!?」

 

 チェルシーは、キョロキョロと辺りを見回している。そして、何かを発見したようだった。

 

「……ニャ!! こっちに洞窟があるニャ!!」チェルシーはその洞窟がある方向を指差した。

 

「へぇ……、それは気づかなかったな」

 

「ボク、こっちから行ってみるニャ!!」

 

 そう言い残すと、チェルシーは走っていってしまい、レグルスのいる位置からは見えなくなった。

 

「仕方ない、オレはこのまま進むか……。って、ん?」

 

 レグルスは一歩踏み出した瞬間、あることに気づいた。

 

(……地図はチェルシーが2枚持ってて、1枚はミラに渡して、もう1枚はオレが持っているということは……)

 

 チェルシーは地図を持っていない。これでは、遭難の危険がある。が、地図を持っていても遭難することはあるので、結局のところ、地図は持っていても持っていなくても問題ではない。

 

(まぁ……あいつのことだし、大丈夫だろう)

 

 いざとなれば、穴を掘って雪山から脱出することがアイルーには可能だ。

 

「とりあえず……進もう」

 

 雪面に足跡を残しながら、レグルスは進んだ。

 

 

 

 

 

 エリア5。

 洞窟のエリア。

 

(ここにも何もいない……)

 

 ここまで、小型モンスターに一切出くわさないことを、ミラは不思議に思った。

 虫一匹出てきてもいいはずだが、その気配すら感じられない。

 今までの経験でいえば、これは異常なことである。吹雪が強すぎて、小型モンスターが全部吹き飛んでしまったのではないかと思うくらいだ。

 ほかに、小型モンスターが消える現象といって思い当たるのは、大型モンスターの出現だ。大型モンスターがエリアにいると、小型モンスターは、我先にと逃げる傾向にある。

 しかし、この吹雪の中、しかも捕食対象の小型モンスターもいなければ、大型モンスターもいないはずである。

 

(このままじゃ、勝負に負ける……。とりあえず、あそこから山頂に出られそうだし、行ってみよ)

 

 彼女は、エリア5から雪山の山頂部へと続く坂道を辿った。

 

 

 

 

 

 エリア7。

 山頂付近、雪原のエリアの一つ。

 

「うぉっ!! さむぅっ!!!!」

 

 雪山の山頂部は、麓とは比べ物にならないほど強く吹雪いていた。そして、標高が高いせいか、気温もかなり低い。

 レグルスは、凍える手で〝ホットドリンク〟をポーチから取り出すと、瓶の蓋を開けて胃に流し込んだ。

 

(……飲んでも寒いな)

 

 この寒さと吹雪では、ドリンクの効き目は半分以下になるだろう、とレグルスは感じた。ホットドリンクはあまり用意してきていない。ということは、すべて使い果たす前に下山しなくてはならない。勝負よりも生命の方が優先である。

 

(……にしても、視界が悪い。2、3メートルが限界か……?)

 

 手で顔を覆いながら、彼は吹雪の中、深く積もった雪の上を進む。

 

(危なくなったら、すぐに引き返さないとな……)

 

 少し進んだところで、レグルスは雪の中に埋まった何かで滑り、転倒した。

 

「……っ!?」

 

 雪が緩衝剤となってくれたおかげで、痛くもなんともなかった。だが、埋まった手を抜くと、掌に血が付いていた。

 

(なんだこれ……)

 

 手が抜いたあと、開いた穴から地面を見ると、血痕のようなものが見えた。

 

(かなり大きい血溜まりだ……)

 

 モンスターが殺されたのだろうか。だとしたら、この近辺に肉食モンスターか、あるいは大型のモンスターがいるはずである。

 彼は雪を掻き分けた。指先が冷たい。

 

(何かある……)

 

 それは、すぐに出てきた。

 

(何だこりゃ?)

 

 持ち上げて観察してみる。どうやら、右腕の防具らしい。見たこともない防具だ。

 

(誰かが落としていったのか……? いや、こんな落し物、ハンターなら誰だって気付くはず……)

 

 鎧をじっくり観察すると、血がべっとり付いていた。

 

(怪我をして、ここに置かざるを得なかった……。いや、それでも、防具はきちんと持ち帰るはず。じゃあ、何でだ……?)

 

 レグルスは、防具があった場所から半径1メートル以内の雪を掻き分けた。何か手がかりがあるかもしれないからだ。

 雪の中を探っていると、硬い物が手に当たる感触があった。

 

(これか……)

 

 彼はは〝それ〟を引っ張りだした。

〝それ〟は、80㎝ほどある「く」の字に折れた少し太い棒で、その先端には、五つの細く短い棒が付いている。

 最初ぱっと見ただけではよく分からなかったが、よく注意して見ると、それが何であるかを理解した。

 

「う、うわぁぁぁぁっ!?」

 

 思わず手放し、尻餅をつく。

 

(な、なんでこんなモノが……!?)

 

〝それ〟は、人間の右腕だった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。