「ハァ、ハァ。」
深夜の街、辺りも人一人いない中、私は走っていた。目的もなくただがむしゃらに。私自身が作り出した呪いを振り落とすために。
「あっ、、、!!」
ずっと走り続けたから視界が狭まっていたのか、いつもなら避ける石に躓いて転んでしまった。
びしゃっと水たまりに落ちてしまった。
「……はは。。。」
服が汚れてしまったな。買ったばかりの真っ白なパーカーが、黒く濁った色に染まった。
「まるでいまのわたしみたいだな。」
なんでこんな事になったのだろう。いや、わかってる。。。。。だからこそ、今、私は走っている。『彼女』に追いつかれれば、今やろうとしてる事はきっと止められてしまう。それは私という存在を全て消してしまうことになる。
だから
「消える前に、消えなきゃ。」
私が私である為に、私が生きるために、私を殺すんだ。
——丁度、目的地についた。
この街一番高いビルの屋上。高さは三十メートル、その上に私は立っている。
「ハァッハァッ....すー...。。。うん、逝こう。」
ふと、周りを見渡す。ここは、かつて幼き私が最愛の友と永遠に途切れることのない約束をした場所だ。あれから十数年。もう、隣に彼女はいない。あの日見た頃と変わらない景色だ。
「——変わらないなあ、ここは。」
思わず笑ってしまうほど、ここから見る景色は変わっていなかった。
まあ私はこれから先、もう何もみえなくなるのだが。
「ばいばい。———ちゃん。どうか、君にめいっぱいの祝福を。」
ゆっくりと目を閉じ、私は、一歩、踏み出した。空へと逃げる為に。
周りの動きがだんだんスローなり、やがて全てが止まったように見える
その次に、今まで私が過ごしてきた思い玉が一気にムービーのように流れてきた。これが、走馬灯ってやつか。
「————————。」
『———!?————!!!!!』
「…………っあ」
そうだ、大事な事を忘れていた。ずっとずっと、言い忘れていたこと。
これだけは貴方に言わなきゃって、ずっと思ってたこと。
「お—————」
グシャリと、肉が潰れたような音がした。
◇ ◇ ◇
「——————っっ!!!!」
ばっと私は目を覚ました。そして自分の体を見つめる。なぜ、死んでいないのか。あの高さから落ちたのだ、奇跡など起きるはずがない。
バッと辺りを見回す。ここは、どうやら病院らしい。
「やあやあ、くれはちゃん!今日も眠れる美女を心配して、僕が来た——」
病室に入る際に饒舌に喋っていた彼女が、目が覚めた私をみた瞬間、岩のように固まった。そして、沈黙がおとずれる。
(き、気まずい。。。)
だが、これだけは言わなくてはならないだろう。
「おはよう、瑞稀。」
そう言った瞬間、瑞稀は目に涙を浮かべ、こちらへ突撃するくらいの勢いで抱きついてきた。
「ーーっ!っっ!ーー!!!!あ、ああああああああああ!!!」
「良かった、、、よがっだよぉ...!!!ほんっとう、に、めをっ、、、!さまして、くれて。。。!!!!」
私の胸で泣く瑞稀を、そっと抱きしめる。
「迷惑かけて、ごめん。」
「ぼんどだよぉ!!なんで、、なんで、じさつなんか、したんだよ。。!!!」
「ごめん、なさい。」
ああ、本当に
なんで、死なせてくれないんですか。神様。