機動戦士ガンダム・アンダーフォーミュラ   作:アイアイホイホイおさるさん

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 コロニー内に再びの敵MS侵入。市役所(しれいとう)でいなり弁当を食べていたショウとミミィも、箱に入った炒飯を食べながら戦術フォーメーションについて会議をしていたキャネリー隊も、その一報を聞いて飛び上がった。

 

 「MSに侵入された!?どこからだ!?」

 「地下街からだよ!あそこまではまだ調査が行き届いてないからな!まさかこんな早く来るとは思わなかったが………!」

 

 あらかじめ警戒していた事態が起きたが為にトライシンク義勇軍の行動は早かった。事前に合わせておいた対処法に従い、ぎこちないながらも迎撃に打って出る。ショウとミミィのいる市役所最上階も一気に慌ただしくなる。

 

 「ムシャムシャ、ゴク………ミミィちゃん、義勇軍の人達に話して地下の避難所に連れてってもらうんだ。俺は行ってくる!」

 

 食べかけのいなり寿司と味噌汁を腹にかき込み、ショウもまた自分に課せられた責務を果たすべく急ぐ。

 

 「あ、あの、お兄さん!」

 「?」

 

 だがそんなショウを、直前になってミミィが呼び止めた。だが何故呼び止めたかはミミィにも解らなかった。彼が今から戦場に行くと考えた時、ミミィの脳裏に「行かないでほしい」と浮かんだのだ。

 

 「………絶対死なないで」

 「………勿論だ!」

 

 しかしミミィは良くも悪くも"いい子"だった。彼に行くなと言うのが迷惑になる事を解っていたから、妥協に妥協を重ねてそんなありきたりな事を言うしかなかった。そしてニッと笑って走り去ってゆくショウには、悲しいかなそれを激励としか受け取っていない………。

 そして階段を人混みを避けて駆け下り、ショウは市役所(しれいとう)の裏の倉庫へと向かう。有事に備えた武器庫として増設されたそこは、ライアード政権下では内装を取っ払われてただの物置として使われていたのだが、MSを格納する広さがある事からある物が運び込まれていた。

 

 「教授!お待たせしました!」

 「おおショウか!!スプリガンはいつでも出られるぞい!」

 

 ビグウィグ教授が設備と一緒に運び込み、不景気により仕事が無くなったご近所のバイク屋や電気屋の皆様方を総動員して整備していたモビルスーツ・スプリガンである。

 

 「おおっ!俺たちのヒーローの到着だな!」

 「まさかガンダムの整備に携われるなんて夢みたいだ!ありがとう!」

 「ど、どういたしまして………あとガンダムじゃないです」

 

 トライシンクコロニーの人々の声援を一身に浴び、その重みと責任と嬉しさを感じながら、ショウはスプリガンのコックピットに向かう。

 

 「よいかショウ、知っとるとは思うがこいつは様々なジャンクパーツを組み上げた一点ものじゃ。一度壊れたら中々替えが効かんから用心するんじゃぞ!」

 「ハンドメイドMSの悲しい性ですね………!」

 

 おそらく整備に時間がかかったのもその為で、この先整備不良で出撃しなくてはならない時も出てくるのだろうなと思いながら、ショウはコックピットに乗り込む。いつもジャンコアでやっていたようにリニアシートの機能を起こし、全天周囲モニターを起動させる。

 

 「スプリガン出ます!スプリガン発進!」

 

 MSの出撃を知らせるウーウーというサイレンが響き渡り、スプリガンの巨体が格納庫の中から立ち上がる。夜景の中に不気味に立つその様は、さながらショウが昔見た映画に登場する宇宙人のようだ。

 

 「こういう時なんて言うんだっけか………ああそうだ、ショウ・アーネスト、スプリガン行きます!」

 

 自身を鼓舞するかのようにお決まりの台詞を吐いた後、ショウは操縦桿を前に押し、スプリガンと共に戦場に向かって翔んだ。

 

 

 ***

 

 

 トライシンクコロニーAC地区は、スーパー等の少量の商業施設がある他は民家のいわゆる居住区であり、そこに突如MSが現れたのだから当然ながら人々はパニックに陥った。非常事態ではあるが今まで平和だったが故に、まさか自分たちの住んでいる街の"床"が抜けて敵が現れるとは思わなかったから。

 

 「なんでここにMSがいるんだよ!?南極条約(おしえ)はどうなってんだ南極条約(おしえ)は!?」

 「あれジオンと連邦オンリーの条約でしょ?!こいつらには関係ないって事………グエッ!?」

 

 突如日常に攻めてきた戦争(テロ)から逃げていた市民が数人、頭上から吐き出されたビームマシンガンの弾丸によって焼かれて消えた。放ったのは二機いるラフザックの内の一機。

 

 『何を考えているパンティ伍長!?我々の任務は既に達成した!』

 『わかってます隊長!しかし私はヤツを………!』

 

 言いかけた瞬間、ラフザックのコックピットに敵機の接近を知らせるピパパパという警報(アラート)が鳴る。反応はモビルスーツ。仇が来たかとラフザックを操る女性兵士(テロリスト)が見上げると、あの時自分たちがやったようにコロニーの自転で重力が弱くなる部分を使ってこちらに飛来する機体が一機。

 

 「お前ら、人口密集地(こんなところ)で何やってんだ!!」

 

 ショウ・アーネストの駆るトライシンクを守る守護神たるモビルスーツ・スプリガンだ。そしてパンティ伍長と呼ばれたラフザックのパイロットからすれば、愛しい相手を奪った悪魔の機体。

 

 『来たかガンダムもどきぃっ!!』

 

 現れた仇を前に、ラフザックは上官の制止を振り切りスプリガン向けて跳び上がった。推進剤の奇跡を引きながら、モスグリーンの腕が腰に指したコンバットナイフを引き抜く。

 

 『Iフィールドなら実体は防げないでしょ!!』

 「こいつ!!」

 

 対するスプリガンはビームサーベルを引き抜き、コンバットナイフの刀身を受け止める。彼女の言う通りIフィールドはビームは弾くが実体を持った攻撃、実弾やこのコンバットナイフのような実体剣に対しては防御機能としては働かない。

 

 「うわ、わああ!」

 『ぐうう!』

 

 そしてMSというのは基本的に1G下の空中にとどまる事はできない。スプリガンとラフザックは互いに切り結んだま、重量に従い落下してゆく。その先にあったのは川………太陽光を入れるためのコロニーの川ではなく、水の流れる川だ。中々に大きく、MS二機が中で取っ組み合いをしても十分な広さがある。

 

 『お前が!お前がああ!』

 「何が言いたいッ!?」

 『お前がジーパンを!ジーパンを殺したァ!』

 

 スプリガンに対してマウントを取った体制で、ヒステリーを起こした彼女が彼氏に馬乗りになってナイフでめった刺しにするがごとく、ラフザックは何度もコンバットナイフをスプリガンに叩きつける。対するスプリガンもそれをビームサーベルで受け止め、周囲には水飛沫とメガ粒子の粒が飛び散っている。

 

 『ジーパンは作戦が成功したら結婚してくれるって言ってた!それをお前は殺したァ!ジーパンをッ!ジーパンを返せぇ!!』

 

 ここでシュウは、相手のラフザックのパイロットの言う"ジーパン"という単語がズボンではなく人名、それも自分が初陣で殺したラフザックに乗っていたパイロットのそれである事に気付いた。

 

 「だったら、だったら何だ!?」

 『なにっ』

 「この負け犬だらけのコロニーで、恋人が死んだぐらいで同情を引けると思ったか!?」

 

 その上で、自身が戦場に出てMSで戦う事がどういう事で、戦果を上げる事が誰かの大切な人を奪つ事に直結しているという現実を飲み込んだ上で、シュウはスプリガンの頭部バルカンの引き金を引いた。ズダダと吐き出された弾丸はラフザックを撃墜するには至らなかったが、ほんの一瞬怯ませるには十分だった。

 

 「お前らだってこのコロニーに攻めてきて大勢の命を奪っただろうが!?自分がやられた時だけ被害者面してんじゃあないぞボケがああ!!」

 『きゃああっ!』

 

 そしてラフザックを蹴り上げ、ビームサーベルを使い斬りかかる。そもそも相手はテロリスト。そいつがテロの過程で大切な人を失ったとしても同情の余地はない。ましてやテロの矛先が自分に向いていたならなおの事。お前にかける慈悲などないと振り下ろさんとされたビームサーベルであるが、直前に両者に割り込むように一発の弾丸が放たれた。

 

 「うわっ!?」

 

 弾丸はスプリガンに直撃。破壊こそしなかったものの、機体を大きく吹っ飛ばした。

 

 『パンティ伍長!援護する!俺に会わせろ!』

 『隊長!』

 

 弾丸を放ったのは放置されていたもう一機のラフザック。手に握ったMS用の高射砲で援護射撃をしていたのだ。

 

 「この野郎………うわっ!?」

 

 離れれば、実体弾に対して防御の術がないスプリガンを、後ろのラフザックが高射砲で射撃してくる。しかし前に出れば。

 

 『死ねえ!』

 「うわっ!?」

 

 前衛のラフザックの鬼のような攻撃が襲う。遠距離と近距離の波状攻撃により相手に休む間を与えず疲弊させる完璧な連係攻撃だ。

 

 『名付けて青髭殺舞踊(ジル・ド・レェ・ダンス)!私と隊長の連続攻撃によりお前は休む間もなく疲弊してゆく!そして限界に陥った所を確実に仕留める!さあ、ジーパンの待つあの世へ行けェスプリガン!!』

 

 ご説明どうも、とか。言いたい事はいくつもあったが、この連続攻撃の中でジリ貧になってゆく中で、そんなツッコミをする余裕も無かった。やはり自分には、就活に失敗してコロニーに逃げてきた落ちこぼれには街の守護者なんて大役は無理だったんだと脳内で悪態をつくショウ。で、あるが、運命は彼をまだ守護者の役から下ろすつもりはなかった。

 

 『もらった………あぁ!?』

 

 少しぐらついたスプリガンにコンバットナイフを叩き込もうとしたラフザックが、横から飛来したビームが肩のシールドに命中した事で吹っ飛ばされる。波状攻撃がいきなり途切れた事に驚くショウの耳に入ったのは、スプリガンの集音マイクが拾ったキィィンという飛行音。

 

 「あれは………まきか!?」

 

 トライシンクの夜空を切り裂き三つの機体が飛来した。それはあの時、トライシンクに迫った危機に対して勇敢にも単騎で立ち向かった戦闘機イールカトラス。あの時と違うのは"裏ワザ"により武装の数と威力が上がった事。そして。

 

 『待たせたわねボーヤ!』

 『ごっめーん!ヴェスバーの調整に時間かかっちゃって』

 『さあ、ライブスタートよ!』

 

 ノーノ、ネーナ、ミーアの三人娘による美少女航空ショー部隊キャネリー隊。その全員分の三機が揃っている事だ。

 

 『さあ行くわよ!ネーナ!ミーア!』

 『了解(ラージャ)♡』

 『まかせて!』

 

 起き上がろうとしているラフザックに追撃をかけるべく、三機のイールカトラスは空に舞い上がり、まるで獲物を見つけたハゲワシの群れがごとくラフザックを取り囲む。

 ………ここで、このイールカトラスに搭載された武装の一つである"ヴェスバー"について説明しよう。正式名称をVariable Speed Beam Rifle、可変速ビームライフルの名の通り、射出速度や収束率・出力を調節可能なビームライフルである。これにより相手に応じ、高速で収束した貫通力の高いビーム、低速で収束の低い破壊力と破壊面積が大きいビームを使い分ける事が出来る。

 そして本来はMS用の武装であるが、イールカトラスの開発元であるサナリィはこれを飛行機に専用のジェネレーターごと搭載した。言ってみれば、イールカトラスはMS並みのビーム出力を持つ戦闘機なのだ。裏技無しでは解禁できないとはいえ、これを民間向けに発売するサナリィもサナリィである。

 

 『『『フォーメーション・キャネリー!!!』』』

 『嫌ァアア!ジーパーーンッ!!』

 

 して、そんなイールカトラスのヴェスバーから放たれた低収束ビームがラフザックの三方向から襲いかかる。出力を調整されたそれはコロニーに被害を与える事なく、そして核分裂が起きるより早くラフザックを粉砕した。そしてパンティと呼ばれたパイロットも、恋人の仇を討てずに死ぬという最大の屈辱を与えられた形で、メガ粒子の嵐に焼かれて蒸発。ジーパンの待つ地獄に旅立つ事となった。

 

 「でええい!よくもパンティを!!」

 

 しかし残されたラフザックは一筋縄ではいかない。高射砲に加え、腰にマウントしていたビームマシンガンや球部のミサイルを発射。持てる火力の一斉射をスプリガンに向けて浴びせる。ヤケクソの攻撃のため多くは当たらなかったが、このままではスプリガンもだがコロニーが危ない!

 

 「くそっ!近づけたら………!」

 『案ずるなショウ!あの武器を使え!』

 「あの武器………えっ!?まさかアレを!?」

 

 しかしスプリガンにはこの距離という問題を解決できる秘密兵器があった。のだが、内容が内容のためショウもお遊びで付けたジョーク装備だと思っていたので、実践で使うと聞いて困惑と驚愕が頭に走る。

 

 「大丈夫なんですか!?あれ!」

 『問題ない!ワシを信じろ!』

 「ああもう………信じますよ!?責任取ってくださいね!?」

 

 しかしこの状況では"それ"に頼るしかない。覚悟を決めたショウは、コックピットのコンソールを操作し、秘密兵器の封印を解く。

 ………さて、昔ジオン残党が作った機体に「シュトゥッツァー」と呼ばれる機体群があるのをご存知だろうか?旧来のMSに有線による遠隔操作が可能な腕を射出するウインチ・ユニットを装備した改修機だ。それ以前にもノイエ・ジールの有線式クローアーム等、後のインコムに繋がる非サイコミュによるオールレンジ攻撃の技術はこの時点で存在していた。

 そしてスプリガンが搭載したこの"秘密兵器"もそんなシュトゥッツァーの技術を流用したもの。確固たる意志の象徴である「鉄拳」を用いた、もっとも原始的かつ、もっとも荒唐無稽で、ガンプラなら言い訳はつくが、リアルロボットたるMSの武装としてはもっとも似つかわしくないもの。その名を、その名を、その名を!

 

 「Iフィールドロケットパァァーンチ!!」

 

 飛ばせ鉄拳、ロケットパンチ!有線により繋がった前腕は推進剤によりまっすぐラフザックに向けて飛翔。Iフィールドを纏わせたそれ自体が破壊の質量となった空飛ぶ拳は、ラフザックのコックピットに容赦なく正義の一撃を浴びせる。

 

 『う わ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ』

 

 当然ながらパイロットはIフィールドの嵐の中で輝いて消える。ラフザックの胸から上を吹き飛ばし破壊した腕は、有線が巻き取られる事でスプリガンの本体に戻り、連結。それと同時に破壊されたラフザックはぐらりとバランスを崩し、倒れる。これにより襲撃を仕掛けてきたラフザックは全滅した。

 

 「はあ、はあ………お、終わった」

 

 激闘を終え完全に息が上がっているショウ。初陣より体力が減っていない事に成長を実感するより早く、スプリガンの集音マイクが拾った歓声が彼の耳に流れ込んでくる。

 

 「ありがとうガンダム!」

 「俺達の街を守ってくれてありがとう!」

 「ガンダム!かっこよかったよー!」

 

 それは、この街に住む人々の声。ただのジャンク屋の社員であるショウが味わうはずのなかった、ヒーローを讃える人々の声。それはトライシンク市民の例に漏れず"負け犬"であるショウからすれば少々くすぐったく、困惑すると同時に何より………心の底から嬉しかった。

 

 「………ガンダムじゃないんだけどなあ」

 

 同時にそれは、今自分はこのコロニーの守り手であるという責任の重みをショウに感じさせた。そしてコロニーにまた、朝がやってくる………

 

 

 ***

 

 

 ………そんな勝利ムードに水を差すようで申し訳ないがちょっと待ってほしい。そもそも二機のラフザックの目的は進軍ではなく陽動。この攻撃はあくまで囮であり、目的は別にあった。

 

 「………鷲は舞い降りる」

 

 かのキシリア・ザビによるジオン軍地球侵攻作戦の際に放たれた演説の一文をバジーナ3世が口ずさんだのと同じ頃、トライシンクコロニーの一角にある中学校に一人の転校生がやってきていた。こんな状況でこのコロニーにやってきたその少年にクラスの注目が集まる中、彼はホワイトボードに己の名をスラスラと書き自己紹介をする。

 

 「転校生のソウラ・アサティです。よろしくお願いします」

 

 その不思議な雰囲気の少年が何者か、ミミィ・ファンシフルは未だ知らずにいた。時に、宇宙世紀0138年。これは宇宙戦国時代前夜に起きた、いくつかの戦いの記録。その内の一つである。

 

 そしてとーぜんであるがこの物語は………オフィシャルではございませんぞ〜〜!

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