だいぶ長く気を失っていたらしい。ゾーネンシュリームは森を抜け、元居た館の前へと戻って来ていた。
もうこうなったら関係ねェ。レヴィアちゃんには悪ィが館の真ん前でおっ始めさせてもらうぜッ!!
「ゾォォォネンシュリィィィムゥゥゥゥゥ!!!!!!」
「な……!? 貴様死んだはずッ!?」
「さっきも言ったろ! 人より頑丈だってよォ!?」
「そして何故全裸なのだ!?」
「てめぇが燃やしたんだろうがァ!!」
勢いのまま斬りかかった剣とそれを防ぐ爪鎧がぶつかり合い火花を散らす。
────フルチンじゃなけりゃあ映える構図だったのに! 畜生め!!
「そうかその剣……!! 思い出したぞ! アスモデウスッ!! 貴様かァッ!!」
ついに看破されてしまった不死身のタネ。観念したよといった表情を浮かべてアスモデウスが半透明のその姿を現す。
『やあやあ、バレてしまったか。久しいねぇマリナ。六十年ぶりといったところかな?』
「その軽薄なツラに態度……! やはり貴様か! この小僧のからくりは貴様の魔法だな!!?」
『その通り! 彼には私の魔法を継承させた、そのうち僕より使いこなすだろうよ!』
「何を考えている!? 人間なんぞに肩入れしおって、また何時もの気まぐれか!?」
『それもまぁある。が、こと勃起魔法においては彼は逸材だよ? ……私たちの本来の目的にもいつしか届くのではないかな?』
「ハッ、戯言を……! 貴様の破廉恥な魔法でか?」
『もう私のじゃあない、彼の力だ。長命な我らと違って人間の進化は早い。前代は我らが魔王の首を刈った、ならば当代は……命に届くやもしれないよ』
「……貴様は……あの小僧を勇者にするつもりなのか……?」
『それが彼の願いであり、私の道楽だ。……その、なんだ、君ももっと楽しく生きないと疲れてしまうよ?』
「何をッ……!?」
「────テメェら俺を無視すんじゃねェ!」
積もる話もあるだろう、だがな、これは俺の話だぜ!!
剣を持ってない方の拳を握り締め、勃起魔法で硬化! そしてそのまま────
「うだらァッッッ!!」
殴りぬけるッ!!!
「何ィッ!?」
手応えありだッ!!
ゾーネンシュリームは軽く吹っ飛び、そのまま地面に爪を立てて着地した。鎧の腹部にヒビが入っている……よおし、今の奴なら俺の攻撃は効くってコトだ!
「どうだァ閣下!! 今のは効いたろォ!?」
「グッ……貴様ァ……!」
痛みとか多分そういうので歪む目でゾーネンシュリームは俺を睨みつける。
「お~怖……なァ閣下よォ、あんたに聞きたいことがあんだよ」
「何だと?」
「弱え奴には価値が無ェ、あんたそう言ったよな?」
「それがどうした」
「じゃあなんでアンタはレヴィアちゃんを守ってんだよ。アンタにとって弱えやつが無価値ならわざわざこんな館まで建てて周りの目から彼女を隔離しなくたっていいじゃねェか」
そう、そこだけがずっと引っかかってた。
奴の語るように奴の価値観が強者のみを是とする覇道であるのなら、弱いと断じたモノなんて放っておくはずだ。なのにこいつは確実にレヴィアちゃんを気にかけている。
「もしかしてアンタ、身内にゲロ甘なんじゃねェの?」
「……馬鹿な、身内の恥を衆目に晒したくないだけだ」
ふーーーん……ちょっと間があいたな? 思うところはあると見たぜ。
俺は左手に剣を持って右手を前に出すような構えをとって臨戦態勢に入る。
「まァいいや、じゃあこっから先は……身体に聞くことにするぜ」
『どうでもいいけど全裸でその台詞は危険な香りがするねぇ』
「思ったけど口に出さなかった俺の気持ちを察してよ!!」
どーして俺はこうカッコつかないのかしらねェ!!
「ふざけた事を……今度は再生できんよう、バラバラに引き裂いてから燃やしてくれるわ」
ゾーネンシュリームも構えた。一触即発といった雰囲気が漂う。
『ごほん、では気を取り直して……君だけの勃起魔法は思いついたかな?』
半透明の身体を引っ込めて、俺にだけ聞こえる声でアスモデウスは問いかけた。
「あァ」
『よろしい、ならば私は特等席で見ていよう……頑張りたまえ』
「あいよォ」
俺は地面を蹴ってゾーネンシュリームへと
ゾーネンシュリームとはいうと、森での戦いのように構えをとったままこちらの出方を伺っているのかピクリとも動かない。
────あくまで自分は挑戦を受ける側だってか??? 超ムカつくぜ……!!
が、COOLになれレオンハルト。
奴だって魔力が足りなくて余裕が無いはず! つまり状況は五分!
やれないことはないはず……だ!
「うおおおおおおおァァァ!!!」
俺の考えた技はこうだ。
勃起魔法で硬化させた拳をすげえ速さで叩き込む、それだけのシンプルなやつ。
加速する身体に「手で自分を慰める時速くなる手の動きに比例して硬くなるちんぽ」を重ねることでより強い硬化をもたらすのだ。
そしてその硬い拳をすげえ速さで叩き込んだなら、さっきの攻撃とは桁違いの威力になる! ……と思う。
問題はどーやって加速するかなってコト。射精でそんな加速ができるイメージが俺には無ェから、戦いながら考えるしかない。(最近出すときのキレが無くなってきてるんだぜ)
「行くぞォォォォォォォォォ!!!!」
「来ォい! レオンハルトォォォォォォ!!!!」
「うっっっっっさいわねぇ!!!!! 今何時だと思ってんのよ!!!?」
いきなり館の窓が開かれ、ヴィオラが外の俺たちを怒鳴りつけた。
「つかなんで服着てないのよアンタ!!!!?」
もう100回は言われたような気がするよ。無視無視。
「レオンのくせにィ!! 私を無視するワケぇ!?」
……いや違うんすよ、閣下が少しでも目ェ逸らしたら殺してやるぞって目をしてるんすわ。不可抗力なんすわ。
「ふざけやがって……! 後で粉々に爆破してやるんだから!!」
……前門のゾーネンシュリーム、後門のヴィオラと言ったところか。
いやだなぁ……よしんば勝ったとしても爆破されんのか、テンション下がるなァ……。
────って爆破? 爆破って言ったか?
突如として俺の脳内に電流走る。……そうか、爆破か!
サンキューヴィオラ! 閃いちまったぜ、俺の勃起魔法を実現する方法が!!
「……もういいか? 来ないならば、こちらから行くぞォ!!」
ゾーネンシュリームが痺れを切らして襲い来る。閣下がバトルジャンキーで良かった、展開がバトルの雰囲気に戻って来たぜ!! ヴィオラがすげぇ顔でこっち見てる気がするけど今はこの雰囲気に流されたいんだぜ!!
思い切り振り降ろされる爪のような籠手の一撃を俺は剣で受け止めた。ガキンと大きな音と共に受け止めた剣から俺の身体に衝撃が伝わってくる。
魔力はほぼ空だというアスモデウスの談が信じられないぐらいに重い一撃だ。人間と魔族のフィジカルの差を思い知らされる。
でもここで退くワケにはいかない。俺はその衝撃に耐えつつも反撃の準備を始める。先ほど説明した勃起魔法の下準備をだ。
(まずは……エネルギーを貯める!!)
射精と言うモノは急に今出せと言われてすぐ出せるモンじゃあない。少なくとも俺は無理だ。よって、幾ばくかのチャージ時間が必要なのである。
俺は身体に巡る力を、特に拳に集中させた。
「るあァァァッ!!」
爪の一撃を防がれたゾーネンシュリームは今度は飛び上がって彼女の竜種の象徴たる尻尾を叩き付けてきた。
それもまた俺は剣で防ぐも、ゾーネンシュリームの攻撃は終わらない。続けざまに今度は空中踵落としを両の脚で繰り出し、その片方は俺の剣での防御を乗り越えて鎖骨を砕いた。
「ぐうッ……!」
すげェ痛えけどチャージは途切れさせない。自慢じゃないが射精管理はお手の物だ、帝国性風俗店スタンプカード(1回利用ごとに1スタンプ、10スタンプで満了となり利用が一回無料!)を数十枚コンプリートした俺に刺激による暴発は無いと思ってもらおうか!!!
踵落としの反動を利用した宙返りで距離を取ったゾーネンシュリームは着地の勢いを地面を蹴って殺すと同時に俺へと突っ込みラッシュをかけてくる。
続けざまに繰り出される連続攻撃に防御するのが精一杯だがこれでいい。もとより不死身なのだから技を出す前に死ぬことは無いのだ。
「さっきまでの威勢の良さはどうしたレオンハルトォ!」
ゾーネンシュリームの拳が、脚が、そして尻尾が雨あられのように降り注ぎ、時折防御を抜けて俺の身体に突き刺さる。
耐えれば耐える程に射精ってのは勢いを増すモンだ。耐えて耐えて耐えきって、どデカい一撃を食らわせてやるぜ……!
チャンスは一瞬。奴の攻撃の緩むその刹那が、解放の時だ。
もうそろそろエネルギーも貯まる。ここがいわゆる正念場……!
永遠にも思える時間が過ぎ、吸い込むような呼吸音と共にラッシュの勢いが止まる。そしてゾーネンシュリームは最後に俺を蹴って距離をとった。
……今だ!!!
俺は剣をゾーネンシュリームへ投げつける。
別に当たらなくていい、奴の気が一瞬でもそちらに向けばそれでいいのだ。
案の定剣はあらぬ方向へと飛んでいき、それを見たゾーネンシュリームは嘲るように笑った。
「何をするかと思えば……下らん抵抗だなぁレオンハルト、そんなものでこの私が」
言ってろ、既に準備は完了してる。
ぶっつけ本番だが……やるしかねェ!!
「倒せると────」
俺は貯めたエネルギーを、まず背中で爆発させた! 爆風を受けた感覚はよく覚えてる。だって俺の運命が変わったのは、あの宿でヴィオラと出会ったからだ。アイツの爆破で窓から吹っ飛ばされた時の感覚を再現出来れば……俺は前方へ吹っ飛ぶッッッ!!
エネルギーが爆裂する音と共に俺の体は急加速した。身体が千切れそうだが問題ない、不死身だから。
突如始まった現象に、ゾーネンシュリームは面食らったような表情を浮かべ、咄嗟に防御しようとするがもう遅い。今の俺は────お前よりも疾いからだッッッ!
「うッ、おおおおおおおおおおおッッッ!!!!」
拳は元々の硬化にさらに硬化を重ね、今や金剛石の如き硬さを有している。後はコイツを……奴に食らわせるッッッ!!
突き出した拳は奴の防御より速く奴の身体に突き刺さった。
「ッッッ!!?」
ゾーネンシュリームの身体がくの字に折れ曲がる。それと同時に俺は拳に貯めたエネルギーを爆発させた。
「
爆発はゾーネンシュリームを吹き飛ばして館の壁に奴を強く叩き付けた。
ちなみにこの最後の拳が爆発するのは、これもヴィオラがやったやつを参考にさせてもらった。詳しくは第三話の終わりの方を見るといいと思うよ。
「ぐッ……がはァッッッ」
壁に磔になったようにめり込んだゾーネンシュリームは吐血し、そのままずるずると地面へ崩れ落ちた。
……これは、勝ったんじゃねェか?
ゾーネンシュリームへと駆け寄ると、彼女はまだ意識があるようで血を口から流しながら尚も、ふらつきながら立ち上がった。その表情は眉間にシワが寄り、こちらを今だ厳しい顔で睨みつけている。
「ウソだろ……? まだ倒せないのかよ……!」
しかしゾーネンシュリームは、その表情をふっと緩ませると俺に言った。
「今回は……お前の勝ちだ」
それだけ告げると、ゾーネンシュリームは前のめりに倒れて気絶した。
『……おめでとうレオン、君の勝ちのようだよ』
ゾーネンシュリームとアスモデウス、二人から勝利を告げられて俺はようやく自分が勝負に勝ったことを理解する。
「そっか……俺、勝ったんだな……よかっ……た」
安心するとドッと疲れと魔力(俺の場合は精力なんだけど)切れがきたようで、俺もその場に崩れ落ちた。段々と意識が遠のいてゆく。
『お疲れ様、今は眠るといい。……これからもっと忙しくなりそうだからねぇ』
アスモデウスに優しく見守られながら、俺の意識は途絶えた。