ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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この作品の主人公の名前はタクミですが、乾の方でも尾上の方でもない、オリジナルキャラです

ご了承ください


プロローグ
俺とファイズ


 

 

 

 

 

忘れもしないあの日。

 

 

その日、タクミは六分街から少し遠くの街に買い出しに出かけていた。

 

 

いつものように夕飯の材料を買い、

いつものように家に帰る──

 

 

──そのはずだった。

 

 

 

その時突如、彼の近くでドーム状の亜空間が出現し、タクミは悲鳴を上げる間もなく暗闇へと呑み込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

「──っここは……?」

 

 

目が覚めると、タクミは全く知らない空間にいた。

 

 

「そうだ…俺、ホロウに…」

 

 

おそらくホロウ災害に巻き込まれたのだろう。

自分の運の無さを呪いながら、周りを見渡した。

 

 

周りにあるエーテルの結晶──知らない空間ではあるが、その結晶の存在が暗にここがホロウであるという事を示していた。

 

 

タクミのエーテル侵蝕の耐性は比較的高い方だ。

 

 

しかし当然ながら、それがホロウを生きて脱出できるという事にはなり得ない。

ここにはホロウを出るためのキャロットもなければ、エーテリアスに対抗するための装備もない。

 

 

ここに長く留まり過ぎれば侵蝕が進み、エーテリアスと呼ばれる化け物に変貌してしまう。

 

かと言って下手に動けばホロウに蔓延るエーテリアスに見つかり、為す術もなく餌となってしまう。

 

 

「……とりあえず、隠れねーと……」

 

 

少なくともここに居ては危険だ。

 

そう思ったタクミは隠れる場所を探そうと歩き出した。

 

道中でエーテリアスと出くわさないよう祈りながら……

 

 

しかし──

 

 

「グルルルル……」

 

「──おいおいマジかよ……ッ!」

 

 

こういう時に限って幸運の女神というのは唾を吐きかけてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「グルルァァァアァァァア!」

 

「ハァ……ハァ…… クソッ……!」

 

 

アレから数十分、タクミはエーテリアスと命懸けの鬼ごっこを繰り広げていた。

 

 

 

「やべぇ、このままじゃ追いつかれる……!」

 

 

 

体力には自信がある方だとは言え、こうも数十分ぶっ続けで走り続けていれば体力の限界を迎えるのは当然の事だった。

 

 

そして──

 

 

「どわぁぁっ!?」

 

 

体力の限界か、精神の限界か。

 

足がもつれてしまったタクミはそのまま地面へと盛大に倒れ込んでしまった。

 

 

「グルルル……」

 

「…………ッ!!」

 

 

追いかけていたエーテリアスと目が合い、何処にあるかも分からない目で見つめる。

 

恐怖で足がすくみ、声が出ない。

 

 

『丸腰でもエーテリアスに勝つ方法』、みたいな記事をインターノットの何処かで見た記憶があるが、いざ対面すると身体すら動かない。

 

 

エーテリアスがじりじりと近寄り、その腕についた剣を振りかぶる。

 

 

「ッ!」

 

 

タクミは思わず顔を背け、目を閉じた。

 

その時──

 

 

「こっちだ!早く逃げるぞ!」

 

「──?………ッ!?」

 

 

声がしたかと思えば、突然誰かがタクミの腕を勢いよく引っ張った。

 

 

タクミの腕を掴みながら、そのままその男は走り出す。

 

 

「うぉっ!?ちょっ──」

 

「死にたくなけりゃ全力で走れ!」

 

 

タクミの体力は限界を迎えていたが、どうにかエーテリアスを撒くことができた。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

それから少し経ったあと、タクミと男は物陰に隠れていた。

 

 

「ハァ……あの……さっきはありがとうございます……もしかして、治安局の人ですか?」

 

「治安局?……いや違う、俺はただの一般人だ。お前と同じくホロウに呑まれた、な」

 

 

男は息切れしながらそう答えた。

 

よく見ると、左手にアタッシュケースを持っている。

 

 

「ひとまずここに隠れりゃ安全だが……いつまでもって訳にはいかない。キャロットも持ってな──」

 

グォォオオアアアアア!!

 

「──ッ!?」

 

 

瞬間、耳をつんざくような咆哮が聴こえた。

 

 

「い、今のは!?」

 

「エーテリアスだ……こりゃあ結構近くにいるな……」

 

「さっきのエーテリアスですか!?」

 

「今のは多分別のエーテリアスだ、それもさっきよりずっと強い方のな」

 

 

下手に音を出せば見つかる……見つかってしまえば餌になるのも時間の問題である。

 

タクミはどうすればいいか必死に考えを巡らせる。

 

しかし何もいい案が浮かばない。

 

ふと男の方に目をやると、彼はアタッシュケースを地面に置き、何かを取り出していた。

 

これは……ベルトだろうか。

 

 

「こうなりゃダメ元でやってみるか……」

 

 

何やらブツブツと呟いている。

 

すると、その人はそのベルトを腰に装着した。

 

 

「?あの……なにを?」

 

「とりあえず見てな」

 

 

アタッシュケースに入った、ガラケー?のような物を取り出し──

 

 

[5・5・5][Standing by…]

 

 

そのガラケーで何かを入力した後、謎の無機質な音声が響き渡る。

 

そしてそのガラケーを高く掲げ──

 

 

「変身!」

 

 

ベルトにセットした──しかし。

 

 

[Error]

 

「ッ!うわぁッ!」

 

 

音声が流れた直後、そのベルトは勢いよく吹き飛ばされ、反動で男は地面に倒れた。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

「──ッ……ああ、平気だ……にしても、やっぱダメか……」

 

 

男は少しの間考えた後──

 

 

「なぁお前、名前は?」

 

「え?名前?……タ、タクミです」

 

「タクミ?……そうか、タクミか……よし、タクミ!ここで会ったのも何かの縁だ──これ、着けてみてくれ」

 

 

そう言って男はタクミにベルトを渡した。

 

 

「これは……」

 

「今からやることが成功すれば、俺達はこの窮地を脱出できる」

 

「……失敗したら?」

 

「二人まとめてここでお陀仏だ」

 

「……ッ」

 

 

彼の言う通り、ここで迷っていても助かりはしない。

 

しかし、得体の知れないベルトを装着するのは些か抵抗感があった。

 

 

「……俺がやるんですか?」

 

「さっきも見たろ?俺じゃ無理だった。物は試しって言うし、いいから着けてみろ」

 

「……分かりまし──」

 

 

グォォオオアアアアア!!

 

再びエーテリアスの咆哮が聴こえた。

 

 

「──まただ!」

 

「さっきよりも近いな……タクミ、時間がない──早く変身しろ!」

 

「ッはい!」

 

 

ベルトを腰に装着し、ガラケーを手に取る。

 

 

「5を3回押したあとにENTERを押せ!その後は俺がやったみたいにケータイをベルトにセットしろ!」

 

 

言われた通りにケータイを開き、コードを入力する──

 

 

「グォォオオ…グォォオオアアアアア!」

 

「ッ…マズい見つかった!タクミ!急げ!」

 

 

[5・5・5][Standing by…]

 

「変身!」

 

 

──そして、ベルトのバックル部分にケータイをセットした。

 

 

[Complete]

 

 

先程と違う音声が流れる。

 

その瞬間、ケータイ部分から赤い光の線が出てタクミの身体に、全身に血液のように巡っていく。

 

 

そしてその身体は赤い光につつまれ、エーテリアスはその眩しい光に目をくらませた。

 

 

赤い線。

 

黄色い複眼。

 

タクミは全身に謎のスーツを身にまとっていた。

 

 

「──これは」

 

「『ファイズ』だ。どうやら、変身は成功したみたいだな」

 

 

……何がどうなってるのか分からない。

 

 

すると、怯んでいたエーテリアスが回復し、即座にこちらに襲いかかる。

 

 

「グォォオオオオオ!!!」

 

「タクミ!来るぞ!」

 

「!!」

 

 

タクミはエーテリアスの斬撃をすんでのところでかわし、お返しと言わんばかりに思い切りエーテリアスの体に蹴りを叩き込んだ。

 

 

…………

 

 

蹴りをその身に受けたまま、エーテリアスは微動だにしない。

 

 

「……?」

 

「……」

 

 

不審に思ったのも束の間、エーテリアスは呻き声共に跡形も残さず消滅していった。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

その後。

 

「あの……ありがとうこざいました……これが無かったら多分、死んでたと思います」

 

 

そう言いながらタクミはベルトが入ったアタッシュケースをその人に渡そうとした。

 

 

「……それ、やるよ」

 

「え?」

 

 

何故か彼は受け取ることを拒否した。

 

 

「えっと、どうして──」

 

「俺が持ってても仕方ねーからな。お前ならそのベルトを悪用するって事もしないだろ」

 

 

会ったばかりの人間にそこまでの信頼を置くのはどうなんだ……?

タクミはそう思った。

 

……とは言え、闘うための力が欲しくなかったかと言えば嘘になる。

 

先程闘って分かったが、このベルトの、『ファイズ』の力は強大だ。

 

使い方を間違えなければ、兄と姉の力になれるかもしれない。

 

 

「……分かりました。それじゃあ、貰っときます」

 

「おう──あ、一応言っとくがここでベルトを貰った事を口外するのはやめとけよ……俺とお前だけの秘密だ」

 

「分かってますよ」

 

 

 

この後タクミは治安局に保護され、無事ホロウを出ることが出来た。

 

そしてこの日から、「ファイズ」として闘う事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……?何か忘れてるような──あ、やべぇ名前聞くの忘れてた」




次回から本編です!
会話文や設定等に矛盾が出ないようなるべく努力します!
感想等お待ちしております!
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