ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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1-1章:猫の落とし物
訪問者


 

 

 

 

 

とある日の朝。

 

目覚ましアラームにより目を覚ましたタクミは、まだ脳が起きていないのか、ベッドに座りながらボーっとしていた。

 

すると部屋の扉が開いた。

 

 

「タクミー。起きてる?」

 

 

入ってきたのはリンだった。寝ぼけ眼を擦りながらタクミは答える。

 

 

「今起きたとこだよ……それで、何か用?」

 

「うん。お兄ちゃんが私たちに話があるから駐車場まで来て欲しいって」

 

「話?なんの?」

 

「私も詳しくは聞かされてないの。『二人が来たら説明する』って」

 

「分かった……顔洗ってくるよ」

 

「おっけー。じゃあ下で待ってるね」

 

 

リンは下へ降りていき、タクミは洗面所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

Random Play 裏口の駐車場にて。

 

裏口の扉を開けると、既にアキラとリンがいた。

 

 

「──おはようタクミ。こっちだよ」

 

 

アキラは謎の巨大なゴミ袋を持っていた。

 

 

「兄ちゃん、もしかしてゴミ出しを頼むためにわざわざ俺を起こしたのか……?」

 

「そうじゃないよ。このゴミ袋には壊れたボンプの信号発信機が入っていてね。これだけあれば、小型の信号遮断器数台分にはなるはずだ」

 

 

そう言ってアキラはゴミ袋を地面に下ろした。リンが尋ねる。

 

 

「それを使ってどうするの?」

 

「これを使えば、Fairyに内緒で話ができる──あの千里眼と地獄耳のFairyにね」

 

「……あー、もしかして兄ちゃん、話ってのは……」

 

「うん。そのFairyについての話だよ。彼女について、一回ちゃんと話し合う必要がある」

 

 

Fairyが来てからというもの、プロキシ事業の様々な面を彼女にサポートしてもらっている。

 

ホロウ脱出ルートの演算は全てFairyが行っている。それもローカルデータにも頼らず、以前の270倍もの早さでだ。

 

そんなもの、新エリー都の上位勢力が見逃すはずがない。とてもじゃないが、今の自分達の手に負えるものでは無い。

 

懸念点はまだある。

 

Fairyは自分に関する具体的なことは何も話そうとはしない。『利用規約』や『適切な時期、場所』の事について聞いても、答えようとはしなかった。

 

その事で、三人はFairyに対し少なからず不信感を抱いていた。

 

 

「──でも、Fairyの力を上手く利用できれば、ずっと調べてきた『あの件』も突破口が見つかるかもしれない。先生の悲願だって……」

 

(あの件……先生……)

 

 

この二つの単語に関することについて、タクミは何も知らない。

 

旧都時代、諸事情により二人と別々に住んでいたタクミは彼の言う『先生』とは面識こそあるものの、一緒にいた時間は二人より少ない。

 

そしてあの時二人に何があったのか、何故プロキシになったのかを聞いても、一向に教えてくれない。

 

実弟に何も明かさないことについて何も思わない訳では無い。しかしまあ、誰しも知られたくない過去はあるものだ。

 

それに二人からはタクミを『巻き込みたくない』という意思、のようなものを感じる。

 

そもそも二人は最初、タクミをプロキシ事業に関わらせる事さえしないようにしていたのだ。

 

それでも力になりたくて必死に説得した結果、現在のようにファイズとしてパエトーンの力になることが出来ている。

 

 

(まあ、いつか教えて貰える時が来るかもだし、無闇に詮索するのもなぁ)

 

「──タクミ?」

 

「え、あ、どうした?」

 

「ちゃんと聞いていたかい?Fairyの事は焦らず時間をかけて調べれば良い、って話をしていたんだけど」

 

「あっ……ああ、勿論ちゃんと聞いてたぜ」

 

「怪しい……」

 

 

アキラとリンがジト目でこちらを見る。

 

 

「そ……そういや兄ちゃん、邪兎屋にFairyの調査頼んでたよな?なんか進展はあったのか?」

 

「その事か……それが実は、特に進展が無いみたいなんだ。ニコは特定の下請け業者から金庫の依頼を受けたから、関係者とは一切会ってないらしい」

 

 

ニコは赤牙組を糸口に手がかりを探してみる、と言っていたが、それ以来なんの連絡もない。

 

 

「──まあ、この話はおしまいだ。リンもタクミも……最近はインターノットの新アカウントの名声上げだったり、ビデオ屋の経営だったりで、あんまり休めていなかっただろう?」

 

「あー……言われてみれば確かに、ここ最近休めてなかったかも」

 

「今日はテレビでも見て、リラックスすると良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その日の夜。

 

三人は、ヴィジョン・コーポレーションが請け負った『旧都地下鉄改修プロジェクト』に関する報道を見ていた。

 

テレビでは、ヴィジョンの代表、チャールズ・パールマンのインタビューが行われている。

 

『旧都地下鉄改修プロジェクト』、簡単に説明してしまえば、カンバス通りには旧都陥落で崩壊した地下鉄があって、それが色々邪魔だからエーテル爆薬を輸送して吹っ飛ばしちゃおうね、という内容だった。

 

少なくともタクミはそう受け取った。

 

 

「──工事が行われるのはホロウの近くで、しかも大勢の人員を移動させる必要がある……」

 

「やっぱり、TOPS財政ユニオン入りを目指す企業は、やる事が違うね……」

 

 

するとFairyが突然──

 

 

「警報。街道カメラにて、何者かが本店へ急速に接近しているのを確認。推測、トイレを借りたい、レンタルしたビデオの期限が迫っている、本店に対し悪さを企んでいる──」

 

「妙な言い方すんなよ。どうせ客だろ、俺が出るよ」

 

 

そう言ってタクミは店の入り口へ行った。

 

 

「それに、ソイツが仮に悪さを企んでるとしても、俺がいる限り万引きも強盗もやらせな──」

 

「ふみゃーー!?」

 

「──ぐおっ!?」

 

 

ドアを開けるや否や、猫のシリオンの少女が飛び込んできて、タクミの腹部へと激突した。

 

 

「……ん?」

 

「え?」

 

「ぐ……う……」

 

 

困惑するアキラとリン。腹部にクリティカルヒットを喰らい悶絶するタクミ。

 

 

「──記録。強盗を撃退すると息巻いていた助手三号の弱点は腹部への──」

 

「勝手に……記録すんじゃねぇ……」

 

 

すると猫の少女は起き上がり──

 

 

「はっ!このだるまみたいなオッサンを信じちゃダメだ!こいつは嘘をついてる!」

 

 

──開口一番、そう言った。





パエトーン兄妹の経歴が不明過ぎるので設定に矛盾等が起きないよう、念の為に弟くんは別居してたって事にしました

これで万事OKだわ(根拠なし)
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