「ファイズ……? なんだそれ」
兵士の要求を聞き、すっとぼけるタクミ。
「言っておくがしらばっくれない方が身の為だぞ。貴様がベルトを所持している事はとっくに分かっている」
「……!」
「ちょっとアンタ!」
兵士とタクミの会話に猫又が割って入る。
「どこの誰だか知らないけど、あたしとタクミは郊外に遊びに来ただけなの! 治安局に通報するぞ!」
「小娘は黙っておけ──おい小僧。素直にベルトを渡せば、無傷で帰してやる」
「無傷、ね」
タクミは左手のアタッシュケースに目をやり、次に兵士の方を見る。
少しの間無言の睨み合いが続き────
「……!? おい、上空になんか飛んでるぞ!」
「……」
タクミが突然そう叫ぶが、兵士は全員視線を動かす事すらもしない。
「……貴様、そんな子供騙しが通用するとでも────っ、何!?」
兵士の言葉を遮るように機関銃の音が鳴り響く。
タクミの『なんか飛んでる』という言葉は嘘では無い。実際にオートバジンがタクミ達を援護すべく飛来していた。
簡単には信じないであろう彼らの裏をかき、タクミはあえてわざとらしくそう言ったのだ。
兵士達を攻撃するオートバジンを盾に、タクミはファイズドライバーを装着する。
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
コードを入力したファイズフォンをセットし、タクミはファイズに変身した。
「猫又!」
「っ、何?」
「ニコ達のところに戻れ! コイツらの狙いは俺だ!」
「で、でも……!」
「遠くない内に向こうも襲撃を受けるかもしれない。俺はこいつらの相手をする! 後で合流するから、早く戻ってこの事を知らせろ!」
「わ……分かった!」
猫又は混乱の隙に乗じて逃げて行く。それを見届けたファイズはオートバジンのスイッチを押す。
[Vehicle Mode]
バイクに変形したオートバジンに乗り、ファイズは走り出した。
「くそっ──待て!!」
兵士達もバイクに乗り、ファイズを追いかけて行った。
───────────────────────
一方その頃ブレイズウッドでは、ニコ率いる邪兎屋は窮地に立たされていた。
パールマンを引き渡す為に、ニコは対ホロウ事務特別行動部第六課……通称『対ホロウ六課』のメンバーを郊外まで呼んだ。
六課の課長であり、『虚狩り』の一人である星見雅。
副課長で部隊の指揮を務める月城柳。
高い洞察力を持つ斥候、浅羽悠真。
戦闘員の鬼族の少女、蒼角。
審問を経て、彼から全ての情報を引き出した六課。しかし、『ブリンガーがグルである』と断定するには証拠が足りないらしい。
もっと踏み込んだ調査を行うために、六課はもう一人の証人として、プロキシであるリンを連行する必要があると、副課長の柳はそう言った。
ニコは彼女は無関係だと言うが、六課は引き下がらない。
一触即発の空気がそこには流れていた。
「……『邪兎屋』のニコ。プロキシを引き渡せ。この者が悪でなくとも、真相に迫る何かを持つ可能性がある。我らの支援が欲しくば、協力しろ」
「……!」
雅が放つ威圧感にニコは狼狽える。しかしニコとしても、プロキシを巻き込むような真似はしたくない。
(……こうなったら、プロキシだけでも──)
「ニコ!!」
「?」
張り詰めた空気が一人の少女の声によって霧散する。声がした方を見れば、猫又が非常に切羽詰まった様子こちらの元へ走って来ていた。
「……猫又? どうしたのよ」
「た、大変だ……! タクミが、武装したヤツらに狙われてる!」
「……え!?」
「ここにいちゃ危ない! アイツらももうすぐ──」
猫又がそう言った瞬間、銃弾の雨が辺りに降り注ぐ。
「おわぁっ!?」
「──制圧射撃のリズム……ニコ、敵は私達を包囲しようとしてる……!」
「……っ、お武家ギツネ! アンタまさか刺客を用意してたの!?」
「こちらの台詞だ、『邪兎』のニコ────フッ!!」
雅はパールマンに向かってくる弾丸を妖刀・無尾で残らず斬り捨てる。
しかし銃弾の雨は止まない。その時、パイパーの乗ったトラックがリン達の前に横切るように停車した。
「プロキシ、邪兎屋! 乗りな!」
「ありがとうパイパー! 皆、こっちだよ!」
隙を見て、邪兎屋とリンはパールマンを連れて2台のトラックに乗り、この場を去って行った。
「待て──!!」
「! 課長!?」
雅は銃弾の雨を掻い潜り、走っていったトラックの後を追いかけて行った。
そして郊外にて。
二台のトラックは武装兵士達が乗るジープとバイクと盛大なカーチェイスを繰り広げる事となった。
彼らを撒く為、あえて路面状態が悪い道を選んだが、それでも兵士達はしつこく追ってくる。
「くっそぉ、これじゃわざわざ悪路を選んだ意味が────ってうぉぉ!?」
「にゃぁっ!! は・な・れ・ろっ!!」
ビリーが運転するトラックの窓から兵士が入り込む。同乗している猫又とニコが追い払おうと奮闘する。
「ふっ!!」
「ぐわぁっ!?」
一方パイパーの運転するトラックでは、車体の上に登ってきた兵士達をアンビーが蹴散らしていた。
このトラックにはパールマンが同乗している。今、彼に危害が加わるような事があってはならない。
そして兵士を大方蹴落とした後。アンビーは後方から何かが飛んで来ていることに気づく。
「……あれは……」
「っ!? 親分!! 後ろからなんか来てるぞ!!」
「なんですって!?」
その飛行物体の正体は、白い強化スーツを身にまとっている人間だった。強化スーツの人間はこちらを視認したあと────
「!! こっちに来る……!」
目にも止まらぬ速度で、こちらへと襲いかかってきた。