サイガはタクミが落としたファイズドライバーを拾い上げ、そして気絶したタクミを担ぎあげる。
その時だった。
「!!」
おおよそ人間のそれを超えたスピードで何者かが迫り来ているのにサイガは気づく。
対ホロウ六課の星見雅が妖刀・無尾を構え、遥か遠くからこちらに向かって来ているのが見えた。
サイガはファイズドライバーとタクミを持ったまま、フライングアタッカーを使って上昇。
雅の刀が届く寸前に場を離脱した。
「……一足遅かったか」
飛んでいくサイガを見て、雅はつぶやく。
雅に続いて、ビリーとパイパーの運転するトラックがこの場に到着した。
トラックからリンが慌てて降りる。
「雅さん! タクミは!?」
雅は空を見上げたまま、問いに答える。
「……連れ去られた」
「…………!!」
リン達も上空を見上げる。目にしたのはサイガがタクミを担ぎながら遥か遠くに飛び去る光景。
「は……早く助けないと……ッ!」
「待ちなさい猫又! どこに行ったかも分からないのにどうやって助けるのよ!?」
「……っ!」
ニコに諭され、猫又は落ち着きを取り戻す。しかし依然として、焦りは消えなかった。
「……アイツ何者なんだ? ファイズを負かすなんて……」
「僕達を襲って来た武装集団の仲間、と考えるのが妥当だろうね」
「!」
声がした方を振り返ると、この場に雅以外のホロウ六課メンバーも既に到着していた。
「先程、プロキシさんが乗っていたトラックにその白い鎧の男が襲来し、パールマンを連れ去って行きました。浅羽隊員の言う通り、武装集団の仲間である可能性が高いです」
「うーん……でもそれなら、なんでさらう必要があったのかな……?」
蒼角の言葉を聞き、猫又はタクミと一緒にいた時の事、そして武装集団のリーダーが言っていた事を思い出す。
「……そ、そうだ! アイツら、ファイズのベルトを寄越せって言ってきたんだ!」
「じゃあ、アイツらの狙いはダルマのオッサンとファイズのベルトって事?」
「……なるほど。それならタクミを攫った理由も納得がいくね。ファイズに変身できるのはタクミだけだから」
「プロキシ先生」
声がした方を振り向く。アンビーとパイパーが捕虜を連れてトラックの後ろから出てきた。
無表情ながら、アンビーの顔には怒りが滲み出ている。
「さっき、捕虜が口を割った。敵は……バレエツインズを拠点にしてるみたい」
「バレエツインズですって……?」
バレエツインズ。かつてヴィクトリア家政とともにハッカーのレインを助けるため、反乱軍やエーテリアスと戦闘を繰り広げた。
「じゃあタクミもダルマのオッサンも、そこに連れていかれたって事か……!」
「……捕虜の言ってる事が本当なら、そうかも」
「多分本当だぜぃ。このねーちゃん、えらい形相で詰め寄ってたからなぁ。捕虜、めちゃくちゃビビり散らかしてたぜぃ」
「…………」
「それならすぐにでもバレエツインズに行かなきゃ……タクミの身に何かが起きる前に!」
「……課長、どうします?」
「……パールマンはヴィジョンの件の重要参考人だ。おいそれと放っておく事は出来ない。それに……タクミという少年も、ヴィジョンの件とは無関係というわけではないだろうからな」
「……ありがとう。ひとまずは連行は保留って事だね」
パールマンとタクミを救出するため、リンとホロウ六課は一時的な共同戦線を張ることにした。
「あ、それとプロキシ。さっきうちの大将から連絡がきたんだけど、どうやらまた傭兵の一団がこっちに向かってるらしいぜぃ」
「え、嘘だろ!? まだ追手が来るってのか!?」
「……このままじゃそもそもプロキシが新エリー都まで帰れるのかどうか、ね」
ニコは少し考えた後に、提案する。
「よし、それならあたし達はここに残るわ。ビリーはカリュドーンの子と一緒に追手の撃退」
「! 了解だ親分!」
「アンビーと猫又はあたしと一緒に、プロキシが無事に新エリー都に帰れるよう敵を引き付けて援護するわよ!」
「了解」
「……」
「ありがとね、ニコ、皆」
リンはニコにお礼を言った後、未だ表情に曇りが見える猫又の所に行く。
「大丈夫だよ猫又。タクミは絶対、無事に連れて帰るから」
「……っ、分かった……!」
「……猫又ちゃんだっけ? 彼女、随分タクミくんにお熱なん──いひゃい!?」
「それでは当面の間、よろしくお願いします。プロキシさん」
「うん、よろしくね」
「ちょ、つきひろはん!! ほおをすねらないでくだひゃい!!」
これ以上家族を失うわけにはいかない。リンは強く、固く決意した。
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一方その頃。タクミを抱えながら、サイガは郊外の空を飛行していた。
行き先は新エリー都のバレエツインズ。
脇目も振らずに目的地に移動していたのだが──
「っ!?」
突如サイガを超えるスピードを持つ何かが後ろから飛来。反応が遅れ、サイガは飛行物体──ジェットスライガーによる突進を受けてしまう。
奇襲をかましたジェットスライガーには……ホロウレイダーのデルタが乗っていた。
サイガは突撃を受けた拍子に担いでいたタクミを落としてしまう。
「…………!」
サイガの手元を離れ、落下していくタクミをデルタはキャッチする。そのままジェット音を轟かせ、デルタは何処かへと行ってしまった。
「…………」